18話 ウルは箱庭の住民になりました
ウルが仲間になったので、一度箱庭に移動することにした。
アイシスに確認したところ、自分と一緒に触れていれば、ウルも箱庭へ転移できるらしい。
そのため、ウルに触れた状態で箱庭へ移動した。
転移したウルは何が起きたのか理解できなかったのか、くるくると回りながらはしゃいでいた。
「ウルを箱庭の住民にしたいんだけど、手続きのやり方を教えてほしい。大変?」
「いえ、対応は簡単です。
これをウルにつけてください」
そう言って渡されたのは、首輪のようなアイテムだった。
箱庭で出てきたものを魔道具と言っていいのか分からないので、濁しておく。
ウルを呼ぶとすぐに来てくれた。
首に巻くと、ウルのサイズにぴったり合うように自動調節され、自分の腕輪と同じように消えた。
「これでウルは正式に箱庭の住民となりました。
住民になったことでポイントが追加されました。
そして、住民が増えたことで私の能力が追加されました」
「おぉ! ……って、能力?」
「はい。追加された能力ですが、箱庭にいる私と念話が可能になりました。
箱庭にいる住民の情報を連携するために、解放されたようです」
「なるほど。じゃあ、この前みたいにわざわざ箱庭に移動して説明に来なくても問題なくなったってことだね?」
「そうなります。
これで、チャット機能を使う機会も減りますね。
ポイントも増えましたが、新たに施設を追加しますか?」
「ん? なんでチャットをする機会が減るの?」
「あの返信をしていたのは、私ですよ?」
「……え?」
「日本の知識とフォルテシアの知識、その両方を持っている相手でなければ答えられませんから」
「言われてみれば、そうか……」
「気付いていないとは思いませんでした。
ただ、念話ではマスターが見ているものまでは確認できませんので、視覚情報を共有する際には、今後もチャット機能を使う機会があると思います」
「全くもって気付いていなかったよ。
それで、ポイントも増えたんだよね?」
ポイントを確認すると5ポイント増えており、追加施設も増えていた。
保有ポイント 11ポイント
果樹 2ポイント
畑 1ポイント
川 1ポイント
生態系追加(川) 5ポイント
温泉 3ポイント
川と生態系追加、温泉が追加されていた。
「追加されてるみたいだけど、生態系追加って何?」
「生態系追加は、川の中に生態系を生成します。
魚などが食材として捕れるようになります」
「それって結構破格じゃないか?」
「川は生態系追加ありきの施設になりますが、食材が新鮮で寄生虫の心配もないので、かなりいいかもしれません。
ただ、今回の生態系追加は、畑や果樹のときの成長促進と違い、川のみの適用となります」
「うーん……ちなみに今は田んぼ使ってないんだよね?」
「はい。すでにマスターだけが食べるのであれば、3年は持つほどの在庫がありますので、今は育てておりません」
「その田んぼをほかの畑に変更はできないんだよね?」
「それは残念ながら不可能となります」
「そうだよねー。
例えばだけど、小麦畑を作ったとしたら、パン、麺類、お菓子にできる?
ブドウならワインに、みたいな加工もアイシスならできる?」
「はい、可能です」
めっちゃドヤ顔で回答された。
「川は魅力的だけど、個人的に魚料理よりもお肉料理のほうが好みだから、汎用性のある畑と果樹を作ったほうがいいかもねー」
小麦はいろいろ使えるから確定として、大豆も汎用性が高い。
この2つは確定として、あとはリンゴとブドウにしようかな。
「今回は畑で小麦と大豆、果樹でリンゴとブドウをお願い」
前回と同様、かしこまりましたと返答され、アイシスは家の裏手に向かっていった。
ウルにはこのまま箱庭にいてもらうことにして、自分は森に戻った。
森に戻って、とりあえず森を転移魔法に登録してから、アルヴェリア近くに転移した。
転移してからは、城門の受付の人にウルのことを相談した。
魔物であっても害がないと判断できれば通すことは可能とのことだったので、人目につかないところでウルを呼び出す。
大きいし騒ぎにはなるだろうが、言うことは聞いてくれるはずなので問題はないだろう。
城門前に連れて行くと、やはり騒ぎになり、馬車用の入口へ移動することになった。
「こんな大きな魔物を仲間にしたんですか?
本当に害はないんでしょうか?」
「問題ないですよ。
ウルから手を出すことはありませんから」
そう言うと、「もちろん」と言わんばかりに吠えるウル。
受付の人に触られて嬉しそうにしていて、問題ないと認めてもらえ、入ることができた。
ギルドに報告に向かうと、やっぱり当たり前だけど注目された。
すぐにギルドマスターの部屋に案内され、事情を説明した。
「なるほど、魔力だまりの影響で強力な魔物だけが転移してきていたのか」
「魔力だまりって割と起きることなんですか?」
「最後に確認されたのは30年前だね。
そのときは今回のような事象は発生していなかったので、規模によって影響は違うのかもしれないね。
それで、その後ろの魔物は……」
「途中で助けたんですけど、そこから協力してくれて、こんなに早く調査できたのはウルのおかげなんです」
そう答えると、ウルが得意げに吠える。
「そうか…………いや……まさかな……」
ギルドマスターが何か引っかかっていたようだが、そのまま続ける。
「魔物を連れて歩くには正式な登録が必要なので、テイマーギルドでの登録が必要になるね。
紹介状を書くから、この後に従魔登録をするといいよ。
従魔登録されれば安全な魔物であると認められたことになるので、街中でも従魔として扱われるようになるよ。
時間はギリギリだけど、今から行けば間に合うだろう。
依頼の報酬は後日改めてにさせてほしい」
「分かりました。
じゃあ、これから向かうことにします」
冒険者ギルドを後にして、教えてもらったテイマーギルドへ向かうことになった。
テイマーギルドに着いたが人はほとんどいなかった。
受付に紹介状を渡すと、ウルの迫力もあってか、ギルドマスターの部屋に案内された。
「初めまして。
テイマーギルドのギルドマスター、リゼラよ。
その後ろの子が、従魔登録希望の子で間違いない?」
「はい、名前はウルって言います」
ウルが「よろしく」と吠える。
「それじゃあ、その子に出会った経緯を教えてくれるかしら」
そう言われたので、ウルとの出会いから仲間になるまでの経緯をギルドマスターに説明した。
しかし、話を聞き終えたギルドマスターの表情は、予想していたものとは少し違っていた。




