第8話 気づいた時には、もう遅い
違和感は、最初からあった。
——でも、誰も気づかなかった。
「この会社……何だ?」
市場がざわつく。
無名の企業。
だが——
外さない。
投資。
買収。
撤退。
すべてが、正確すぎる。
■
「妙な動きがあるな」
黒崎グループ。
父が資料を見る。
「小さいな」
一蹴する。
「放っておけ」
その判断が——
致命的だった。
■
「最近、数字が合わない」
幹部の声。
「誤差だ」
父は切り捨てる。
見えていない。
(もう、遅い)
■
藤堂家。
「何かおかしい……」
悠真が眉をひそめる。
「流れが読めない」
当然だ。
見えないところで、全部動かしている。
■
「まだ気づかない」
蓮が呟く。
「気づかせないから」
答える。
情報は出さない。
名前も出さない。
ただ。
結果だけを積む。
■
数ヶ月後。
ニュースが流れる。
“急成長企業”
黒崎を超え。
藤堂を超える。
市場が騒ぐ。
「ありえない……」
父の声が震える。
「こんな会社、聞いたことがない」
(そう)
知らなくていい。
■
「特定は?」
「できません」
当然。
痕跡は消している。
すべて、意図的に。
■
美咲が画面を見つめる。
顔色が悪い。
「……嫌な感じがする」
初めての“直感”。
でも。
遅い。
■
「そろそろだな」
蓮が言う。
「うん」
頷く。
ここから先は——
“終わらせる段階”
■
「出るか」
少しだけ考える。
積み上げた時間。
耐えた時間。
全部を思い出す。
そして。
「出る」
決める。
■
名前を出す。
存在を明かす。
真実を暴く。
すべて。
■
画面の向こうで、父が呟く。
「……誰だ」
小さく。
震える声で。
■
私は、静かに笑う。
(あなたたちだよ)
そう答える代わりに。
準備を進める。
■
もう逃げ場はない。
気づいた時には。
すべて終わっている。
——あなたたちは、もう詰んでいる。




