36話 待ち合わせ
クリスマスイブ当日、意外と電車は空いていた。
まだ冬休みになってない学校もあるからだろう。
アサとの待ち合わせ場所は、駅の地下街にある噴水広場だ。
そして俺は、水が落ちる音を聞きながらため息をついていた。
「......まだ十時じゃねぇか」
スマホの時計を見て、口元が引き攣った。
絶対に遅刻ちゃいけないと思ったんだ。
だから俺はいつもよりしつこく目覚ましをかけ、緊張のあまりきっちり一回目で起きた。
しっかり朝飯も食って、もしかしたら電車が遅延するかもしれないから早く出て。
着いたのが待ち合わせ時間の一時間前。バカか俺は。
ゲームでもしながらここで待つか。と思ったものの。
「......寒いな」
俺はひんやりとした腕をさすって周りを見た。ドーナツ、パスタ、パン、ハンバーガーなどのたくさんの店が並んでいる。
「......ポテトでも食うか」
有名チェーン店のロゴを掲げるハンバーガーショップに狙いを定め、俺は足を進めた。
窓際のカウンター席に座れば、噴水が見える。
アサが来たらすぐにわかるはずだ。
そして自動ドアを通過した瞬間、俺は仰天することになる。
「朔弥?」
トレイを手に持って立ってるアサと鉢合わせたのだ。
目をまんまるにしているアサを見て、俺の胸が大騒ぎし出す。
「......早くね?」
なんとか紡ぎ出した言葉がこれだった。
無愛想な短い言葉に対し、アサは愛想のいい表情で近づいてくる。
「楽しみすぎて、早く家を出ちゃったんだ。朔弥こそ早いな」
「俺は......遅刻しないようにと思って......」
「寝坊遅刻魔だったのが今は昔って感じだ」
悪戯っぽく笑うアサに、俺は肩をすくめた。
「さすがに友だちとの約束は遅れちゃダメだってことくらいはわかるっての」
まぁ友だちと待ち合わせなんて、初めてしたけどな。
「それに、アサを待たせるわけにはいかねぇだろ」
「嬉しいよ。ま、朔弥のことなら何時間でも待つけどな」
涼しげな微笑みが心にダイレクトアタックを決めてくる。
なんなんだ。こんな、それなりに人がいるところで。
頬が熱くなってくるのを感じて、俺は口にを当てる。咳払いして誤魔化した。
「そん......な、ことになったら普通に帰れよ」
「あはは! じゃあ俺、隣の席取っとくから窓ぎわのカウンター席に座ろ」
あそこ、とアサが指差したところにはコートがかかってる席がある。
俺が座ろうと思っていた、噴水の見える窓のところだ。
テーブル席はそこそこ埋まってるけど、カウンターはアサの座る予定のところ以外は空いていた。
「わかった」
頷いた俺は、コーラとフライドポテトを頼んでアサの方へ移動する。そういやちゃんと見なかったけど、アサも何か食べ物を頼んでたな。
改めて窓ぎわの高い椅子に腰掛けるアサを見た。
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