34話 前夜のゆりかごコール
十二月二十三日......クリスマスイブの前日の夜。
今日は終業式で、明日からやっっっと冬休みだ。
次の日が休みだと普段はゆりかごコールはしないんだけど、俺はアサと通話中。
俺はベッドにうつ伏せに寝転がり、スマホに映るオンスタの写真をを見ていた。
「へー、このラーメン屋うまそうだな。評判もいい」
アサが明日一緒に行こうと誘ってくれた場所は、若者向けのリーズナブルなラーメン屋だった。
オンスタの公式アカウントには、ずらりとうまそうな写真がならんでいる。
チャーシューや煮卵のドアップを見ているだけでいい匂いがしてくる気がする。
涎が出そうで唾を飲み込んでいると、スマホからアサの朗らかな声が聞こえてくる。
「いいとこだろ? なによりクリスマスにリンクコーデで来店すると、唐揚げがついてくる!」
「なんで唐揚げなんだよ」
「チキンだからじゃないか?」
「なんでもありだな」
声を弾ませているアサに対して淡々と返事をしつつも、俺はワクワクしていた。
どうやら駅前にある唐揚げクレープの店とおなじ系列なんだとか。
あの店と同じくらい美味しい唐揚げがついてくるなら、俺はクリスマスはフライドチキン派でもローストチキン派でもなく唐揚げ派になる。
系列が一緒だからリンクコーデ割があるんだなぁ。
俺は飽きっぱなしのクローゼットに視線をやる。まだ洗濯されずに掛かっているブレザーが目に入った。
「リンクコーデか......んじゃ、また制服でいくか?」
「その手もあるけど......」
アサは何か迷ってる。それが俺にでもすぐわかるくらい、たっぷり間をとった。
それから小さな音量で、しかしはっきりとアサは言った。
「朔弥と、私服でリンクしたい」
「......」
嬉しい。嬉しい嬉しい。
枕に顔をバフっと埋め込む。思いっきり深呼吸した。
そうしないと、この喜びを叫び出してしまいそうだ。
しかしずっと黙っていると、またアサを不安にさせるかもしれない。
なんとか返事を声に出さなければと、俺はスマホに口を寄せた。
「恥ずくないか?」
......なんで、俺こんなかわいくねぇの?
我ながら恐ろしく平坦とした言い方になってしまって、がっくりだ。
盛り上がりすぎてるのを隠したいばっかりに!
言い直さないと嫌な気持ちにさせるかもしれないと思って言い直そうとしたが。
アサの方が先に喋りかけてきた。
「朔弥となら嬉しい」
なんでこいつは、こんなに素直でかわいいんだ?
才能だな。
きっと眉を下げて、はにかんだような表情をしてるんだろうな。
そう思うと俺の心臓に住む何かが、大太鼓小太鼓をドンドコ鳴らし始める。
動悸、息切れがやばい。まずい。
俺は胸をかきむしり、息も絶え絶えになってきた。
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