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不老不死で異世界リスタート~人は「ひとり」だと信じていたはずなのに、異世界で居場所ができました~  作者: 時雨あくあ


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23話 違法奴隷商の摘発依頼

「少し聞きにくいけど、親御さんは?」


「2年前に母さんが死んじゃって、そこから優しかった父さんが変わったんだ……。

最初はお酒ばかり飲んでいたんだけど……そのうち家を空けることが多くなって……。

それで、知らない女の人が家に来ることが増えた……」


涙をこらえながら、少しずつ言葉を紡いでいく。


「夜に、父さんと女の人が話しているのを聞いたんだ……。

女が『前の女が残した土地を売って、私を楽させて』って言ってて……。

それから、『ガキたちも早く奴隷に売って、新しい人生を歩きましょう』って……。

さすがに、俺たちを奴隷に売るなんて本気じゃないと思ってたんだけど……」


鼻水をすすりながら、話を続ける。


「家で夜寝るときに、妹から聞かれたんだ。

『今日、知らないおじさんのところに連れていかれたの。

そこで、お父さんが取引は3日後だって話してた。

おにぃと離れ離れになっちゃうのかな?』って……。

それがきっかけで、金になりそうなものと登録証を持って、妹と一緒に家を飛び出してきたんだ……」


傷心しているところに付け込まれ、全財産だけでなく、最後には忘れ形見の子供まで金に換えようとしたのか。


「それでも、国内にいたら見つかるのも時間の問題じゃないか?」


「それなら大丈夫。

俺たちがいた国は、獣人や亜人の多いオベストリアだから、アルヴェリアからは一番離れてるよ。

乗合馬車で来たんだけど、移動費でほとんどお金がなくなっちゃって……。

一緒の馬車に乗っていた人も、護衛の冒険者の人も優しくて、いろいろと良くしてくれたんだ……」


だから、あの大男に声をかけられたときも、あまり警戒していなかったのか。


「君は、これからどうしたいんだ?」


「俺は……妹だけでも、安全で幸せに暮らしてほしい……」


自分のことは後回しにして、妹を優先するのか。

本当によくできた子だ。


「分かった。

でも、君自身はどうなりたい?」


「俺……自身……?」


「そうだよ。

やりたいことや、なりたいものはあるかい?」


この子は今、目の前のことで精いっぱいなんだ。

自分の将来なんて考えられないほど、追い詰められている。

だからこそ、自分自身の希望や、やりたかったことを思い出させてあげたい。


「冒険者……。

冒険者になって……いろいろな場所を見て、いろいろな人を助けたい。

小さなことでもいいから、俺がいてよかったって思ってもらいたい!」


そう言うと、我慢していた涙が決壊したのか、大声で泣き始めた。


男の子の頭を撫でながら、ウルへ伝える。


「ウル、この2人をここで守っていてくれ。

誰かが来ても、相手を殺しちゃ駄目だからね」


尻尾を振りながら、返事をしてくれた。


その場で、箱庭にいるアイシスへ念話を送る。


(アイシス、さっき説明した2人が奴隷商に狙われてるんだけど、もしものときは一時的に箱庭へ転移させることは可能か?)


(はい。行動に制限を設けることにはなりますが、箱庭にあるマスターの家の中へ転移させることは可能です)


(分かった。

この念話って、アイシスからウルにも使えるのか?

可能なら、困ったときはアイシスに相談しろって言えるんだけど)


(ウルへ念話を送ることも、ウルから念話を受けることも可能です。

ただし、以前お伝えした通り、ウルの考えを私が読み取ることはできません。

そのため、ウルからの念話を合図として、箱庭へ転移させることは可能です)


(ごめん、そうだった。

じゃあ、ウルに伝えておく。

ウルに触れていれば、2人も転移の対象になるんだよね?)


(その通りです。

こちらでも準備を進めておきます)


アイシスに礼を伝え、念話を終了する。


「ウル、誰かが来て2人が危なくなったら、2人に触れてアイシスを呼んで。

箱庭へ逃がしてもらうんだ。

相手を殺しちゃ駄目なのは変わらないからね」


「分かった」と返事をしてくれたので、2人にもウルの近くから離れないよう伝えておく。


大男が来る前に、できるだけ早く対応を決めなければならない。


自分は冒険者ギルドへ相談に向かった。


フォルさんのチャットアプリは、世界で起きていることや薬の作り方など、答えが決まっている内容を確認するときには使える。

だが、こういった対人関係を含む相談では、あまり当てにならない。


結局、今の自分ではギルドマスターへ相談するしかない。


いつもの流れでギルドマスターの部屋へ案内され、今回の経緯を説明した。


「状況は理解したよ。

ただ、ギルドが関与するには少し難しい案件になるね。

まず、孤児を保護する施設はある。

ただし、国営の施設になるため、国外から来た子供は対象外となることが多い。

ましてや、性格はどうであれ父親が健在となると、受け入れられたとしても後々揉め事になる可能性が高い」


物語だと、教会などで孤児を育てるイメージだったが国営なのか。


「そして次に、人界では奴隷制度そのものは認められている。

奴隷は主人の財産として扱われるため、正規の手続きで成立した契約を、国やギルドが勝手に無効にすることはできない。

それを許してしまえば、国やギルドが個人の財産を好き勝手に差し押さえられることになり、安定した生活が成り立たなくなるからね」


ギルドマスターは、そのまま奴隷制度について説明を続けた。


「奴隷には、大きく分けて一般奴隷、犯罪奴隷、違法奴隷がある。

犯罪奴隷は、名前の通り犯罪を犯した者が落とされる身分だ。

この国では、死刑よりも重い刑として扱われているね。

一般奴隷は、親が生活に困って子供を売ったり、借金を返せず本人や家族が奴隷になったりする場合だ。

そして違法奴隷は、正規の手続きを踏まず、本人の意思を無視して契約を結ばされた者を指す」


「それなら、あの子は違法奴隷になるんじゃないですか?」


「可能性は高い。

ただ、契約書には本人の署名が残っている。

今ある情報だけでは、ギルドが一方的に契約を無効だと判断することはできないんだ。

本人は内容を知らされず、寝床を借りるための書類だと思って署名したと言っている。

それを証明できれば、詐欺によって結ばれた違法な契約として解除の対象になるだろう。

だが、現時点では本人の証言しかない。

契約を結ばせた相手が否定すれば、すぐに決着をつけるのは難しい」


そうなると、かなり厳しいのか……。


「ここまでが一般論だ。

ここからは対応案になるけれど、一番簡単なのは、ゼオン君がジャンからその子を買い取り、契約を解除することだね。

これが一番手早く、後腐れもない。

冒険者ギルドへの正式な登録は15歳までできないが、それまでギルドが保護する形で、衣食住と一般教育を提供することは可能だ。

ただし、15歳になったら冒険者になるという契約が条件になる。

妹のほうについては、本人の希望次第だね」


ギルドマスターは少し間を置き、自分の顔を見る。


「ただ、ゼオン君の考えとしては、お金だけで解決するのは好ましくないように見える。

どうなんだい?」


「正直、お金で解決するだけなら簡単だと思います。

でも、それでは恒久的な解決にはなりません。

騙される側にも警戒が足りなかった部分はあるかもしれませんが、騙す側は論外だと思っています。

仮に今回のジャンだけを潰しても、トカゲの尻尾切り……というか、下っ端が別の者へ入れ替わるだけで、胴元は同じことを続けるでしょう。

そこを何とかしたいです。

でも、正直に言えば、何をすればいいのか分からなくて相談に来ました」


しばらく沈黙が続いた後、ギルドマスターが1枚の紙をテーブルへ置いた。


手に取って確認すると、依頼の内容が書かれた紙だった。


内容は、行方不明になった子供の捜索。

しかも、依頼に記載されている子供の数はかなり多い。


「もし、その胴元が抱えている子供の中に、捜索依頼が出されている子がいれば、誘拐と違法奴隷売買の2つの罪で組織を摘発できる。

同じようなことをしている連中は、ほかにもいるだろう。

それでも、1つの組織が摘発されれば、周囲も警戒して数年はおとなしくなるものだ。

根絶やしにはできないが、それに近い効果は期待できると思うよ」


ギルドマスターから、「どうだい?」と問われる。


「分かりました。

依頼に協力します」


こうして、特級依頼ではないものの、違法奴隷商の摘発へ協力することになった。


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