Tournament157 The Monster of Swamp hunting:後編(沼地の怪物を狩ろう!後編)
魔王は遂に実体を手に入れ、魔軍の編成に取り掛かった。
その頃、遊撃部隊に加わるため、『勇士の軍団』本隊を離れたジンたち『騎士団』は、途中で、巨大サーペントの群れに襲われる。体調不良のシェリーを抱えたジンは……。
【前回のあらすじ】
『瘴気の密林』の行軍に苦戦するジンたち。別動隊を率いるマロンは、ジンを自分たちの部隊に移動させるという奇策を思いつく。
その頃、ついに魔王が実体を持ち、魔軍が出撃した。そして魔王は、衝撃的な人物だった。
★ ★ ★ ★ ★ ★ ★
『魔王』は遂に実体を持って動き始めた……だが、僕たちはまだそのことをぜんぜん知らなかった。
なぜなら、『瘴気の密林』で立ち往生した『勇士の軍団』を何とか前進させるため、『暗黒領域』のエキスパートであるアントンさんやドーラさんと連絡を取ろうとしていたからだ。
「テキーラがダークエルフのガイウス・ロンギヌス殿からもらった地図では、この道なら沼地にはまらずに『大屈曲部』に抜けられる。多少距離は伸びるが、戦いにくい地形で足を取られながら進むのと比べれば、時間的にはそう大差ないだろうさ」
ド・ヴァンさんがそう言って、背の高い木々を見つめる。相変わらず緑ではなく、緑青色の気味の悪い葉を茂らせた木々が視界を遮っているが、だんだんと慣れてきている自分に気が付き、
(どんな所でも、人間って慣れるものだなぁ……)
そう考えていた。
僕たちが見つけ出した小道は、沼地の南側から西側に抜ける断崖の上にある。この台地は上りと下りに気を付けさえすれば、台地上には平坦な道が続いており、しかもぬかるんでいない。よくこんな道を見つけられたものだと感心した。
「この道なら、軍団規模は無理でも、『ドラゴン・シン』のように大隊規模の軍ならギリ行軍できると思うな。マディラさんもそう思うだろう?」
この道を発見したワインは、早速発向準備の合間を縫ってマディラさん、ラムさんと前路偵察に出たが、次の日には帰って来て、
「上り路にちょっと登攀技術がいるけれど、困難としてはそれだけだ。行けると思う」
そんな報告だったので、ド・ヴァンさんもこの小道を使うことにしたのだ。
僕たちが進んだ道は、高台になっているだけあって足を取るような沼地ではなかった。
しかし、胸元まである草が一面に繁茂していて、前進にはそれなりに困難が伴うものと思われた。
「……まぁ、沼に比べたら対応はしやすいな」
ド・ヴァンさんはそう言うと、
「マディラ、悪いが団員の中から『火』のエレメントを持つ者を選抜して、前路啓開隊を編成してくれ。先鋒隊と協力して、草を焼き払うんだ。指揮はテキーラに任せよう」
マディラさんにそう指示する。
「了解しましたが、草を焼き払う煙はワタシたちの存在を暴露します。魔物の格好の目標になってしまうのでは?」
心配を口にする。ド・ヴァンさんは笑って、
「それも狙いの一つさ。だから先鋒をウォッカにしているんだ。この進撃は前路啓開隊、ウォッカ隊、ボクの部隊、団長くんたち、マディラ隊、ソルティ隊、ブルー隊の順で進む。
沼地の化け物がワインの言うとおりサーペントなら、高台にだって進出してくるさ。5百人もの人間、奴らにとってはごちそう以外のないものでもないだろうからね」
そう答えると、僕に向かって言った。
「団長くん、君の騎士団員で当座戦闘可能なのは君とワインとラムさん、そしてアイリスさんくらいだろう? シェリーさんやジンジャーさん、チャチャちゃんのことはボクたちに任せておいてくれたまえ」
「いよいよ高台に上る道にかかるけれど、大丈夫か? 無理するようであればド・ヴァンさんに話して、最後尾に付いてもいいんだぞ?」
行軍中、僕は後ろを歩くシェリーに問いかける。ちなみにドッカーノ村騎士団はアイリスさんとラムさん、僕とワインとジンジャーさん、シェリーとチャチャちゃんの順で歩いていた。
「……うん、大丈夫。何とか付いていけるんじゃないかな?」
シェリーが笑って言う。負傷者3名のうち最もひどいケガをしたのがシェリー、次いでジンジャーさんだった。ジンジャーさんも表情こそ普通だが、肩で息をしている場面も何度か見かけた。
(シェリーたちは思い切って『ドラゴン・シン』の集積所に残すべきじゃなかったかな?
確かあそこにはド・ヴァンさんの仲間でメアリー・ブラッドレイって人が詰めていたはずだし、補給線の伸びに従って補給処は前進させるって話でもあったし……)
僕は今さらながらそう思ったが、さりとて特にシェリーが僕の残置命令におとなしく従うとも思えなかった。
(仕方ない、完全に遅れてしまうことを想定して、『ドラゴン・シン』の後を追いかけられるようにしておくか)
僕がそんなことを考えている時、
「あっ、シェリーお姉さまっ!」
すぐ後ろでチャチャちゃんの声がした。僕が振り返ってみると、シェリーがきつそうにチャチャちゃんから支えられている姿が見えた。
「シェリー、大丈夫か?」
僕は慌ててシェリーのところへ駆け寄る。後ろからはまだマディラさんたちの部隊が続いている。ここで道を塞ぐわけにはいかない。
「シェリー、もう少し頑張れ。チャチャちゃん、ワインに伝えてくれ。僕はシェリーと一緒に追い付くから、ワインが一時的に指揮を執って前進してくれって」
チャチャちゃんはシェリーを心配そうに見ていたが、僕が笑うとうなずいて、
「分かりました。団長さん、シェリーお姉さまをお願いしますっ!」
そう言って、前方へと駆けて行った。
「さて、ここで道を塞ぐわけにはいかないから……シェリー、ちょっとごめんな?」
「えっ、ジン。なにを? きゃっ!?」
僕はシェリーを腕に抱え上げると、そのまま高台へと上り始めた。
「ジ、ジン、大丈夫だから下ろして。恥ずかしいよ」
僕の腕に抱えられたシェリーがそう言うが、僕は一切無視した。
「平らな所まで我慢しろ」
「でも、アタシ重いでしょ? それに両手がふさがっていたら、何かあった時の対応が遅れるよ?」
「気にするな、僕を誰だと思っている? それにお前は、自分で気にしているほど重くはないぞ。恥ずかしがらずにおとなしく抱えられていてくれ」
平らな所に出たら、マディラさんたちの部隊を邪魔せずにいくらでも寝転がれる場所がある。シェリーは諦めたのか、僕の肩に顔を付け、身体を固くしておとなしくしていた。
30分ほど歩いて台地の上へと上り詰めた僕は、後続のマディラさんから声をかけられた。いつの間にか追い付かれたらしい。
「ジン団長、シェリーさんの調子が良くないのですか?」
「ええ、ちょっと無理をしたみたいです。ジンジャーさんもかなり無理をしているみたいだから、ドッカーノ村騎士団は遅れるかもしれません。ド・ヴァンさんに会ったら、心配しないように伝えておいてくれませんか?」
マディラさんはそれを聞くと、心配を顔に表して、
「え? 勝手が分からない敵地で孤立するのは危険です。ワタシの部隊でドッカーノ村騎士団を援護いたしましょうか?」
そう申し出てくれたが、僕はそれを断った。
「いえ、マディラさんは『ドラゴン・シン』の頭脳。ド・ヴァンさんが頼りにされている方ですから、こんな所で引き留めるわけにはいきません。先に行ってください」
マディラさんは僕の返事を聞いて、僕の腕の中で眠ってしまったシェリーをうらやましそうに眺めた後、しぶしぶ決断した。
「……分かりました。でも、お二人だけをここに残すのはやはり心配です。ブルーを援護に残しましょう」
そう言うと、近くにいた護衛の兵士に、
「ブルー隊長にジン団長たちのことを伝え、シェリー副団長の調子が戻るまでお二人を援護するように伝えてくれ」
そう命令し、伝令が走り出すのを見た後、
「……では、ワタシは先に行きます。何かあったら遠慮せずにブルーを頼ってください」
そう言うと、部隊を率いて前進して行った。
「……マディラさんは行っちゃったよ」
僕がそうつぶやくと、シェリーは真っ赤になった顔を向けて言う。
「……アタシが寝たふりしていたの、知ってたの?」
「当たり前だ。そのくらいのことに気付けなきゃ、お前の恋人って言えないだろ?」
僕がそっけなく言うと、シェリーはむすっとして、
「お、下ろしてよ。アタシだって守られてばかりの女の子じゃないんだから! それに、平らなところだったら歩けるから!」
そう言うが、僕はかえってしっかりとシェリーを抱きかかえ、青い右目を見つめて言う。
「動くな、危ないじゃないか。お前が僕のために一生懸命なのは、旅を始める前から分かっているんだから、ケガをしている時くらいおとなしくしてくれ。でないと、僕はずっとハラハラしなくちゃならない」
「……/// そ、そんなに見つめられたら恥ずかしいじゃない! もう、ジンったらいっつもズルいんだから……」
照れたシェリーがそう言った時、僕の『風の楽譜』に魔物の魔力を感じた。それもかなり大きい奴だ。
それを感じとると同時に、僕は『大地の護り』を発動する。
「え? ジン?」
突然のシールド発動に、シェリーが戸惑いの表情で僕を見る。そして僕が真剣な顔になっているのを見て、
「……魔物ね? 下ろして、アタシも戦う!」
そう言ってきた。
「シェリー、ここで言い争っている時間はない。だから俺の言うことを聞け。
お前は黙って俺の腕に抱かれていろ。お前の力が必要な時は遠慮なんかしないから、この程度の敵はここで高みの見物をしているといい」
「でも……」
シェリーが何か言おうとしたとき、崖を這い上って来たのか、巨大な蛇の頭がぬっと現れた。そいつは僕とシェリーを見ると、大口を開けてこちらに這いよって来る。大きい。大人の人間なら立ったまま一飲みにできそうなくらいの大きさだった。
シェリーは、その様を見て顔を青くして僕に言う。
「お、下ろして! でないと二人とも食べられちゃう!」
「動くなっ!!」
「ひっ!?」
僕は這いよって来るサーペントに向かって叫んだ。と共に、紫紺の魔力が身体を包み、矢のようにサーペントの脳天を貫く。これで巨大サーペントの行動の自由を奪ったはずだ。
「貴様は魔王の眷属か?」
僕が訊くと、サーペントは赤い瞳で憎々し気に僕を睨みつけながら、
『たわけが!『暗黒領域』に住まうもので、魔王様の眷属でないものがいると思うか?』
そう答えて来た。
僕はうなずくと言う。我ながら冷たい声だった。
「そうか、お前が俺やこの娘を狙ってきたのなら、容赦はしないでいいわけだ」
するとサーペントは嘲笑いながら言う。
『ふん、『伝説の英雄』だか何だか知らないが、私から見たらお前は魔族のくせに人間の肩を持ち、同族を殺しまくる醜悪な裏切り者だ。
もう周囲は私の仲間たちが包囲しているのにも気付けないで、何が『伝説の英雄』だ。笑わせるな!』
「知っているさ」
『え?』
「貴様たちが俺を付けていたことなんて、この台地の登り口に差し掛かるときから判っていたさ。いつ襲い掛かって来るかと楽しみにしていたんだが、この場所で、このタイミングでってことは、貴様、あまり実戦経験はないな?」
『黙れ! 我が同胞よ、こいつを八つ裂きにしろ!』
サーペントの怒号が響くと、周囲の木々がざわめき、その樹上にいくつもの大蛇の頭が現れる。僕は黙って『風の楽譜』に映るサーペントたちの魔力を数えてみた。
「……50匹程度で、この俺を倒せると思っているとは、俺も甘く見られたものだな。
一つ訊くが、貴様たちは貫通攻撃を持っているか?」
僕からぎろりと睨まれたサーペントは、身体を少しのけ反らせて答える。
『か、貫通攻撃だと?』
サーペントは明らかに狼狽していた。ということは、こいつらは貫通攻撃を持っていないか、そもそも『貫通攻撃』が何たるやも知らないのだろう。
僕はニヤリと笑って言った。
「貫通攻撃を持っていないなら、俺を倒すのは諦めた方がいいな。それと忠告だ、10数える間に撤退しろ。そしたら全滅だけは免れるぞ。10、9、8、7……」
するとサーペントは、再び身体を震わせて怒号を発した。
『この生意気な魔族を八つ裂きにしろ!』
シャアアアッ!
サーペントの号令と共に、四方八方から僕を目がけて、大口を開けた大蛇たちが飛び掛かって来た。
「……3、2、1、ステージ4・セクト1『大地磔刑』っ!」
ズバババンッ!
グワッ! ジャアアアッ! ギュギャウンッ!
瞬きするほど須臾の間に、大蛇たちは地面から突き出した魔力の槍に頭を貫かれ、あちこちで断末魔の声を上げて静かになった。
僕は緋色の瞳でサーペントを見つめて言った。
「だから忠告した。貫通攻撃を持っていないのなら俺を倒すなど諦めろと。
さて、貴様には同胞の後を追って死ぬ運命と、俺の言うことを聞いて残りの同胞を救う運命と、二つの道がある。どっちを選ぶ?」
★ ★ ★ ★ ★
「ジ、ジン団長、これはいったい!?」
僕がサーペントの隊長を消し炭にした直後、戦闘の気配を感じて急いで駆け付けたソルティ・ドッグさんは、周囲に散乱する大蛇たちの骸を眺めて唖然とした。
「……ああ、俺を狙ってちょっかいをかけて来たから、遊んでやっただけだ。死体を処理してもらえると助かるが、お願いできるかな?」
僕がそう言うと、ソルティさんは信じられないという表情で訊いて来る。
「お、お一人で、このサーペントたちを全部?」
「ああ」
「シェ、シェリーさんを抱えたままで?」
「シェリーは調子が悪いんだ、戦わせられない。それにこの程度の敵なら、わざわざシェリーを下ろして怖い思いをさせなくてもいいからな」
「……わ、分かりました。処理はお任せください」
怖気をふるうように言うソルティさんに、
「ありがとう。俺は騎士団に復帰する。手間をかけて済まない」
そう言うと、シェリーを抱えて歩き出した。
「……この巨大なサーペント50匹以上を、たった一人で、剣も抜かずに?……」
僕を見送るソルティさんが、茫然とつぶやくのが聞こえた。
それから10分も歩いただろうか、ずっと固まったままでいたシェリーは、
「ふうっ……」
小さなため息をつく。やっと人心地を取り戻したようだ。
「よく、おとなしくしてくれていたな。礼を言う」
僕が言うと、シェリーは耳まで赤くして、
「う、うん。ジン、すごくカッコ良かった。アタシを抱えたままで戦ったら、足手まといになりはしないかって、それだけが心配だったけれど」
そう言うと、僕の首に両手を回してきた。
「俺だって相手を見る。シェリーを抱えたままじゃ不利だと思ったら、お前をシールドに入れるとか、お前に援護をお願いするとか、それなりの配慮はするさ」
僕が言うと、シェリーはにっこり笑って訊いて来る。
「そうだよね? アタシはジンのお荷物じゃないよね?」
「お前がお荷物なんてことはない。今回はたまたまお前の体調が悪かったから戦わせなかっただけだ。でなければ、援護を頼んでいた。そうすれば、奴らはもっと援軍を呼んでいただろう。沼地の障碍になりえる種族を一網打尽にできたかもしれないからな」
僕の身体から、無意識に魔族の魔力が漏れ出る。そのせいかは知らないが、シェリーがぶるっと身体を震わせた。
「あ……」
「どうしたシェリー? 気分が悪いか?」
僕が慌てて訊くと、シェリーは首を横に振って、小さな声で言う。
「そうじゃない……そうじゃないの。ジンの魔力に触れると、なんかヘンな気持ちになっちゃうっていうか……」
そこで僕は、自分が魔族の魔力を発動していたことに気付いた。
「あ、ごめん。まだ気が立っているのかもしれない」
「う、ううん。それはいいよ。あれだけ短時間で凄い魔法を使ったんだもん、気が立っていて当然だよ。
それより、ちょっとアタシを木の陰に連れて行ってくれないかな?」
シェリーがもじもじしながらそう頼んで来る。周囲には別に不穏な魔力も感じないし、さすがにシェリーも疲れたんだろうと思って、僕は彼女の頼みに応じた。
道から少し離れた大木の陰まで来ると、シェリーが甘い声で言う。
「こ、ここで下ろして」
「分かった。ふらつかないかい?」
僕がそう言いながらシェリーを下ろすと、
「へ、平気……きゃっ」
「大丈夫か? まだふらつくなら……」
ふらついて倒れそうになったシェリーを支えると、シェリーはそのまま僕の胸にしなだれ掛かって来た。身体が熱い、体調がさらに悪化しているのか?
「シェリー、熱があるのか!? なら早く騎士団に連れて行かないと……」
僕が焦ってシェリーを抱え上げようとすると、シェリーは
「ちがっ、違うのっ!」
そう言いながら僕に抱き着き、耳元でささやいた。
「……ほしく、なっちゃったの……ジンを見てたら……ジンの魔力に触れたら……。
だから、ちょうだい?」
その頃、ドッカーノ村騎士団に残ったワインは、チャチャからの報告を受け、
「ジンのことだから、単身でもある程度の敵なら対応できるだろうし、シェリーちゃんを守りながらでも戦えるだろう。それにジンの後ろからはマディラさんやソルティさん、ブルーさんの隊も続いているし……。
分かった、ボクたちは少し前進速度を落とそう。どうせジンたちは後続部隊のいずれかと一緒にやって来るだろうからね」
そう言うと、ジンジャーを見る。ジンジャーは少し考えていたが、
「わたしが本調子なら、ちょっと様子を見て来たいところだけど……。まぁ、ワインくんがそう言うなら、わたしとしては助かるわ。正直、これ以上ペースを上げるなんて無理だったもの」
「なら、私がひとっ走りジン様たちの様子を見て来ようか?」
ラムが長剣の鞘を押さえながら言う。
「いや、キミはここに居てほしい。アイリスさん、ちょっといいかな?」
ワインは、逸るラムを押し留め、翠の髪にアンバーの瞳を持った、真っ赤なメイド服の少女に声をかける。
「なんでしょうか、ワインさん?」
アイリスはそう言いながらワインの側にやって来る。
「キミに、ジンの様子を見てきてほしいんだ。もし、ジンたちが無事なら、そのままジンたちに合流してシェリーちゃんの介護を頼みたい。
ジンたちが魔物に襲われていたら、それを援護し、戦闘後に戻って来て報告してほしい。
お願いできるかな?」
ワインが頼むと、アイリスは輝くような笑顔でうなずき、
「お任せください! でも、ご主人様とシェリーさんの魔力は、5マイル後方にはっきりと探知できますが? 詳細な目視報告が欲しいということでしょうか?」
そう言うと、ワインは苦笑して答えた。
「そうだった、キミにはウォーラさんやガイアさん以上の探索能力があったっけな。
でもまぁ、せっかく頼んだんだ。目視より信頼できる情報はないし、行ってもらおうか」
「はいっ! では早速」
アイリスはそう言うと、槍を背中に担いだまま後方へと走り出した。
「……シェリーは無理しすぎていないか? 我が父上がこんな命令を出さなければ、まだ本陣の看護馬車の中で寝ていなきゃならないところだぞ?」
ラムが言うと、ワインもうなずいた。
「ああ、それはジンジャーさんも一緒だ。本当ならジンも、シェリーちゃんやジンジャーさんは残して来たかっただろうさ。
けれど、『暗黒領域』でひとたび離れ離れになったら、再び会えるかどうかは保証の限りじゃない。シェリーちゃんだって、残すと言っても聞き分け良く残っていたかは疑問だしね? ジンとしては悩んだところだろうね」
「ちなみにワイン、君はジン様にどうアドバイスしたんだ?」
ラムが訊くと、ワインはため息と共に肩をすくめた。
「何も相談は受けなかったよ? ジンとしては、シール戦士長から依頼があった時点で考えていたことだろうから、ボクは彼の決断には何も言わなかった」
「相談がなかった!? いくらジン様とはいえ、例えばシェリーの傷が悪化したらどうするつもりなんだ!? そこは幼馴染として君が意見すべきじゃなかったのか!?」
ラムが怒ったように訊くと、ワインは寂しそうに笑って答えた。
「……うん、それがジンジャーさんやチャチャちゃん、ラムさんに関しての決断なら、ボクは一応反対意見を言っただろうさ。
でも、ジンは『伝説の英雄』で、シェリーちゃんはそれを助ける『乙女』だ。もうあの二人は、ボクが知っている幼馴染と立場が違ってきているんだ。
その二人が決めたことなら、部外者であるボクが何を言えるって思うんだい?」
「ワイン……」
寂しそうなワインの笑いを見て、ラムはそれ以上もう何も言えなくなった。そして彼女は、ため息と共に頭の後ろで手を組み、天を仰いで湿った声で言った。
「なるほど……はぁ、私は告白する前に失恋したって訳か……」
一方アイリスは、走っている途中で後続のマディラ部隊とソルティ部隊に出会った。
(マディラ様たちに訊いたら、ご主人様たちがどのような状況か判るかもしれませんね)
アイリスの魔力探知機で判るのは、ジンとシェリーの所在だけだ。例えばケガしているとか、具合が悪くなっているなどの詳細な情報は、探知器では見分けることができない。
そのため、アイリスはマディラを見つけると、躊躇なく話しかけた。
「あのぅ、すみません。うちはドッカーノ村騎士団団員のアイリス・ララ、製造型番PTD10『彼女』ですが。マディラ隊長さんですよね?」
深紅のメイド服を着た少女から話しかけられたマディラは、一瞬身構えたが、アイリスがジンの団員だと判ると親しげに答えた。
「ああ、ワタシがマディラ・トゥデイだが。何か用事なのかな?」
「あの、ご主人様と出会われませんでしたか?」
おずおずと訊くアイリスに、マディラは満面の笑顔で、
「ああ、台地の登り口から2百ヤードほど行った所で出会ったよ。
ソルティから連絡があったが、君の団長さんは凄いな。50匹以上のポイズンサーペントを、たった一人で、シェリーさんを抱えたまま、剣も抜かずに退治したそうだ」
「え?」
マディラの言葉に、アイリスの表情が凍る。だが、マディラは興奮しているのか、そんな表情の変化に気付かずに話を続けた。
「ワタシもサーペントの気配を感じたので急いで引き返したんだが、到着した頃にはすべてが終わっていたよ。戦闘時間は2分もかかっちゃいなかったって話だ。
50匹のサーペントを2分で瞬殺だなんて、さすが『伝説の英雄』は格が違うね」
「では、それでご主人様やシェリーさんは怪我でもされたのでしょうか?」
そこにやって来たソルティは、必死になって訊くアイリスに、何かの異常を感じて真剣な顔になる。
「いや、お二人ともケガはなかった。わたしたちにサーペントの死体処理を任せて、先に進まれたんだが、まさかまだ合流されていないのか?」
「……い、居場所は判っていますので、うちが確認してきます。マディラ様やソルティ様は気にせず先に進まれてください」
アイリスには様々な状況判断や情報処理のために、ウォーラやガイアの記憶もデータとして保存されていた。その中のウォーラの感情と、魔力探知機で計測した結果が、アイリスにそう答えさせた。
(……ご主人様とシェリーさんの魔力の位置ベクトルが、完全に一致しています。これはお二人が重なり合って倒れているということかも知れません。
ご主人様が、調子の良くないシェリーさんをおんぶしている可能性もありますが、先ほどからぜんぜん位置が変わらないから、その線は希薄です……だとしたらお二人は、今どういった状況に!?)
「いや、ジン団長に何かあったら、うちの団長が悲しまれる。やはりワタシも行こう」
マディラがそう言うのを、アイリスは困ったように聞いていたが、折衷案として
「分かりました。でも、ご主人様の位置ははっきりと掴んでおりますので、うちが行って手に負えない状況なら支援をお願いすることにいたします。
それまでこの場所で待機していただくわけにはまいりませんか?」
そう提案すると、マディラもアイリスの必死の懇願に負けたのか、
「分かった。ワタシの出番がないことを祈ろう。ソルティは先に行ってちょうだい」
そう言って部隊に小休止を命じた。
「ありがとうございます!」
アイリスはホッとしてマディラにお礼を言うと、ゆっくりと歩き始める。ウォーラの記憶が、アイリスに不思議な感情を呼び起こしていた。
(何故でしょう? ご主人様に会いたい、ご主人様のご無事を一刻も早く確認したいのに、なぜか今はご主人様のお側に行ってはいけない気がするのです。行ったら、うちにとって心が痛くなる光景が待っているような気がして……)
そう思いながらも、アイリスは戦闘・索敵用の自律的魔人形として、無意識にジンの魔力がある方向を拡大望遠視覚で確認する。そしてその目で見た光景に思わず衝撃を受けて立ち止まってしまった。
(……胸が、痛い……頭が、真っ白になっていく……これって、これって……)
アイリスは、頬が何かでぬれる感じがした。手を頬に当てると、涙が次から次へと流れているのだと分かった。
アイリスの視界がぼやける。彼女は、見たくない光景からやっと目を逸らすことができた。そして天を仰いでつぶやいた。
「……これが、『失恋』というものなのですね……ウォーラがこの光景を見たら、どう感じたのでしょうか?」
★ ★ ★ ★ ★
「それは本当なの!?」
こちらは、『瘴気の密林』にある街道の『大屈曲部』に布陣した『勇士の軍団』遊撃部隊の本陣である。天幕の中で、遊撃部隊の統一指揮官でドッカーノ村騎士団先遣隊長でもある少女……元精霊王のマロン・デヴァステータは、白髪で緋色の瞳を持つ若者と話をしていた。
「……悪いが、俺はこと戦いに関することでは冗談を言わないんだ。君もそのことは知っているだろう?」
薄笑いを浮かべて言う青年に、マロンは刺々しい口調で言う。
「アルケー、やっぱりあなた、『運命の背反者』と手を結んでいたのね? エピメイアの口車に乗って魔王に実体を与えるってどういうこと!?」
「おっと、俺とエピメイアは手を結んじゃいないぜ? それはあくまでも『フリ』ってことだ。俺はエピメイアに頼まれたり、脅されたりしたから魔王に実体を与えたんじゃない。
むしろ今、魔王を実体化したら、エピメイアが不利になるって確信したから、彼女の誘いに乗っただけだ」
凄みのある笑いを浮かべてそう言うアルケーを、マロンは冷ややかな視線で見つめる。彼の言うことを1ミリも信じていない目つきだった。
だが、当のアルケーは、マロンのそんな視線をものともせずに言う。
「マロン、お前がジン・クロウを魔王と戦わせなければ、エピメイアはすべての魔族を敵に回すことになる。お前が望む、俺とジン・クロウの連携すら可能になるだろう」
マロンは、『アルケーとジンの連携』という単語を聞いて、ぴくっと反応し、ゆっくりアルケーに向き直りながら訊いた。
「ジン様を魔王と戦わせてはいけない理由って何?」
するとアルケーは、唇の片側だけをつり上げて笑い、
「ヒントをあげよう。『魔王の心臓はそのまま』だ。そして『魔王は今、マイティ・クロウの姿をしている。マイティ・クロウと隻眼の賢者スリング、そしてエレノア・ライムの魔力と記憶を得て』な?
ここまで言えば解るだろう? 魔王の相手は、あのダイ・アクーニンとかいう小僧に任せておけ」
そう言って立ち去ろうとする。
「待って、アルケー。それで、あなたはどうするつもりなの?」
アルケーは背中をマロンに向けたまま、
「俺は『勇士の軍団』本隊を壊滅させてから、ゆっくりとエピメイアを罠にはめるさ。
その時が来たら、お前やジン・クロウに知らせるから、絶対にジンを魔王と戦わせるんじゃないぞ?」
そう言って、その場からかき消すようにいなくなった。
(……魔王が実体化した。それもマイティ・クロウの姿で……確かに、ジン様がこの情報を知ったらどうなるか、わたくしにも想像がつきませんね。
なら、ここはダイ・アクーニンに動いてもらわざるを得ないでしょうね)
「……それにしても、ジン様たちをわたくしの幕僚としてお迎えする準備は整ったっていうのに、アルケーが勝手なことをするもんだから……」
マロンは、ダイたちが出て行って広くなった天幕を見て、ため息と共にそうつぶやいた。
(……ジン様をこの場からしばらくでも引き離す方法がないかしら……)
そう考えていた時、急に外が騒がしくなった。
(何事かしら? 例の巨大サーペントが襲ってきたとか?)
マロンが急いで天幕を出ると、
「マロン様、魔物の襲来です」
金髪碧眼で革の胸当てを付けた女性戦士が、弓を携えてマロンのもとにやって来た。
「ドーラ、相手は何者? サーペントではないようね」
マロンが翠の瞳を持つ目を細めて訊くと、ドーラはうなずいて、
「お兄さまが確認に出ていますが、どうやらシュバルツユニコーン族のようです」
そう言う。マロンは驚いて、
「シュバルツユニコーン族? 賢者マーリンの話では、ランズロウはジン様を狙うことを止めたんじゃなかったの?」
そう訊く。
ドーラは首を振って、不思議そうに答える。
「私もそう聞いてはいましたが、何かの手違いがあったのでしょうか?」
「とにかく、ランズロウが再び敵に回ったのなら見過ごせないわ。わたくしも前に出ましょう。今、どの部隊が出ていますか?」
マロンの問いに、ドーラは
「スコッチ殿が5百を連れて柵の外に出ています。ダイ・アクーニンの指示で、コア殿が5百を連れて敵の側面に位置するように移動中です。
他には、丘の頂上にいるガン・スミス殿の猟兵軍団は、すでに敵軍に狙いを定めていると聞きました」
そう、打てば響くように答える。
「シュバルツユニコーン族はいかほど来ているのかしら? ジン様を襲った時は3千ほどの部隊でやって来たって聞きましたが」
「正面に2百ほどです。他に別動隊が出てきているかは不明です」
「それはまずいわ! 攻撃しちゃダメ!」
マロンは、自分の問いに対するドーラの答えを聞いて駆けだした。
「マロン様、一体どういうことですか?」
急に駆け出したマロンに驚いたドーラは、追いかけてきてそう訊く。
「ランズロウはシュバルツユニコーンの王。そして長らく『瘴気の密林』を統治してきた人物よ。そんな男が、たかだか2百の兵を率いただけで攻め寄せて来るとは思えないわ。
もし、わたくしたちに害意があるなら、彼の性格からして集められるだけの兵を揃えてやって来るはずよ。
だからまずは話を聞かなきゃ。わたくしがいると知ったら、たとえこの部隊に対して敵意があったとしても、そう簡単に手出しはしないはずよ」
マロンが陣地の柵にたどり着いた時、シュバルツユニコーン部隊はちょうどスコッチ隊と正対したところだった。
「俺はスコッチ・カッパー。21年前にはマイティ・クロウ様と共に『魔王の降臨』を戦った者だ。再び魔王が降臨すると聞いて、その阻止のために『約束の地』までまかり通る。
来れる軍はどこのどいつだ!?『勇士の軍団』遊撃部隊の前を遮るのなら、蹴散らしてでも押し通るぞ!」
マロンは陣内を見渡す。どこかにダイがいて、ランズロウ・ミステイルが陣前に現れるのを虎視眈々と狙っているに違いない。
「いたわ!」
マロンは、ダイが櫓の上で白い旗を持ってシュバルツユニコーン族を睨みつけているのを見つけた。ランズロウが前に出て、名乗りを上げる瞬間、あの旗を振るに違いない。
そしてガン・スミスはその合図に合わせて一斉射撃をお見舞いし、それと同時にコアの5百が側面から突撃するのだろう。
(あの旗を振らせちゃいけない!)
そう思った瞬間には、マロンの姿はダイの後ろにあった。マロンは無言でダイから旗を奪い取る。
「えっ? マロンさん?」
完全に虚を突かれたダイは、素っ頓狂な声を出してマロンを見つめる。マロンはその可愛らしい顔を真っ赤にして怒っていた。
「……あなたらしい罠だけど、まずはランズロウの話を聞きましょう。わたくしが賢者マーリンから聞いた話では、ランズロウはマーリン自身の説得によって『魔王の降臨』の戦局外に居ることを決めたそうだから」
「しかし、僕たちが通り過ぎた後、『瘴気の密林』を封鎖されたら、マジツエー帝国に戻れなくなりますが? 災いの芽は今のうちに摘み取っておく方が……」
ダイがそう言うと、マロンは首を振った。
「彼が災いになるかどうかは分かりません。少なくとも今の段階では敵ではありません。そんな種族にこちらからケンカを売るような真似は許しません!
あなたの用意した罠は、話を聞いてから発動しても遅くはありません。今しばらく我慢して、ランズロウが何のためにここに来たのかを聞いておきなさい」
12・3歳にしか見えないが、マロンは精霊王だった人物である。ここ一番の時の押しの強さと迫力は1級品だった。ダイは渋々だが、マロンの威圧に負けて
「……分かりましたよ。では、奴を討った方がいいと判断したら、その旗を僕にお預けください」
そう言う。マロンはにっこりと笑ってうなずいた。
「ご丁寧なあいさつ痛み入る。我はシュバルツユニコーン族の王にして『瘴気の密林』を統べるもの、ランズロウ・ミステイルだ。今日は人間の英雄たちに知らせたいことがあって参った」
ランズロウは威風堂々としていた。2メートルを超える、まるでオーガかと見間違えるような体躯、黒光りした頑丈そうな鎧、そして漆黒の瞳には強い意志が込められていた。
「ランズロウ殿か、お初にお目にかかる。して、そなたが知らせたいこととは?」
スコッチはランズロウの巨体を見ても怯えもせず、むしろ微笑さえ浮かべてそう訊く。さすがは前の『伝説の英雄』の眼鏡に適い、従者として、そして親衛隊長として戦った歴戦の男だけあった。
そんなスコッチに、ランズロウも頬を緩めて言う。
「スコッチ・カッパー殿といえば、前の『魔王の降臨』の際、マイティ・クロウ殿の親衛隊長として鳴らした豪の者だな。時は流れてもその豪胆さは変わらないと見受ける。そなたに敬意を表するぞ」
そしてスコッチに対し一礼すると、言葉を続けた。
「大事な知らせだ、一度しか言わない。
魔王が実体を持ち、魔軍を編成し終えた。近い将来、魔軍がそなたたちの道を阻むだろう。だが、我が領域内で戦われても迷惑至極。
よって我らシュバルツユニコーン族が、そなたたちの道案内を務めよう。一刻も早く我が領域を出て『決戦の荒野』を目指すといい」
その言葉に、スコッチは少しの沈黙の後、答えた。
「……失礼ながらお聞きする。そなたらシュバルツユニコーン族は、ジン・ライム殿を襲ったと聞いたが、その情報は誤りということか?」
それに対し、ランズロウは正直に答えた。
「我は『摂理の超越者』の依頼で、ジン・クロウ殿を襲ったのは確かだ。
しかし、我が精鋭3千が、ジン・クロウ殿はじめわずか6人に敗れたのも事実。賢者マーリン殿や元精霊王だったお方までがジン・クロウ殿に味方していることを知り、敵対することの愚を悟ったのだ。
我の話を信じるも信じないも、そなたたち次第だ。我が好意を受けても見返りを求めはしないし、受けなくてもそなたたちを妨害することはしない」
明らかにスコッチは狼狽していた。ダイとの手はずでは、ランズロウが名乗りを上げた瞬間、ダイが旗を振るのを合図に『猟兵軍団』が狙撃魔杖で一斉射撃を浴びせ、コアの伏兵5百がランズロウ軍の側面から突撃をする予定だった。
だが合図がないまま、思いもよらぬ提案を受けてしまうことになった。きっとガン・スミスも、コアも、何がどうなっているのかと疑問に思っているに違いない。
たまりかねたスコッチは、ダイがいるはずの櫓に顔を向ける。そしてびっくりした顔になる。そこにはマロンもいて、ダイはただランズロウをじっと見つめているだけなのだ。
「どうするのダイ? ランズロウの好意を受ける? 受けない?……いずれにしても、今回罠は必要ないわね」
マロンはそう言って旗を櫓から投げ落とした。それを見て、スコッチの気持ちは決まった。
「ランズロウ殿、そのご厚意、『勇士の軍団』遊撃部隊はありがたくお受けしよう」
★ ★ ★ ★ ★
『決戦の荒野』は、魔王のいる『約束の地』を取り巻くように窪んだ土地である。『約束の地』より5百メートル低く、周囲の平地と比べても50メートルは低い。
しかし、雨が降らないこの地では、どれだけ低地でも水がたまることはない。もちろん、『決戦の荒野』には川や池の類は一切ない。
その『決戦の荒野』を見下ろす『約束の地』に、銀髪で翠の瞳を持つ男が立っていた。
「どうだい魔王、作戦は決まったかい?」
白髪で緋色の瞳を持った男が、銀髪の魔王の後ろに現れて訊く。
「……アルケー・クロウ様ですか。お教えいただいたとおり、『勇士の軍団』本隊には8個連隊1万6千を差し向け、俺は5個連隊1万を率いてジン・クロウがいる遊撃部隊を襲います。すでに全軍布陣を終え、『伝説の英雄』を待つばかりとなっています」
魔王は目を細めてそう答える。『絶対にジンを討ち取る』という自信に満ちていた。
「そこで相談なんだが」
アルケー・クロウはにこやかに笑いながら魔王に言った。
「俺に10個連隊を任せてくれないだろうか?
というのは、『勇士の軍団』本隊は『決戦の荒野』に入れる前にすり潰しておきたくてね? 本隊が崩れれば、遊撃部隊の指揮官はスコッチ・カッパーという人間だ、戦意を失ってジン・クロウたちを放り出し退却するかもしれない。
そうなったら、ジンたちには万に一つの勝ち目もなくなる。どうだろうか?」
アルケーが言うと、魔王は少し何かを考えていたが、やがて大きくうなずいて答えた。
「いいでしょう。他ならぬ『魔族の祖』たるアルケー様のお力をお借りできるだけでも心強いのに、『勇士の軍団』まで排除いただけるとは嬉しい限りです」
アルケーは上機嫌に笑って、
「あはははは、願いを聞いてくれて嬉しいよ。では、俺は適当に2万を連れて先に出る。
君はここでジン・クロウをじっくりと料理してやりたまえ」
アルケーはそう言うと、姿を消した。
「作戦は順調に進んでいるようね? 自ら前に出て『勇士の軍団』を叩くなんて、アルケーも思いのほか義理堅いのかしら?」
アルケーがいなくなったのを見計らうかのように、白髪を長く伸ばしラピスラズリのような瞳をした、青く薄い布を無造作に身体に巻き付けただけの少女が現れる。細い腰には、銀の太いベルトが巻かれている。
「これはエピメイア様。新たな摂理の編み上げは終わられましたか?」
魔王が訊くと、エピメイアは薄く笑って答える。
「それには答える必要はないし、あなたも知る必要はないわ。あなたはただ、『伝説の英雄』を倒し、人間たちに塗炭の苦しみを味わわせればいいのよ」
叱責を含んだようなそっけない返事に、魔王はただ頭を下げる。
「は、失礼いたしました。では、私も陣形を整え直すと致しましょう」
「陣形を整え直す?……それはどういうことでしょうか?」
魔王の言葉に、一抹の不安を覚えたエピメイアが訊くと、魔王は笑って答えた。
「はは、アルケー様が当初の兵より多くの連隊をご所望されまして。ですが、これで『勇士の軍団』の本隊は確実に全滅ですな」
「……あの緻密なアルケーが、今になって軍隊区分を変えた?……ちなみにバーボン・クロウ、昔と今の兵力配分を教えてくれないかしら?」
(アルケー・クロウは、確かに思い付きで物事を進める一面もあるけれど、こと軍事や策略にかけては緻密な計算を欠かさない男。そのアルケーが今になって陣形の混乱をも招きかねない軍隊区分の変更を行うなんて……)
ちょっとした疑問だった。しかしそれは黒い雲のようにエピメイアの心を覆い尽くそうとしていた。
そんなことは露ほども知らない魔王は、至極簡単に答えた。
「は、最初はアルケー様が8個連隊、俺が5個連隊の予定でしたが、アルケー様が10個連隊2万で『勇士の軍団』本隊を潰し、俺が残りの3個連隊6千でジン・クロウを仕留める……そういう配置になりました」
(この配置は、万全の態勢で『勇士の軍団』本隊を叩き潰し、返す刃でジン・クロウを前後から挟み撃ちにしようということかしら?
それとも、単に魔王の隙を大きくしようということかしら?)
魔王の話を聞いているうちに、疑惑の雲が広がって来たエピメイアだった。
「……そう、ジン・クロウは『勇士の軍団』の遊撃部隊とともにやって来るってことね?
遊撃部隊は2千ほどしかいないから、ジン個人をあなたが相手すれば、勝利の公算は高いわね。では、しっかりやってちょうだい、魔王バーボン・クロウ」
「はい。お任せを」
魔王が頭を下げる。それを見ながらエピメイアは、
(アルケー・クロウは何か企んでいるわね。それがどんな罠かは知らないけれど、私を敵に回すつもりなら容赦はしないわよ)
そう、冷たい微笑と共に思うのだった。
一方で、10個連隊を引き連れて『決戦の荒野』を出たアルケー・クロウは、配下の隊長たちに、
「君たちを連れて来たのはほかでもない、みんな知ってのとおり『伝説の英雄』が『勇士の軍団』を引き連れて魔王を倒しに来た。
我ら魔族は、長らく人間から蔑まれ、『暗黒領域』にひっそりと暮らしていたが、マジツエー帝国の奴らはそんな我らの暮らしを顧みることなく『暗黒領域』を勝手に探索し、仲間たちを手にかけ、領域を奪っている。
我らも他人に土足で踏み入られたら頭に来るのは当然だ。ここで『伝説の英雄』を倒し、我ら魔族の怒りと力を見せつけるべきだ。
そのためには、まず『伝説の英雄』の手足である『勇士の軍団』を血祭に挙げる。目標はオーガ侯率いる左龍軍団3千とユニコーン侯国戦士長率いる右鳳軍団3千、計6千だ。
我らは奴らの3倍を超える。勝ちは動かないので安心して全力で戦え。『勇士の軍団』を叩いたら、そのまま『伝説の英雄』の首をもらいに行くぞ!」
そう、長広舌を揮った。
10人の連隊長たちは、『魔族の祖』アルケー・クロウの堂々たる態度に、絶大な信頼感を覚え、口々に賛同と興奮の叫びを挙げた。
興奮する連隊長たちを見て、アルケーはニヤリと笑った。
(それでいい。お前たちはすべて、俺が望む世界を招来するための捨て駒だ。せいぜい頑張ってスピリタスやシールと遊んでくれ。俺はその間に、マロンと……)
そこまで考えて、アルケーは不意に真剣な顔になる。
(……ふむ、エピメイアに気取られてもいけないな。その昔はプロノイアと共に『摂理の二柱』と言われていたエピメイアだ、俺が軍隊区分を変えたことに気付けばいぶかしく思うだろうな。ひょっとしたら、もう俺を見張っているかもしれない)
「ワイバーン連隊長!」
アルケーは最も索敵攻撃に適した連隊長を指名する。ワイバーン連隊長は、目を輝かせてアルケーの前にやって来た。
「お呼びでしょうか?」
「うん。『勇士の軍団』はここ一両日中に『瘴気の密林』を越えてくる気がする。
ついては、連隊の総力を挙げて左龍・右鳳部隊の所在を確認し報告してくれ。
奴らが『瘴気の密林』を出た瞬間、壊滅させるんだ」
アルケーがそう命令すると、ワイバーン連隊長は胸を張って答える。
「お任せください。立ちどころに所在を暴いてご覧に入れましょう。ですが、我が連隊だけでの攻撃はいけないのでしょうか?」
「この戦いは我が『暗黒領域』を守るためのもの。諸部隊の協力の下で戦いたい。
むろん、我が麾下の諸部隊なら、単独で『勇士の軍団』を消滅させられるだろうが、魔族全体が協力して敵を壊滅させたという形の方が、人間たちへの威圧としては効果が大きいだろう。
ワイバーン連隊長、別に君の部隊が力不足だと言っているわけではない。魔族の大連合で戦う方が、我らの正義を喧伝しやすいんだ。解ってくれるな?」
ワイバーン連隊長への答えは、他の連隊長までも感激させた。
「もったいないお言葉です。では、奴らの所在を突き止めに参ります」
ワイバーン連隊長がそう言って空に舞い上がり、咆哮を上げて部下たちを呼び集める。2千のワイバーンたちは、雲のように群れて南西の空へと飛び去った。
「では、我らは陸路を進むぞ。俺は少しエピメイア様に用があるのでしばらく留守にする。その間は、ナスホルン連隊長が全体の指揮を執って前進せよ。目的地は『髑髏の谷』だ」
「やあジン。今までどこで何やっていたんだい? シェリーちゃんともども連絡が取れなくなるから、みんな心配していたんだよ?」
シェリーの体調が回復した後、僕たちを探しに来ていたアイリスさんと共にドッカーノ村騎士団に戻ったら、ワインがニヤニヤしながらそう訊いてきた。
「悪い。登り道の途中でシェリーの具合が悪くなったんで、少し休憩していたんだ」
僕が頭をかきながら答えると、ワインは碧眼で僕をじっと見つめて、
「ふむ……ソルティさんから聞いたが、サーペントの群れを全滅させたって? 彼女がびっくりしていたよ。50匹ものサーペントを、わずか数分で、しかもシェリーちゃんを抱えたまま倒したそうじゃないか。
キミの魔力が増大していることは感じていたが、そこまでのものとは思わなかったよ。やはり、魔王が実体を持ったのかもしれないな」
そう言うと、
「だが、キミはドッカーノ村騎士団の団長、シェリーちゃんは副団長だ。その二人がそろって連絡が取れない事態になると、ボクとしては非常に困る。
今後はいつ、魔族の軍団が襲ってくるか分からないし、ド・ヴァンくんや遊撃部隊との連携も密にしなければならなくなるんだよ?」
ワインらしい言葉で僕に苦言を呈する。
「……悪かった、以後改めるよ。ところで、アイリスさんの様子がちょっと変なんだ。相談に乗ってくれないか?」
僕はワインに謝るとともに、気になっていることを話す。というのは、アイリスさんは僕らを迎えに来たはいいものの、騎士団に復帰するまで一言もしゃべってくれなかったのだ。それに、態度がどことなくよそよそしくもあった。
「シェリーちゃん、ちょっといいかな?」
ワインはちょっとシェリーを見ると、手招きする。
「なぁにワイン? 手招きなんかするなんてアンタらしくないじゃない」
ワインは、シェリーが僕の横にやって来ると、チェシャー猫みたいな笑顔を僕たちに向け、小声で訊いてきた。
「シェリーちゃん、ジンは優しく扱ってくれたかい?」
「へっ!? な、なんのこと?」
一瞬でゆでだこのように顔を赤くしたシェリーを見て、ワインは優しくうなずき、
「アイリスさんは、キミたちが仲良しする場面を見てしまったのかもしれないな。
だが、シェリーちゃんはジンのために『乙女』の運命を受け入れる覚悟をしているし、ジンはそんな『乙女』の運命を変えようと頑張っている……そのことは、彼女にも解ってもらわないといけない」
そう言うと、シェリーは顔を両手で覆って恥ずかしそうに言う。
「そ、それが本当なら、アタシどんな顔でみんなの前に立てばいいの? それにアタシとジンのことがラムにバレたら、ラムだっていい気持ちはしないと思うし」
「そこは、二人とも今までどおりでいいんじゃないかな? シェリーちゃんの決意はみんなが知っていることだし、そもそもキミたちがそんな関係になったってことは、『東の砦』を出る時にみんな気付いていたからね」
ワインがさらっと恐ろしいことをのたまう。
「待てワイン。ってことは、ラムさん以外はみんな知っているってことか!? なんで? お前、黙っていてくれたんだろう?」
僕が慌てて訊くと、ワインは呆れたように肩をすくめると、
「まぁ、ボクはキミと約束したし、シェリーちゃんのことも考えて黙ってはいたが、バレバレだとは思っていたよ?
だって、シェリーちゃんの身体を視れば、一部分にジンの魔力や生命力が凝っているんだからね。一目瞭然だったんじゃないかな?」
そう言ってシェリーを見る。シェリーは顔を真っ赤にしながら、サッと後ろを向いて、
「う~っ/// ワインのスケベ、イジワル! 教えてくれたってよかったじゃない!」
そう文句を言う。
ワインは笑いながら、でもどこか寂しそうな顔でシェリーに言った。
「キミたちが特別な関係を結ぶってことは、お互いの運命をしょい込むってことで、そんじょそこらの男女がくっつくのとはわけが違うんだ。みんなそのことを知っているし、シェリーちゃんの決意も知っているから、茶化したりしなかったのさ。
いや、それを口に出すことはキミたちを冒涜するとすら思っているみたいだよ? これはジンジャーさんが言っていたがね」
「……そ、そうなんだ。でもやっぱり、何だか恥ずかしい」
シェリーが言う『恥ずかしい』は、単に『羞恥』ということだけじゃないだろう。だって話を聞いていた僕も、同じように恥ずかしさが胸に広がっていたから。
僕とシェリーは顔を見合わせる。そんな僕たちに、ワインはさらに言ってくれた。
「……それにラムさんだって、キミたちの関係が変わったってことには薄々気付いているよ。気付いていて知らないふりをしながら、自分の気持ちを整理しようとしているんじゃないかな?
だから彼女のためにも、キミたちはいつもどおりでいてあげてくれ。でないと、ラムさんは自分を惨めに思うかもしれないからね」
「えっ?」
シェリーが顔を強張らせる。そしてすごく済まなさそうな表情でつぶやいた。
「……アタシ、ラムがユニコーン侯国に行くとき、『ジンには手を出さないから、心配せずに行って来て』って言ったんだ。約束、破っちゃったな……」
それは初耳だった。そう言えばラムさんが出発する前、二人で何かを話していたような覚えがあるが、そういうことだったのか……。
僕はシェリーの眼を見ながら言った。
「……シェリーの気持ちは分かるけれど、約束した時とは状況も違っていたろう? 少なくとも、僕はあの時、お前が側にいてくれたことでどれだけ助かったか判らないし、お前には感謝しているんだ。だから僕は後悔はしていない」
「ジン……うん、アタシも後悔はしていないよ? でも、ラムに悪いなって思う気持ちもあるんだ」
シェリーがそう言った時、ラムさんが近付いて来て訊いた。
「シェリー、体調が悪かったって? 大丈夫なのか?」
シェリーはビクッと身体を震わせたが、すぐに笑顔になって、
「あ、うん。大丈夫だよ。遅れちゃってごめんね?」
そう答えると、ラムさんはにこりと笑い、
「……無理するんじゃないぞ? 君は側にいてジン様を助けるっていう大きな役目があるんだからな。
それとジン様、マロン様がおいでです。すぐに来ていただけますか?」
「え、マロン様が? 分かった、一緒に行こう」
僕はラムさんと共に歩き出した。シェリーとワインは、少し遅れて付いて来る。
「マロンさんが来られたということは、緊急の用事だろうな」
僕がつぶやくと、ラムさんもうなずいて言う。
「ええ。明日には私たちも遊撃部隊の陣地に着く予定でしたし、そのことは事前に『風の耳』でお知らせしていたはずですから」
(……それなのにここに来られるのなら、それはかなり大事な話に違いない。どんなことが起こっていても、臨機応変に対応しなくちゃな……)
僕はそう思いながら歩を進める。
やがて天幕の前で、マロンさんが物思いにふけっているのが見えた。少女のようなその横顔が憂いに満ち、そしてどこか焦っているように見えた。
(沼地の怪物を狩ろう! 終わり)
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
2026年初めての『キャバスラ』はいかがだったでしょうか?
魔王が動き始めましたが、同時にアルケーも何やら怪しい動きを取っています。エピメイアも疑心暗鬼になる中、ジンたちはいよいよ運命の場所へと足を踏み入れることになります。
……ということは、この『キャバスラ』も、クライマックスが近付いているってことになるんだなぁ。
そのクライマックスに向けて、魔王との決戦やその後も含め少し構成を見直します。
そのため、次回は2月の投稿にさせてください。お楽しみに。
★ ★ ★ ★ ★ ★ ★
【主な登場人物紹介】
■ドッカーノ村騎士団
♤ジン・ライム 18歳 ドッカーノ村騎士団の団長。典型的『鈍感系思わせぶり主人公』だったが、旅が彼を成長させている。いろんな人から好かれる『伝説の英雄』候補。
♤ワイン・レッド 18歳 ジンの幼馴染みでエルフ族。結構チャラい。水の槍使いで博学多才、智謀に長ける。『PTD7・淑女』と共に『PTD6・ナルシスト』を倒した。
♡シェリー・シュガー 18歳 ジンの幼馴染みでシルフの短剣使い。弓も使って長距離戦も受け持つ。ジン大好きっ子で負けフラグをへし折った『幼馴染ヒロイン』。
♡ラム・レーズン 19歳 ユニコーン族の娘で『伝説の英雄』を探す旅の途中、ジンのいる村に来た。魔力も強いし長剣の名手。シェリーのライバルである『正統派ヒロイン』。『右鳳軍団』に先行し、ジンと合流を果たした。
♡チャチャ・フォーク 14歳 マーターギ村出身の凄腕狙撃手。謎の組織から母を殺され、事件に関わったジンの騎士団に入団する。シェリーが大好きな『百合っ子ヒロイン』。
♡ジンジャー・エイル 21歳 他の騎士団に所属していたが、ジンにほれ込んで移籍してきた不思議な女性。闇魔法の使い手で、『PTD4・幽霊』を倒すも、右腕を失った。
♡メロン・ソーダ 年齢不詳 元は木々の精霊王マロン・デヴァステータだがその地位を剥奪された。『魔族の祖』アルケー・クロウの関係者で、彼を追っている。現在ジンたちとは別に『先遣隊』を率いて行動中。
♤ダイ・アクーニン 28歳 賢者ストックの息子で卓越した知力と魔法を誇る弓使い。魔王を目の敵にし、傭兵隊長だったコア・クトーや錬金術師のシロヴィン・ボルドーとともに先遣隊に加わった。現在、マロンと行動中。
♡アイリス・ララ 『PTD10・ドール』を名乗り、ジンを瀕死に追い込むほど善戦した自律的魔人形。ジンの魔力で再起動し、新たに仲間となった。
■トナーリマーチ騎士団『ドラゴン・シン』
♤オー・ド・ヴィー・ド・ヴァン 21歳 アルクニー公国随一の騎士団『ドラゴン・シン』のギルドマスター。大商人の御曹司で、頭も切れ双剣の腕も確かだが女好き。
♤ウォッカ・イエスタデイ 21歳 ド・ヴァンのギルド副官。オーガの一族出身である。無口で生真面目。戦闘が三度の飯より好き。オーガの戦士長、スピリタスの息子。現在、『左龍軍団』を連れて原隊に復帰した。
♡マディラ・トゥデイ 20歳 ド・ヴァンのギルド事務長。金髪碧眼で美男子のような見た目の女の子。生真面目だが考えることはエグい。狙撃魔杖の2丁遣い。
♡ソルティ・ドッグ 21歳 『ドラゴン・シン』の先鋒隊長である弓使い。黒髪と黒い瞳がエキゾチックな感じを醸し出している。調査・探索が得意。
♤テキーラ・トゥモロウ 年齢不詳 謎の組織から身分を隠して『ドラゴン・シン』に入団した謎の男。いつもマントに身を包み、ペストマスクをつけている。現在、ド・ヴァンの許可のもと、『暗黒領域』で単独行動をしている。
♤ブルー・ハワイ 25歳『ドラゴン・シン」の遊撃兼偵察隊長である槍使い。金髪碧眼で観察力と記憶力に優れる。変装に優れ、情報を分析する能力に長ける。
♡メアリー・ブラッドレイ 25歳『ドラゴン・シン』で物資調達を引き受けている槍使い。ド・ヴァンを詐欺ろうとして失敗、許されて彼に心酔し仲間になった。
■退場した仲間たち
♡レイラ・コパック 博識で氷魔法の使い手。スナイプのスカウトで加入した。『PTD5・法律家』を倒すも『PTD3・道化』に止めを刺された。享年17歳。
♡ウォーラ・ララ ジンの魔力で再起動した自律的魔人形。彼に献身的に仕えたが、『PTD2・戦士』との戦いで相討ちとなった。
♡ガイア・ララ 謎の組織の依頼でマッドな博士が造ったエランドールでウォーラの姉。『PTD1・学生』と対峙したが、相討ちとなって果てた。
♡エレーナ・ライム(賢者スナイプ)28歳『賢者会議』の一員だった才媛。ジンに自身が人工生命体であることを明かし『風の宝玉の欠片』を譲る。『PTD3・道化』を倒すも、『道化』が残した瘴気に侵されてしまったが、マーリンの秘薬『諸刃の韻律』によって命は救われた。現在、視力を失いマーリンの許にいる。




