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【BL】ゆりかご・コール〜寝坊遅刻魔の俺、クラスの人気者に見つかりました〜  作者: 虎ノ威きよひ


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26話 クラクラ

 寝不足だ。

 寝不足っていうか寝てない。

 こんなことがあるのかってくらい、一睡もできない内に朝日が昇ってた。


 ベッドの上にぼーっと座っていると、カーテンの隙間から入ってくる光が顔に当たる。

 眩しすぎて、頭がクラクラする。


 はっきり言って休みたい。

 今ならようやく寝られる気がした。

 けれど、そんなことをするわけにはいかない。


(クリスマス会......行きたいしな......)


 今日のためにせっかくみんなと頑張ったんだ。

 休むなんて絶対にしたくない。

 そう思える自分にちょっとびっくりしながら、俺は重い体でベッドから降りた。


 朝飯はキャンセルし、ノロノロと準備して、フラフラと自転車に乗る。

 そして俺は、時間配分をミスったらしい。


「やべぇ。遅刻じゃねぇか」


 校内の自転車置き場で予鈴が鳴り終わるのを聞き、俺はため息を吐く。

 でもこっそり教室に入ろうなんて元気はない。

 眠すぎて投げやりになった俺は、上靴を履いて廊下を歩いた。一人分の足音が無遠慮に響く。


 見つかったって、叱られるだけだ。命を取られるわけじゃねぇ。

 完全に開き直ると、逆に見つからないものらしい。

 教室まで無事に到着した。


 ここからは仕方がないから、前のドアをガラッと開ける。

 ホームルーム中の先生や生徒の視線が俺に集まってきた。


「こら、斉藤くん」


 先生のお小言を背中で聞きながら、俺は生返事だけする。


 今までの遅刻と違って、本気で眠い。眠いのに眠れない不思議な状態だ。

 そんなんだから、俺は自分が思う以上に周りが見えていなかったらしい。

 席に向かう途中、誰かの机に足を引っ掛けてしまった。


 ガタンっという乾いた音とともに体が傾く。


「......っ!」

「大丈夫?」


 バランスを崩した俺の腹を、伸びてきた腕ががっしりと支えてくれた。

 冷静に労わってくれる声を聞いて、俺の心臓が跳ねる。


「アサ......」


 顔を上げるとすぐそこにアサの顔があった。

 昨日のキスのことがフラッシュバックして、俺は慌てて体勢を立て直す。


 そして熱くなってきた顔を隠すため、会釈がてらに俯いた。


「ありがとな」

「うん、気をつけて」


 アサの声は穏やかだったけれど、やっぱりどこか硬い。昨日までの甘さは微塵も感じなかった。

 表情を確認しなくても笑ってないことがわかって、俺は下を向いたまま自席に急いだ。


(やっぱり怒らせたのか)


 椅子に座った俺は、すぐに机に突っ伏す。

 先生の話なんて、全く聞いちゃいなかった。


 俺たちは相当わかりやすかったらしい。

 ホームルームが終わってすぐ、前村がやってきた。

 前村は俺の前の席に陣取り、机に両肘をついた。


「ねぇねぇどうしたの? まさかとは思うけど、アサと喧嘩した?」


 小首を傾げ、丸くて大きい目が真っ直ぐに見つめてくる。

 気圧された俺は、力なく首を左右に振った。


「......喧嘩じゃない......はず」

「ええーアサって喧嘩することあるんだ」

「違うって」

「朔弥くんも喧嘩するタイプに見えないのにー」

「だから喧嘩じゃねぇ」


 ちゃんと聞いてくれ!

 もちろん確信犯だった前村は、にっこりと小悪魔的な笑顔になった。


「じゃあ、なに?」

「なんか楽しそうじゃねぇか? お前」

「深刻ではなさそうかなって。ほらほら、お兄さんに話してみて」

「誰がお兄さんだ」


 俺はこの世の終わりみたいな気持ちなのに、前村はびっくりするくらい軽い。

 でも話したら答えが見えるものなのかもしれない。だから、正直に話すことにした。


お読みいただきありがとうございます!

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