第10話 選んだ結末
終わりは、静かに来る。
——そう思っていた。
でも。
実際は違った。
壊れる音がした。
「嘘よ……」
美咲の声。
床に崩れ落ちる。
震える手。
焦点の合わない目。
「違う……違うの……」
もう、誰も見ていない。
誰も、助けない。
■
「欲しかったの……」
かすれた声。
「ただ、それだけだったのに……」
笑う。
壊れたみたいに。
「なんで……あの子ばっかり……」
(……まだ言うんだ)
最後まで。
■
「最初はね」
ぽつりと、続ける。
「憧れてたの」
会場が静まる。
「お姉様みたいに、なりたくて……」
一瞬だけ。
“普通の顔”になる。
でも。
すぐに歪む。
「でも無理だった」
「だから——」
言葉が途切れる。
言わなくても、わかる。
■
「ええ」
私は、答える。
「無理よ」
一切の迷いなく。
「あなたは、選び方を間違えた」
その一言で。
完全に、折れた。
■
父が何か言おうとする。
「私は……」
でも。
言葉が出ない。
視線が、揺れる。
逃げ場を探すみたいに。
■
「もう遅い」
短く言う。
それで終わりだった。
■
「綾音……」
悠真がこちらを見る。
縋るように。
「俺は……騙されて——」
■
「違う」
即答する。
■
「あなたは選んだの」
静かに。
でも、はっきりと。
「信じる人も」
「疑う人も」
「全部」
■
「自分で選んだ結果よ」
その言葉で。
彼の顔から、色が消えた。
■
「そんな……」
崩れ落ちる。
でも。
もう遅い。
■
連れていかれる三人。
誰も止めない。
誰も声をかけない。
さっきまでの“家族”は。
もう、どこにもいない。
■
静寂が戻る。
私は、ただ立っている。
感情は——不思議なくらい、静かだった。
怒りも。
悲しみも。
すでに、終わっている。
■
残ったのは。
“結果”だけ。
■
「終わったな」
隣で、蓮が言う。
「うん」
小さく頷く。
■
長かった。
でも。
これでいい。
■
私は、前を向く。
もう、振り返らない。
■
——これが、あなたたちの選んだ結末。




