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不老不死で異世界リスタート~人は「ひとり」だと信じていたはずなのに、異世界で居場所ができました~  作者: 時雨あくあ


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02話 神様のサービスが過剰すぎる件

「お待たせー!」


しばらくすると、神様が突如として姿を現した。

体感では、1分も経っていないと思う。


「じゃあ、まずはこれを渡しておくね」


渡されたのは、飾り気のない指輪だった。

左の人差し指につけると、指輪は何もなかったかのように消えた。


「今渡したのは、登録した好きな場所に転移できる転移魔法具と、倉庫みたいにいろいろ入れられるアイテムボックスを1つにまとめたものだよ。

アイテムボックスの容量は無制限にしてあるから、何でも保管できるようになっている。ただし、生き物は入れられないから注意してね。

あと、入れたものは時間が止まるから、できたての食べ物を入れるのもおすすめだよ。出したいものをイメージすれば出るし、しまいたいときはその逆。中でぐちゃぐちゃになったりもしないから、心配しなくていいよ」


「あと、これは腕に付けてね」


今度は、輪っか状の銀色のブレスレットを渡された。

中央には青い宝石がはめ込まれている。


右腕につけると、ブレスレットは俺の腕に合わせるように大きさを変えた。

ぴったりとハマった直後、指輪と同じように姿を消す。


「今渡したのは、家が入っているブレスレットだよ。ブレスレットの中に転移することで、中で生活することも可能になる。山や川なんかも自在に作れるよ。

もちろん家は本人の希望によって変化できるし、内部は空間魔法で拡張もできるから、見た目以上の広さにすることも可能だね。外観も変えられるから、その辺りも安心してね」


箱庭ゲームに近い感覚だろうか。


家や、その付近のものを自由に作り変えて、理想の環境を整えられるようなもの。

でも転移と言うなら、さっきの指輪の転移魔法でも移動できたんじゃないか。


「いいところに気が付くね。

まず、箱庭ゲームに近い感覚というのは正解。名前は考えていなかったけど、箱庭って呼ぶことにしよう。

この箱庭は、君が自由にできる世界と言ったほうがいいかな。家も想像通り大きくできるし、果物のなる木や野菜の採れる畑、魚の獲れる川なんてものも作れるよ」


それは便利どころの話ではない気がする。


「ただ、これは世界創造に近いものだから、フォルテシアの転移魔法を使うと世界が歪んでしまう可能性がある。だから転移魔法とは別枠で考えてほしいかな。

箱庭の時間経過は、基本的にフォルテシアの時間と同じになっているから注意してね。箱庭から戻る場合は、転移する前の場所に戻ってくる。だから、目立たない安全な場所で使うことをおすすめするよ」


思考が読まれているおかげで、疑問が浮かぶたびに神様が答えてくれる。

聞いている側からすると、正直かなり楽だった。


「転移については、一度その場所に行く必要はあるけど、登録すれば次はイメージするだけで行けるからかなり楽だよ。登録方法もアイテムボックスと同じように、登録しようと考えれば登録できる。何か特別な操作をする必要はないね」


なるほど。

感覚で使えるようにしてくれているらしい。


「さっき少し話した魔法について、もう少し詳しく説明するね。


この世界の基本魔法には、魔力を何かに変換させる変換魔法と、魔力をそのまま使う無変換魔法があるよ。

変換魔法は、火とか風とか水とか、魔力を別の性質に変換させて行使する魔法だね。それぞれ火魔法とか風魔法とか呼ばれている。同じ変換魔法でも、火魔法は得意だけど水魔法は苦手、という例もあるから、そういったところは適性になるね。

無変換魔法は、魔力をそのまま使う魔法だよ。物を浮かせたり、身体強化をしたり、回復なんかもできる。これも身体強化は得意だけど回復魔法は苦手、という例があるように、それぞれの区分で適性がある。

あと、魔力を変換するだけだから、詠唱とかは不要だね。試しにやってもらおうかな」


そう言うと、神様はこちらに手をかざしてきた。

さっきまでなんとなくぼんやりとしていた自分の身体の感覚が、急にはっきりした。


「さっきまでは、魂に仮の身体を与えていただけだからね。今回は魔力を扱えるように、ちゃんと肉体に近い状態にしてあるよ。

じゃあ、身体の中にある魔力をまずは感じてみようか」


そう言うと、神様は俺の手を握ってきた。


いきなりだったので、少しだけドキッとした。

その直後、握られた手から温かい何かが身体の中を巡っていくのを感じる。


「その温かいのが魔力だよ。そのまま反対の手のひらに集めるようにイメージしてみて」


左の手のひらに意識を集中すると、そこへ何かが集まっていく感覚があった。


「そのまま、手のひらから火を出すイメージをして」


言われた通りに火をイメージすると、手のひらから火が出た。


3メートルほどの火柱が。


「これだけ出せれば問題ないね。イメージを明確にすれば、指先からマッチくらいの火を出すことも、今より大きい火を出すこともできるよ。じゃあ、もう1つ」


そう言われた直後、神様に握られていた方の腕に痛みが走った。

すでに握られていた手は離れていて、腕には10センチほどの切り傷ができていた。

ただ、不思議なことに血は出ていない。


「血が出ていないのは、今の肉体が仮のものだからだね。さっきと同じように左手に魔力を集めて、今度は火を出すイメージじゃなく、傷を治すイメージをしてみよう」


言われた通りにやってみると、傷が少しずつ消えていった。


「傷も綺麗に消えているし、基本魔法も問題なさそうだね。

次は特殊固有魔法についてだね。特殊固有魔法は、個人の性質から生まれたオリジナル魔法と言えばイメージしやすいかな」


個人の性質から生まれた魔法。

それは少しだけ気になった。


「君の特殊固有魔法は、“感応感知魔法”だね。

説明すると、相手の考えや感情が分かる魔法。例えば、君を騙そうとしている相手が話すと、君は嫌悪感を抱く。相手の焦りや苛立ちも感じることができるね。

逆に、好意や喜びといった感情も分かる。あとは悲しみとか、相手が抱いている感情を感じ取りやすい魔法みたいだね」


そんなに強くなさそうな魔法だな。


「そんなことないよ。

これが洗練されていけば、相手の思考を読んで先手先手を打てる可能性もある。現時点ではそこまで行くことはないだろうけど、これについては魂に根付いた性質で変わるから仕方ないね。

ちなみに、ボク相手に萎縮しなかったのもこの魔法のおかげだね」


萎縮しないで話せている理由は、この魔法か。

もっとも、会話をしているというより、思考を読まれながら一方的に説明を聞いているだけなのだが。


「これで魔法の説明も終わったし、次はお金について説明するよ。

銅貨、銀貨、金貨、白金貨の4種類の硬貨がある。これも三界共通のお金で、単位はリルだね。


銅貨1枚が1リル。銅貨10枚で銀貨1枚、銀貨10枚で金貨1枚になるよ。白金貨だけは金貨100枚で1枚になるから、一般的に使われることは少ないね。

日本円で考えるなら、1リル100円くらいって考えてもらえばいいかな。とりあえず初期費用として、白金貨100枚分をアイテムボックスに入れてあるから自由に使うといいよ」


白金貨100枚分って……1億円分⁉


「あれ? 足りない? それならもうちょっと足しておくけど」


「いや、確認なんだけど、そんなに物価としては高いのか? 白金貨100枚あって1年過ごせないとか、それくらいの」


考えるより先に言葉が出た。


1億円分と考えると、十分すぎるどころではない。

ただ、神様に足りないと勘違いされたことで、こちらの相場観が間違っている可能性が出てきた。


「人界の平民の平均月収は金貨5枚くらいかな。それで4人家族なら十分暮らせるくらいの物価だから、そんなに高くないよ。

1リルの銅貨から説明したけど、その下に小貨っていう硬貨もある。それが10枚で銅貨1枚と同じ価値になるね」


なるほど。

最小単位が10円で、月5万円あれば十分な暮らしができる。

それなら、もらいすぎでは?


「まあ、お金については理解してもらえたみたいだからよかったよ。世界各地をいろいろ見て回るのに、ありすぎて困ることはないでしょ?」


確かに、お金はあって困るものではない。


「さっき君が気にしていたネットについてだけど、これはエルミナにも確認したよ。制限は付けるけど、利用自体は可能だね」


「可能なんですか?」


思わず聞き返してしまった。


「うん。よく君が使っていたSNSは見るだけ。書き込み、投稿、反応はできない。君が持っていたタブレットやスマホ、パソコンと、お気に入りのイヤホンは持ち込んでいいって。

利用は可能だけど、地球の人とやり取りできるものはすべて利用不可。ゲームもやっていいけど、チャット機能みたいなものは使えない。

ゲームや配信系サービスの利用料は、持っているリルを変換して支払いできるように、エルミナが調整してくれたよ」


そこまでできるのか。


「ネットで買い物もよくしていたみたいだけど、地球の品をフォルテシアに配送することはできないから、買い物は不可。ただ、配信されている書籍系は購入して読むことができるようになっている。

スマホ、タブレット、パソコンの画面は、君以外には見えないようになっているよ。覗き込まれても真っ暗にしか見えない。地球では電子機器の扱いだけど、魔道具として変換してから提供する形になるね。故障はしないから、安心して使うといいよ」


めちゃくちゃ至れり尽くせりだ。

本当に、そこまでしてもらっていいのだろうか。


「エルミナが、せめて不自由のないようにって調整してくれた結果だね。そこはしっかり感謝すること!」


神様は、そこだけ少し強めに言った。


「あと、フォルテシアと地球だと時間の流れが違うから、ネットの更新は遅いと思ってね。具体的には、こっちでの1年が向こうの1カ月に相当するよ。

フォルテシアも時間と日のサイクルはほとんど地球と同じで、1日24時間、1カ月30日、12カ月で1年になるよ」


どんどん自分のやりたい放題の方向で進んでいる。

ありがたい。ありがたいのだが、なんでここまで優遇されるのだろうか。


「エルミナが君にここまでしている理由は、さっき話した通りだよ。君の魂を見てきたからこそ、せめて次は不自由なく生きてほしいんだって」


不老不死についても、そういった事情があってのことなのだろうか。


「あー、それについてはいろいろあるけど、君の考えって“死ぬ理由がないから、とりあえず生きている”ってスタンスだったでしょ」


何も言えなかった。

否定できなかったからだ。


「死ぬ理由ができて、また死なれてしまうとエルミナも悲しむからね。1つの保険と思ってほしい」


保険。

その言葉は軽く聞こえるのに、内容はまったく軽くなかった。


死なない身体。

いや、死ねない身体。


それは優しさなのか、それとも縛りなのか。

今の自分には、まだ分からなかった。


いろいろ配慮してくれてありがたい。

ただ実際にフォルテシアへ行ったとして、最初にどう動けばいいのだろうか。

いきなり魔王でも討伐しろと言われるのだろうか。


「魔王はいるけど、討伐されると困るなー」


困るのか。というか、いるのか魔王。


「君に何か大きな役目を背負わせるつもりはないよ。それはさっき話した通り。好きなことをして、好きなように生きればいい。

時間がかかっても、本当に欲しかったものを欲しいって気が付けるようになればいいさ。

でも、最初にすることだけはこっちで決めさせてもらうよ」


そう言うと、神様は俺の胸のあたりに掌を当てた。


直後、俺の身体が淡い光に包まれる。

しばらくすると、光はゆっくりと消えていった。


「君にボクの加護を与えたよ。右手の甲に意識を集中すると、加護の証が出るからやってみて」


言われた通りにすると、右手の甲にエンブレムのような紋様が浮き出た。


「それが今のところ、君の身分証明の代わりだよ。

アルヴェリアって国の近くに送るから、門番にそれを見せて通してもらうといい。最終的には身分証を発行してもらえるから、次からは身分証明書の提示でいろいろな国に入国できるようになるよ。

転生したことは隠す必要はないけど、異世界から転生してきたことだけは、なるべく言わないほうがいいね」


なるべく、ということは言っても構わないのだろうか。

基準がはっきりしないと、なんとなく気持ち悪い。


「基準は特にないよ。

ただ、転生はよくあることだから突っ込まれないけど、異世界の知識を持っているってなると、自由が利かなくなったり、悪用しようとすり寄ってくる者が出てくる可能性があるからね。

そういうの、嫌いでしょ?

あと、転生した影響で記憶が一部なくなる事故もよくあるから、都合が悪いときは『転生の影響で記憶が曖昧で』って言えば、大体のことは乗り切れると思うよ」


理解した。

信用した相手に明かすのは問題ないが、自分で決めろということだ。


あと、転生の影響で記憶が飛ぶことはよくあるのか。

大丈夫なのか、それは。


「そうだね! 今回はボクがやるから、そんな失敗はないよ!

他に質問もないみたいだし、転送しちゃうね」


神様はそう言って、少しだけ柔らかく笑った。


「君に幸あれ」


そう言われた後、俺は光に包まれた。


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