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シフトを組みます

潘巧雲でございます。


十字坡の皆様は、朝から夜半まで休みません。

しかも、忙しい場所へ全員で集まります。

人手不足ではなく、回し方の問題です。


――ですので、私がシフトを組みます。

十字坡で働き始めて、三日が過ぎた。

朝は厨房。

昼は宿の片づけ。

日が傾けば、店へ出る。

孫二娘は、働く気があるかと聞いた。

私はあると答えた。

だから、働いた。

朝、まだ暗いうちに起き、火を起こす。

米を洗い、野菜を刻み、前日の鍋を洗う。

迎児は手際がよかった。

私は包丁こそ使えたが、こちらの食材には慣れていない。

見たことのない葉を渡され、どこまで切ればよいのか迷っているうちに、迎児は隣で三つの仕事を終えていた。

「奥様、そちらは根を落としてからでございます」

「先に言って」

「申し訳ございません」

「あなたが謝ることではないわ」

そんなやり取りをしている横で、孫二娘は大鍋を一人で持ち上げた。

人が持つ重さではない。

「二娘さん、それは誰かに手伝わせた方が」

「これくらい、アタイ一人で足りるよォ」

足りている。

たしかに足りている。

だから、誰も手を出さない。

張青も手下たちも、自分の仕事が終われば次へ移る。

悪くはない。

皆、よく働く。

怠けている者はいなかった。

それなのに、厨房は妙に混んでいた。

同じ桶へ二人が手を伸ばす。

包丁が足りなくなる。

洗った皿を置く場所へ、今から切る野菜が積まれている。

鍋の前には誰もいないのに、戸口には三人も立っている。

忙しそうには見える。

実際、皆動いている。

でも、動いた分だけ進んでいるかと聞かれれば、少し違った。

朝の客が引く頃には、全員が疲れていた。

そこから宿の片づけが始まる。

泊まり客の布団を上げ、床を掃き、桶の水を替える。

厩では馬の世話があり、厨房では昼の仕込みが始まっている。

「そっちの部屋は終わったか?」

「今やってる」

「さっき、別の奴も入っていかなかったか?」

「知らねえよ」

同じ部屋を二人が掃き、隣の部屋は手つかずだった。

私は箒を持ったまま、廊下の端に立った。

誰が、どこを担当しているのか。

誰も知らない。

孫二娘は全部見ている。

足りないところへ入り、遅れている者を手伝い、客に呼ばれれば表へ出る。

つまり、孫二娘がいなければ回らない。

店の主なのだから当然――

そう言ってしまえば、それまでだ。

でも、この人が倒れたら終わる。

昼を過ぎると、少しだけ暇になる。

手下たちは店の外で座り込み、張青は仕入れの確認へ行く。

迎児は厨房の隅で、立ったまま眠りそうになっていた。

「少し休んだら?」

「まだ、豆を選り分けておりません」

「それ、今でなければ駄目?」

迎児は困った顔をした。

「いつするか、決まっておりませんので」

なるほど――

決まっていないから、手が空いた者がやる。

手が空かなければ、夜まで残る。

誰かが気づけば早く終わり、誰も気づかなければ明日の朝に回る。

その日の夕方、私は店先へ出た。

孫二娘は、本当に客を呼ぶ。

街道を歩いていた男たちが、看板より先に孫二娘を見る。

その横に私と迎児が並ぶと、通り過ぎかけた客まで足を止めた。

「今日は女が三人もいるぞ」

「こりゃ、寄らねえ理由がねえな」

失礼な話だが、売上にはなる。

日が落ちる頃には席が埋まった。

酒を運ぶ。

空いた皿を下げる。

追加を聞く。

厨房へ伝える。

酔った客の話を適当に受け流す。

一人が酒を頼み、別の客が飯を急かし、三人目が袖を引く。

現代なら、笑顔のまま担当を呼べばよかった。

ここでは、呼ばれた者が全部やる。

「潘巧雲、三番の卓へ酒だよォ!」

「今、二番の料理を運んでいます!」

「じゃあ、迎児!」

「迎児は裏で皿を洗ってる!」

「張青!」

「お嬢、アッシは樽を替えてます!」

全員が返事をする。

誰も手が空いていない。

客が待っている間に、料理は冷める。

迎児は厨房と店先を三往復し、最後には足をもつれさせた。

倒れはしなかった。

私が腕を掴んだからだ。

「大丈夫?」

「はい」

大丈夫な顔ではなかった。

夜半、最後の客が帰った。

今度は片づけだ。

机を拭き、器を洗い、床を掃く。

朝から働いていた者が、そのまま残っている。

孫二娘だけは、まだ元気だった。

この人を基準にしてはいけない。

四日目も、同じだった。

五日目も、大きくは変わらなかった。

私は何も言わずに働いた。

口を出すなら、先に知る必要がある。

朝、誰が強いのか。

昼、どこで人が余るのか。

夜、何が遅れるのか。

仕入れは誰が見ているのか。

休む時間は決まっているのか。

答えは、だいたい分かった。

皆、働き者だ。

だから悪い。

働ける者が、全部やってしまう。

上手な者へ、仕事が寄る。

孫二娘と迎児が一番ひどかった。

六日目の昼、私は孫二娘へ声を掛けた。

孫二娘は店の裏で、樽の蓋を確認していた。

「少し、お話がございます」

「改まって何だい」

「この店の働き方についてです」

孫二娘の眉が上がる。

近くにいた張青も振り返った。

手下が二人、荷を下ろす手を止める。

言うなら今だ。

「人が足りないのではございません」

「足りてるよォ。だから回ってる」

「回しているのは、二娘さんです」

孫二娘の顔から、笑みが少し消えた。

怒ったのではない。

聞く顔になった。

「二娘さんが厨房に入り、宿を見て、店先にも立っています。迎児も朝から夜まで働いている。張青殿たちは、空いたところへ、その都度入る」

「何か悪いかい?」

「誰が何をするか、決まっておりません」

手下の一人が鼻を鳴らした。

「忙しいところを手伝ってんだ。決める必要なんかあるかよ」

「同じ部屋を二人で掃除して、隣の部屋を忘れていました」

男が黙った。

張青が口元を押さえる。

笑いを堪えているらしい。

私は続けた。

「朝は厨房に人が集まりすぎます。昼は宿の片づけに足りません。夜は朝から働いている者まで残っています」

「じゃあ、どうしろってんだい」

「時間で分けます」

孫二娘が腕を組んだ。

私は地面へ棒で線を引いた。

「朝方は厨房と朝の客。昼は宿と仕込み。夕方から夜半は居酒屋。この三つに分け、働く者を交代させます」

孫二娘の目が細くなった。

「交代で休ませるのかい」

「はい。朝に出た者は、昼に休む。昼から入った者は、夜の前半まで。夜番は夕方まで働かせません」

「要するに、シフトを組むってことかい」

私は顔を上げた。

今、この人は何と言った?

孫二娘も、ほんの一瞬だけ止まった。

張青が首を傾げる。

「しふと?」

「何でもないよォ」

孫二娘は張青を手で追い払った。

それから私を見る。

「続けなァ」

聞き違いではない。

だが、今は追及しなかった。

私も説明を続ける。

「誰が、どこへ入るかを前の日に決めます。宿の部屋も担当を割り振ります。終わったところには印をつける。仕入れと残り物は、帳面へ書きます」

「字が書けねえ奴もいるぞ」

張青が言った。

「印で構いません。丸でも、線でも。誰が見ても分かればよいのです」

孫二娘は地面の線を見た。

「面倒が増えないかい?」

「最初は増えます。でも、同じ仕事を二度するよりはましです」

少しの沈黙。

やがて孫二娘が笑った。

「やってみなァ」

手下たちが顔を見合わせた。

「お嬢、本気ですかい?」

「駄目なら戻せばいいだろ。アタイは面白そうだと思うねェ」

その日のうちに、私は翌日の割り振りを作った。

朝番、昼番、夜番。

迎児は朝の厨房へ。

私は昼から入り、夜の前半まで。

孫二娘は夕方から店先に立つ。

張青は仕入れの後、夜の後半。

手下たちも宿、厩、厨房に分けた。

翌朝、厨房は静かだった。

人が少ない。

それでも、鍋は予定通り火に掛かった。

戸口を塞ぐ者もいない。

包丁も足りている。

昼、迎児は初めて横になった。

「休んでよいのでしょうか」

「休む時間だから、いいの」

「何だか、悪いことをしているようです」

「寝なさい」

迎児は本当に眠った。

夜、客が増えても、厨房には夜番が残っていた。

酒を運ぶ者も決まっている。

皿が溜まる前に一人が裏へ回った。

完璧ではない。

手下が担当を忘れ、張青が勝手に別の仕事を始め、孫二娘は休みの時間にも店へ顔を出した。

それでも、前より早く片づいた。

三日後、張青が帳面を覗き込んだ。

「昨日より客は多かったのに、酒が残ってるな」

「出す量を先に決めましたので」

「迎児も倒れそうな顔をしてねえ」

「昼に休ませています」

張青は、しばらく私を見た。

最初に会った時とは違う目だった。

逃げてきた女を見る目ではない。

「大したもんだな」

手下の一人も、渋々頷いた。

「奥方の言った通り、夜が楽になった」

孫二娘は店先で腕を組み、満足そうに笑っていた。

「亭主の家から逃げてきたと思ったら、人の働かせ方まで知ってるとはねェ」

「働かせ方ではございません」

「じゃあ、何だい」

「潰れないようにしているだけです」

孫二娘は声を上げて笑った。

その笑い声を聞きながら、私は帳面を閉じた。

夫の家では、私の言葉は言い訳になった。

父の家では、堪えろと言われた。

ここでは、試してもらえた。

それだけのことが、思っていたより嬉しかった。

迎児でございます。


奥様が決めた通りに動くと、朝から働いても、昼には休めました。

横になるのが悪いことのようで、少し落ち着きませんでしたが――

皆様も、前より楽そうでございます。


奥様は、人まで上手に動かしてしまうようです。

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