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主人公が大概ヨゴレです。注意!

あれから小一時間ほど飛び続けただろうか。

腹を引っ掴む鉤爪を見る限り、どうやら私はデカい鳥に攫われたらしい。

ちなみに横に引っ掴まれて、揺さぶられつつ腹を圧迫され、さらには急降下、急上昇を繰り返された挙句、3回ほど嘔吐している。・・・コイツ、運びながらコウモリ食ってやがる、人がゲロゲロ吐いてるってのに。見る限り下は森のようだか、もし通行人がいたらごめんなさいとしか・・・クリーニング代の請求書はこのデカ鳥によこしてください。

どうやら着いたのは鳥の巣ではなく、高山の横っ腹にある城のような建築物らしい。黒い尖塔の周りを、キシャーキシャーとワイバーンが旋回しているあたり、感動するくらいに魔王城である。飛んでる最中考えてたんだけど、ひょっとしてこの鳥、村にいたとき変な光で痛い目に合わせたあの怪鳥ではないか。ゲロ吐かせたのは復讐か!忘れてよ!鳥頭でしょ!

ともあれ私は敵の本拠地に着地した。


私をベランダにおろした鳥は、そのままどこかへ飛び去ってしまった。よかった・・・食われなくて。あんなデカい鳥につつかれたら相当痛い死に方しそうだもん。これから先の展望が、それよりましになるとも限らないけど・・・って来たーーー!

あの黒い甲冑の騎士が、こっちに向かってくる。対抗手段は、ない。せめて死に際に、ゲロまみれの服でもなすりつけてやろうか。


「手荒な真似をしてすみませんでした。・・・って、あれ?」


思ったより紳士的な態度を示そうとした黒騎士は、こちらをみて首をこてんとかしげた。やめろ可愛くないから。


「失礼ですが、どなたでしょうか?」


「それはこっちのセリフよ!」


気まずい沈黙が二人の間に堕ちる。その隙間を埋めるかのように、オークの群れが砦の中から出てきた!問答無用で私に群がり、抱え上げる。


「ちょっとやめてよ!なにするのよ!」


私はなんだかわたわたし始めた黒騎士に向かって叫ぶ。暴れても、ブヒブヒいいながらオークたちは離してくれない。


「こいつらを使って私に乱暴する気でしょ!エロ同人みたいに!エロ同人みたいに!」


「エロドウジン?いや、誤解なんです・・・」


そして【NTR】勇者の妹がオークの孕み奴隷に【悪堕ち】とかいうCG集がD●Mとかで600円くらいでDL販売されちゃうんだ!くそー!こんなことなら絶対村から出るんじゃなかった!引きこもって体重100kgとかにしとけばこんな目に合わずに済んだのに!乳の大きい妹キャラなんてろくなめにあわねーよ!

抵抗むなしく私は運ばれていった。ちなみに黒騎士は止めようとしていたがオークのヒップアタックで吹き飛ばされていました。


運ばれた先は石造りの小部屋だった。同じく石で作られた水槽には、緑色の液体が湯気を立てている。

オークどもは私を転がすと、手際よく来ているものを剥き始めた。全裸になった私に、粘液の汲まれた皿を持ったオークが近寄ってくる。


「キャー!ちょっとやめてよ、どこ触って・・・助けて、父さん、兄さん!

そこはやめ・・・うひゃひゃ、くすぐったぎゃはは、ひぃぃぃ!」







結論から言うと、私は大変恥ずかしい間違いをしておりました。

どうやらゲロまみれの私を見かねたらしく、オークさんたちは私を風呂に入れてくれたみたい。緑の液体はハーブ入りのお湯でした。

このオークさんたちは、推測するにこの城のメイドさんではないだろうか。メイド服さえ来ていないものの、こぎれいな衣服に可愛らしい刺繍のしてある帯を巻いている。オークもおしゃれするんだ・・・初めて知った。

しかし、オークにも若い娘さんや美意識が存在するとなると、ロマンチックなラブロマンスやドロドロした恋愛関係も存在するのかな?いつか漆黒のナイトメアにのった王子様が!とか、オク代「この泥棒猫!」とか。

私が穢れきった思考を働かせていると、オク美さん(仮)が新しい服を持ってきてくれた。中古のようだが、清潔で可愛らしいワンピースで、明らかに前私が来てた服より高そうだ。

「ありがとうございます。あと、暴れてすみませんでした」

「ブヒブヒ」

いまいち会話が通じているか自信がないが、オク美さんは気にするなという風にうなずくと、手早く服を着つけて、私を案内しようとするようにドアを開け、背を押した。

いかにも魔王城と言わんばかりの赤じゅうたんの廊下を、しばらく歩いたその先に、ひときわ立派な扉があった。オク美さんは、私をその部屋に押し込むと、そそくさと去っていった。

しかしこの部屋は・・・


「なんというか、ファンシー・・・」


地球で言うならロココ調というか、パステルトーンでまとめられた部屋には、猫脚の家具が並べられており、奥の飾り棚には人形まで並べられている。部屋といいワンピースといい、この城には若い娘さん(オークでなく)が住んでいるんのか。まさか美しさにこだわる女吸血鬼が、夜な夜な処女の血でアンチエイジングでもしているのだろうか。

思えば体を洗われたのだって怪しい。性的な意味でか食事的意味でか、おいしくいただかれるためにキレイにされた可能性も・・・

その時、ノックの音がした。


「!!!」


「入ってもいいかな?」


この声は・・・たぶん意外と紳士だった黒騎士のものである。わたしは何か武器になる物はと、火かき棒を手にして、ドアの横にそっと立った。攻撃力増加の精霊術を盛り掛けしてから答える。


「どうぞ」


そして、ドアが開いた瞬間、思いっきり火かき棒を振り下ろした!


「せいやぁぁぁ!」


「・・・ちょっ」


ゴィン!私の臨時武器は黒騎士の籠手に受け止められて、二つに折れて飛んで行った。

反動で尻もちをついた私に、彼はあわてたように言った。


「落ち着いてください!僕は怪しいものではありません!」


「信用できるか!ファンシー室内でも全身甲冑の男が!ギャップが目に痛いわ!」


「そんな、人を見た目や来ているもので判断するなんで、よくないことですぅ!」


「そんな禍々しい鎧着といて説得力ないのよ!」


「分かりました、脱ぎますからぁ・・・!」


黒騎士は私から二、三歩離れると、なんかやたらと可愛いポーズをとって叫んだ。


「僕を守るみんなのチカラ、元の姿に戻って!」


言うなり、彼の鎧が部分部分で光を放ち、黒い靄となり、シャランラーと渦を巻いて胸元に集まっていく。やがてそれらが黒い大きなリボンとなると、そこにはまったく想像もできなかった姿があった。

ふわふわとした桃色の髪。アメジストの瞳。白磁の肌。驚きの小顔にツンと高い鼻とピンクの唇。

まさに美少女!


「え・・・女の子だったの・・・?」


「違いますよ!僕、男ですぅ!」


声まで甲高くなってるし!彼はプンプン!と胸の前で握りこぶしを作って見せた。うぜぇぇぇ!

これは鎧のままのがよかったかも。

まさかの男の娘登場に、私はもう一度吐きそうになった。もう、今すぐ失神したい。

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