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【BL】ゆりかご・コール〜寝坊遅刻魔の俺、クラスの人気者に見つかりました〜  作者: 虎ノ威きよひ


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5話 第一回ゆりかごコール

 俺はベッドの上で正座していた。

 机の上は当然物置、床も物が散らばった汚部屋。


「せめてゴミはゴミ箱に入れなさい」って母さんに言われる俺の部屋に、電子音が鳴り響いている。


 音の原因はスマホだ。

 ベッドに放り投げたそれを睨みつけ、俺は両手で頭を抱える。


 緑のフルーツのアイコンが、スマホ画面で震えている。何度見ても、「アサ」の文字が点滅している。


「ほ、ほんとに掛けてきやがった......」


 無視しようと思えばできる。

 このまま出なければ、朝日川だってそのうち諦めるだろう。


「でも......」


 俺は髪をグシャリと握った。


『ゆりかごコールするからな』


 整って綺麗な上に、温かみのある笑顔を思い出す。

 悩む。リアルにウーウーって唸り声が出るくらい悩む。


 その間も鳴り止まないコール音。

 これはもう、仕方ねぇだろ。


「......諦めろって言われたしな。さっさと会話終わらせてゲームの続きしよ」


 観念して、俺は通話ボタンを押した。

 スマホを耳に当てると、トーンの高いゆるーい声が聞こえてきた。


「どーもー、ゆりかごコールでーす」

「宅急便みたいだな」


 電話に出るの、まあまあ遅かったはずなのに。朝日川は全く気にしてないみたいだ。

 スマホの向こうで軽快に笑っている。


「意識したからな。朔弥、なにしてた?」

「ゲーム」

「知ってる。なんのゲーム? zmitch5? それともプラステ2とか?」

「今やってたのはスマホのアプリのやつ......あ」


 ここまで言って俺は思い出した。

 朝日川からの通知が来たから、ゲームの途中で画面が切り替わったんだ。

 レベル上げしてただけだから別にいいけど、念のためにちゃんと終わらせておこう。


 俺は通話をスピーカーにして、スマホの画面をいじり出す。

 部屋では俺と朝日川、二人の声がするようになった。


「朔弥、どうかしたか?」

「いや、なんでもない」

「そっか。なぁ、そのアプリゲームって無料のやつか?」

「そうそう。無料でプレイできます。一部有料コンテンツが~ってやつ」


 俺はゲームの画面をチェックしながら淡々と答える。

 特に興味もないだろうに、朝日川は相槌を返してきた。そして、まさかの発言をする。


「じゃあ俺もやろっと。ゲームの名前教えてくれよ」

「えっ......」


 嘘だろ? 『俺もやる』って言ったのか?


 驚きすぎて、俺はスマホを落としそうになった。漫画でよくある驚きの表現、大げさじゃなかったんだ。


 俺の混乱なんて知らない朝日川は、変わらない調子で喋っている。


「ん? おすすめ度低いのか? 寝るの忘れるくらい面白いんだろ?」

「そ、そうだけど......」


 ゲームに興味あるのか? と聞きそうになって、俺はハッとした。


 これは社交辞令だ。会話のために言ってるだけで、本当にゲームをダウンロードするわけがない。


 気がつけてよかった。

 そういうことなら、と、俺はゲームの名前を伝える。


「クレイドル・ゼロ」

「ク・レ・イ・ド......あったあった。星に剣が刺さったアイコンのでいい?」

「あ、ああ。うん」


 なんと朝日川は口先だけじゃなくて、本当にゲームをダウンロードした。

 ゲームの話しかできない陰キャのために、わざわざそんなことまでしてくれるのか。おせっかいだけど、いいやつだな。


「朔弥はさ~こういうのって、主人公は男派? 女派?」

「男にする」

「だよなー。名前か......ア、サ、ヒ......」

「ランダム助っ人の時に名前見えるから実名やめとけよ」

「そうなのか。サンキュー先生~じゃあ次のさ~」


 スマホからは朝日川の楽しそうに弾んだ声がずっと聞こえている。

 どうしてこうなったのか。


お読みいただきありがとうございます!

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