3話 寝坊の原因
先生にツッコまれることなくホームルーム終了。
大勝利! ミッションコンプリート!
心の中でファンファーレを響かせる俺だが、実は眠くて眠くて仕方ない。
教室は先生がいなくなってから賑やかで、正直もっと静かにしてほしい。眠れない。
あくびをしていると、一際輝かしいグループが目に入る。
男女入り混じった五人組。その中心では、朝日川がデカい口を開けて笑っていた。
窓枠にもたれてるから後光が差してるように見える。
(イケメンで明るくて先生受けが良くて、でも悪巧みにも手を貸してくれる。あいつ、弱点なさそー)
俺とは別次元の人間だ。
ハーッとため息をついて、俺は机に伏せた。
寝よう。
こうやってずっと寝てるから、入学してから友達できなくてぼっちなんだけど。
知るか知るか。眠い眠い。
人に合わせるなんてめんどくさいからこれでいい。
......あんなやつ、羨ましくなんてない。
ふわふわふわふわ......俺の頭に靄がかかってきた。
「......やー」
何かがぼんやり聞こえる気がするけど、無視して寝よう。
「さくやー」
名前を呼ばれてる気がする。
いや、俺を下の名前で呼ぶやつは高校にはいない。寝よう。
「朔弥ー!」
「うわぁ!」
びっくりした!
耳元で大音量で名前を呼ばれた。しかも肩を叩かれたら無視できない。
俺は跳ね起きて声の主を見た。
「......なんでしょう?」
「やっと返事してくれたな」
まどろみの世界から無理やり現実に引っ張り出してくる、まさしく朝日。
朝日川、またお前か。いきなり呼び捨てするなよな。これだから陽キャは。
目頭を押さえて唸り声を上げてやると、朝日川が俺の前の席に座った。人の椅子に座るのになんの躊躇もしねぇでやんの。
「朔弥、眠いのか?」
「見りゃわかんだろ?」
「寝坊するくらい寝てるのに? お前、寝坊で遅刻すんの何回目だよ」
柔らかい声とおおらかな態度のくせに、グイグイくるじゃん。
お前に関係ないだろ、と思いつつも、俺はなんだか逆らえなくてボソボソ答える。
「あー......六回くらい? ......今月入って」
「今日、十月八日だぞ? 土日もあるから、今月全部じゃん」
「......でも、今日は朝日川くんのおかげでバレなかったからセーフ」
「絶対セーフじゃないだろ? 単位ヤバいんじゃないか?」
こいつほんとにズケズケと。
ヤベェよ! 先生に「このままだとまずい」って説教されたからヤベェんだけども!
俺は朝日川から廊下の方に視線を移動して、頬杖をついた。「お前めんどくさいぞ」ってのをアピールしてやる。
「だって、起きられねぇんだよ」
「なんで起きられないんだ?」
「それがわかったら苦労しねぇって......」
「理由は絶対あると思うぞ」
適当に流してるのに、朝日川は許してくれない。
居心地悪いのなんのって。
俺はさっきまで朝日川がいた窓際を見る。
いつの間にか男子二人だけになっていた。
こっちをチラチラ見てるから、朝日川がぼっちに話しかけてるのが気になるんだろう。
「なぁ朝日川くん」
「アサ」
「朝日川」
「仕方ないな~それで手を打つか」
手を打つってなんだよ。わかんねぇやつ。
「話戻すけど朝日川さ、向こうで喋ってたろ? あの二人、お前のこと待ってんじゃね?」
割と真っ当な逃げ口だったと思うんだけど、朝日川は誤魔化されなかった。
窓際を陣取る一軍仲間が見てることなんて、気にしてないみたいだ。
「寝られない理由、心当たりない?」
と、真剣な声で追撃をかけてくる。
こいつ、求める答えが返ってくるまで同じ質問繰り返してくるな。ゲームのNPCかよ。
こっちの質問も聞いてくれよ。
でももう、俺は降参することにした。
質問に答えなきゃ、話が進まねぇんだこういうのは。
「夜更かしとかじゃねぇの」
自分のことなのに、他人事みたいに言ってみる。
朝日川は満足そうに笑った。
「ほら、ちゃんと心当たりあるじゃん」
「ゲームが面白すぎるのが悪いんだよなー」
「それはわかるけど......昨日は何時に寝た?」
できるだけ軽く流そうとしてんのに、朝日川はまだ掘り下げてくる。
もういいだろ、尋問終われ。
「い......十二時くらい......?」
「一時は遅すぎると思うな」
言い直したのバレちまったな。
一時五十五分にゲームやめたのは黙っとくか。
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