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冒険者は再び夢をみる 〜序章〜  作者: ユキ サワネ
一章 優良なる平凡
12/18

12話 経つ鳥、盛大に飛び方を間違える。

いつも読んで頂きありがとうございます♪

ストレス発散目的で緩く書いてますので拙い文章力ですが最期までお付き合い下さい。

 「だから、何度も同じ事言わせるなって言ってるだろう!臨時だ、臨時!」


 「だからって、なんで俺なんだよ!?双璧の指揮ならヤンヌとバノスがいるじゃねぇか!」


 地下冒険者宿舎のロビーにて俺とマウベルは激しい口論を交える。


 「お前の最近の躍動に皆、感心しとるのだ!見ろ!セリーヌのあの眼差し!」


 馬鹿言うなって。


 冗談じゃない。


 セリーヌ……君はなんちゅう眼光を放っとるんや。


 きらきらやないかい。


 久しい期待は嬉しいもの。


 彼女の想いもまた俺は長年蔑ろにしてきた。


 だが、しかし!それでもだ。


 それでも、今や冒険団を持っていない俺からしたら荷が重すぎて話にならんと叫ぶとマウベルはお構いなしに暴力に走る。


 腹を蹴り飛ばされた俺の身体は、くの字を描きながら冒険者宿舎の扉を勢いよくこじ開け庭へと転がり落ちた。


 他の冒険者宿舎では決して有り得ない暴挙についてはリースとハゼの一件があったとはいえ、ギルドマスターたらしめる由縁を捻じ曲げたことと俺とのやり取りを罵り混じりであった現役時代のようだと懐かしむ者さえ出てくるほど場の空気は軽やかで明るく温かい。


 「あー!!いいのかなぁ!?これまで紆余曲折あったとはいえ、日永この冒険者宿舎に陰ながら素材提供をして支えてきた貴重な戦力にこんな横暴(はたら)いて!それが宿舎長のすべき行いなのか!……大事な事だからもう一回言うぞ!すべき行いなのか!」


 「やかましいわ!つべこべ言わずに従え馬鹿者!いまや俺はここの長であり、お前は俺の一介の部下だ!必要不可欠だからこそ貴様に頼むのだ!」


 「あ〜出ました!皆さんお聞きになりました!?ギルドマスターの職権濫用!今や双璧と言えばこの街いや、このガルフ領きっての看板冒険団!その重鎮等を差し置いてよもやこの不埒者を筆頭に添えようとする蛮行!断じて許しちゃおけんですよ!良いですか皆さん、私はこの二十年、のらりくらりと生き恥さらして生き延びてきた、謂わば世捨人!そんな万年出来損ないが、皆さんのこれまでの努力を無に期すような事を出来るはずが無いでしょう!ここは【蒼き芽の守護(グリーンライト)】はヤンヌに!【誓いの鉤爪】はバノスが率いるが常識!それにかつては団長を務めていたとはいえですよ?私の団員だった方々も他の冒険団への移籍や独立によって最早権限はとうになく、今更この私が大きな顔して歴戦の勇士達を束ねる姿を見るなんて事自体、複雑怪奇かつ見たくもないでしょう!?いくらギルドマスターの命令だからって皆さん、すんなり呑み込んだら駄目ですよ!ここは抗うべきです!」


 俺がそう必死に訴えると、マウベルは全身を小刻みに震えさせながら顔を紅潮させる。


 あながち俺の演説は間違っちゃいない。


 ()()()を知る者は未だ一定数居るものの知らぬ者もまた多い。


 そんな者達からすれば、万年中位と教えられてきた俺が突然、各副団長を差し置いて率いるなんて所業を彼等の目にどう映っているかなんて考えるまでもない。


 「マスター、やりすぎです。」


 セリーヌがマウベルに近寄りながらもそう声をかけたが、牛人族は怒りを(あらわ)にする。


 「ふん!こんなもんで怪我なんてするもんか!水蛇を屠った奴だぞ!それに、蹴り飛ばす寸前しっかりと怪我せぬよう魔力で防ぎおって、小癪な真似を。」


 しまった、と俺は心の中で唸った。


 俺の実力を知らない者はそっちの話なら知ってるじゃないか。


 「馬……馬鹿言うなって!ありゃ、皆が居たからそうなったまでで下手してたら、とっくに蛇の栄養分になってたんだぞ!」


 「五月蝿い!それでもお前は生きてるじゃねーか!身体の頑丈さはお前なんぞ竜族と張り合える程人並み外れてんだろ!悪運の強さに限ってはなんら昔と変わらず右に出る奴はいねぇ!」


 ああ言えばこう言うマウベルにはうんざりだ。


 俺は俺で俺なりの描きたい道があるというのに、どうして昔から、こう、何というか思い立ったら一本道な性格なのか、頑固というにも度が過ぎていけねぇ。


 まぁ……それがマウベルの良くも悪くも面白いところではあるが。


 マウベルがガルフ領主や王都の連中と話し合い、早急に手を打ったのだが、そこに俺の名を前面に出したようで、風の噂もあってか向こうも即断即決し合意となったらしいのだが……大変遺憾である。


 そもそも、俺は一言も過去の様に皆を引っ張っていくとは宣言しちゃいないし、その気は毛頭ない。


 勝手に復活だの、戦線復帰だの騒いだのはマウベルじゃねぇか。


 俺は憤慨してマウベルに楯突く。


 「よし。ならば昔みたいに腕っぷしで決めようぜ、マウベル。多数決なら負けは明白だからな。」


 場の空気の軽さから周囲の答えを俺は察していた。


 言わせたかったんだろう、今の俺がどの程度の実力か知るために一昔前の連中は確認したい気持ちで当時の俺を知らない若い連中は噂や先達らの想い出話の真相を見知りたい興味を抱えて。


 端からここに誘導するべく。


 何という団結力か。


 それに俺からしたらリースやハゼが容易く負けた相手にどれ程通用するか確認するにもいい機会だ。


 ―冒険者なら勝った者に従え―


 過去に、かの英雄達が取り決めた不壊の掟。


 俺とマウベルは庭へと降り立つが、1人セリーヌだけは、頭を抱えている。


 昔の性格というか、性分(タチ)を取り戻した俺に感激していたが、この部分だけは容認しかねる様だ。


 「ふざけているのか?」


 不意にマウベルがそう口走ったのは、俺が剣を抜かずに拳を向け、鎧の類を脱ぎ捨てていたからだ。


 剣を抜かないのは、二つの理由がある。


 一つは昔のようにマウベルとの訓練、いや殴り合いをしてきた。だから彼との決戦は拳で決めたい。


 二つ目理由は、ハゼの大斧を叩き割った事にある。折角、緑生迷宮用にジルゴから預かった逸品をこんな場でへし折ったとあればジルゴから何言われるか堪ったもんじゃない。


 ただでさえ、相棒を折ってしまった罪悪感は未だにある。


 そして上半身の肌着すら脱いだのは過去の経験からくる牛人族との死闘においての礼儀。


 どれだけ戦士として鍛え抜いてきたかを誇示するものである。


 「こっちの方が解りやすくて良いだろ?」


 俺が捨て台詞を吐くと、そうだなと言わんばかりに鼻で笑う癖も昔から変わっちゃいないマウベルに何処か懐かしさが訴え掛けてくるのだが闘気を漲らせる俺とマウベルの間にセリーヌは心配なのか慌ててに間に入る。


 「心配いらねぇってセリーヌ。たとえ立てなくなっても、()()があるから。」


 そう言って俺はセリーヌに二本の高級回復薬を渡したが()()を見てマウベルもセリーヌも驚いた。


 「お前、どういう事だ!?こんな貴重な回復薬をなぜ二つも持っている!?」


 黄源迷宮の精霊から去り際に手渡された回復薬とその知識だ。


 精霊からの援助の一つであり、その手の有識者(マリン)に製法は伝えている。


 「だから心配するな。これから薬草採取や素材の調達依頼が増えるだろうから在庫や市場価格に交易関係、そっちの心配をしてくれ。」


 セリーヌは途端に、にこやかな表情を浮かべ嬉々としながらその場から撤退するが、それにはつい先程まで示していた感情は……皆無。


 「さて……やるか。」


 俺とマウベルは気合充分に交戦する。


 互いに込めた魔素が激しくぶつかる。


 衝突の度、煌めく鮮やかな魔素の飛沫は、何十年という時を経て、再び相見える。


 拳も脚も相手の全身の至る箇所を捉えては瞬間的に防御へと魔素を集中させるが、反射的に瞬時に攻撃へと転じる為に必要部位に魔素を巡らせ移す。


 流れる様に繰り出す攻防の行方に周囲の熱は増してゆく。


 斜め前方から突いてくる拳は(はた)くように横へと掌で流し、蹴り技に対しては避ける。受けても瞬間的受け流す事で致命的なダメージを軽減する。


 強烈な正面からの突きは手首を狙って掴みかかり受けること無く躱す。


 思った通り……やはりマウベルの腕は間違いなく落ちている。


 昔と違い、彼の動きは精彩を欠いている。


 数回、攻撃を受けてみた段階で俺にはその微妙な差は解ってしまう。


 彼は冒険者を辞めてからの期間、事務的な行動が多くありすぎた。


 王都への定期的な出向、各地の領主やギルドとの会合、業師(クラフター)達と素材や魔具の精査や依頼の会議、果ては冒険者達の定期試験の準備等、運営面の殆どに時間を費やしてきたから、腕が鈍るのも仕方ない。


 かたや俺はのほほんと、好きなだけ、ぷらぷらとしてきたとはいえ、適度に敵を屠り続けてきた。


 その差は歴然。


 内心俺はしてやったりと思ったがその思惑は落とし穴になりかねないと少しの間をおいて気付く。


 ここでマウベルを圧倒したところで余計周囲の熱に油を注ぐだけの気がして、均衡を演出する。


 マウベルを攻撃する際、彼が反応出来るくらいの速度と強度で打ち込み複数の痣を作る。


 かたや反撃が来ると攻撃に合わせた瞬間に魔素強度を上げてダメージを軽減しながら此方も痣を作る。


 これで良いのだ。


 それを暫く続けていたら周囲の目は誤魔化せるはずで唯一の懸念はマウベルだ。


 あからさまに手を抜くと彼なら勘づいてしまうだろうから、時々一方的に殴られたり蹴られたりしてみる。


 その都度、蹌踉めきながら俺は()()()と表情を晒して(あたか)も昔さながらほんのり強がりを見せたついでに反撃も精度をあえて欠き僅かながら場の攻勢をマウベルに傾ける。


 手強いが倒せない相手じゃない……という印象を何が何でもマウベルに()たせれば、俺の手抜きもバレる事は無い。


 そう!バレる事はないのだ!絶対!


 マウベルも満更でもない恍惚(こうこつ)顔をして昔の様に機嫌よく手数を増やす増やす。


 拳撃の連打に加えて脚技も充分過ぎる数を撃ち込んでくる。


 拳と脚による出るわ出るわの複合連撃に俺は防戦一方となり、周囲にいる冒険者達の熱も上がる上がるの一方。


 (水、差したくねぇけど負けるのも嫌だな。)


 だが、俺は俺で辛勝にもっていかないと行けないという感情があるからこそ、まだここは我慢するしかない。


 その加減が非常に難しい。


 「お前、さっきから何を狙っている?」


 不味い、気付かれたかと思ったが、マウベル曰く昔と戦法が大きく乖離していて俺の立ち回りに不気味なまでの違和感を感じている様子。


 「何も狙っちゃいねぇよ!防ぐのに手一杯なだけだ!」


 必死に必死そうに魅せるのを隠すのも大変なんだと叫びたいくらいマウベルと均衡を保つのは至難の業。


 こちとら少しでも油断すれば全てが瓦解しそうになる。


 「……。ここからが本気だ……。」


 彼が呟いた瞬間、手数の()()が格段に上がり、強靭な肉体が一回り大きくなる。


 それからというもの余裕が無くなる瞬間もあるにはあるがそれは俺にとったら渡りに船というよりは得手に帆を上げる感覚。


 お陰で少し格闘が楽になったが、傍から見れば最早常人離れ地味た光景なのか、益々熱が上がり始めている。


 決闘開始から1時間ほど過ぎた頃、マウベルに疲れの色が出てきたのが垣間見えると、俺も呼吸を合わせるかのように疲れを顕にして動きと魔素の精度を下げた。


 激しい技の応酬に庭の所々は砕けていて、足場の悪化に俺もマウベルも、そろそろ決着を着けようかと思いかけたその時、冒険者宿舎の扉付近から聞き慣れた声が聞こえた。


 「おぉ。やっとるわ。それにしてもこりゃまた派手にやっておるわ!!」


 「何年経っても相変わらずコウはコウ……問題児(トラブルメーカー)……賑やか賑やか……」


 ジルゴとマリンが宿舎長室の一室にある転送魔具からやって来たらしく、この騒ぎを聞きつけてジルゴもマリンも別件でギルドへ来たらしいが愉快な催し物と聞き物見に乗じたのだ。


 セリーヌと何か会話しているが、離れていてその会話は聴こえない俺にはそれが引っ掛かってしかたない。


 心の中で余計な話するなよ、ジルゴ。


 と、念じたがセリーヌの反応を見る限り熱い視線が俺に何度か向いた。


 (まさか、加護について喋ってねぇだろうな。)


 「男と男の勝負で余所見とは舐めてくれた物だな!」


 マウベル渾身の右フックが脇腹を(えぐ)った。


 堪らず俺は防御するが、僅かに遅かった。


 体力をごっそり持っていかれて、思わずその場に跪く。


 「これで終わりだ!」


 その仕留めに来た一発は、牛人(パシパエ)族らしく猪突猛進の一撃で腕に集まる魔素の塊は上位迷宮の魔物を凌ぐであろう強度。


 重心を低く保ち踏み込む左足に全体重を乗せて捻った腰の回転力と遠心力が急襲してくる。


 並の冒険者はその姿の威圧感に押し潰されてまともにその場を動けなくなる。


 マウベルの奥義と言え、かつて人外ですらまともに喰らったら悶えた牛人族ならではの大技。


 【獰猛なる一本角(グリムカウホーン)


 だが、俺はその技を待っていた。


 牛人族特有の巨体がさらなる魔素の強化に伴い巨大化していて、その股下の高さは人族の平均身長を上回る。


 俺はマウベルが重心を完全に左脚に乗せた刹那にそこを突いて足に溜め込んでいた魔素を解き放ち一気にマウベルとの距離を詰めては大きく開いた脚の間を通り抜けて股抜けを成功させると背後に立つ。


 空振りに終わった大技から姿勢を慌てて立て直そうとしつつも、ぎょっ、としたマウベルの表情、視線は後方の俺に向く。


 「油断したな?」


 有りったけの魔素を拳に乗せて俺は一拍の息を呑みマウベルに背中への魔素集中の猶予を与える。


 「ここ、弱いんだろ?しっかり防げよッ!」


 背中を殴ると同時にマウベルは悶えつつも激しく防壁へとかっ飛び、魔力障壁が軋みを上げながらそれに耐えていた。


 「どうだ!俺の〝辛うじて〟の勝利だ!」


 ちゃっかり辛勝を強調しながら、左手を天高く掲げると、場の空気は最高潮に盛り上がりをみせる。


 全身、滝のような汗に顔から上半身にかけては見事に幾つもの痣をつけ、脚衣であるサルエルは穴や切れ目が多く実に見窄(みすぼ)らしく、激戦の印象を見事に植え付ける。


 マウベルめ、蹴りすぎなんだよ。


 だがその姿こそ競り合った証そのもので、周りの者達を納得させるには十分すぎる、言葉なき説得力を示す。


 「どうした、セリーヌ。俺が勝つのが嘆かわしいのか?」


 「違いますよ!先日の一件で庭も壁も修繕したばっかりなのにまた、修繕ですよ!費用、どんだけかかると思っているんですか!?そりゃ、コウさんが昔みたく〝らしさ〟取り戻して嬉しく思いますけども、それとこれとは話が別です!別次元なんです!!」


 修繕費用に莫大な金貨と労力が必要らしく、その額を聞くと俺は身震いして、その一部を負担するという着地点に落ち着くと後悔が顔を覗かせた。


 俺の個人資産が激しく目減りする。


☆☆☆

 「今回に限ってはコウ、お前が、けしかけたんだからな?悪く思うなよ?」


 決闘が終わりギルドに皆が集う中、高級回復薬で意識と体調をすっかりと取り戻したマウベルがそう言うと、俺は納得せざるを得ない。


 「しかし、お前のその強さは何なのだ?明星時代を遥かに凌いでるんじゃないのか?」


 「マウベルが衰えただけだろ、変な事言ってんじゃねぇよ。」


 危ねえ、危ねぇ。


 先日、双璧の一件を起こした張本人が言うと、周りの目も変わりかねないし、必死に必死さを演じた時間が無駄になりかねない。


 「そりゃさ、誰だって黄金期はあるし、衰退期だってある。ましてや宿舎長として奔走してりゃ、衰えんのは当たり前だと思うけどなぁ。」


 無言のマウベルはギルドのロビーで神妙な面持ちで腕を組み、胡座をかく。


 うだつの上がらない万年中位冒険者として築き上げてきた立場がここで揺らがぬよう俺は必死に訴える。


 「大体、水蛇にだってやられかけたんだ。あの時援軍が来てくれなきゃ死んでたし、事実、手も足も出なかったんだぜ?」


 「それについてだが……。」


 マウベルは語る。


 「お前、憶えているか?【幸運旅路(フェリス・トルノ)】。彼等がギルドに救援要請をしてから件の現地到着までの間、実に1時間近く要した。上位冒険者ですら、そんな長丁場の戦闘は水蛇相手じゃなくとも相当疲弊するもの。それを逃げ続けるなんて芸当はそうは出来んぞ?」


 「なーに言ってんだよ、大袈裟なんだよ、マウベル。ゼルファークなら5秒でぶった斬るし、ミナイなら魔法の一撃で炭にする相手だぞ?そんな相手に俺は逃げ続けるしか無かったんだ。」


 だから危ねぇっての、お前(マウベル)の発言力はただの発言じゃないんだから!


 「何度も言ったが、俺一人じゃやられてた。間違いなく……だ。それに、久々に決闘してみて解ったのは、マウベルはかなり腕が落ちた。考えてみろよ、宿舎長の仕事に粉骨砕身だったろ。そりゃ腕も鈍るのは仕方ないって。それでもリースやハゼを軽く捻ったのは……単に彼奴等が弱いだけだ。」


 ごめん。リース、ハゼ出汁に使って。


 「あと、それから俺は端から緑生迷宮へ行くって言ってたし、セリーヌとの契約……もとい『ギルド強化計画』にも同意しているんだから、マウベルに言われなくとも近い内にセリーヌと段取りは付けるようにするつもりだったんだ。」


 俺がそう口走ると直ぐ様セリーヌは問いかけてきた。


 「なら、なんでわざわざ『決闘』なんかしたんですか!?庭や壁まで壊して!」


 あからさまなマウベルの対応が端から気に食わなかったのもあるが、だからといってすんなり話を呑むと今後、何頼まれるか分かったもんじゃない。


 せめて『決闘』してマウベルに負けるようならやはり万年中位と周りは認識するから結果的に従うのもやむ無しと考え、勝てるなら今後の展開次第で決闘のご褒美『勝った者に従え』を有効活用しようと企んでいた。


 とか、当然言えるわけなく俺は少し間を空けて伝えた。


 「ただ昔のように、じゃれ合いたかっただけさ。セリーヌもよく知ってるだろ?俺とマウベルの手合いは常にその範疇を超えていた。確かめたかったんだよな。俺が本当に復帰するに値する力がまだ残ってんのかどうか。結果は……ぎりぎり残ってたってとこだろうけども。」


 よし、決まったぞ!周りの連中への印象操作はこの辺で良いだろう。セリーヌもマウベルも大人しくなった。


 「話は変わるが……2人は何しに来たの?」


 ジルゴとマリンを指差しながら、俺がそう問うとジルゴは新装備が出来上がった報告を、マリンは多岐にわたる高級魔素薬の試作品を届けに、そしてそれに伴う素材の調達依頼をかけに来たという。


 ジルゴはともかく、流石マリンは仕事が早い。


 精霊から託された幾つかの製法を伝えてからまだ三日しか経過していないというのに、もう完成させたのかと感嘆するも、マリンは未だ未完成と呟く。


 ただ現状、出来上がった試作の効果は市場に出回る高級魔素薬よりは幾分効果が高いのは明白で、卸ても問題無いようなので、ギルドに対して半ば判断を任せるつもりらしい。


 「ふむ。そういう事なら早速確認させてもらうとしよう。」


 若干痛々しくその腰を上げて立つマウベルはセリーヌに魔具判定機を持ってくるよう促し、セリーヌは少ししてからロビーに戻ってきた。


 観衆がごった返す中で、試作品の判定が次々と為されるが、そのどれもが効果抜群と言える物なだけに結果が出る度、場はどよめく。


 「これは、市場を改める必要があるな……急ぎ領主様に連絡をしなければな……だが、マリンもう一つの用件とは一体何なのだ?」


 「うん……これ作るのに幾つかの素材が足りない……たぶんだけどギルドの倉庫にも無い物が多いと思う。だから調達依頼を出したい……。」


 マリンはそう言うと徐に調達素材とそれに付随して報酬価格を明示したリストをセリーヌに手渡す。


 「え〜っと、なになに……白光花(はくこうか)10本金貨3枚に釣鐘茄子1本金貨5枚、精霊の宿り木1本金貨8枚……蒼源天然水……1L金貨……13枚……。(バーンズ)魔牛(ミノタウロス)の肝……金貨……25枚!?ちょっ……ちょおと待った!!マリンさん!!」


 セリーヌが驚くのも無理はないし、俺も過去にマリンの世俗知識というか感覚のズレには再三注意してきた。


 ジルゴはマウベルと何か耳打ちし合っていて我関せずといった雰囲気だ。


 セリーヌがリストの上位から読み上げた素材と報酬額は調達が困難を極める物ばかりだが、それこそ腕がそこそこの冒険団が徒党を組んで取り組めばなんとかなる物もある為、一同は驚きながらも、誰かが言い放った『俺達でも一攫千金出来るぞ』と言う言葉に釣られ冒険者達は士気を跳ね上げる。


 「報酬額について話し合いましょう!これではマリンさんが大損ですッ!!」


 そりゃ無いぜと各々セリーヌに向かって大声を上げるが、マリンは調薬に関しては最高峰の業師で申し分ないのだが世間、とりわけ市場価格に関してはずぶい。


 セリーヌが危機感持って指摘しなければ、活気に満ちた冒険者共に食い物にされるのは目に見えていた。


 「おぉ、ならこのギルドマスターである俺に勝てたらセリーヌへの文句は通してやる。誰でもいいぞ。文句がある奴は前に出ろ。」


 活気の華が急激に(しぼ)む。


 「報酬額については要相談だ。セリーヌ、俺もそこに居合わせよう。時にコウ、ジルゴと装備の確認があるのだろう?いよいよ、再び飛び立つのだ。しっかり準備しとけよ。もう行っていいぞ。」


 「あぁ、マリンの事、任せたわ。宜しく頼むよ。」


 そう言ってから俺はジルゴと共に宿舎長室に向かったが、中に入ると、ロビーから盛大な、どよめきが聴こえジルゴは何処か嬉々としていて機嫌が良い。


 「なに、お前さんが飛び方を間違えただけじゃ。経つ鳥、盛大に飛び方を間違えるってとこか。」


 そう一言いいながら転送魔具に乗り、地上都市の総合工房地下2階へ辿り着くが、含み話が気になって仕方なかった。

ここまで読んで頂きありがとうございました♪

一身上の都合により不定期更新ですが、また次話読んで下されば嬉しいです♪


書き溜め… …_φ(・_・

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