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冒険者は再び夢をみる 〜序章〜  作者: ユキ サワネ
一章 優良なる平凡
6/18

6話 小さな竜と些細な冒険 1

いつも読んで頂きありがとうございます♪

ストレス発散目的で緩く書いてます

 俺が地上都市で一通りの用件を終えて黄源迷宮の地下冒険者宿舎(ギルド)に戻ってから既に2日目の朝を迎え、ギルド内は以前より活気に溢れているのは宿泊部屋からも感じ取れる。


 それは〝明星〟の復活という機を同じくして、黄源迷宮内では魔物の数が増えた事に起因している事もあるのだが、転ばぬ先の杖というか、王宮が過去の過ちから教訓を得ていて先手を打っていた。


 ガルフ領主に王命を下し、南方騎士団(サウスナイツ)による調査隊の派遣を命じ水蛇の一件以降、100を超える騎士達を派遣し地下都市に駐留させる。


 騎士団の派遣そして駐留が意味するもの、それは〝迷宮の進化〟に尽きる。


 これまで蒼月、赤光、紫幻など数多くの迷宮で調査隊が出向いてきた。


 そして十中八九、迷宮で何かしらの異変が起きた又は起きる予兆とされているのがこの世界での常識。


 他所の迷宮では進化が一段落ついていたが黄源だけは未だ進化の予兆は見受けられず、それゆえに今回の調査隊の登場はより一層の期待感が王国内、特に冒険者に沸き立ったようだ。


 ただでさえ黄源迷宮は手強い魔物が多いと言われ腕の立つ冒険者や冒険団でないと痛い目に遭う事で有名。


 その為に、多少腕が見劣りする冒険者でも冒険団同士で手を組み、いわゆる合同パーティを編成し攻略に挑む者達も少なくない。


 噂を嗅ぎつけて多くの冒険団がこの街に集まった事が活気の正体の主な要因だ。


 ―南方騎士団―


 元は王国の南端主要都市に配属されていたが今では王国南部全域に配属されている王国の騎士団だが、少し変わっている。


 硬い鱗に纏われた尻尾と背中に生える翼意外の見た目は人族の子どもと体格はほぼ変わらずとも身体能力はこの世界において【竜人】族に次ぐ優秀さを備え、他の種族よりも遥かに優れているのが特徴。つまり、【竜人】と呼ばれる竜の血脈を持つ一族しか所属出来ない特異な騎士団。


 正直、彼等の存在は頼もしい。


 そして、俺はそんな彼等を心の底から敬意をはらい、そして心の隅で出来ることなら関わりたくないとも昔から思っている。


 それは彼等の特性というか、習性というかとにかく一度関わると非常に面倒臭い。


 触らぬ神に、というやつだ。


 幸い、この2日間は彼等とは遭遇しておらず安堵していたが問題は3日目の朝に起こった。


 ジルゴから新装備が出来るまでの間、彼は不憫な俺を見て仮の装備一式を渡してくれた。


 地下冒険者宿舎に戻って昨夜、少しだけ夜間の迷宮探索で試験的な運用をしてみた。


 もちろん性能を確かめる為だ。


 深夜帯の迷宮は、こぞって魔物の凶暴性や強度も跳ね上がるので危険とされるが俺にはうってつけの機会。


 調子に乗って深酔いしてしまい、3日目の朝を迎えると気付けば時計は9時を指していた。


 これは不味い。なんとなく嫌な予感がする。


 そう思って一度はベッドの中でまごつくも、生来の性格ゆえに起き上がり支度を整えた後、2階の間借り部屋から1階のロビーへ向かう階段で事件は起こる。


 1階のロビーにて受付のギルド職員と仲睦まじく会話をしている数人の影の一つと視線が合ってしまう。


 互いに口を、ぽっかりと開け、呆けるように固まるが、その影は残りの影の服を、軽くぐいぐいと引く。


 振り返った数人の影もこちらの存在に気付く。


 視線が合うと会話は途切れ、互いにその場で一瞬時が止まった。


 即座に俺は翻って全力疾走で部屋へと戻り、扉を締めると同時に全身でそれを押す。


 乱れる呼吸と経験から予測できる出来事に焦りを隠せずにいると案の定、扉の向こう側で数人の声が聞こえる。


 「だはは!ようやくみつけたぞ!コウ!」


 「開けろい!開けろい!」


 こちとら全身全霊で扉を押さえつけているというのに、圧がかかる度に、僅かに扉は動き、隙間が出来る。


 たまらず慌てて押し返して扉の鍵をかけると、何拍か騒がしさが止んだ。


 固唾をのんで俺は忍び足で後方に下がると、やはりの展開になる。


 蹴破りだ。


 それも物凄い勢いで。


 体格に見合わぬ【小竜人(ドラゴニアチッパー)】の脚力は異常だ。


 そして、何より慣れ親しむ相手には超がつくほど人懐っこい。


 蹴破られた扉は見事に避けたが飛びかかってきた数人に見事に捕まると床上に弾き飛ばされる。


 思えば最初の出会いで失敗していた事を思い出す。


 「こらこら。お前達、嬉しいのは解るが尾を振り回すのと舐めすぎるのはお辞めなさい。」


 聞き覚えのある声がそう言うと、俺の顔を舐め回していた【小竜人】達は即座に起き上がり、整列した。


 「すまぬな。コウ。小奴等の痴態、不徳の致すところだ。だが……久しいのもまた事実。妾の顔に免じて許してやって欲しい。」


 そういいながら聞き覚えのある声の主が俺の顔をぺろりと一舐めする。


 そう、それが彼女等【小竜人】なりの親しみある相手にしかしない挨拶の流儀だ。


 何度やられても(くすぐ)ったいのなんの。


 「あぁ……久しいな、ナーブ。その挨拶なんとかなんない?」


 「ははは。それは何度も言ってきたろう?……無理だ!」


 物怖じしないナーブはそうはっきりと返すと、その毅然とした態度や物言いに少し懐かしさを感じた。


 相手を認めているからこその行動は、人族でいうハグに近いもの。


 彼女なりの誠意や敬意の表し方と言える。


 ならば此方も節度を保って示さねばならない。


 【小竜人】の視線に高さを合わせる為俺は床に胡座をかいて座る。


 元来【小竜人】族とは、中々に不憫な思いをしてきた種族で同系種族の【竜人】族からは、その小さい体躯から餓鬼と称され、力や体格で見劣りする。


 一方、多種族からしてみれば全ての能力が桁違いに優れており、敬畏の念を抱かれきた。


 そんな彼等【小竜人】との出会いは遡る事、30年も前になる。


 ジェノとロゼリアの3人で、とある依頼を受けた時期だった。


 思えば最初の出会い方からして間違ったのかもしれない。


 今こうして互いに再会を果たすも俺には嫌な予感しかせず、恐る恐る聞いた。


 「うむ。ここ数日、黄源迷宮から龍神様の気配を感じ取っていてな、事情あって妾達が調査隊として派遣された。何日か迷宮調査をしていたら、ふと懐かしい匂いがして、調査ついでに色々調べ回ったら、やはりコウであったと確信を得ていた。」


 流石残り香的な感じで特段思いれのある魔素や嗅ぎ慣れた匂いには敏感な種族だ。


 なんたって20年もほぼ毎日潜っていた俺ならそこら中に何かしらの証拠を残していても疑問ではない。


 「それに、コウの内から龍神様の匂いも微かに感じる。」


 その匂いの正体は先日グランツの魔具による鑑定で俺も初めて知った【禽困覆車】の隣にあった、黄金龍の加護の事だろう。


 「やっぱり、龍の加護の仕業か……。」


 「龍神様に会ったことは?」


 「それが、皆目見当がつかないんだ。」


 俺がそう話をすると、ナーブは教えてくれる。


 龍神様の加護とは龍神がその者の魂を見定める試練を与え、乗り越え、そして気に入った者にしか与えない。


 名だたる英雄達ですら加護を貰えなかったというのはそう珍しくないようだ。


 「会ったこともない相手にそんなん普通付ける?」


 「うむ。まず聞いた事は無いな。だが、色の戴冠迷宮にはそれぞれの龍神様が眠ると聞く。知らず知らずに龍神様に認められたとみるべきだろう。本当に覚えは無いのか?」


 そう言われても、グランツやジルゴと話した様に全く身に覚えがない。


 困っていると1人の【小竜人】ギギが丁重に会話に参加してくる。


 「ならば、コウも一緒に調査隊と迷宮へ潜るのはどうでしょう?我等だけで下層へ向かうのはそもそも危険すぎますから。」


 「そうであるな……そなたはどうだ?我等と行動を共にするのは相変わらず面倒臭いか?」


 図星を射抜かれた。


 相変わらずナーブは他者の心理を見抜く……というよりは感情の波を捉えるのに長けている。


 ナーブ曰く感情は色で見えるらしく、どれだけ相手が隠したつもりでも心理を感じ取れてしまう能力があり、以前よりもそれは磨きがかかっている。


 「ふ。心を見抜かれていたら仕方ない……おやすみ。」


 そう言って俺は部屋のベットに潜り込み拒否の姿勢を示すとナーブの舐め回して良しの号令で尻尾を全回転させる彼等の圧倒的な勢いに主導権を握られた結果、同行する羽目になる。


 そうだ、彼等に捕まると決定権なんて此方には有りはしない。


 実に面倒臭い。


☆☆☆


 「いやはや、見ないうちにコウはそこいらの人族とは一線を画すまで腕を上げたでござるな!」


 そう(たかぶ)りながら話す【小竜人】のザザルダは過去俺もジェノも仕合で何度も打ち負かされていた剣の使い手だ。


 「ザザルダ。お褒めに授かり光栄でござる。」


 ザザルダとの会話の語尾に『ござる』を付けるのは愛嬌だ。


 思い返せば彼に剣術を仕込まれた感は相当なものでそれは間違いないなく今の俺の基礎に染みている。


 迷宮道中にてジェノとロゼリアの一件は詳しく話したが、皆其々が哀愁を見せた。


 「生命あるものいずれ果てる。遅いか早いか、ただそれだけの事である。」


 ナーブは中でも特に強い哀愁と懐古の念を示していたがやはり族長の系譜とあってか毅然とした態度や言葉でその場を締めた。


 ほんの少しの強がりを滲ませて。


 この世界では人は精々100年も生きれば大往生だが、千年以上生きる竜人の血からすると人族の年月など僅かな時間。


 歴代の英雄達の中では顔見知りもいたほど、長命だ。


 そんな彼女を筆頭に其々ゆうに600年程生きていると知った時は度肝を抜かれたが、こうしてまた共に冒険に出るとそれはそれでという感覚になる。


 「相変わらず【小竜人】は動きが良いな。」


 するとナーブをはじめ数人が歳をとったとか、とりたくないと各々愚痴を零すが、至って俺からみたらより磨きがかかった様にしか見えなく、あっさりと下層を攻略してゆく。


 迷宮の下層では幾かの難所である大きな滝があるのだがここに来る鳥人族以外の者は何かしらの魔具か能力を使ってそれを飛び越えるのが常識。


 だが彼女達は、その小さな体躯の倍はあろうか両翼をぱたぱたと羽ばたかせ難なく滝越えを果たす。


 俺は今回ナーブの両足に掴まり無事に難所を登り終えるが【小竜人】族の幾つかの羨ましい点の一つでもあると改めて思う。


 しかしだ。


 そんな助力を貰う度にナーブは俺の肩に脚を乗せて頭の上で寛ぐのだが、これが地味に堪えて、いっそ辞めて欲しいと思うのだが、魔具や魔力を使わずにして楽させてもらえる分、言うのに偲びない。


 どうみても父親が娘を肩車して担いでいるとしか見えない。


 「なぁ、ナーブ。以前に比べて、べったりと寛ぐ時間長くなってない?」


 「恐らく加護の影響であろう。こうしていると疲れが癒やされて離れるのが妙に惜しくてな。非常に助かる。」


 ここまで確かに戦闘の数は多かっただけにそんな事で此方も助けになるというのなら仕方ない。


 しかし、首元から妙な熱気を感じる。


 「うむ。多少濡れておるぞ。」


 心を読まれたが、それ以上に別の意味で俺は動揺する。


 「なんじゃ、なんじゃ。妾も種族は違えど女ぞ?好意ある相手との密着で気持ち良いと昂るのは生き物の性であろう?元より妾は、そなたに求愛しとったのを忘れたか?」


 すっかり忘れていた。

 

 ナーブにはやたらと好かれていたから、色恋の話になると当時の親衛隊達に毎度毎度ちよっかいを喰らっていた。


 そんな面倒臭い記憶が蘇ると俺はザザルダやギギに向かって慌てて構えたが、今回の面子にはその手の者はおらず、むしろ好意的に眺めながら微塵も気にしていなかった。


 寧ろ、ナーブの背中を押さんとする発言が目立つ。


 「そなたさえ、その気になれば妾はいつでも歓迎であるぞ」


 なまじ妖艶さが備わる分、()()が悪い。


 「それに、今では半小竜人(ハーフチッパー)なんてそう珍しくはない。そなたが俗世から離れていた間に時代はえらく変わったのよ。」


 俺はほんの少しだけナーブとの将来を妄想をしてしまうと、やはり人族の男として抵抗がある。


 「お?お?おお!?」


 だから人の心を勝手に読むなと再度伝えたが、当の本人はお構いなしの醜態を晒す。


 「安心せい、そなたにその気が無いのは解っておる、それゆえに少しの戯れくらい良いであろう。」


 耳元にそうナーブは囁いてくると、何故か不思議と心の芯で柔らかな感触と温かさを感じた。


 軽く締め付けた腕の動き具合で、つい昔を懐かしみ一呼吸おくと俺は怒る気になれずそのまま先へと歩みを続けた。


 下層を更に進むと、魔物の数と手強さは更に一段と増すが、概ね想定していた場所で休息をとるために野営を敷く。


 当時は俺やロゼリアが決まって食事の用意をしたものだが、調査隊が腕を振るってくれた。


 「へぇ、料理覚えたんだな。」


 「我等はあれから表立って人族との行動が多かったから料理を教わる機会があり学んだのでござるよ。」


 竜人族や小竜人族は元来、料理しなくとも補給出来る体質だが、どうやら他種族との交流を機に少なくとも南方の騎士達はその意味を理解したらしい。


 口にすると南部地方の食べ慣れた味付けに感動した。


 相変わらず彼等の食事量は体格に見合わず派手であるが。


 食事を終えるとすぐ眠りこける性分もそのままだ。ナーブ以外。


 「ナーブ、寝なくていいのか?」


 「妾は道中そなたの上で寛いでいたからな。疲れておらんよ。時にコウ。本当に無事で居てくれて感謝しておるぞ。」


 野営の中心部にて焚き火を前に胡座をかく俺にふとナーブは感慨深く言った。


 「どうした?急に改まって。」


 「実はな……〝明星〟達、ガルフ三傑が敗北を喫したと報せを受けた日、妾達は丁度、北方騎士団と連絡を取り合いながら魔物の氾濫に対処していた。当然皆、信じられんといった状況に陥った。……ブルージャムを覚えておるか?奴ですらも絶句しておったのだぞ?あの時の衝撃は長い年月を生きておる中でもそうは無い。だから本音を言えば真っ先に飛びつきたかったのは妾であった。」


 「だから、道中あんなに甘えてたんだな。そっか……心配かけたな、ナーブ。それに有難いことに地下冒険者宿舎の連中も地上都市の皆も同様に俺の再起を喜んでくれたよ。今になって俺は……本当、感謝してもしきれないさ。」


 「ふふ。そなたもそんな顔をするようになったのだな。益々気に入ったぞ。」


 焚き火の明かりのせいか、ここまでの猛烈的で刺激的かつ官能的なやりとりがあったからかは定かではないが幾分、ナーブの醸し出す艶麗(えんれい)な仕草に心を奪われかけ内心揺らぎを覚えた。


 「ほほう。ロゼリアが居ない以上、妾にもチャンスはあるか……。」


 独り言の様に呟いたのだろうが、聞かなかった事にしようとして焚き火をぼんやりと眺めるそんな俺を見てナーブが同じセリフを二度、三度と口走る度にその声は次第に大きくなり思わずツッコミをいれたが、ナーブは冗談だとはぐらかす。


 そこからは時折、昔を懐かしむように話が弾む。


 ザザルダとの手合わせでジェノが完膚なきまでに打ち込まれて酷く落ち込んだ事、ロゼリアが小竜人族から教わった浮遊魔法を実践し彼等の里山にある岩壁から飛び降りた際、危うく死にかけた事、馬鹿にしてきた竜人族と俺が小競合いを起こして長老衆に危うく処断されかけた事など、花を咲かせるには充分過ぎるほどの想い出を幾つも語り合う。


 その時間は紛れもなく何物にも代え難い温もりを放っていた。


 焚き火と共に―

ここまで読んで頂きありがとうございました♪

一身の都合上、不定期更新ですが、また次話読んで下されば嬉しいです♪


書き溜め… …_φ(・_・

プロット管理できてねぇっす、すいやせん。

ロザリア✕→ロゼリア◯ 修正済

26年→30年 修正

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