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冒険者は再び夢をみる 〜序章〜  作者: ユキ サワネ
一章 優良なる平凡
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11話 〝宜候〟

いつも読んで頂きありがとうございます♪

ストレス発散目的で緩く書いてますので拙い文章力ですが最期までお付き合い下さい。

 「誠に申し訳なかった!!」


 ナーブが地下冒険者宿舎の療養室で俺が精霊達に見せた真似をしながらそう叫ぶと調査隊が雁首揃えて同様に額を床に何度も擦り付ける。


 その姿に非の打ち所は……無い。


 「まぁ、その……なんだ……帰ってきてからずっとこの調子だ。お前等、許してやってくれ。」


 意外にもマウベルは病床上で快方に向かうリースとハゼに向かって同情を誘っていた。


 当の二人もまたマウベルが先程まで宿舎長室で見せた顔と同様の顔を見せた。


 リースは文句の一つも言えない内に潔い土下座をする小竜人族を見て唖然として、ハゼは長い付き合いのあるナーブ達を知っているからこそ、その行動の意味だけでも、まさかと驚くと同時に迷宮で何か変なものでも食べたのでは無いかと心配になる。


 「すまぬ。妾が居たにも関わらず、この様な失態を仕出かした。本当にすまぬ!双璧よ!皆には耳に胼胝(たこ)が出来るくらい良く言って聞かす!」


 ナーブの物凄い勢いのある謝罪の最中、ギギもザザルダも一番(はしゃ)いでいたナーブに心の中では釘を差していたのか、しっかりそれを読んでいたのだろう、ナーブの視線は床上から額は離さずとも二度左右後方にぎろりと向いて、ギギもザザルダも一瞬だけ身震いしていた。


 しかし、そんな事は脇においておき、ナーブは俺の説教を活かそうと今回心底、自身を捨てにかかった。


 マウベルもハゼも小竜人族は古き良き友人……というよりは古き良き戦友。


 そんな知己の小竜人族の異常なまでの変わり身に正直、目の前の連中が本当にあの傲慢で我の強い小竜人族なのかと逆に心配していて、一方のリースはというと、〝奇想天外〟時代に個人的に散々な思いもあってか中々腹を割ろうとしなかったが、リースも彼女等がどういった種族かを知らないわけで無く、ひたすら懇願と懺悔を繰り返す彼女等にいよいよ根負けする。


 〝終わった事だから仕方ない。〟


 そうリースが口にしたのは暫くしてからだが、療養室にてマウベルやセリーヌ、双璧の団長、ヤンヌに俺に南方騎士団の一部の者で今回の迷宮における事のあらましを共有すると、話し合いは軽やかに進む。


 まずは、黄源迷宮の探索制限を設ける。


 これは、黄源迷宮の異常事態だから最優先事項になる。


 二つ目に取り決められたのは、双璧を始めとする複数の上位、中位冒険団の適切な国内迷宮への派遣。


 この件に関しては随分前からマウベルは王国から打診を受けていたが黄源迷宮の異変を盾にして二つ返事は避け続けてきたらしいが、そうも言っていられない状況になった。


 マウベルの個人的な感情だけなら王命であるならば鼻から従っていたらしいが、どうにも王国……王宮貴族院の類とは根っから反りが合わず今迄、何かと理由をつけて断り続けきたものの裏目に出てしまった。


 という事実はこの場での秘匿として処理し、表向きに南方騎士団の調査は結果的にマウベルを救うこととなる。


 「すまない、ナーブ。借りが出来た。」


 ナーブは贖罪となるならばこれにて貸し借り無しの付き合いが続けられると高らかに笑ってみせる。


 それからは地下冒険者宿舎のある地下都市の最低限の維持や保守の話に転じると双璧以下、上位冒険団の部隊を編成し、王都を含む各拠点や迷宮への出向組を交替で務められる体制を協議したり、中位冒険団や非冒険者である業師(クラフター)などの今後暫くの立ち回りも話し合った。


 地下都市は迷宮の安全地帯に建設されており、小竜人族の調査報告も相まって魔素氾濫の影響を受ける可能性は限りなく低い。


 迷宮を管理している精霊達の話を鵜呑みにすれば氾濫させようにも出来ないからだ。


 それゆえ、上位に至らない者の武者修行とも言える行軍も非冒険者達の腕試しといえる遠征も王都や他都市に可能と判断出来た。


 話し合いが終わると南方騎士団は調査報告を南部の拠点都市に持ち帰って東西南北騎士団や南部領主への連携、報告もある為、一度帰還し、マウベルもまたガルフ領主に一連の報告義務を果たすべく副官セリーヌと今後のギルド運営の打ち合わせをすると療養室を出た。


 「……で、お前達はこんな肝心な時になんで病床の上なんだ?リース、ハゼ。」


 俺は療養室へと来て真っ先に包帯が目立つ二人が視界に飛び込んできてずっと気になっていたが、ナーブ達、南方騎士団の渾身の土下座に機会を喪失していたからようやく落ち着いて聞く事が出来た。

 

 「実はな……。」


 ハゼから聞かされた内容に俺は傍らの椅子から大いに笑い転げるが、顔を赤らめながらリースはしどろもどろに狼狽える。


 リースの言葉に対して抱腹絶倒を徐々に抑えつつも俺は少し嬉しくもあった。


 ハゼはともかく、リースは〝奇想天外〟に所属していた頃、才能あれど奥手な性格からかある一定の成長を境に伸び悩んでいた時期があった。


 リースの同期や後輩にも次第に差は着けられていき、とある日にロゼリアに自身の進退を相談したくらいだ。


 無論、ロゼリアはそれを繋ぎ止め、リースの成長を見守り続けたが、何年経っても手応えは乏しく、逆にロゼリアが自身の手腕に自信を失いかけた事もあった。


 そんなリースが今や地下都市だけに留まらずガルフ領きっての看板冒険団の団長となっていて、格上との果てしない溝を感じていたはずの〝鳴かず飛ばず〟が全霊を賭して挑んだのだ。


 あのマウベルに。


 現在の立場や是迄の凄まじい程の経験からそれなりの自負があったのだろうと察する事は決して(やぶさ)かではなくて、それこそ生半可な覚悟や執念だけでは最上位冒険団の団長なんてやっていられない。


 そこは、俺も痛いほど良く解る。


 「成長したな……リース。」


 そう言う俺に対してリースが照れながらも毒吐くのは、ここ20年間の俺の失態が原因なのだろう。


 それ以上はなにも言う気にはなれないし、言うつもりもない、リース相手に言える立場じゃない。


 「ハゼ。お前はどうなんだ?マウベルとの差は感じたか?」


 「それじゃ、コウよ。そこなんじゃが……儂の覚悟はちっぽけで惨めだった。奴は……マウベルは冒険者を離れてから既に20年経つというのに結果これだ……自信が崩れたわい。」


 何処か哀しげに、元気のない笑顔と言葉尻に今まさに気持ちが挫けかけているのは容易に判る。


 そりゃ、そうか。


 必死にもがいてやって来た月日は過酷そのものだったろう。かたや、のらりくらり過ごしている風にしか見えなかった相手に叩き伏せられた現実は一度味わってしまうと中々その味は忘れられないのが〝人〟というものだ。


 相当悔しかったろうに。


 ハゼの押し殺しきれぬ感情の溢れ具合は、かつての()()()を彷彿させる。


 俺は席を立ち、外を眺める為に暫く無言で窓際に身を寄せ、頃合いを測り気持ちを伝えた。


 「なぁ、二人共……。」


 二人の視線が無機質にも向く。


 「()()()さ、俺は思いっきりゼルファークに蹴られたんだよな、〝今のお前は邪魔だ〟って。目の前でジェノが真っ二つにされて……ロゼリアも巻き込まれて……俺だけ生き残ってしまってさ……幾ら疲弊してたからって英雄色の神授能力がまるで紙切れのように消されるものなのかって思った。今思えば腑抜けた俺を慌ててゼルファークは救ってくれたんだなって思える。それに、微かに憶えてるのはミナイもマウベルに言ってたんだよな……今は無理でも全てを導けるのはマウベルだって。それに比べて間抜けだよなぁ〜俺は。あんな悲惨な状況で剣を握り続けるを躊躇った愚か者なんだし、マウベルなんか()()()()になってんのに立ち向かう気満々だったし。だからかな?俺はマウベルに恐怖を憶え、ゼルファークとミナイに託されていたのも羨望したんだよな。そして……諦めた。」


 二人の反応がまるで無反応なのかと勘ぐってしまうほど場は静かだ。


 俺は重い話をしている自覚はあるが、今の二人にはどうしても話しておきたくて、衝動を抑えきれない。


 「リース、ハゼ。別に負けていいんじゃねぇか?いっそ負けを認めてしまえば気は楽になる。勝ちっぱなしの人生はそりゃ気持ちいいもんだろうけど、負けて気持ち悪さを知るからこそ勝った時の喜びが意味を持つと思うぜ。泣くほど悔しいからこそ勝つ喜びに意味は生まれると思うし、苦しんで伸び悩んでいたからこそ今が楽しいと感じてきたはずと思うし、間違いなくお前等は成長してんだよ……俺が言えた話じゃ無いかも知れないが、いつだったかな?マウベルと話したことあるんだよ、俺もマウベルも同じ悪夢を見続けてきた事に……。」


 未だ場は静か。


 俺は続けた。


 「ここ何日かは見なくなったが、ゼルファークの見下ろす眼、ミナイのマウベルに話しながらも何かを求めるような視線、ジェノの断末魔の最中に俺を捉えた眼差しとロゼリアの最期の瞬間に見せた顔……どれも忘れやしねぇ。そりゃもう、気が狂うって……笑えやしねぇ。マウベルもさ、ゼルファークとミナイとの最期のやり取りの場面が繰り返し夢に出てくるんだってよ。想い、悩み、苦しみ、そこから俺は逃げたし、マウベルは逃げなかった。」


 そう俺は逃げた。逃げ続けたんだ。


 必死に現実を振り切るように。


 全力で。


 だからこそ、不甲斐ない俺よりあれから毎日必死に歩んできた二人ならマウベルとの交戦は更なる飛躍への起爆剤と成り得る気がした。


 「才能とか素質とか云われるものを、まじまじと近くで見ちまったら萎えるわな。必死に足掻いても自分には届かねーって……呆れたり、落ち込んだりして現実知って、立ち止まってさ。マウベルも2人もそんな道に進まなかっただけでも俺からしたら充分溝空いてんだよ。だから今二人が進もうとしているかもしれない道を進んでしまった先輩からの助言だと思って聞いてくれ。〝その道〟の先に転がる無数の石はどれもこれも虚しい意思ばっかりだ。能天気で幸せそうに見えても実は違う。だからこそ言える……リースもハゼもまだ死んでない。本当の意味で負けちまったわけじゃない、あの〝牛人(パシパエ)族に。俺には2人が羨ましく思えるよ。」


 リースもハゼも呆けている。


 何か変な事言ったかと聞くと二人共くすくす、と笑い始め俺に言った。


 在りもしない遠い昔に帰ってきたみたいで嬉しいと。


 過去からは決して逃れられやしない。だったら是迄の人生、たとえ面舵一杯で在ったとしても取舵一杯で在ったとしても、振り切れない過去を振り切りたいのならひたすら全速力で進むのみと、過去を振り切るようにと、俺は腹一杯に息を吸い療養室を埋めるくらいの大声を出した。


 〝宜候(ヨーソロー)!!〟


 と。

 

ここまで読んで頂きありがとうございました♪

一身上の都合により不定期更新ですが、また次話読んで下されば嬉しいです♪


書き溜め… …_φ(・_・

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