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不老不死で異世界リスタート~人は「ひとり」だと信じていたはずなのに、異世界で居場所ができました~  作者: 時雨あくあ


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24話 ウルの失敗と消えた契約

「ありがとう。

ただ、申し訳ないことにギルド側で有益な情報を持っているわけではないんだ。

何かいい方法は思いつくかな?」


「できるとしたら、ジャンを尾行して胴元を突き止めるくらいしか思いつかないですね……」


「隠蔽魔法は使えるのかい?」


「隠蔽魔法って何ですか?」


「隠蔽魔法は、魔力をまとって気配や姿を隠す魔法だ。

影級が得意としている魔法だね」


「そうなんですね。

残念ながら、隠蔽魔法は使えないです。

その影級は、今回の依頼に回せないんですか?」


「影級は国の中枢や裏社会での情報収集に出払っているから難しいね」


「余ることなんてなさそうな役割ですしね。

裏社会というところで、今回の件にもかすっていてくれたらよかったんですが……」


「情報があればいいんだけど、今回の行方不明事件についてはまったく手掛かりがないんだ。

まずはゼオン君の言う通り、ジャンを尾行するところからお願いできるかな?」


「分かりました。

これから調べてみます」


ギルドを後にして宿へ戻る途中、アイシスから念話が入った。


(マスター、子供2人を箱庭へ保護しました。

状況を確認したうえで、箱庭へいらしてください)


(分かった。

一度、宿の状況を確認してから向かう)


急いで宿へ戻り4階を確認したが、争った形跡はなかった。

念のため女将さんに大男が来ていなかったか聞いてみたが、そんな男は見ていないとのことで、余計に状況が分からなくなる。


自分の部屋へ戻ってから、箱庭へ転移した。


「お帰りなさいませ、マスター。

どうぞこちらへ」


そう言われて家の中へ入ると、壁に額を当てて分かりやすくしょげているウルと、そのウルを撫でている妹ちゃんがいた。


兄はソファーに座っている。


「ウル?

何があったの?」


呼びかけると、ウルはビクッとした後、ゆっくりとこちらを向いた。

鼻をピーピー鳴らしながら近づいてきて、自分の周りをくるくると回っている。

ごめんなさい、失敗した、という感情が強く伝わってきた。


状況が分からなさすぎるのでアイシスへ視線を向けると、説明してくれた。


「子供たちの話では、女の子がウルの尻尾にぶら下がったところ、こちらへ転移したとのことです」


なるほど。


初めて任された役目で張り切っていて、何かあったらアイシスへ連絡する、と強く意識していたのだろう。

尻尾は、おそらく上を向けて振っていたのかもしれない。

犬の尻尾は敏感で、温厚な犬でも触られると怒ることがあるらしい。


ポンタは尻尾を触っても、「何やってんの、ご主人?」という感じで、まったく気にしていなかった。

尻尾の先が少し尖っていたから、よく触っていたな……。

……って違う違う。


以前はポンタを思い出す余裕すらなかったからか、最近はちょっとしたことで思い出してしまう。


敏感な尻尾に女の子が飛びついたことで、ウルが驚いて思わずアイシスへ念話を送ってしまい、アイシスが2人を箱庭へ転移させたということか。

兄もウルに触れていたタイミングだったのは、不幸中の幸いだったかな。


予想が合っているかウルへ確認すると、「その通り、ごめんなさい」という意思が伝わってきた。


ウルは悪くないので、しばらく慰めてから、兄に話を聞くことにした。

聞きたいのは、兄妹が寝泊まりしていた場所、大男の寝床や家、そして大男の行動パターンだ。

3つとも情報は薄かったが、多少の手掛かりは得られた。


「マスター、1つ報告があります」


「ん?

何か問題があった?」


「いえ、問題ではありません。

その子供に付与されていた契約の、魔法的な効力が消滅しました」


「へ?」


頭を悩ませていた問題が、あっさり解決した?


アイシスと部屋の隅へ移動し、小声で聞く。


「なんで箱庭へ転移しただけで、奴隷契約が消滅するんだ?」


「正式に定着している契約は解消されません。

ウルとマスターの従魔契約が、それに当たります。

ただ、今回消滅した契約は、おそらく簡易契約で正式な手順を踏んでいないため、不安定だったものと思われます。

箱庭は、フォルテシアとは異なる世界です。

異世界へ移動したことで、不安定な契約が世界をまたぐことができず、消滅したのでしょう」


「そんな簡単に壊れるものなのか?」


「私に聞かれましても、結果が出ていますので」


そうだよな……。

分からないよな……。


兄が署名した契約書は、今も大男が持っている。

それなのに、不安定な契約だったから魔法的な効力だけが壊れた、と説明して通じるだろうか。


一般的な奴隷契約の解除手順は、どうなっているんだろう。

後でチャットアプリを使って確認してみよう。


ひとまず、兄に付与されていた追跡の効力が消えたことで、兄妹がすぐに連れ去られる危険は下がった。

ただ、大男が次に契約を確認すれば、反応が消えていることに気づくだろう。


兄から聞いた場所へ向かっても、大男が普段からそこにいるとは限らない。

尾行するにしても、まずは本人を見つける必要がある。


手掛かりを探し始める前に、予定していた用事を短時間で済ませることにした。


箱庭から宿へ戻り、そこから転移魔法でゼストリアの森へ移動する。


当初予定していた木材集めを開始した。

普通の森に生えている木でもよかったのだが、チャットアプリで調べたところ、魔力濃度の高い場所に生えている木のほうが丈夫らしい。

その代わり、一般的な木材よりも加工しにくいという欠点があるが、アイシスは問題ないと言っていた。

それに、人目につきにくいゼストリアの森のほうが大胆に作業できるため、気持ちも楽だ。


生え方に癖がなく、なるべくまっすぐに伸びている木を選び、風魔法で切っていく。

余計な枝も風魔法で落としてから、アイテムボックスへ収納した。

木へ触れ、根ごと収納することも考えたが、今は2人の世話もアイシスへ任せている。

少しでも手間を減らせるように、軽く処理してから収納することにした。


足りなくなることがないよう、30本ほど収納したところで宿の部屋へ戻る。


念話でアイシスへ木材を収納したことを伝えると、作業を進めておいてくれるそうだ。


その後はテイマーギルドへ向かい、ギルドマスターに店を紹介してもらった礼を伝えた。


「別に気にすることはないわ。

問題はなかったかしら?」


「ええ。

ただ、料金は払わなくていいと言われたんですがよかったんですか?」


「大丈夫よ。

あそこに店を構えていても、まともな客は来ないでしょうしね」


「確かに、地区的に厳しそうでしたね。

店主の機嫌が悪かったのも納得できます」


「え?

機嫌が悪かったの?」


「たぶんですけど……。

お酒臭かったですし。

カプセルシードの説明を受けた後、お金は請求できないから、さっさと帰れと言われましたね」


「ふーん……」


ギルドマスターの雰囲気が、わずかに変わった。

怒っているというより、「躾が足りなかったかしら」と考えているような雰囲気だ。


「あの店主とは、どういった関係なんですか?」


「あの親父はね、結構姑息なのよ。

摘発できるかどうかギリギリの、グレーなことを裏でやっているわ。

何度か摘発対象になったんだけど、結果的に有罪にはならなかった。

それで、あの親父に割く手間ももったいないから、逆に協力者にしてあの地区の情報を提供させているの。

貧民区にはギルドもなくて、違法なものも流れやすいから定期的に報告させているわ。

一応、私の協力者ということになるけれど、女だからって舐めた態度を取ってきたから、分からせたのよ。

まだ足りなかったのかしら?」


なるほど。

さすが、テイマーギルドのギルドマスター……。


でも、裏でグレーなことをしている親父なら、今回の事件についても何か知っているかもしれない。

そう考え、ギルドマスターへ現在の状況を説明すると、協力してくれることになった。


その後、ギルドマスターと一緒に店へ向かった。


中へ入っても、先ほどと同じく、カウンターどころか見える範囲に人はいなかった。


「すみませーん」


呼びかけると、ドタドタと足音が聞こえ、勢いよく扉が開いた。


「うるせぇな!

また来やがったの……か……」


最初の勢いは、ギルドマスターの姿を認識した途端になくなり、店主の顔が真っ青になった。

その後、慌てて笑顔を作る。


「リゼラ様、お久しぶりです。

わざわざこんなところまで、何のご用で?」


ぺこぺこしながら、カウンターまでやってきたところで、ギルドマスターが店主の胸ぐらを掴みぐっと引き寄せる。


「私は、あの手紙に何と書いたかしら?」


店主は目を泳がせたまま、答えられない。

ギルドマスターが、もう一度同じ質問をする。


「重要な人物なので、礼を尽くして対応するようにと……」


「そうよね?

字が読めなかったわけではないようだけれど、さっきみたいな対応をしたんじゃないでしょうね?」


店主の顔から、ものすごい勢いで汗が流れ始める。


「も、申し訳ございません!」


その言葉を聞いてギルドマスターが手を離すと、店主はカウンターの向こう側で尻餅をついた。


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