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生活魔法って便利ですね!  作者: K
第3章 ルセラの里編

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22/25

第22話 構えただけで完全勝利!? 逃げ場を失った戦乙女

いつもお読みいただきありがとうございます!


第22話は、ルセラの里での慌ただしい朝から始まります。

自分たちが「戦乙女」ではないと伝えようとする春と雛でしたが、里を襲う不測の事態がそれを許してくれません。


二日前の因縁、そして思わぬ形での「実力」の証明……。

二人の望まぬ方向へ加速していく事態を、ぜひお楽しみください!



「ふわぁ〜! よく寝た〜!」


 窓から差し込む朝の光を浴びながら、(はる)は大きく伸びをした。

 決して現代日本にあるようなふかふかの布団とは言えないが、それでも森の中で野宿するよりは遥かにマシだ。屋根があるというだけで、これほど安心できるものだとは思いもしなかった。


「ん、むぐぅ……。お、おはよう、(はる)姉ぇ」


 (はる)がそんな事を考えていると、隣で丸まっていた(ひな)も目を覚ました。

 眠そうに目をこすりながら、ゆっくりと起き上がってくる。


「おはよう、(ひな)。……ねぇ、昨日のラック君の話なんだけどね」


 (はる)は声を潜め、昨晩の出来事について切り出した。

 ルセラの里は、ドラゴンの脅威(きょうい)(さら)されている。里長のリゾットは、自分たちを伝説の戦乙女(いくさおとめ)だと思い込み、そのドラゴンの討伐(とうばつ)を頼むつもりでいる。

 リゾットが部屋に来る前に、どう対応するのかを二人で決めておく必要があった。


「リゾットさんに、なんて言ったらいいと思う?」


「普通に、戦乙女(いくさおとめ)じゃないって言ったらいいんじゃないのぉ?」


「でも、すんなり信じてもらえるかな? あんなに歓迎されちゃってるし……」


 (はる)が顔をしかめると、(ひな)は少し考える素振(そぶ)りを見せた後、ポンッと手を打った。


「じゃあ、こうすればいいよ! (ひな)たちも、この里に『戦乙女(いくさおとめ)』を探しに来たことにするの! だって、自分が戦乙女(いくさおとめ)だったら、わざわざ戦乙女(いくさおとめ)を探しになんて来ないでしょ?」


 (ひな)の提案に、(はる)は目を丸くした。


「なるほど、それはいい言い訳だね! さすが(ひな)だよ」


「えへへ。……ただし、開花の儀式ギフト・アウェイクニングをこの里で受けるのは諦めた方がいいかな」


 (ひな)は冷静に現状を分析する。

 自分たちは戦乙女(いくさおとめ)ではないからドラゴンの討伐はできません、でも開花の儀式ギフト・アウェイクニングだけはお願いします――などという、都合のいい頼み事が通用するとは思えなかった。


「まぁ、昨日歩いてきた森をまっすぐ突き抜けたら、大きな街があると思うから、そこで儀式を受ければいいんじゃないかな。昨日の感じだと、あの森には三つ目(みっつめ)の狼しかいなかったから、(はる)姉ぇならなんとかなるでしょ!」


 (ひな)の推測は理にかなっていた。

 二人は昨日、森から北に向かえば大きな街に出ると思って歩いてきた。だが、辿り着いたのは地図上では南に位置するこのルセラの里だった。つまり、昨日来た道をまっすぐ引き返して突き抜ければ、本来の目的地である北の街へ辿り着けるということになる。

 戦わずしてこの里を去るには、それが一番安全な選択だ。


(よし、それでいこう!)


 (はる)が心の中で決意を固めた、まさにその時だった。


戦乙女(いくさおとめ)様、お目覚めですかな?」


 扉の向こうから、リゾットの声がした。


「あ、あの。ちょっとお話がありまして……」


 (はる)が作戦通り、自分たちは戦乙女(いくさおとめ)ではないと告げようと口を開いた瞬間――。


「大変だ! 盗賊(とうぞく)が広場に出たぞ!」


 家の外から、悲痛な叫び声が響き渡った。


「な、なんじゃと!」


 その知らせを聞いたリゾットは血相を変え、慌てて外へと飛び出していく。


「もう、仕方ないな……!」


 (はる)は部屋の隅に置いていた木の棒(ぼう)を手に取ると、迷うことなくリゾットの後を追いかけた。(ひな)もまた、不安そうな顔をしながら姉の背中に続くのだった。


ーーーーーーーーー


 里の広場中央は、(しず)まり返った恐怖に支配されていた。

 中心で声を張り上げているのは、薄汚れた革鎧を(まと)った3人の男たちだ。そのうちの1人が、里の幼い男の子の首元にナイフを突きつけ、周囲を威嚇(いかく)している。


「お前ら! 金と食料をあるだけ持ってこい! この子供がどうなってもいいのか!?」


 盗賊たちの要求は、明白だった。人質を取り、里のなけなしの蓄えを奪おうというのだ。

 そこへ、里長(さとおさ)のリゾットと共に、(はる)(ひな)が駆けつけた。


「あ……」


 盗賊たちの顔を見た瞬間、(はる)(ひな)は同時に息を呑んだ。

 見覚えがある。忘れもしない、2日前――この異世界(アステリア)に転移してきた直後、森の中で旅人を襲っていたあの男たちだ。

 旅人を殺害した後、自分たちまで手にかけようとした卑劣な輩。


(また、あの人たちか……)


 (はる)は一人、群衆を割って盗賊たちの前へと歩み出た。

 手には、持ってきた一本の木の棒(ぼう)。それを正眼(せいがん)に構え、冷徹なまでの眼光を男たちに向ける。


「あなた達、次は手加減できないって言ったよね?」


「あぁん? なんだこのガキ……って、てめぇは!」


 リーダー格の男が鼻で(わら)いかけ――次の瞬間、全身の血の気が引くのを感じた。

 無駄な力みの全くない、洗練され尽くした美しい構え。そして、子供らしからぬ氷のように冷たい瞳。

 男の脳裏に、数日前の森での悪夢が鮮明にフラッシュバックする。


 仲間の一人はなす術もなく倒された。絶対的な力の差。対峙しようとする気すら起きない。

 目の前に立つ八歳の幼女は、人間の皮を被った理不尽な『怪物(かいぶつ)』だ。

 ナイフを握る男の手が、ガタガタと無様に震え始める。今すぐこの場から逃げ出さなければと。貧しい里から搾り取ろうとしていた金や食料への執着など、生存本能(せいぞんほんのう)が鳴らす警鐘の前に一瞬で吹き飛んだ。


「ひ、ひぃぃっ! ば、化け物だ! あの時のヤベェ奴だ!」

「に、逃げるぞ! 殺されるぞ!」


 戦う意志など微塵も残っていなかった。

 男たちは悲鳴を上げ、人質の子供を突き飛ばすように手放した。そして武器を構えることすらできず、蜘蛛の子(くものこ)を散らすように脱兎のごとく里の外へと逃げ出していった。

 完全なる不戦勝である。


 ――パチ、パチパチパチ!


 一瞬の静寂の後、広場を埋め尽くす里の住人たちから、割れんばかりの拍手と歓声が沸き起こった。


「さすが戦乙女(いくさおとめ)様だ!」

「武器も交えず、ただその威光(いこう)だけで賊を追い払うとは、なんという神々しさか!」


 リゾットもまた、満面の笑みを浮かべて拍手をしながら(はる)に近づいてきた。


「あ、あのね、リゾットさん。これは、実は前に一度……」


「わかっております、わかっておりますとも! さぁさぁ! もう開花の儀式ギフト・アウェイクニングの準備は整っておりますぞ。これほどの奇跡(きせき)を見せつけられては、一刻の猶予(ゆうよ)もありませぬ。さぁ、どうぞこちらへ!」


「えっ、ちょ、ちょっと待って……!」


 言い訳をしようとする(はる)の言葉は完全に黙殺(もくさつ)され、彼女は半ば強引にリゾットに手を引かれて歩き出す。

 皮肉にも、盗賊を震え上がらせたその「異常なまでの強者の威圧感」が、彼女を「拒否不能(きょひふのう)」な儀式の壇上へと押し上げてしまったのである。


最後までお読みいただきありがとうございました!


かつての敵を戦わずして退けてしまったことで、里の人々の期待はさらに高まってしまいました。

「戦乙女ではない」と言い出せないまま、物語はいよいよギフト開花の儀式へと進みます。


果たして、二人のステータスには何が記されるのか……。


面白いと思っていただけたら、評価やブックマークをいただけると、執筆の大きな励みになります!


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