28話 セーフ
昼休みを終えると、クリスマス会だ。
クリスマス会実行委員の集合は一般の生徒より早い。俺は一人で体育館に向かって歩いていた。
(頭がくらくらする......)
俺は目頭を押さえてため息をつく。
あくびがずっと止まらない。
昼休みに入ってからも、俺は昼寝もせず昼飯も食わずにただぼーっと過ごした。
その割には世界が開けて見えるのは、ヘアピンやワックスで前髪が上がっているからだろう。
すげぇよな。前村にいじられまくった結果、髪型だけ垢抜けた男になってしまった。
それにしても、額の一番目立つところを止めているツリーの飾りのピンはどうかと思う。廊下の窓ガラスを横目で見てみるが、やっぱり似合わなすぎだ。
頭のサイドを彩る、赤と緑の飾り気のないピンだけにしてほしかった。
働かない頭の中でぐちぐち言いつつ、寒い渡り廊下を通って体育館に着く。
体育館内は空調が効いていて温かい。
すでに到着していた実行委員長がこちらを向いた。
「お疲れ様。今日は一人か。珍しいな」
「え......?」
俺が一人なのが珍しい? 自認ぼっちなんだけど......と思って気がついた。
そういえば実行委員がある日は、アサと一緒に移動していたんだ。
今日は気まずかったのもあるけど、何も考えられずに一人でここまで来てしまった。
上手く答えられないでいた俺だが、委員長は特に気にした風でもない。新しくやってきた生徒に話しかけている。
俺はほっとして、昨日飾り付けた体育館を眺めた。
(アサはまだ来てないのか)
楽しみにしてたみたいだから早めに来ると思っていたのに。
クリスマスのことをよく話題に出していたアサの顔を思い浮かべる。
ついでに教室で肥後や前村と昼ごはんを食べていたアサを思い出してしまって、俺は頭を振った。どうしてもモヤモヤしてしまう。
(結局、アサがなんで怒ってるのか聞き損ねた......なんとかしねぇと)
放っておくと、これまでの友人みたいにアサも離れていってしまう。
(絶対に嫌だ)
初めてはっきりとそう思った。
前村の言う通り、ちゃんと話し合わないとわからないから聞くしかない。
クリスマス会が終わったらちゃんと聞こう。
そう決めた俺は、実行委員のみんなが集まっている体育館のステージに向かう。
そこで配られるサンタ服に、皆が着替え始めていた。
俺も列に並ぶと、服を配っている副委員長が目を丸くして見てきた。
「あれー? サクくん、なんかかわいいのつけてる!」
「クリスマスツリーだ! 髪型もかっこいい!」
近くにいた女子も便乗してきて、俺は今すぐに帰りたい気持ちに駆られる。
落ち着かなくて、ツリーのピンに触った。
「クラスのやつにやられました」
「似合ってるよ~」
似合ってはないだろ。似合わないなんて言えないだろうけどな。
様々な言葉を飲み込み、俺はサンタ服を受け取る。
手早く着替えている最中、ズボンのポケットでスマホが震える。
見てみれば、アサからのLime通知だ。
俺は即座に画面をタップした。
『もう体育館いった?』
『うん』
すぐに返信すると、『OK』という立て札を持った月のキャラスタンプが送られてきた。
眠そうな間抜け面のスタンプに、俺は肩から力が抜けた。
いつものアサって感じがする。
(......つか、もしかして俺のこと探してたのか......?)
数分後、アサは集合時間ギリギリに駆け込んできた。
頬が赤くなってて、走ってきたのが伝わってくる。
「セーフ? セーフだよな?」
みんなに笑いながらそう言っているアサを見て、俺の鼓動はこっそり速くなっていった。
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