9話 小さな竜と些細な冒険 2
いつも読んで頂きありがとうございます♪
ストレス発散目的で緩く書いてますので拙い文章力ですが最期までお付き合い下さい。
地下冒険者宿舎を出て四日目。
俺は大きなくしゃみをすると、頭上からナーブが心配そうに声をかけた。
風邪にでも当たったかと思ったが、身体は至って健康そのものだが、妙に寒気も感じた。
「誰かお主の噂をしとるな。」
「心当たりがありすぎて判らん。ナーブの風邪にでも当てられたのかもな。」
「ならば、妾はきっと悪い噂をされとるな。」
「なんだ、何か心当たりでもあるのか?」
「う〜む……そう言えばじゃが、なんか忘れておるのぅ……。」
ナーブと俺の会話にギギが言い放った。
「あぁ、そう言えば地下冒険者宿舎長と約束しておりましたな。あれは確か……。」
ナーブとギギは互いに、〝しまった〟という表情をした。
「ナーブ様……あれから何日経過しておりましたかな?」
「う……うん。はて?なんのことじゃったか……のぅ……。」
ギギの視線は冷ややかな半眼に変わりナーブを直視するが、ナーブもナーブで副官であるギギに責任をなすりつけるが俺からしたらどっちもどっちだ。
「あのよ、そういう約束してたんなら、なんで調査に来たんだお前等……。」
素直に呆れた。
そんな事よりも、俺にはすっぽかされたリースとハゼがどんな顔して何を言うかが手に取るように解ってしまう。
「やっちまったもんは仕方ない。帰ったら床に額を擦り付けてでも謝るこっちゃ。」
俺がそう言うとナーブもギギも薄ら涙目となっていて助け舟を俺に請う。
冗談じゃない。
こっちはほぼ強制的に連れてこられて、緑生迷宮の準備にと揃えていた魔具や食糧まで今回幾つも消費している。
自業自得なナーブ達は痛い目を見るべきだ。
仮にも俺より遥かに歳上なのに、甘えるんじゃない、それがいい歳どころか三桁大人の責任の取り方なのかと説教をかます。
「いささか興奮したばかりに、調査隊の誰もがうっかり忘れていたでござる。ここは皆、正直に謝るでござるな。なに、かの双璧は器が大きいと聞いているゆえ大事には至りませぬぞ、ナーブ様。それに、今回は正式な書面のやり取りは交わしておりませぬ。毎度毎度、調査に出向けば各ギルドマスターと誓約書を交わすもの。向こうにも落ち度は在るでござるよ。」
「う、うん……そうじゃな、ザザルダ。約束とはいえ正式な書面を交わしとらんしな……いい事言うのう!ザザルダよ!」
どう考えてもただの屁理屈じゃねーかと、俺は叫んだ。
直に最下層に着くが、こんな調子で舐めてかかれるほど今のリースやハゼは甘くない。甘くないんです!
「これは、先が思いやられるな。いいか、よりにもよって相手はリースとハゼだぜ?そう簡単に許すと思っているのがそもそも甘い。それに口約束とは言えマウベルだって、礼節欠くとキレるぞ?ともかくだ、俺を無理矢理連れ出した罰だと思って、全力で怒られれば良いと思う!」
ギギは思慮深く黙り込んでいたが、ナーブ達は慌てながらも媚びりつつ焦りを滲ませる。
大体、明らかに選択というか判断に非があるのは南方騎士団だ。
「素直に謝れないなら〝小さいのは身体だけにしてくれ〟なんて言われちまうぞ?いいか?お前等特有の先走りは結果的に良い時もある。が、今回は違う。帰ったらしっかり謝るべきだ。もう、昔みたいに啀み合う間柄じゃねぇだろ?少なくともマウベル達とはな。それに、俺の知ってる人格者はそういう時こそ頭を垂れるものだ。」
俺の説教に完全に悄気て後悔するナーブ達だが、以前から知っている小竜人族というのは他種族に頭を下げるなんて芸当は万死よりも重く感じて謝罪なんて絶対しなかった。
だが、今回見せた態度はこれはこれで少し成長してきた証なのかも知れない。
少なくとも小竜人族である彼女達は。
「ナーブ。なにも単に頭を下げるだけじゃないからな。小竜人族が謙虚さや相手への敬意を示すってのは驕りを捨てる様なもんだろ。小竜人族からすればとても難しいだろ?それが出来たのは小竜人族長だけだろ。だからこそ、それが出来たら、きっと誰もが驚くだろうし頭一つ抜け出せる。そんで、それは学びとして自身の存在に大きく作用していくんだ。考えてみろ?お前等の族長達、先達が自らの非を認め頭下げてきたらお前等はどう感じる?知見豊かな格上の相手が低姿勢なんて見せつけてきた日には俺なら更に尊敬しちゃうね。悪知恵だけ身につけたっていざって時、諸刃の剣で役に立つことなんてあっても立ち続けねぇよ。ショボい剣を抱えて冒険なんてやる意味ねーし、ダサい生き方するタマかよ……少なともお前達は。」
ナーブ達の表情が明るくなり、場の重さは消える。
「そうと決まれば、さくっと調査終わらせて、さっさと帰るぞ。謝罪で大事なのは、謙虚さ、誠心誠意、そして何と言っても〝早さ〟だ!」
そんなやり取りをしていたら気付けば、あっさりと最下層に到達。
気を取り直して探索するが、ここでしか採取出来ない植生生物と鉱物のみが群生していて、魔物の姿は見当たらない。
ここ20年で何度も潜ってきたが、こんな状況は見たことがなかった。
通常の迷宮ですら最下層には迷宮主が居て、必ず大規模な魔核が一つあり、その守護番みたくの迷宮主を倒せば魔核の溜め込んでいる魔素が迷宮の再生を行い、目で見える魔核内の魔素は減る。
そうして魔素量を管理・監視する事で魔物の群生を阻止出来るし魔素の氾濫も起こさせずに済むのだが……。
「極僅かだが、龍神様の気配はあるが……とてつもなく薄いのぅ。」
ナーブの幾つか持つ神授能力の一つ、魔素感知で気配を辿るが最下層部屋の最奥でそれは途切れているようだ。
「ギギ。お前はどうだ?」
俺はすかさずギギに尋ねると、彼は持ち前の神授能力を遺憾無く発揮する。
それは、迷宮に蔓延る精霊達との会話。
俺にはさっぱり視えないが、暫くするとギギは精霊達に一度、感謝を示し報告してくれた。
「端的に申しますと、どうやら、かなり前に人族に連れて行かれたようです。それと……。」
わけがわからず俺は声を上げたが、精霊達曰く俺は一度、この迷宮において龍神様とやらと会っていたらしい。
「龍神様って神話に出てくるデカい龍だよな?そんなもんに会った憶えはないぞ?」
「しかしながら、ここの精霊達はコウに偉く懐古の念を示していますぞ?」
何度思い返しても見当つかないでいると、ナーブはある現状に気付き、ギギは再び精霊達と話す。
四方八方に散らばり岩陰や床を調べていた調査隊の面子も違和感に気づいたのか、彼等特有の密談を部屋の中央で始める。
「お主、一度魔物群をここで退けておったのだろ?その時に宝玉を持ち去らなんだか?」
「宝玉?そんなもんあったかな?」
調査隊の見解ではここに間違いなく龍神様は居たが何者かが持ち去った為に数千年分の残滓だけで成り立っているという仮説。
するとギギが精霊達から知らされた事実を話す。
かなり前に多勢の人族が宝玉を持ち去っていったという事実に俺はジルゴの話を思い返した。
王国の調査隊が後から来て大量の魔核を回収した際、一際大きな魔核を拾った話。
「なぁ、ひょっとして龍神様とやらは……宝玉なのか?」
俺の発言にナーブ達は驚いていた。
そうなると、間違いなく龍神様は王都にいる。
ジルゴの話を聞かせるとナーブ達は合点がいく。
近年、王都周辺に黄源迷宮に似た幾つかの迷宮が発生していて、各ギルドや騎士団や王国軍が挙って対応しているらしく、ナーブ達南方騎士団も度々駆り出されているようだ。
とりわけ王都に近い迷宮ほどその影響は強いらしいが、ここよりは脅威ではないとの事。
しかし、迷宮が増えたことにより対処する数が数なだけに人手が必要不可欠な状況が続いているらしく、管理に支障が出始めているという。
後手に回ると、いずれ何処かの迷宮で魔物群の氾濫、所謂魔素の氾濫が起きるらしく、現状では切羽詰まっていて思いの外、重大案件な様だ。
「コウよ。急ぎ戻るのじゃ。」
急に慌ただしくなる調査隊の様子に俺は話半分で聞く気しかなれなかった。
どう考えても面倒事の臭いしかしない……。
「ナーブ様、お待ち下さい。精霊達がコウに用があるようです。」
ギギがそう言うと、俺を見つめて念話へと引きずり込み間接的ではあるが精霊達と引き会わせた。
(貴方ねぇ!あの時、龍神様が声かけてたのにシカトぶっこいてたでしょ!反省しなさい!)
(まぁ、待ちなって。今こうしてようやく声が届いたんだ。そういきなり剣幕になると、話が拗れるから!)
(とはいえ、無視は良くないよ、無視は。仮にも龍神様が相手だよ?)
(そうよ!そうよ!あの時に龍神様と正式に契約していれば、こんな事態になってなかった筈だ!馬鹿人族!)
(本当、間抜けだよね〜。)
頭が痛てぇ……。
唐突に何重もの声が脳内に響いてくると魔素酔いしたかと思うほど頭痛と吐き気が起こる。
(皆、静かにせんか。宿り木を持たぬ者に無理矢理に思念を通じておるのだ。この者が耐えられる内に要件を伝えんとな。そこの人族よ、声は聞こえとるな?)
俺は事のあらましを聞かされる。
なんでも黄源迷宮は元来、ここの迷宮主である〝黄金龍〟の棲家らしく、ここ何十年かこの地を離れた影響で補充の効かない迷宮の魔素残量がみるみる内に減ってきているという。
理由は明白。
何千年分の蓄積された龍神様の魔素残量に余裕をかましていたが、近年、数多の冒険者達の容赦ない迷宮攻略の頻度にて傷ついた箇所の修復や魔物の再生などの多様な事象に大量の魔素を消費し続けてきたようで、このままでは精霊達はもとより魔物や植生生物もやがて枯れ果て黄源迷宮は崩壊する。
想定以上の速度で削られる残滓の減り具合に精霊達は困り果てていた。
規模が大きすぎる話だと俺は返すが、精霊達からすればその原因を作ったのが俺なだけにその執着心や怨念地味た感情は辛辣な言葉を混じえて突き返す。
そして俺はつい先程にナーブ達に語った話を思い返しながら、ナーブ達に事の成り行きをしっかりと見るよう促し、謙虚さを示す。
これ以上ない、どうしようもないくらい、額を地に擦り付けて誠心誠意の限りを尽くす。
それでも精霊達の感情は消え去り切る事は無かったが、その勢い、潔さに免じて宝玉を取り返して来るよう仰せ遣い、それで贖罪とする事となった。
それからはナーブ達も一斉に土下座の練習を面白がって繰り返していたが、真意理解してんのか甚だ疑問だ。
「いやはや、コウには誇りも羞恥もないのだと実感した。あんなに勢いつけて謝罪だけで済ませるとは大したものだ。相変わらず変な所で実に面白い。勢いは大事だと学びましたぞ。」
「あのな、ギギ。勢いよりも謝る行為に意味がある。それに謝罪だけって何だよ、精霊達にはちゃんと誠意が伝わったって事だろ?」
「たいてい精霊を怒らせた者は悪戯に遭うか、酷いと呪いをかけられますぞ。」
目が点になるわ。
そう言って俺は如何に誠意ある謝罪と言い訳しないことが大事であるかをナーブ達に説く。
「まぁ、精霊については百零でコウに非しかないでござらんからな。」
心の底でザザルダこの野郎と一瞬思ったりしたが俺は歯を食いしばり呑み込むと俺もまだまだ未熟だと素直に改めた。
尖ってた若かりし頃から腐ってた時期を越え、ようやく心がすっきり晴れ晴れとした時期に辿り着けたんだ。
まだまだ学ばねばならない。
後学の為というか、俺自身が本当の意味で変わって行けるように不可視の壁を打ち破れる強さを持つ為にかの英雄達のようになれなくとも着実に一歩ずつ成長の歩みを止めるわけにはいかない。
そう、ふと思うと今回の気乗りしなかった冒険もきっといつの日か、その意味があったのだと思える気さえ、ほんの少し感じる。
一時の経験はもしかしたら意味を成さないかも知れないが、間違いなく小竜人族と冒険した経験は培った。
一頻りの調査を終えて、帰還用の魔具を展開しようとしたが、精霊達が地下冒険者宿舎階層出口まで転送してくれるとギギが言うと、それに甘えた。
転送中、純白の世界に包まれる感覚はいつぶりかと沁み沁み感嘆したが、その僅かな時間で声が聞こえた。
先程の精霊の声だ。
転送が完了すると、俺は気合を入れなおして、この些細な冒険に感謝し、迷宮を後にした。
そして、内心どぎまぎする竜を担ぎながらも一路、向かうは地下冒険者宿舎である。
ここまで読んで頂きありがとうございました♪
一身上の都合により不定期更新ですが、また次話読んで下されば嬉しいです♪
書き溜め… …_φ(・_・




