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冒険者は再び夢をみる 〜序章〜  作者: ユキ サワネ
一章 優良なる平凡
4/18

4話 立つ鳥、久々すぎて飛び方を忘れてた。

いつも読んで頂きありがとうございます♪

ストレス発散目的で緩く書いてます

 今宵の冒険者宿舎内にある酒場は偉く賑やかしい。


 派手な色味に豪華にも盛り付けられた料理が所狭しとあらゆる卓を埋め尽くし、物凄い勢いでそれらは減っていくが冒険者宿舎の給仕役達が間髪入れずにそれらを交換する。


 かつて似たような光景を目の当たりにした事もあるが、どうやら今回はより一段と強烈な様だ。


 「明星の復活に乾杯だ!野郎共!」


 冒険者宿舎(ギルド)の長で自他共に認める筋肉馬鹿のマウベルが酷く酔った馬鹿声をあげてその状況に拍車をかけると、群がる雌雄が自然と声を合わせて叫ぶ。


 やかましいことこの上ない。


 「何が復活ですか!たった一度だけ神授能力を使っただけであんなにも()()()()になった挙句、その後の介抱は一体誰がしたと思ってるんですか!?えぇ!?」


 マウベルの発言に直ぐ様噛み付いたリースもこの食事会が開かれてまだ間もないというのに……既に出来上がってしまって面倒臭い。


 「真横で喚くな、頭に響く。」


 リースは酒の類に滅法弱い。なのに、今日に限っては酒豪の連中以上に酒をかっ喰らっている。


 「大体、コウ!貴方が身の程弁えずに無茶するから余計に皆が期待しちゃうんじゃないんですか!えぇ!?」


 完全にこの女……酒乱だ。


 「まぁまぁ、リースさんよ。そんな事言ってた割に気を失ってたコウを見て一番嬉しそうだったじゃないか。涙ぐんじゃってもう!」


 「あぁ!俺も観たぜ!あんな表情する団長は随分久しぶりだった!」


 「鉄仮面にも血は流れている証拠ですわね。」


 何人かが、続けさまにそう茶化すと表情を変えずにリースは曲げた肘を近寄ってきた男の腹に見舞うと、男はその場にかがみ込んだ。


 「おーい、大丈夫か?ハゼ。」


 俺がハゼと呼んだそいつは、かつて共に何度も迷宮へ潜り込んだ仲の冒険者で、今やリース率いる冒険団【蒼き芽の守護(グリーンライト)】と立派な双璧を為す冒険団【誓いの鉤爪】団長で頑強屈強な土竜(ノーム)族の男。


 「だっはっは!お前らは昔から仲睦まじく、やはり面白いな!」


 「おい、マウベル。あんたも呑みすぎなんだよ。」


 「こんな祝いの席で呑まずにいられっかよ!」


 まったく……どいつもこいつも酒に呑まれやがって。


 すっかり俺が昔の様に立ち振る舞うとでも思っているのか、どうにも温度差が激しい。


 「で、これからお前さんはどうしていくつもりなんじゃ?」


 騒がしい連中を他所に対面の席に座るヤンヌが神妙そうに問いかけきて俺は少し気持ちに整理をつけて告げた。


 「随分と休憩してきたから、あの日からの続きをしてみようかと思っている。」


 あの日……俺はジェノとロゼリアを失った。


 失意と無力感に塗れて、一度はこの業界から足を洗おうとした。あらゆる雑念が駆け巡り、冒険者の意味が解らなくなってしまうほど酷く惨めに無様を晒した。


 「あの日の続きぃ〜!?」


 あぁ……悪酔いする奴はこれだから嫌いだ。


 すぐ傍で騒ぐリースを放っておいてヤンヌと会話を続けた。


 「具体的には緑生迷宮に行こうと思ってる。あそこなら中層域までなら他の冒険者に魔物や素材を狩り尽くされても半日もすりゃ溢れ出てくるし、下層まで行きゃ、それこそ鈍った感を取り戻せるだろうしな。1人気楽にな。」

 

 先の水蛇との戦闘以降、俺なりにざっくりと考えていた計画は丁度、腕慣らしには良いはずで何の問題も無いというのに、周りはえらく苦悶な顔をしている。


 「いや、中層域なら解るが、下層は流石に1人では……。」


 不意にヤンヌが返すと、リースは俺の襟の両側を掴みながら激しく揺すると同時に罵倒してきた。


 頭痛に響く声と揺れる感覚に、先の闘いでの傷が疼く。


 「落ち着けよ、リース。なにもいきなり下層に行くわけじゃねーよ。」


 ぴたりと止めるリース。


 「流石に1人で一気に単独攻略するほど愚かじゃない。しっかり準備してだな……。」


 「準備ってどれくらい?何人で潜る予定なの?」


 まるでギルドの職員が新人冒険者にする問いかけみたく舐めてるのかと訊き返したい気さえしたが、俺は冷静にその問いに返すが、何度も1人で潜り慣れている分、人数までは正直考えていなかった。


 「準備含めて、まぁそうだな……5日有れば下層に行けるしそこからは小手調べでやばそうならギルドで加勢を募集する感じだな。」


 場は一斉に鎮まり即座に瞬間的に膨張する。


 「5……日……だと!?」


 長年単独冒険者(ソロ)として活動してきた俺からしたら緑生迷宮くらいの規模なら充分過ぎるほどの時間であるのだが、周囲からしたら到底納得いかない日程らしい。


 そもそも人数が増えれば増えるほど、連携や連絡など密に行う必要があるから攻略はその分遅れる。


 気付けば食料不足で先進めませんとか、手負いの回復待ちで休日にしますとか、俺はうんざりなんだ。


 1人気ままに悠々自適に探索したい。


 もっと上位の迷宮ならば、嫌というほど力不足なのは理解しているし、逆に行けと言われればギルドの受付台にしがみついてまで岩の如く動く気にならないだろう。


 何をそんなに驚く必要があるのかさっぱりと理解出来ない。


 「……コウ。」


 振り向きざまにミスリル製の篭手が力強く俺の片頬を見事に抉った。


 「貴方は少しはマシになったかと思えばすぐそうやって無茶苦茶な事を言う!一体何処に常識を置き忘れてきたの!?その頭の中魔力でかち割って調べてやろうか!?えぇ!?」


 暴挙に糸目をつけないリースを何人かが、必死に抑え込む。


 すると、1人が俺と暴れエルフの間に割って入る形で仲裁し、そして話し始めた。


 「コウさんにとって緑生迷宮は庭のようなものですよ、リースさん。現にこの人何度か2日で下層の依頼完了させてますので。」


 思わぬ援軍の登場だ。


 華奢な体躯、聡明さと清潔感溢れる風格をした人族の彼女の名は〝セリーヌ〟。


 このギルドの副長であり、本業の片手間に俺の監視役兼受付担当である。


 その彼女の言葉にリースをはじめ多くの冒険者は目を丸くしている。


 「緑生だけじゃないですよ。蒼月も赤光も紫幻もこの領地内にある大抵の中位迷宮なら問題ないかと。」


 固まる空気の圧に()()られたのか皆がすっかり意気消沈している。


 ここは絶好の機会!この機に乗じ畳み掛けてやろう目論んだ矢先、彼女の矛先は踵を返し俺に刺さった。


 「ですが、これからは今ではとは違い、本気で冒険者やるんですよね?なら、1人じゃ限界があるのも充分に承知ですよね、コウさん。」


 「お……おぅ。」


 まさかの虚を突かれ流石にたじろぐが、我ながら情けない。


 「だからこうしませんか?コウさんだけに。」


 笑顔で洒落をかましつつ何事もなかったかのように続けるセリーヌの提案は実のところ、中々しっかりしているのは知っている。


 大まかに上層、中層、下層と迷宮攻略の日程を洗い出し、各レベルに応じた冒険者をそれぞれ伴わせる実戦形式の教育活動と復帰訓練(リハビリ)と題されてあり、その計画の全容は以前もセリーヌから聞かされていたからだ。


 熱の冷めた冒険者は大概、()()を使って行商になったり、知見のある奴は職人に転職したり、貴族院に所属したり、ギルド職員や客員教官として領主に庇護されたりするものだ。


 俺もまた、歳を重ねて丁度寿命の復路に差し掛かる頃だけに、将来のギルド職員として嘱望されている身。


 無碍に出来ない面は少なからずある。


 それにセリーヌは今から20年前に俺が率いていた冒険団〝気まぐれで制約のない意思〟を意味する【奇想天外(フリーロール)】の元団員でもあり、ロゼリアがこれでもかと可愛がっていた弟子みたいな子で今は二児を育てる立派な淑女だ。


 当時から才女として期待されていたセリーヌはまだ幾分幼くあどけなかったが、その多才なる才覚は今や冒険者宿舎には欠かせない存在として皆から慕われている。


 万年中位冒険者として、ふらついていた俺とは月とすっぽん。


 たてつける訳もなく、甘んじて話を受けようと思う……が、中層攻略完了まで一月も要する計画に俺は苦虫を噛むように黙りこくっていたら、セリーヌは俺に諭す。


 「良いですか、コウさん。貴方の評価は何も戦闘や探索においてだけではありません。依頼主との信頼の構築や新人冒険者への指導や助力といった知見の深さ、非冒険者の方々への配慮のあり方や作法、果てはその生活ぶりはどれをとっても尊敬に値しますし、冒険者全員に見習ってほしいくらいなんです。貴方は知らないというか知る気は無かったでしょうけどその名声はこのガルフ領に留まらず国内外の至る所にまで広まっているんですよ?それは間違いなくかつて〝明星〟と呼ばれ親しまれていたあの頃よりもずっと、ずっと凄い事なんです。貴方目当てで当ギルドに今迄何人の移籍希望冒険者や依頼主が居るとお思いですか?だからこそ、そこで酒を浴びてる筋肉馬鹿(ギルドマスター)なんかよりも、大切なんです。」


 最期の余計な一言は一斉に視線をマウベルへと誘導され当人は何処か悲しそうな顔を示す。


 そんな事は気にも留めずセリーヌは続ける。


 「昔は勢い余った至りも確かに多かったですけど、それでもギルドもこの街も国も貴方を責めたりしなかった。団長として責任を1人で抱えてたのも知っています……だけどそんな程度で今迄どれだけ皆に負担かけてきましたか?【奇想天外(フリーロール)】が事実上解散になってから無様な貴方を見るのが苦しかった日も、人との交わりを避けても根っからのお人好し加減で首絞めてた日も、全部知っています。あの頃のように勢いだけで上手く羽ばたけるほど世の中は甘くないんです。賢い貴方なら私が何を言わんとしてるか自覚してますよね?そんな貴方にしか頼めない、ギルドから、私から〝明星〟への最期の依頼です。【魔】との均衡を保つ為に一肌脱いで、その脱いだ肌で旗を上げて下さい。あの頃とは違った味のある旗を。」


 ぐぅの音もでない。


 一回りも歳下にこうも言われると俺はギルド強化計画書という依頼書を受け取るほか無かった。


 セリーヌの口上に俺だけでなく恐らく殆どの冒険者も耳を傾けていた。


 「さぁ、というわけで湿っぽいのはここまで!長い間曇って見えなかった〝明星〟がようやく晴れて顔を出したんです。今宵は経費なんて糞食らえです。騒ぎましょう皆さん。金ならギルドが出しますから。」


 最期をとびきり素敵な笑顔でセリーヌはそう締めると血気盛んな連中は諸手の酒を天井目掛けて掲げては再び騒ぎ始める。


 そんな中で1人、リースは複雑な表情で俯いていたように感じられた。


 そして、俺は依頼書を改めて精査すると途方もない依頼を受けてしまったと(すんで)の差で追いついてきた後悔を受け止めていた。


 後悔先に立たず。


 新たな試練と向き合うべく、万年中位の生活感からこれから飛び立つわけだが、立つ鳥後を濁さずどころか、どう飛び立っていいのかすら判らねぇ。


 史上稀に見る騒がしい酒場の夜はそんな俺にお構いなしに更けていく。


 〝明星〟を残して。

ここまで読んで頂きありがとうございました♪

一身の都合上、不定期更新ですが、また次話読んで下されば嬉しいです♪


書き溜め… …_φ(・_・

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