Tournament158 The Demon King’s Army hunting:1(魔王軍を狩ろう!その1)
魔王の出撃を知り、マロンやダイは『勇士の軍団』を囮にする作戦を立てた。ジンたちやド・ヴァンたちを分離したマロンのもとに、アルケー・クロウが現れて……。
【前回のあらすじ】
ジンたちは『勇士の軍団』遊撃部隊に加わるため、間道を進むことにした。
その頃、魔王は遂に魔軍の編成を完結させたが、アルケー・クロウがその大部分を率いて『勇士の軍団』本隊に攻撃をかけることにする。
だが、それを聞いたエピメイアは、アルケーに対して疑念を募らせたのだった。
★ ★ ★ ★ ★ ★ ★
(……マロン様がわざわざここに来られるのなら、それはかなり大事な話に違いない。どんなことが起こっていても、臨機応変に対応しなくちゃな……)
僕はそう思いながら歩を進める。
やがて天幕の前で、マロンさんが物思いにふけっているのが見えた。少女のようなその横顔が憂いに満ち、そしてどこか焦っているように見えた。
「マロン様、お久しぶりです。何事が起ったのですか?」
僕が声をかけると、マロンさんはハッと顔を上げ、僕に向かって駆け寄って来た。これはいよいよただ事ではないだろう。
「ジン様、ちょっと状況に変化が起きました。いい話と悪い話があります。どちらから聞かれたいですか?」
マロン様は真剣な表情を崩さない。いつも飄々として、僕に対して冗談すら言うマロン様が、いきなり本題に入るのも珍しい。
「……では、悪い知らせから聞きましょうか」
僕が答えると、マロン様はつっかえたものを吐き出すように、
「魔王が実体を持ち、魔軍を率いて発向しました。それにジン様の所在も知られています。魔軍のほとんどは本隊を目指していますが、魔王自身は遊撃部隊を狙っているようですから……」
そう言う。
僕は思わず両手を握りしめた。『魔王が実体を持った』……そのことは、取りも直さず父マイティ・クロウや隻眼の賢者スリング様、そしてかあさまが敗れたことを意味するからだ。
「……魔王め……分かりました。で、いい話というのは?」
僕が絞り出すような声で言うと、マロン様は哀しみと慈愛に満ちた目で僕を見て、
「……心中お察しするわ。わたくしだって、ジン様が合流するまでマイティ・クロウは踏ん張ってくれると思っていたから。
それで、いい話って言うのは、シュバルツユニコーン族が道案内を買って出てくれたの。近道を教えてくれるそうだから、これで『瘴気の密林』は何なく越えることができるわ。
明後日には出口に差し掛かるんじゃないかしら?」
なるほど、これは朗報だ。すでに『瘴気の密林』で進撃を止めて1週間。アントンさんたちの道案内でなんとかこの困難を克服しようと思っていたが、この地域の領主ともいえるランズロウ殿の助けを得られれば進撃は容易だ。ベリーハードがイージーになったようなものだと言える。
おまけに、シュバルツユニコーン族しか知らない近道を通れるなら、時間的には当初の予定から若干遅れるに過ぎない。
「それは良かったです。では、一刻も早く『瘴気の密林』を出て、魔王を迎え撃ちましょう!」
僕はそう言うと、マロンさんは首を振って、思いがけないことを僕に提案した。
「ジン様、わたくしは全体の戦略を考え直す方がいいと思います」
「戦略を考え直す? それはどういうことでしょうか?」
僕は闘志に水を差されたような気がして、マロンさんに訊く。魔王がこちらに向かって来ているなら、僕自身の手で引導を渡し父や母の仇を取るつもりでいたのだ。
しかしマロンさんは、にっこりと笑って言う。
「別にジン様の決意に水を差すわけではないわ、魔王は倒さねばならない。でも、同じ倒すにしても被害は最小にする方がいいと思っているの。だってその後、『運命の背反者』との戦いも控えているし……」
それは確かにそうだ。『魔王の降臨』を止めるにしても、被害は少ない方がいいに決まっている。
「……何か、秘策があるんですね? お聞かせください」
僕が言うと、マロンさんは真剣な顔で
「魔王は実体を持ったと言っても、その心臓は変わらず『風の魔障壁』の中にあります。実体を相手にするより、心臓を破壊した方が効率がいい。そう思いませんか?」
そう驚くべき情報を知らせてくれる。
「魔王の心臓はまだ『約束の地』にあるってことですか? そんな情報、どうやって手に入れたんです?」
僕が訊くと、マロンさんは花のような微笑で言った。
「アルケー・クロウが教えてくれました。心臓を別の場所で守っているのなら、実体は実質不死でしょう。ですから、実体をわたくしたちが抑えている間に、ジン様に心臓を破壊していただきたいのです」
その情報を知らなければ、僕たちは勝ち目のない消耗戦に引きずり込まれるところだった。危ないところだったと言える。
しかし、そうすると別の心配も生まれて来た。
「……魔王の実体を抑えると言っても、それ自体が難事だと思いますが。僕が抜けて『遊撃部隊』の方は大丈夫でしょうか?」
僕が訊くと、マロンさんは弾けるような笑いを浮かべて答えた。
「うふふ、わたくしは元精霊王ですよ? それに『遊撃軍団』には、ジン様に負けず劣らず魔王に復仇を誓った者がいます。
ですから、ジン様は『ドラゴン・シン』と共に別の道を使って『約束の地』に至り、魔王の心臓を止めてほしいのです」
「ド・ヴァンさんたちまで!? いったいどうして?」
するとマロンさんは、忘れられないような冷たい微笑と共に言った。
「ド・ヴァン殿こそ、ジン様の護衛にぴったりだと思います。こちらには、ダイ・アクーニンがいます。ダイなら、命と引き換えにしてでも魔王を抑えられるでしょう」
「はあ!? アタシたちと『ドラゴン・シン』だけで魔王の本拠地に乗り込め、ですって!?
マロンさんってば、どんな考え方をしたらそういった結論になるわけ!?」
僕が『騎士団』の天幕に戻って、仲間たちにマロンさんの考えを説明すると、真っ先にシェリーが怒ったような声を上げた。
「途中には『決戦の荒野』もあるのよ? 『転移魔法陣』で移動するか、空を飛ばない限り魔物との戦いは必至よ。
バーボンおじさまが『決戦の荒野』を抜けるのだって、『勇士の軍団』1万人くらいを率いて行ったんでしょ? そこを5百かそこらで突破できると思っているのかしら?」
シェリーの疑問に、ワインもうなずく。
「ボクは、魔王の心臓が『約束の地』に残っているのなら、それを別個に叩くという考えも、そのためボクらに『ドラゴン・シン』を同行させるという判断も、一応は理解できる。
ただ、その判断の根拠がアルケー・クロウからの情報だっていうところに、一抹の不安を覚えるんだ。アルケー・クロウは『魔王の心臓』という餌に食いついたジンと、エピメイアを戦わせるんじゃないかってね?」
ワインの危惧は分かる。だが僕は、マロンさんとアルケー・クロウとの関わりを見ていて、両者の間には不思議な信頼関係があるのではないか? と感じていた。
「……シェリーやワインの心配は解る。でも、魔王にしろエピメイアにしろ、いずれは戦わねばならない敵だ。『虎穴に入らずんば虎子を得ず』と言う。魔王を確実に仕留められるのなら、あえて虎穴にも入ろうじゃないか」
僕がそう言うと、シェリーはワインと顔を見合わせ、ため息をついた。
「はぁ……こうと決めたら譲らないジンだものね。分かった、マロンさんの見立てとアルケー・クロウの情報が正しいことを願うわ」
シェリーがそう言うと、ワインも、
「……情報さえ正しければ、そして奇襲ができるなら、マロンさんの考えは戦略的には最善手だからね。
ボクもジンが感じているという、マロンさんとアルケー・クロウのつながりって奴に賭けてみるとするよ」
そう言って笑うと、改めて僕の顔を見て訊く。
「……それで?『瘴気の密林』をどうやって越える? そして『約束の地』まで迷わずに行くためにはどうするんだい? その方法がないと、奇襲なんて夢のまた夢だが?」
僕がその問いに詰まった時、チャチャちゃんが二人の戦士の来訪を告げた。
「団長さん、アントン・シエイエスって方とドーラ・シエイエスって方が、団長さんに会いたいって来られています」
これはまさに天の配剤だった。僕はすぐ二人に、天幕の中に入ってもらった。
「一別以来ですね。アントン・シエイエスです。元精霊王マロン・デヴァステータ様の指示でジン・ライム殿の加勢に推参いたしました」
「同じく、マロン様の指示で推参しました。ドーラ・シエイエスです。これからよろしくお願いいたします」
チャチャちゃんから案内された二人の戦士は、僕の天幕に入ると姿勢を正して挨拶する。どちらも歴戦の戦士であることは、先のシュバルツユニコーン族との戦いで証明されている。魔王の本拠地に一刻も早く到達しなければならなくなった僕たちにとって、心強い味方になると確信した。
「マロン様があなた方をここに遣わしたということは、今回の作戦変更についても、すでに説明を受けていると思います。とにかく、敵に見つからないように一刻も早く『瘴気の密林』を抜けねばなりません。よろしくお願いいたします」
僕がそうあいさつすると、二人は微笑して答えた。
「ご安心を。シュバルツユニコーン族は道案内についただけでなく、魔王軍の動向も見張っていてくれています。すでに遊撃部隊と本隊は別ルートで『瘴気の密林』を突破するために動き始めていますので、魔王たちの眼はそちらに向くでしょう」
「私たちは街道を外れ、以前私たちが発見した間道を使って『決戦の荒野』に出ましょう。
こちらの道は、恐らく魔王たちも知らないでしょうから、奇襲という点ではもってこいだと思います」
するとワインが二人に問いかける。
「また会いましたね? 今のうちに確認したいんですがアントンさんとドーラさん、お二人は賢者マーリン様とはどういったご関係ですか?」
「ああ、ワインさん、お久しぶりです。あなたのことはマーリンがとても褒めていましたよ。知識に対して貪欲で覚えも速いと。私たちはマーリンが『クオリアス理論』が完成しかけた頃からの知り合いです」
「彼の要望で、『暗黒領域』を探索し、『虚影の空』の秘密を探っていたんです」
アントンさんとドーラさんの言葉に、ワインが鋭く反応した。
「『虚影の空』?」
「詳しくお話しする機会があればいいですが、ざっくりと言うとこの世界を規定する概念の一つです。『虚空』が生んだ世界は、『虚空』に包含される意識であり、その真実の空に揺蕩う統括意識が反映されているのが、今私たちがいるこの世界だ……というものです」
ドーラさんがそう説明すると、何か言いかけたワインを抑えるようにアントンさんは両手を挙げて、
「ではこの世界は虚像か? とか言う疑問はぶつけないでくれよ。その疑問こそが、マーリンが俺たちを『暗黒領域』に放り出した理由だからな。つまり、世界は虚構かという疑問は、まだ解けちゃいないんだ。
今はそんな高尚なことを議論する場合じゃない。一刻も早く『約束の地』に行くべき時だろう? 事務総長さん、ジン団長、出発しようぜ?」
僕を見てニカリと笑った。
動き始めたドッカーノ村騎士団と『ドラゴン・シン』を眺めながら、スコッチ・カッパーとガン・スミスは笑っていた。
「ふん、ジン団長を遊撃部隊に迎えるとか言い出した時は、ダイのヤツとうとうトチ狂ったかと思ったが……」
「正真正銘、ダイは常識の埒外にいる男だってことが証明されたな」
スコッチのボヤキに似たセリフを、ガン・スミスが引き取って言う。
しかし、同じくジンたちを見送っていた翠の髪をした少女は、明るい声で二人の言葉を否定した。
「あら、わたくしはそうは思わないわ。ダイの作戦じゃないと、最終目的を達成できないと思うもの」
「魔王を倒して魔物たちを『暗黒領域』に押し込めるのが、最終目的じゃないんですか?
マロンさんは、そのほかにどんな目的があるって言うんです?」
いぶかし気に訊くスコッチや、同じく疑問符を頭に浮かべているガン・スミスに、マロンはジンたちが消えた密林の方向を向いたまま、逆に訊いた。
「聞いていないかしら? 今度の『魔王の降臨』は、『摂理の黄昏』っていう終末的な出来事の引き金になっている可能性が高いことを」
マロンの言葉を聞いて、スコッチはガン・スミスを見る。ガン・スミスは黙って首を横に振った。
「さて……『摂理の黄昏』という言葉すら、初めて聞きましたが?」
スコッチが答えると、マロンは遠くを見る姿勢のまま、
「そう……。『摂理の黄昏』は、その名のとおり世の摂理が機能しなくなった世界のことよ……そんな世界を世界って呼んでいいならね」
そう静かに言う。後半はほとんど独り言だった。
「しかし、そんなことにならないよう、『摂理の調律者』様や四神の皆様が世界を常に見ておられるのでは?」
ガン・スミスが訊くと、マロンは二人を振り返る。真剣な眼差しだった。こんな真面目なマロンを見たことがなかった二人は、凄絶な美しさとも言えるマロンの表情に気圧されて黙り込む。
「……『魔王の降臨』は、魔王を倒せる人物なら誰でも止めることができますが、『摂理の黄昏』の方は、『繋ぐ者』になった『伝説の英雄』でないと止められません。
つまり、『摂理の黄昏』を止められるのはジン様ただ一人。そんなジン様を『魔王の降臨』から続けざまに戦わせるより、魔王は魔王に当たることのできる人物に任せる方がいいと思いませんか?」
マロンの言葉に、スコッチは不思議そうに問いかける。
「そりゃあ、マロンさんの仰るとおりだが、いますか? あの魔王を倒せる、『伝説の英雄』に匹敵するような戦士が」
するとマロンは、つぼみが開くように笑みをこぼして答えた。
「います。ダイ・アクーニンという規格外の人物が」
★ ★ ★ ★ ★
『瘴気の密林』で1週間以上も立ち往生していた『勇士の軍団』本隊6千は、思わぬ協力者を得て行動を再開していた。
「シュバルツユニコーン族が道案内に立ってくれたので、魔物が多い地域や踏破困難な地域を避けて進軍できる。ありがたいことだな」
『左龍軍団』の指揮官で本隊全体の指揮官を兼ねるオーガ侯国の国主スピリタス・イエスタデイは、そうご機嫌な声で話していたが、『右鳳軍団』指揮官で全軍の副指揮官でもあるユニコーン侯国戦士長のシール・レーズンは、反対に憂いの色を額に滲ませていた。
「シール殿、何か心配事でもあるのか? 一番の懸念だった『瘴気の密林』の兵要地誌も、シュバルツユニコーン族のおかげで十分に解明できた。
後はいち早く密林を抜け、『決戦の荒野』までひた走るだけではないか?」
「スピリタス侯、我が『勇士の軍団』は、本隊と遊撃部隊に分かれて進撃していますが、それぞれの位置は2日行程以上に離れてしまっています。これではもしも敵が全軍一丸となって攻め来た場合、お互いに連携を取って行動することはもちろん、相互に支援することすら難しく、各個撃破されてしまいます」
シールは、周囲に気を払いながら小声で言う。シールの言葉を悲観的に捉えれば、本隊は孤立しているということでもあり、そんなふうに部下の将兵に広まってしまえば、士気の低下、最悪の場合には前進拒否すら起こりえる。
スピリタスとてそんなことは分かっている。しかし、シールを『智将』とすれば彼は多分に『猛将』であり、
「シール殿、そなたの心配は分かる。余も遊撃軍団や猟兵軍団が側にいてくれれば、さらに安心するところだ。
だが、離れていると言っても2日行程。それにお互いの連絡線も、後方の補給路もしっかりと確保している。どうしようもなくなったら、お互いに近付きつつ後方に下がればいいだけだ。あまり心配せず、先に敵を見つけられるよう努力しよう」
シールの戦意を奮い立たせるようにそう言って笑うのだった。
(ふむ……わしの心配は、ジン・ライム殿の所在が昨日から皆目つかめなくなったということなのだが……。スピリタス殿のことだ、前進すればジン殿に会えると思っているのだろうな)
シールはそう思いつつ、スピリタスに訊く。
「スピリタス様、前回の『魔王の降臨』について覚えておられますか?」
「おお、マイティ・クロウ様と共に戦った戦役だな。よく覚えているぞ」
マイティ・クロウの雄姿を思い出したのか、スピリタスが顔を輝かせて答える。そんなスピリタスに、シールはあえて気持ちを逆なでするであろう質問をした。
「前回、『伝説の英雄』たるマイティ・クロウ様は、一時たりともこの『勇士の軍団』本隊から離れられることはありませんでした。
しかし、今回は遊撃部隊に移られ、本隊の援護の許『約束の地』に入られようとしています。このことについて、スピリタス様はどう考えられますか?」
すると、意外なことにスピリタスは目を細めて答える。
「ふむ、前回は我が『勇士の軍団』と魔軍の本隊は兵力が拮抗していた。それは魔軍が大陸に部隊をばらまいた後にマイティ・クロウ様が立たれたことも関係している。
当時の魔軍は精鋭のほとんどを大陸に向け、それをマイティ・クロウ様が悉く撃滅した。そのため、我らが『決戦の荒野』にたどり着いた時、兵力差はあまり気にならぬほどまで縮まっていたのだ。
しかし、今回は違う。魔軍はまだその兵力を十分に温存している状態だ。逆に我らの方が故国を守るため『勇士の軍団』の兵力を縮小せざるを得なかった。
そんな中で、大きく強力だが鈍重な部隊が、小さいが軽快な部隊のために囮となり、敵兵力の大部分を引き付けるのも戦略的にはうなずけるところもある。さすがは寡を以て衆を制することを得意とするダイ・アクーニンが考えそうなことだと思うぞ」
それを聞いて、シールは目を見開いた。『ジンを遊撃部隊に』と要求してきたのは、遊撃部隊を指揮する元精霊王のマロンだ。しかしスピリタスは、その狙いも、そして恐らくマロンに献策した人物までも見抜いていたのだ。
「ふむ、では、我らは『瘴気の密林』の出口までは急いで進撃し、その後はどの辺りまで出ますかな?」
シールが訊くと、スピリタスは笑って答えた。
「まあ、『髑髏の谷』の隘路は越えておきたいな。だが、そこまで行かずとも魔軍の本隊は早めに突っかかって来てくれるだろうがな。
シール殿もその見立てで、兵たちに材木を抱えさせているのだろう?」
その答えに、シールは笑ってうなずくと、
「ご明察。では、決戦場は『霧の湿原』辺りになるでしょうな」
そう答えて笑った。
一方、アルケー・クロウが率いる魔軍10個連隊2万人は、『髑髏の谷』に本陣を構え、『瘴気の密林』の出口に偵察隊を放っていた。
「ふむ、ワイバーン部隊のおかげで『勇士の軍団』本隊の位置は早めに掴んではいたが、進撃速度が思ったより速いな。21年前とは植生も生態系も少し変わっているので、昔の知識など役に立たないはずだが……」
アルケーは、『勇士の軍団』本隊が、1週間の遅滞の後、目覚めたかのように快進撃を続ける様を見て首をひねる。
「……誰か今の『瘴気の密林』に詳しい者が加わったか。あるいはシュバルツユニコーン族が手を貸しているかだな。
まあいい、どうせ俺はこちらに長居するつもりはないからな」
ニヤリと笑ったアルケーは、ゆっくりと立ち上がると、壁に掛けた黒いマントを外し身にまとう。
「アルケー・クロウ様、お出かけでしょうか?」
ドアを開けると、警護に立っている豹頭の魔人が訊いて来る。
「ほう、今日の警護はパンテル連隊が担当か」
アルケーが訊くと、警護の兵士は背筋を伸ばして答える。
「はっ! パンテル連隊第1大隊であります! お出かけなら、大隊長殿に申し上げて護衛部隊を用意いたします!」
するとアルケーは薄く笑って首を振り、
「俺はちょっと秘密の用事で出てくる。だから護衛は不要だ。大隊長にそう伝えておけ」
「は、しかし……ひっ!!」
何か言いかけた兵士は、アルケーの冷たい視線を浴びて震え上がる。
「……俺は無用だと言った。聞こえなかったか?」
「い、いえ、聞こえました! ではアルケー様、お気をつけて!」
膝をがくがくさせてそう叫ぶ警護の兵に、アルケーは少し表情を緩め、
「俺がいない間はゆっくり休め。もうすぐ『勇士の軍団』本隊との決戦だからな」
そう言うと、ゆっくりと崖の壁面に造られた桟道を上っていく。
やがて谷を見下ろす断崖上まで来たアルケーは、今度は西の方角……『瘴気の密林』の出口がある方角……に向かって歩き出す。
この断崖上には軍道が走っており、50メートル置きに小隊規模の宿営地と大きな岩がごろごろと集積してある広場が設けてある。
その広場に近付く度に、部署の長がアルケーの方を向いて敬礼してくるが、アルケーは考え事をしているふりをしてそれを無視する。
やがて、切り立った崖の端に来たアルケーは、遠く西の方角を望む。ここからは『瘴気の密林』は見えないが、うすぼんやりと大気を覆う霧の存在だけははっきりと分かる。
「……『霧の湿原』か。視界が制限され、所々にある池や沼地は大兵力の展開を困難にする。『勇士の軍団』本隊の指揮官、スピリタスやシールの性格を考えれば、奴らはあそこを決戦の場にしたいと考えているだろうな」
アルケーはそうつぶやいて微笑する。
(逆に俺たち魔軍の主力は、この谷を守れば『勇士の軍団』を『決戦の荒野』に行かせないという目的は達成する。だが、同じ魔族でありながら、俺の行く道を阻むユニコーン族やオーガ族に対しては思い知らせてやる必要がある。
だとしたら、ここで守勢を取って遅滞戦術で満足していいわけはない。どうせここに居る奴らも俺の駒だ。思いっきりすり潰して、赤い湿原にしてやろう)
そう決めたアルケーは、左手の掌を上にして開く。掌から数百のチョウが空中へ飛び立った。
「奴らの行動を見張り、陣地を構築し始めたらその縄張りを詳しく見て来てくれ。特に、スピリタスとシールがどこにいるのかを重点的にな」
アルケーの周りを飛び回っていたチョウたちは、その言葉を聞くと一斉に西の方へと飛んで行った。
(後は、ジンの方だ。奴がうまく魔王との戦いを避けてくれればいいが……いや、マロンがいる。あいつならジンと魔王を戦わせるなという俺の忠告を聞き、何らかの手を打つはずだ)
「……頼むぞ、マロン……」
アルケーはそうつぶやくと、来た道をゆっくりと戻り始めた。
こちらは『勇士の軍団』遊撃部隊である。ジンたちを見送ったマロンは、『遊撃軍団』指揮官のスコッチ、『猟兵軍団』指揮官のガン・スミス、そして遊撃部隊で軍師を務めるダイ・アクーニンを集めて、今後の行動を打ち合わせていた。
「さて、ジン様たちは出発したわ。問題はジン様がこの部隊にいないことを魔王に悟られないようにするためには、どうしたらいいかってことよ。
ジン様の周囲にはドッカーノ村騎士団7人に、ド・ヴァンさんの『ドラゴン・シン』5百人しかいないから、『約束の地』まで見つからずに行くことが絶対条件なの。ダイ、何かあなたに妙案はないかしら?」
マロンが訊くと、ダイはめんどくさそうに訊き返す。
「こっちに向かっているのは、魔王とその配下の部隊6千でしたっけ?」
「そうね。それに恐らく『魔王親衛隊』も来ると思うわ」
マロンの答えにも、ダイは通り一遍の反応しか示さなかった。
「親衛隊っていうからには強いんだろうな? どんな奴らだい?」
「一応『隊』といってはいるけど、構成人員はたったの3人よ」
「3人? つまりは魔王が最も信頼する護衛たちってことか? マロンさん、どんな奴らか分かりますか?」
ダイは途端にそれまでの興味なさそうな態度から、マロンに詳しい情報を求める姿勢に変わった。『3人』というのが彼の興味と、戦術家としての嗅覚に引っ掛かったのだろう。
マロンはくちびるをきゅっと引き締める。ダイやスコッチ、ガン・スミスには、それがマロンなりの緊張の表情だと分かった。
「『魔王親衛隊』とは、彼ら自身で名乗っているわ。
先ず、ファルカロス。彼は空間規定が得意な魔導士よ。身体拡散で傷を受けないっていう能力を持っているの。
次はオデッシア。彼女はゴーレムを召喚する槍使いの魔戦士で、魔力を電磁波に変えて扱うし、超回復能力を持つわ。
最後はクン・バハね。彼は巨大化と表面強化能力を持つ大剣使いよ。3面6臂の姿になれば、雷と炎を操るわ」
「……そいつら、一人だけで十分遊撃部隊を壊滅させられるだけの能力を持っていそうだな。本隊ならともかく、遊撃部隊を相手にするなら、魔王と親衛隊だけでおつりが来るんじゃないか?」
スコッチが感想を述べると、ガン・スミスはつるりと顔を撫でて、
「……ま、そう言うなスコッチ殿。わしらは格下ではあるが、格下には格下なりの戦い方ってものがある。そうだろう、ダイ・アクーニン殿?」
ダイを見ながら言う。
ダイは腕を組んで考え込んでいたが、
「……ないこともない。スコッチ殿やガン・スミス殿の部隊に、『偽存在』を作れるヤツはいるか? いたらその人数を教えてくれ」
やがて顔を上げてそう訊く。スコッチやガン・スミスは、
「あ? そうだな、頑張れば作れるヤツは4・50人はいるだろう」
「上級の魔獣ハンターになるには、獲物の気を逸らすため『偽存在』を習得していることが必須だからな。まぁ、あくまでも『気配』を違う場所に置くようなものだが」
そう答える。ダイは笑って、
「ああ、そんなもんで十分だ。それとマロン様、遊撃部隊の旗を急いで5百ほど作っちゃもらえませんかね? それの設置はコアやシロヴィンに任せますんで」
そうマロンに頼み込む。マロンはキョトンとしながらもダイに訊く。
「え、ええ。お安い御用だわ。で、いつまでに?」
ダイはちょっと考えて、
「遊撃部隊が『瘴気の密林』を抜けて、出口に構築している陣地に進入するまでに準備してもらえたらいいですよ。
では、ぼくはコアやシロヴィンたちに、この悪巧みを説明してきます。ついでに、陣地の縄張りについてもちょっと変更しますから、それの説明と合わせてね」
そう言うと、ダイは立ち上がってマロンの天幕から出て行った。
「ダイの小僧、何をするってんだ?」
残されたスコッチが首をひねると、ガン・スミスが笑って立ち上がった。
「はは、わしらが考えていても、あの小僧の頭の中が分かるわけがない。それより部隊に戻って『偽存在』を作れるヤツを把握しておこうじゃないか。いつ、軍師殿が必要だと言われても対応できるようにな」
★ ★ ★ ★ ★
『瘴気の密林』からの出口は、『東の関門』から続く本街道の出口、『北の関門』から続く脇街道の出口……と、2か所あることになっている。
しかし、実は『瘴気の密林』の中には、本街道や脇街道から分岐した『隠れ街道』とも言うべき道があり、その出口が脇街道出口よりさらに北側に開いていた。
この道は、アントンさんたちが『暗黒領域』探索中に偶然見つけたものらしく、地図にはその存在が記されていない。つまりは魔物たちもまったく知らない道なのだ。
「この道は、途中の隘路である『地獄の谷』を通りません。その北側の山の中を抜け、『決戦の荒野』を見下ろす場所に出ます。
その代わり、本街道や脇街道を通る本隊や遊撃部隊とは、かなり距離が離れることにはなりますが」
ドーラさんがそう説明してくれる。ワインはその説明を聞いて、
「この際、本隊や遊撃部隊のことは考える必要はない。その2部隊相互の連携が取れてさえいれば、『決戦の荒野』で魔軍のほとんどを釘付けにできるだろうからね。
ただ問題は、『勇士の軍団』と魔軍の決戦は『決戦の荒野』では起こらない可能性の方が高いってことだね。この場合は、最悪『髑髏の谷』以東にはボクたちだけしかいなくなる可能性がある」
そう言う。ラムさんは驚いてワインに問い質す。
「それはどういうことだワイン。君は魔軍との決戦はどこで行われると観ているんだ?」
ワインは肩をすくめて答えた。
「ラムさんには悪いが、この戦略の大本を立案したのは恐らくダイ・アクーニンだ。だからボクだって心情的には彼の戦略どおりに事が運んでほしくはない。
ただ、『勇士の軍団』はヒーロイ大陸を守るため、縮小編成で出ざるを得なかったと聞いている。となると、数的にも『勇士の軍団』は不利。
こんな時、『戦の天才』と言われるダイが考えたのは、『勇士の軍団』を囮にして魔王や魔軍を引き付け、その隙にジンが魔王の心臓を止める……って戦略だ。
彼も最初はジンを遊撃部隊に配属し、搦手から魔王の心臓を狙っていたはずだが、魔王が直々に遊撃部隊を狙っているという噂を聞いて、万が一のためにボクたちを完全に別行動させることにしたんだろうね。ひょっとしたら、これはマロン様の指示かも知れない」
「……ゆ、許せん! 父上と光輝ある『右鳳軍団』を囮に使うだと!? 何を考えているんだあの男は!」
激昂するラムに、ワインは皮肉な笑いを浮かべて言った。
「ダイ・アクーニンという男は、ただ『勝つこと』だけを考えているんだ。もちろん、政略的に動いてトオクニアール王国に最終的な勝利をもたらしたこともあるが、それにしたって前提条件として『寡で衆を討つ』という戦術的勝利がなければどうしようもなかった。
だから、彼はフリゲート艦隊をコルベット戦隊で叩くという常識外れの、それも数隻を自爆させるという規格外の行動を取らせて勝利をもぎ取った……そういう男だよ、彼は」
「でも、アタシたちをド・ヴァンさんたちと共に別行動にしたってことは、自分がいる遊撃部隊すら囮にしてるってことだよね?」
シェリーが言う。確かに、魔王を倒すという目的からすれば、その最短距離は心臓を叩くことだ。その役割を僕が委ねられたということは、ダイは僕の攻撃が上手くいくように『勇士の軍団』全体を囮にしようと考えたってことになる。
(……どれだけ魔王に恨みがあるかは知らないが、それを達成するためにどんな被害が出ても構わないと考えているのであれば、ダイは本当に寂しい男だな……)
僕は、賢者スナイプ様がダイについて悲しい顔で言っていた言葉を思い出す。『彼は誰も信用していない』……と……。
「……ダイは魔王を倒すためだけに生きて来たような男だと、スナイプ様から聞いたことがある。恐らく、ジンが魔王の心臓を叩く前に、魔王の実体を消滅させるつもりでいるんだろう。たとえそれで自分が死んでもね?
だって彼は、今までも必要とあらば自軍の損害を顧みることはなかったが、『損害を超える戦果』は必ず挙げて来たし、目標は絶対に達成してきた。今度も、自分や『勇士の軍団』をすり潰してもお釣りが来るぐらいの戦果を挙げるつもりだろうな。それだけは、同じ作戦家として判るよ」
ワインは肩をすくめてそう言った後、厳しい顔で虚空を睨みつけた。
こちらは『約束の地』である。ここに、魔王とアルケー・クロウ、そして『摂理の超越者』と自称するエピメイアが今後を打ち合わせていた。
「我が魔軍は、13個連隊2万6千の兵力を集めました。第2陣としては、45個連隊9万を編成中です。『伝説の英雄』を討ち取った後、この第2陣を両大陸に展開して人間どもを滅ぼす予定です」
魔王は、大きな机の上に広げられた兵棋盤に視線を落とすと、連隊を表す駒を移動させながら説明を続ける。
「アルケー・クロウ様はすでに、10個連隊2万を率いて『髑髏の谷』を要塞化し、その前面に6個連隊1万6千で布陣されています。うち2個連隊4千は陣外に埋伏し、突撃してきた『勇士の軍団』本隊6千を殲滅する作戦です」
「……だが、『勇士の軍団』本隊は『霧の湿原』陣地を構築していると聞いているわ。スピリタスやシールは前回の経験もある戦巧者。そう上手く陣地を捨てて出て来るかしら?」
エピメイアが言うと、アルケーは肩をすくめて答える。
「エピメイア、俺たちの狙いはあくまでジン・クロウただ一人だ。ジンの首さえ手に入れれば、他の奴らは正直、捨て置いてもいい。
だが、『勇士の軍団』を野放しにしておくわけにもいかない。だから奴らが陣地を固守するのは、『勇士の軍団』の主力を拘束し続けるという意味ではこちらにとっても好都合というわけだ」
「……ふむ、なるほど。あなたの狙いはよく解りました。それで、肝心のジンの方ですが、そちらはどうなっていますか?」
エピメイアがうなずいて魔王を見ると、魔王は銀の髪をかき上げて、
「我は魔軍3個連隊6千を連れて、『勇士の軍団』遊撃部隊を攻めます。こちらにジンがいるという情報があり、それが正しいことはアルケー様が確認済みです。
遊撃部隊は『遊撃軍団』1千5百と『猟兵軍団』5百の2千。これに騎士団5百が加わっていますが、物の数ではありません」
自信満々にそう言ってのける。
「……アルケー、確かジンの側には元精霊王のマロンがいたと思うけど、彼女はどちらで、どんな役割を持っているのかしら?」
ここでアルケーは重大な嘘を吐いた。
「マロンは本隊に居て、ジンの魔力を中継しているようですね。『伝説の英雄』は本隊にありと思わせ、魔王をおびき寄せる作戦でしょう。小賢しいマロンが考えそうな策略です」
エピメイアはじっとアルケーを見つめる。
(アルケーとマロンが気脈を通じていたら、魔軍の主力は裏切りによって崩壊する。ここはマロンをどうにかして排除しておかないと)
エピメイアはそう心に決めてうなずく。
「……そう、あなたの方にマロンがいるなら安心だわ。マロンをちゃんと味方に引き入れなさいな。そうすれば、後腐れなくこの摂理を書き換えられるわ」
「御意……」
アルケーはうなずきながらも、
(エピメイアめ、俺の言葉を疑っているな。とすると、マロンを一時的に戦局の外に連れて行かねばなるまい……できればそのまま、彼女と手を組んでこいつをもう一度封じなければな)
そう考えていた。
「それで、魔王の方はどう? 遊撃部隊……というかジン・クロウをちゃんと捕まえている?」
エピメイアの言葉に、魔王は翠の瞳をした目を細め、
「ええ、俺がジンの魔力を間違うわけがないでしょう?」
そう、片頬だけで笑って言う。
「そうだったわね。しかし、ジン・クロウはあなたと面と向かったらどんな顔するかしらね? それを想像するだけでも愉快だわ。あっははは♪」
エピメイアも、『その状況』を想像したのか、声を上げて笑い出した。
(ふん、悪趣味な女だ。俺はこんな奴から生み出されたのか……)
アルケー・クロウは内心、エピメイアに毒づきながらも笑って言った。
「……ということです。エピメイア様、どうか大船に乗った気でいてください。この『約束の地』に、ちゃんと墓を建ててやりますから」
マロンたちが通って来た『北街道』は、『瘴気の密林』の北東で東に向きを変える。そしてそこから10マイルも行くと、『瘴気の密林』を抜ける。
「……いよいよ魔軍、というか魔王との決戦ね。陣地の方は出来上がっているのかしら?」
マロンがダイに訊く。ダイはうなずいて、
「こちらには魔王自らが寄せてくる予定なんでしょう? コアやシロヴィンがきちんとやってくれていますから、目にものを見せてやれますよ。陣内をご案内しましょうか?」
そう胸を張る。その顔には、宿敵である魔王と戦えるという興奮が表れていた。
「そうね、見せていただこうかしら。それとダイ、張り切るのはいいけれど、ちゃんと仲間を信頼して、あなた一人で勝手に魔王に挑んだりしちゃいけないわよ?」
マロンはダイの闘志の中に、狂気じみた怨嗟を感じ取ってそう忠告する。ダイは一瞬ハッとした顔をしたが、すぐに笑って答えた。
「はは。そんなことは言われなくても分かっていますって。それより、陣地防御の中核はぼくやマロン様の魔力に負うところが大きいですので、そこはよろしくお願い致します」
「魔力での防御といっても、魔王なら陣地なんて一撃で吹き飛ばせるわよ? いったいどうするつもり?」
マロンの言うとおり、戦いは魔力が強いものがいる方が有利である。相手の防御魔法を無効化したり、防御魔法を貫徹できる攻撃魔法を持っていたりしたら。対応する術がないからだ。
だから魔術師同士の戦いは、基本的に個人戦になる。団体で戦ったとしても、地の利を占めるとか、攻撃のタイミングとか、攻撃魔法の選択とか、その辺りが軍師の大きな役割になる……少なくともマロンはそう考えていた。
しかしダイは、
(そこが戦術の面白いところだ。相手の心理をかき乱し、その混乱を大きくするように仕向ければ、寡を以て衆を制することもできるからな。
今度の戦いもそうだ。魔王軍は魔王が存在するが故に、最大の武器である魔力を中心に攻めてくるだろう。その魔力が全く効かないとしたら、奴らはどうするだろうかな?)
そう考え、薄ら笑いすら浮かべて答えた。
「マロン様、最初っから魔王が自身で攻めて来やしないでしょう?『逸を以て労を待つ』ですよ。最初は散々に無駄な努力をさせてやろうじゃありませんか」
「……最初っから魔王が出てきた時はどうするつもりなの?」
マロンの問いに、ダイは肩をすくめて答えた。
「その時は、ぼくやコア、シロヴィンで相手せざるを得ないでしょうね。ジン団長が魔王の心臓を止めるまで、ね?」
ダイの態度に不吉なものを感じたマロンは、重ねてダイに忠告した。
「ダイ、分かってはいるでしょうけれど、絶対に逸っちゃだめよ? あなたには『魔王の降臨』だけでなく、『摂理の黄昏』を止める時にも期待しているんだから」
それを聞いて、ダイは面食らったような顔をする。
「何ですか、変な顔をして?」
マロンが訊くと、ダイはいかにも戸惑ったような表情で言う。
「いえ、マロン様はぼくをここで魔王と引き換えにするつもりだったんじゃないのかなーと思いまして。正直、そんなことを言われるのは想定外でした」
「……なぜ、そう思ったのかしら?」
マロンが肯定も否定もせずに訊くと、ダイはにっこりと笑って答えた。
「ははっ、ぼくはこんな性格ですし、ぼくの作戦もあまり人道的じゃないってことは分かっています。
ですから、この後『摂理の黄昏』への対応が控えているジン団長を温存するため、魔王を不倶戴天の敵としているぼくを魔王に当たらせて、最悪でも相討ちに持って行きたいってのが本音でしょう?
いずれはぼくを排除するんでしょうから、同じ排除するなら魔王との交換に使った方が合理的ですもんね?」
「……それは一面の真理を衝いているわね」
マロンがそう言うと、ダイは両手をぐっと握りしめる。
「ただ、あなたを排除しなくても、あなたは自らの使命が終わったと感じたら、黙ってわたくしたちの前から消えるでしょう? 火の精霊王アリス・ヴェルファイアの前から消えた時のように。
ですから、あなたを排除する必要なんてないし、ジン様だってそんなことは考えていないはずよ。騎士団に残るかどうかはあなたたち次第。ジン様は来る者は拒まず、去る者は追わないみたいだし」
マロンの言葉をうつむいて聞いていたダイは、顔を上げて訊く。
「……なるほど、別にぼくを排除したいわけではない、と。では、『一面の真理』とは?」
「あなたの性格と作戦の傾向、それにジン様の温存……その部分はあなたが考えたとおりよ。というか、あなたが自分をそこまで客観視しているとは驚きですね?」
するとダイは、指で頬をかきながら答えた。
「ははっ。自分を客観視しないと、作戦なんて立てられませんよ。特に、命の等価交換が必要な作戦はね?」
★ ★ ★ ★ ★
ダイと共に陣地を巡検したマロンは、南側の廓に造られた兵舎の自室で、じっと瞑想していた。
(……ダイはやはり有能だわ。この短期間で、よくこれだけの陣地を構築したものだわ)
マロンは、陣地の全貌を頭の中に思い浮かべる。陣地の縄張りは、東向きに延びている『北の街道』を完全に取り込んだものになっており、魔軍としてはここに陣地があることはどうしても見過ごせないだろう。
陣地そのものは、東と北を主たる防御正面とし、南は高台となって、主郭はこの手の陣地によく見かける中央ではなく、この高台にあった。
そして、『瘴気の密林』の出口から百ヤードは、街道の両側に盛土をしていた。特に街道の北側には北曲輪を設けて『猟兵軍団』5百に守らせ、狙撃拠点としていた。
南側は二の曲輪としてシロヴィンが5百を率いて防御している。この曲輪は2重の塹壕と盛土が防御の要だった。
そしてさらに東に、周囲を3重の塹壕と柵で囲まれた前進陣地があり、ここにはコアが5百を率いて詰めていた。
主郭にはスコッチが5百を率いて詰め、ダイが参謀として側にいた。
しかし、どれだけ塹壕を重ねても、土塁を高くしても、魔王がその魔力を全開にして攻撃すれば、あっという間に防御は破られ、人的被害も多数出る……そのことはダイも判っていた。
そのため、ダイがこの陣地に凝らした工夫が、『重力場の異常』と『ドレイン系防御』だった。
『重力場の異常』については、ダイの『重力の恩恵』で魔力を弾き、『ドレイン系防御』についてはマロンの『芽生えの歌』で魔力を吸い取るような防御を施す……というものだった。
(……面白いことを考えるわね。魔王の魔力が効かなければ、魔物たちは遮二無二この陣地に攻めかかるしか手はないわ。
しかもダイは、塹壕や柵、土塁をうまく配置しているから、魔物はどうしたって二の曲輪と北曲輪の狭間になっている街道へと誘導される。魔力の食い止めが上手く行ったら、魔王をここに足止めできるわね)
「……魔力において劣るけれど、戦闘技術を磨いている兵たちを生かす陣地を構築したってことね。ダイがもう少し他人を信用できれば、ジン様にとっていい仲間になるでしょうけれど。惜しいわね」
マロンがそうつぶやいた時、
「なかなか立派な陣地ができたようだね? ダイ・アクーニンも隅に置けないな。彼だったら、魔王バーボンを倒せるかもしれないね」
そう言いながら、白髪の下の緋色の目を光らせて、アルケー・クロウが姿を現した。
「あら、アルケー。どうしちゃったの? あなたは『運命の背反者』の言いつけを守って、『勇士の軍団』本隊を攻めるんじゃなかったかしら?」
マロンは、新緑のような瞳でアルケーを睨みつけて言う。さらにマロンは苦笑しているアルケーに、
「あなたはジン様に手を出さないって約束してくれましたよね? その約束や、わたくしとも同盟関係にあることを忘れてしまったんでしょうね?」
棘のある言葉で話しかける。
「……そう拗ねるんじゃないさ。俺は君との約束はちゃんと覚えている。だから今まで、ジン・クロウに対し俺自身は手を出していないだろう? それに君との同盟も破るつもりはない。だからエピメイアに見つかる危険を冒してもここに来たんだ」
苦笑していたアルケーだが、話すときには真面目な表情になった。マロンとアルケーは、しばらく視線を合わせたまま身じろぎもしなかった。
やがて、マロンが根負けしたように言う。
「……聞きましょう。あなたが何ゆえにわたくしの所に来たのかを」
アルケーはホッとため息を吐くと、真剣な表情に戻って言った。
「エピメイアが君を狙っている。ここに居たら危ないから、しばらく異空間か異次元に退避してもらいたいんだが?」
「エピメイアが?」
アルケーの意外な言葉に、さすがのマロンも当惑した表情になる。
「ああ。エピメイアは俺と君が裏で手を結んでいるんじゃないかと疑っている。そのため、俺からの恨みを買うことを承知のうえで、君を始末する気だと思う」
「魔王とエピメイアが同時に?……それは少しマズいわね」
「マズいなんてものじゃない。ジン・クロウは知ってのとおり俺を恨んでいる。君がいなければ、彼との連携なんて夢のまた夢だ。ここはダイとかいう小僧たちに任せて、君はしばらく俺のところに避難してくれないか?」
アルケーの顔は、いつになく真剣で必死だった。エピメイアは、『運命の供与者』と呼ばれていた時代には、双子の姉、『摂理の調律者』と言われるプロノイアと共に『摂理の二柱』と呼ばれる四神の上位存在だったのだ。精霊王だったマロンが一人で太刀打ちできる相手ではない。
「……でも、エピメイアが来るのなら、なおさらわたくしがこの陣地にいないと。ダイたちを犬死させてしまうことになります」
……『勇士の軍団』遊撃部隊を預かっているマロンとしては、そう答える以外に選択肢はなかった。
「……分かった。君があくまでそのつもりなら、俺だって自身の目的達成にために必要な君が消えるのを黙って見過ごしたりはしない」
そう言うと、赤い瞳を怪しく輝かせた。
「さて諸君、『勇士の軍団』の本隊は、ここから少し西にある『霧の湿原』に陣地を作って立てこもっている。あそこは常時霧が立ち込め、地図に載っていない沼や湿地も多い。
そこで、皆が攻撃にかかる前に、俺が少し面白い余興をしてみようと思う」
『髑髏の谷』と呼ばれる地隙地帯に陣地をこしらえていたアルケー・クロウは、崖下に見える濃霧に包まれた場所を指さして言う。彼の周りでは、魔軍で連隊長を務める魔物たちが口々に言った。
「あんなに霧が深いんじゃ、同士討ちが心配だな」
「ワイバーン族、お前たちであの霧を吹っ飛ばせないか?」
「無理言うな。あの霧は半径10マイルにわたって広がっているんだぞ?」
「あの霧の源泉ってなんだ? お前、知っているか?」
「いや、知らないな。なんか魔力が籠った沼から噴き出しているとは聞いているが」
アルケーは、部下の連隊長たちの私語を微笑と共に聞いていたが、
「……君たちは、奴らを強襲して勝てる自信がないのか?」
ただ一言訊いた。
すると、私語がぴたりと止み、アルケーに全員の視線が注がれる。
「俺は、奴らにハンデを付けてもらおうと思っていてな? 今から奴らの隊長たちと話を付けてこようと思うんだが……」
アルケーがそう言うと、ナスホルン連隊長が一歩踏み出して言う。
「アルケー様お一人で!? それはいけません。それに我らはハンデを付けてもらうほど弱くはないつもりですが!?」
「いや、奴らは6千とは言えど、『魔王の降臨』を止めねばならぬという確固たる意志を持ってあそこに陣取っている。覚悟が違うのだ。
それにオーガやユニコーン族は、決して侮ってはいけない存在だぞ? それは幾度もの『魔王の降臨』で、奴らがそのたびに魔軍を撃破してきたことでも判るだろう」
アルケーの遠慮会釈のない言葉に、並み居る連隊長たちは一瞬鼻白んだが、
「いえ、我らは魔族の誇りにかけても、奴らをホッカノ大陸から叩き出す決意です!」
ナスホルン連隊長が言うと、他の連隊長たちもうなずく。
アルケーは10人の連隊長たちを、冷たい目で見ていたが、全員の決意が固まった頃を見計らい、
「……解った。さすがは我が魔族の同胞だ。君たちの決意と勇気を讃えよう。
だが、君たちがかけがえのない部下たちだと分かったからには、俺も上司としての務めは果たそう。君たちの攻撃が上手くいくよう、俺も手を打つ。
今日夜か明日早朝、いずれにしてもそう遠くない時に、俺は攻撃命令を出す。すぐに対応できるよう、部隊の士気を高めておいてくれ」
部下の連隊長たちを解散したアルケーは、密かに陣を抜け出した。ただ、筆頭連隊であるナスホルン連隊長には、
「ちょっと陣地を抜けるが、気にするな。俺が出発したら全連隊長を集めて攻撃準備を進めてくれ。そして1時間後を目途に敵陣への攻撃を始めるんだ」
そう告げていた。
(……さてと、大殺戮時代の始まりだ。この世界を『真実の太陽』で照らすには、魔族も人間も、同じだけの血を流さねばならないからな……)
そう考えながら、アルケーはピラミッド型の法器を取り出し、緋色の瞳を光らせる。赤黒い魔力と共にアルケーは姿を消した。
アルケーが姿を現したのは、大胆にも『勇士の軍団』本隊の陣地内、それもオーガ侯の本陣がある郭内だった。
「おっ、貴様は何者だ!」
「怪しい奴、名を名乗れ!」
オーガ侯の帷幕を警護する兵たちが、あっという間にアルケーを取り囲む。
しかしアルケーは、突き付けられる剣や槍をものともせず、悠然と周囲を見回すと、
「俺の名はアルケー・クロウ。『勇士の軍団』の指揮官、オーガ侯スピリタスとユニコーン侯国戦士長シールに会いたい」
そう名乗ると同時に、魔力を少し開放する。その圧力に押されて、アルケーを包囲していた兵たちは一斉に10メートルほど後ずさった。
「……これは先に言っておく。俺は『魔族の祖』と言われているが、人間に対して別段興味はない。ただ、俺の眷属たちが暮らしている場所に、土足で踏み入るような真似が許せないだけだ。早くスピリタスとシールをここに呼べ」
怒号ではない。棘がある言い方でもなく、アルケーはただ静かに言っただけだが、並み居る兵たちの背筋は凍った。それほどにアルケーの魔力は凄まじかったのだ。もっとも、彼自身は全力の万分の一すら出していなかったのだが。
兵たちの何人かが帷幕に行こうとしたとき、天幕の入口から、
「来ているのは誰だ? 変わった魔力の持ち主のようだが」
「手を出すな。そなたたちでは手も足も出ん」
そう言いながら、オーガ侯スピリタスとユニコーン侯国戦士長シールがそろってこの場にやって来た。
アルケーは、二人が兵たちの輪を分けて自身の前に立つと、片頬だけで笑って言った。
「来たか、オーガ侯スピリタスとユニコーン侯国戦士長シール。俺は『魔族の祖』アルケー・クロウだ」
さしも豪勇を以て鳴るスピリタスも、智謀測りがたしと謳われるシールも、アルケーの名乗りを聞いて顔を強張らせた。
「……わしはユニコーン侯国戦士長シール・レーズン。『魔族の祖』よ、何の用があってこの陣地に来られたか?」
しかし、シールはアルケーから魔力は感じても殺気を感じなかったため、勇を鼓してスピリタスの前に出るとアルケーに聞く。
アルケーは、うなずいて、
「さすがは『右鳳軍団』を指揮するだけあるな。スピリタスもだがシールも21年前に『暗黒領域』で名を轟かせた豪の者だ。
俺は勧告しに来たんだ。『暗黒領域』から出て行け。我ら魔族との勝負は、マティーニ・クロウより前の『伝説の英雄』のように、ヒーロイ大陸でつけるようにすればいい」
するとスピリタスは、石色の瞳を持つ目をすっと細め、
「それはできない相談だ。我らも『魔王の降臨』を防ぐためとはいえ、毎回自らの土地で戦いを繰り広げ、自らの土地を荒廃させてしまうのは犠牲が大きすぎるのでな。
お前たち魔族が我らの領域に攻め込んで来なければ、マティーニ・クロウ様も『暗黒領域』への侵攻は考えられなかっただろう。自業自得というものだな」
「……ふふ、『虚影の空』の秘密はヒーロイ大陸にあるというのに、わざわざ遠きに求めるとは、『伝説の英雄』もマティーニ以降は質が落ちたか?
悪いことは言わん。『魔王の降臨』や『摂理の黄昏』に本気で対処したいのなら、決戦の場を『決戦の荒野』に求めず、ヒーロイ大陸に求めるんだな」
スピリタスの拒絶に、アルケーは薄い唇を歪ませて笑いそう言う。
「アルケー・クロウよ。魔族の大部分は『暗黒領域』に棲んでおり、魔王も『約束の地』にいる。さらに『魔族の祖』たるそなたも『暗黒領域』を領分としているのであれば、魔族の侵攻を根本的に止めるには、『暗黒領域』で戦うことが正解だと思わんか?」
シールが眉を寄せて訊く。ただしシールは、アルケーの言葉に少しの引っ掛かりを覚えていた。
(アルケーの狙いは何だ? 魔族の平和か? 人間たちの殲滅か?……奴の言葉から察するに、そのどちらでもないようだ。だが、わしには分からん)
アルケーは、腕を組んで二人を愍然と眺めていたが、ゆっくりと腕組みを解き、
「ふむ、話は平行線のままのようだ。そなたたちにはもう少し考える時間を与えたいが、そうも言っていられなくてな? この話は、ジン・クロウとすることにしよう。彼なら少しは話が分かりそうだからな」
そう言うと、魔力をさらに開放する。アルケーの白髪が魔力の風で膨らんだ。
「むっ!」
「おっ!?」
それまでに感じたことのない魔力の波動に、シールとスピリタスは同時に10ヤードほど跳び下がり、下がりながら剣を抜いた。さすがに戦場の古強者という言葉がぴったりと来る二人の動きだった。
だが、アルケーは薄笑いを浮かべながら言う。
「こうなれば、戦って分かってもらうしかないようだね。だが、君たちは別格に強い。我が同胞たちのためにハンデをつけさせてもらうよ」
アルケーがそう言うと、左手の上に乗せたピラミッド型の法器が赤く光った。
バシュンっ!
「おおっ!?」
ズバンッ!
「ぐおっ!?」
その瞬間、シールの左足とスピリタスの右腕がもぎ取られ、アルケーの前に浮かんでいた。
「ここでは命は奪わない。だが、30分もすれば我が眷属が攻めかかって来るぞ。よく考えて撤退する気になったら撤退することだな。『瘴気の密林』の北街道を使って戻るのなら、俺はそれを邪魔したりはしない」
アルケーはそう言って、現れたときと同じように唐突に消えた。
「……スピリタス、大丈夫か!?」
左足の膝を縛って止血をしたシールが、右腕の肘から先を失ったスピリタスに問いかける。スピリタスは肘の周りをひもできつく縛って止血し、
「……大事ない。しかし油断した。何と言うやつだ、アルケー・クロウという男は」
そう言って歯噛みする。
「……あの距離から呪文も詠唱せず、一気にわしらに傷を与えた男だ。前回の『魔王の降臨』の時に目覚めていれば、マイティ・クロウ様も苦戦したかもしれんな。わしらでは相手にならんだろう」
シールもそう言って首を振るが、すぐにハッと気が付いて、
「それより、アルケーの言葉を信じれば、もうすぐ魔軍が攻め寄せて来るだろう。迎撃準備をせねばならんぞ」
そう言いながら、剣にすがって立ち上がる。
「足を失って大丈夫か?」
肩を貸しながらスピリタスが訊くと、シールはうなずき、自嘲気味に言った。
「こんなことならお互い、息子や娘を先行させるんじゃなかったな。だが、この苦境を乗り切って、父の威厳を保つしかないな」
「はは、違いない。アルケーの先の攻撃にしても、お主自慢のラム殿や、ウォッカなら避けられたかもしれんな。歳は取りたくないものだ」
そう言いながら天幕に入る二人だったが、この陣地に2万の魔軍が襲い掛かるのは、それからわずか20分後のことだった。
(魔王軍を狩ろう!その2に続く)
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
さて、いよいよ魔王の軍団との戦いが始まろうとしています。長らく書き続けてきたこの『キャバスラ』も、第4コーナーを回り、ゴールが見えてきました。
今回の『魔王軍を狩ろう!』の後は、いよいよ『魔王を狩ろう!』、そしてラストエピソードの『世界を狩ろう!』となります。
章立ても、『世界を狩ろう!』エピソード群だけは別個に『摂理の黄昏編』とする予定です。
さあ、あと10話余り。最後まで気を抜かずに頑張ります。次回もお楽しみに。
★ ★ ★ ★ ★ ★ ★
【主な登場人物紹介】
■ドッカーノ村騎士団
♤ジン・ライム 18歳 ドッカーノ村騎士団の団長。典型的『鈍感系思わせぶり主人公』だったが、旅が彼を成長させている。いろんな人から好かれる『伝説の英雄』候補。
♤ワイン・レッド 18歳 ジンの幼馴染みでエルフ族。結構チャラい。水の槍使いで博学多才、智謀に長ける。『PTD7・淑女』と共に『PTD6・ナルシスト』を倒した。
♡シェリー・シュガー 18歳 ジンの幼馴染みでシルフの短剣使い。弓も使って長距離戦も受け持つ。ジン大好きっ子で負けフラグをへし折った『幼馴染ヒロイン』。
♡ラム・レーズン 19歳 ユニコーン族の娘で『伝説の英雄』を探す旅の途中、ジンのいる村に来た。魔力も強いし長剣の名手。シェリーのライバルである『正統派ヒロイン』。『右鳳軍団』に先行し、ジンと合流を果たした。
♡チャチャ・フォーク 14歳 マーターギ村出身の凄腕狙撃手。謎の組織から母を殺され、事件に関わったジンの騎士団に入団する。シェリーが大好きな『百合っ子ヒロイン』。
♡ジンジャー・エイル 21歳 他の騎士団に所属していたが、ジンにほれ込んで移籍してきた不思議な女性。闇魔法の使い手で、『PTD4・幽霊』を倒すも、右腕を失った。
♡メロン・ソーダ 年齢不詳 元は木々の精霊王マロン・デヴァステータだがその地位を剥奪された。『魔族の祖』アルケー・クロウの関係者で、彼を追っている。現在ジンたちとは別に『先遣隊』を率いて行動中。
♤ダイ・アクーニン 28歳 賢者ストックの息子で卓越した知力と魔法を誇る弓使い。魔王を目の敵にし、傭兵隊長だったコア・クトーや錬金術師のシロヴィン・ボルドーとともに先遣隊に加わった。現在、マロンと行動中。
♡アイリス・ララ 『PTD10・ドール』を名乗り、ジンを瀕死に追い込むほど善戦した自律的魔人形。ジンの魔力で再起動し、新たに仲間となった。
■トナーリマーチ騎士団『ドラゴン・シン』
♤オー・ド・ヴィー・ド・ヴァン 21歳 アルクニー公国随一の騎士団『ドラゴン・シン』のギルドマスター。大商人の御曹司で、頭も切れ双剣の腕も確かだが女好き。
♤ウォッカ・イエスタデイ 21歳 ド・ヴァンのギルド副官。オーガの一族出身である。無口で生真面目。戦闘が三度の飯より好き。オーガの戦士長、スピリタスの息子。『左龍軍団』を連れてド・ヴァンと合流した。
♡マディラ・トゥデイ 20歳 ド・ヴァンのギルド事務長。金髪碧眼で美男子のような見た目の女の子。生真面目だが考えることはエグい。狙撃魔杖の2丁遣い。
♡ソルティ・ドッグ 21歳 『ドラゴン・シン』の先鋒隊長である弓使い。黒髪と黒い瞳がエキゾチックな感じを醸し出している。調査・探索が得意。
♤テキーラ・トゥモロウ 年齢不詳 謎の組織から身分を隠して『ドラゴン・シン』に入団した謎の男。いつもマントに身を包み、ペストマスクをつけている。現在、ド・ヴァンの許可のもと、『暗黒領域』で単独行動をしている。
♤ブルー・ハワイ 25歳『ドラゴン・シン」の遊撃兼偵察隊長である槍使い。金髪碧眼で観察力と記憶力に優れる。変装に優れ、情報を分析する能力に長ける。
♡メアリー・ブラッドレイ 25歳『ドラゴン・シン』で物資調達を引き受けている槍使い。ド・ヴァンを詐欺ろうとして失敗、許されて彼に心酔し仲間になった。
■退場した仲間たち
♡レイラ・コパック 博識で氷魔法の使い手。スナイプのスカウトで加入した。『PTD5・法律家』を倒すも『PTD3・道化』に止めを刺された。享年17歳。
♡ウォーラ・ララ ジンの魔力で再起動した自律的魔人形。彼に献身的に仕えたが、『PTD2・戦士』との戦いで相討ちとなった。
♡ガイア・ララ 謎の組織の依頼でマッドな博士が造ったエランドールでウォーラの姉。『PTD1・学生』と対峙したが、相討ちとなって果てた。
♡エレーナ・ライム(賢者スナイプ)28歳『賢者会議』の一員だった才媛。ジンに自身が人工生命体であることを明かし『風の宝玉の欠片』を譲る。『PTD3・道化』を倒すも、『道化』が残した瘴気に侵されてしまったが、マーリンの秘薬『諸刃の韻律』によって命は救われた。現在、視力を失いマーリンの許にいる。




