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幕間⑭ 破邪顕正の華傑刀(血の巻)

 第一皇女、麒乃神(きのかみ)聖花(せいか)には二人の夜伽役がいた。

 何れも見目麗しき中性的な美丈夫で、傍目には女性にしか見えない化粧と装いをしていた。

 二人は麒乃神(きのかみ)自らが名付けた名を持っており、一人は音貝(おとがい)乃愛(のあ)といって嘗て幼馴染の恋人を逸見(へみ)(いつき)に寝取られた男の成れの果てである。

 そしてもう一人の男、繭売(まゆめ)娼也(しょうや)は全身から血を噴き出した音貝(おとがい)の穏やかな死に顔をじっと見つめていた。


 この日、西暦二〇二五年(皇紀二六八五年)八月十五日。

 主である麒乃神(きのかみ)聖花(せいか)薨去の報は彼らの元にもすぐに入ってきた。

 そして、一連の事件を起こした武装戦隊(ぶそうせんたい)狼ノ牙(おおかみのきば)がまたしても革命を為せず、逃走したことも。


 音貝(おとがい)は直ぐに麒乃神(きのかみ)から与えられていた東瀛丸(とうえいがん)を二錠服薬し、自殺した。

 彼にとって主と同じ手段で苦しみ無く主と同じ場所へ逝けるのは本望だったのだろう。


 繭売(まゆめ)は思い出す。

 かつて自分が、黄柳野(つげの)文也(ふみや)という革命家であった時のことを。

 彼のルーツ、オリジンは黄柳野(つげの)家の営んでいた宝石店がまだ幼かった麒乃神(きのかみ)聖花(せいか)に宝石を売ったところから始まった。




⦿⦿⦿




 黄柳野(つげの)文也(ふみや)が最も尊敬した人物は自身の父親武也(たけや)であり、また最も嫌悪感を抱いたのも同じく父であった。


 文也(ふみや)の父、黄柳野(つげの)武也(たけや)は元々誠実な宝石商であり、より価値のある宝石をより客の利益となるように卸業者を厳選に厳選を重ね、更には超人的な加工技術により驚異的な品質と価格を実現していた知る人ぞ知る人物だった。

 彼は本物の輝きを栄光ある皇國(こうこく)臣民は幅広く身に着けるべきであると考えており、それ故に小規模ながらなるべく来るものを拒まぬよう顧客本位の商売を続けていた。

 そしてどんな大人物であろうと、決して平民の先約より優先して売るなどということはしなかった……あの時までは。


 父はよりにもよって見つかってしまった。

 当時まだ皇國(こうこく)の基準における未成年者、つまり十五にも満たぬ小娘だった麒乃神(きのかみ)聖花(せいか)に目を付けられてしまったのである。


 勿論、父武也(たけや)は相手が子供であろうと不誠実な取引はしない。

 彼女が払える莫大な予算と、彼女の華憐を極めし美貌に見合うだけの宝石を全力で見繕った。


 そんな彼と、彼が用意した宝石に、当時の第一皇女はこう言った。


「素晴らしい。この世に貴方(あなた)程この(わたくし)を美しく彩るに足る宝石商は居ないでしょう。今後も精進を続ける限り、(わたくし)貴方(あなた)を贔屓にし続けて差し上げましょう。」


 その時、文也(ふみや)は明らかに父の目の色が変わったのを見た。

 欲に目が眩んだ、という類の澱んだ色ではない。

 しかしそれは(おおよ)そ、いい歳をした中年の男が我が子よりも幼い少女に向けて良いような視線ではなかった。


 その後、麒乃神(きのかみ)は宣言通り何度も父の(もと)を訪れた。


 ある時、いつものように彼女が父を称賛する際、彼女は十代とは思えない蠱惑的な笑みを浮かべつつ、父の頬に手を触れた。

 その瞬間、父は息子の見ている目の前でびくり、と奇妙な痙攣をした。


 麒乃神(きのかみ)は意に解していなかったようだが、父を中心に拡がる異臭は何事が起ったのかを察知させるには充分だった。

 父はそれ以降、彼女に会う際は予め部屋に籠って何かに没頭するようになった。

 父の出した(ごみ)の中に異様な量のちり紙と襁褓(むつ)が混じるようになったのも同時期からだ。


 そしてこの頃から、父は第一皇女だけは顧客に対する平等な宝石の取り扱いの例外とし始めた。


 彼は成長して大学に進学してからしばらくすると、授業に出ることは無くなった。

 だが、構内では何年かに渡って構内で彼は活動し続けた。

 独自に学んだイデオロギーによって革命組織「地上ノ蠍座(ちじょうのさそりざ)」を創設した彼は後に武装戦隊(ぶそうせんたい)狼ノ牙(おおかみのきば)首領(しゅりょう)Д(デー)こと道成寺(どうじょうじ)(ふとし)に認められ、対等の立場で同盟を組んだ。

 やがて組織の規模が大きな狼ノ牙(おおかみのきば)と小規模ながら精鋭揃いの地上ノ蠍座(ちじょうのさそりざ)で役割は別れ、事実上同一の組織と化していった。


 そして、同盟が正式に統一組織「武装戦隊(ぶそうせんたい)狼ノ牙(おおかみのきば)」とその別動隊「地上ノ蠍座(ちじょうのさそりざ)」となったのと同時期に、彼にとって最高のカモが見つかった。

 彼の実家に強盗が入り、第一皇女が贔屓にし続けた宝石店が(もぬけ)の殻となったのもこの頃である……。




⦿⦿⦿




 時は流れ、武装戦隊(ぶそうせんたい)狼ノ牙(おおかみのきば)の組織規模は武力面、資金面、動員面で絶頂期に至った。

 陸海空様々な軍用機ばかりか、為動機神体(いどうきしんたい)まで手に入れ、その超級(ちょうきゅう)の運用までもが視野に入っていた。

 それは即ち、並大抵の国家ならば転覆できるということを意味していた。


 そして西暦二〇一九年(皇紀二六七九年)、彼らは、後の第二次八月革命事件を除いては皇國(こうこく)史上最大の内乱を起こした。


 皇國(こうこく)の新皇軍ではこの時一人の英雄、輪田(わだ)衛士(ひろあきら)が台頭したわけだが、それに引き換え叛乱軍側は悲惨だった。

 基より武力、資金、動員のどれにおいても神聖(しんせい)大日本(だいにっぽん)皇國(こうこく)という世界最強であるばかりか時空を越えた侵攻すら可能とした不敗の国家の正規軍に勝てる筈も無く、狼ノ牙(おおかみのきば)は見るも無残、ボロボロに敗走していった。


 しかし、彼らは滅びなかった。

 それは、逃げていく彼らの殿(しんがり)を精鋭・地上ノ蠍座(ちじょうのさそりざ)がその組織力のほぼ全てを犠牲にして守り切ったが故である。

 武装戦隊(ぶそうせんたい)狼ノ牙(おおかみのきば)はこれ以降暫く地下に潜った。

 そして地上ノ蠍座(ちじょうのさそりざ)が犯した最大の失敗は何か、それは、徹底抗戦を選んでしまったことだ。


 一応、七曜衆と呼ばれる最高幹部七名は武装戦隊(ぶそうせんたい)狼ノ牙(おおかみのきば)の八卦衆が一人、逸見(へみ)(いつき)の術式神為(しんい)によって無理矢理戦場から救出された。


 だが、二人だけは言うことを聞かなかったのだ。

 一人は往生際悪く皇族を襲撃しようとしていた最後の部隊の指揮に戻ったリーダーの黄柳野(つげの)文也(ふみや)

 もう一人は、単独で皇族を暗殺しようとした水徒端(みとはた)早芙子(そうこ)だ。


 第一皇女の宮の周囲に部隊を展開させた黄柳野(つげの)文也(ふみや)はまず、父との苦い記憶を思い出した。

 そしてそれを塗りつぶそうと、彼は動乱直前に交わした婚約に追憶を切り替える。


早芙子(そうこ)さん、(ぼく)が用意できる一番の宝石を合わせた指輪だ。受け取ってくれないか?』

『奇麗……。でもそれって……。』

(ぼく)と結婚してください。』


 あの時の早芙子(そうこ)の嬉し涙は忘れようもない。

 戦いが始まってしまう前に、その足で婚姻届けを提出しに行ったものだ。

 今思えば革命が起こってしまえば潰してしまう役所に書類を出す滑稽さが笑えて来るが、二人はあの時確かに強い絆で結ばれていた。


『リーダー、号令を。』

「ああ、すまん。」


 部下の無線に文也(ふみや)は我に返った。


「三つ数えて突入するぞ。三……二……一……。」


 まるで果実に蟻が集る様に、人の群れが宮の庭絵と飛び込み豪勢な建屋に群がっていく。

 しかし、彼らは正門で思わぬ人物と遭遇した。


「おやおや、随分とまあ沢山招かれざるお客が参ったものですね……。」


 背の高い、妖艶な長い黒髪の美女。

 黄柳野(つげの)文也(ふみや)が道を踏み外した元凶。

 第一皇女・麒乃神(きのかみ)聖花(せいか)が彼らのど真ん中に立っていた。


 そして周囲を見渡すと、文也(ふみや)と目が合った彼女は蠱惑的な笑みを益々強めた。


「懐かしい顔ですね……。御前(おまえ)(わたくし)が贔屓にした宝石商の息子でしょう? 相変わらず……。」


 文也(ふみや)は警戒を強めた、強めた筈だった。

 だが麒乃神(きのかみ)はあっさりと、軽やかに、縮地的に離れていた筈の文也(ふみや)の頬に手を触れたのだ。


「見目麗しくて何よりですよ……。」


 ぞくり、とその瞬間、文也(ふみや)の全身を例えようのない恐ろしい悪寒が奔った。

 刹那に全てを悟ってしまった。


 嗚呼、我々は今からこの女に蹂躙される。


「リーダーから離れろ‼」


 誰かが叫んだ。

 だが、叫び終えた時には麒乃神(きのかみ)の姿は正に叫んだ男の目の前にあった。


「無礼者。」


 すかさず別の二人が麒乃神(きのかみ)の背後を取る。

 そして、使った。


――術式神為(しんい)美徳の盾(ジェスティーヌ)――

――術式神為(しんい)悪徳の矛(ジュリエット)――


 彼らが作ったのは、その名の通り矛と盾だ。

 誰もが知る有名な逸話、矛盾。

 まさにその通りの、説に違わぬ全てを貫く矛と全てを弾き返す盾である。


 術式神為(しんい)、即ち、術の様式で発揮される神為(しんい)

 神々の創造物に起源を持つ人間を始めとした万物が、その根源との僅かな繋がりを掘り起こした時に発言するあらゆる超常的な力の総称、それが神為(しんい)


 神の為し事、或いは神に為る事。


 それは通常、まずは超常的な生命力、回復力、修復力、復元力という形で現れる。

 次に、超常的な身体能力、エネルギー放出。

 最後に、数々の特殊な術の形を以て完成へと至る、とされている。


 彼らの術式神為(しんい)は二つで一つ。

 それは逸話の通り、矛で盾を突くことによって完成する。


 その結果は、この世の摂理に於いて起きてはならないことである。

 付いた瞬間の接点は、この世に在ってはならない空間である。


 故に産まれる、完全な「虚無」。

 二人の術式神為(しんい)はこの「虚無」をほんの一瞬作り出し、付近のものを全て虚無に巻き込んで消滅させるというものだ。


 しかし、まさに二人が各々の装備を構えた瞬間に麒乃神(きのかみ)は不敵に笑った。


「下らない……。」

「何だと⁉」

「構うな! 良いからやるぞ‼」


 矛の一撃が盾に向かって放たれる。

 しかし、禁断の衝突は起こらなかった。


 矛はいつの間にか二人の間に入っていた麒乃神(きのかみ)の指先で、あっさりとその刺突を止められてしまったのだ。


「え……? なっ……⁉」


 男は驚愕していた、当然だろう。

 麒乃神(きのかみ)の指先は、出血はおろか鬱血すらしていなかったのだから。


「全てを貫ける矛……そう思うならば(そもそ)もその矛で攻撃すれば宜しい。尤も、そんな身分賤しき者の下賤な言い分に従って、()()()()()()()()など(わたくし)にはありませんがね。」

「何だとォッ……⁉」


 矛の男は恐れ戦いて後退る。

 そんな彼を鼻で笑い、麒乃神(きのかみ)は言葉を続けた。


「大体、御前(おまえ)達の戦い方は小狡いのですよ。やれ、『我が能力によって貴様(きさま)は必ずどうこう()()()()()()()()()()。』だの、『我が能力の前では貴様(きさま)はあれこれを()()()()()()()()。』だの、『我が能力は貴様(きさま)の想像だにせぬ摩訶不思議現象を起こし、結果貴様(きさま)()()()()()()()()()()。』だのと……。例えるならば素手の決闘に自分だけ拳銃を持ち出す、或いは相手を縄で縛って思う存分殴る蹴るを行う様なもの……。もう一度言いますが、如何(いか)にも身分卑しき者の下賤な戦い方と言うより他ありませんわね……。」


 この第一皇女は、矛の男だけでなくこの場にいる全員、否、もっと多くの戦士たちを嘲笑っていた。


「へええ……。じゃあ見せてくださいよ。第一皇女殿下の高貴なる戦い方という奴を……!」


 盾の男はそんな彼女に苛立ったのか、あろうことか挑発を返してしまった。

 そんな彼に顔を向けた彼女は、天使の様な悪魔の様な晴れやかな笑みを見せた。


「良いでしょう。」


 それだけ言うと、麒乃神(きのかみ)聖花(せいか)は笑顔のままで全ての攻撃を弾き返す筈の盾を殴った。

 殴った瞬間、その盾の謳い文句には「筈」が付いてしまった、即ち、粉々に砕け散ってしまった。


「なッ‼」


 すかさず、麒乃神(きのかみ)は腕を振り上げる。

 いつの間にかその手には、トレードマークの金の扇子が閉じた状態で握られていた。


 そして、黄金の殴打。

 盾の男の頭はそれだけで腐ったトマトの様に潰れた。


 彼ばかりではない。

 矛の男も、それから次から次へとこの只の黄金の扇子による殴打が地上ノ蠍座(ちじょうのさそりざ)の精鋭達を虐殺していく。

 彼女は力が強いばかりではなく、その動きも空気の様に軽やかでつかみどころが無かった。

 文也(ふみや)にはいっそ優雅にすら見えた。


 術式神為(しんい)、人間の奥底に眠る力の極致。

 ただそう思っているのはどうやら皇族の言う「身分卑しき者」だけらしい。


 (そもそ)も、神との繋がりという意味では天神の血筋である皇族に勝る者など現在の皇國(こうこく)には存在しない。

 居たとしてもそれは前時代の弾圧によって絶えてしまった。


 皇國(こうこく)の皇族にとって神為(しんい)とは「単なる力」であり、またその総量自体が桁違いなのだ。

 また、術式が通用しない理屈も単純である。


 皇族にとってそれは、バリアを貼ったと言って遊ぶ子供の、正に児戯に等しいのだ。


「う、うわあああっ‼」


 流石に力の差を悟ったのか、全滅を目前に文也(ふみや)の部下たちは逃亡を始めた。

 それをみて麒乃神(きのかみ)は残酷な、しかし美しい笑みを浮かべ、掌から放出した神為(しんい)のエネルギーで纏めて消し飛ばした。

 それはまるで彼女の意に添うように、消すべき者だけを消し残すべきものには傷一つ付けていなかった。


 残されたのは文也(ふみや)一人だけとなった。


「さて、御前(おまえ)の処遇ですね……。」


 麒乃神(きのかみ)はわざとらしく、ゆっくりと恐怖に固まる文也(ふみや)に歩を進め、近寄ってくる。

 恐怖、果たしてそうだろうか。


麒乃神(きのかみ)……聖花(せいか)……。」


 憎き仇を前に思い出す、父が嘗て彼女を見たあの目。

 あれは確かに、中年の男が我が子よりも幼い少女に向ける視線ではなかった。


 あれは確かに、宝石よりも美しい愛すべきものを見つけてしまったという眼差しだった。


「違いますよ。」


 そんな追憶を見透かしたように、第一皇女は笑った。


「彼はですね、宝石になりたいと願ったのですよ。そしてこの(わたくし)に愛でられたいと、そう訴える眼でした。」

「何……だと……?」


 文也(ふみや)は腰を抜かし、迫り来る彼女から逃げることも出来ず、唯々己の運命を待っていた。

 ふと、彼はある事に気が付いた。

 目の前で、彼女の有り得ない一部が主張していた。


「あらあら、嫌だわ(わたくし)ったら。」


 麒乃神(きのかみ)聖花(せいか)、両性具有の第一皇女。

 その時、彼は漸く父の目の意味を悟った。


「あれは……あれは乙女の眼だ‼ 父さんはあろうことか年端も行かぬ少女を前に、乙女にされたっ‼ 眼差しを、接吻を、抱擁を、そして目合(まぐわ)いを乙女として求めたのだッッ‼」

「御名答! やっと真実に辿り着けましたね。しかし、本当はそれだけではないのでしょう?」


 麒乃神(きのかみ)を中心に視界が、世界が歪んでいく。

 駄目だ、この人は女神だ。


 刃向かえない、逆らえない。


「さあ、仰い!」

「父さんッッ‼ そんなこと出来るわけ無いだろう‼ 歳を考えろよッッ‼ (ぼく)ならいざ知らずううぅぅッッッ‼」


 余りにも恥を知らぬ絶叫。

 だが、それが麒乃神(きのかみ)には心地良かったらしい。

 恍惚とした目で天を仰いでいる。


「糞っ‼ 糞ぉっ‼ 殺してくれ‼ (ぼく)もみんなみたいに殺してくれ‼」


 文也(ふみや)の感じた惨めさは想像に余りある。

 だがそんな彼に、麒乃神(きのかみ)は更に悪魔の様に囁いた。


文也(ふみや)御前(おまえ)ね、父親似ですよ。」

「え?」

「親子の夢を叶えましょう? さあ、生まれ変わるのです。黄柳野(つげの)文也(ふみや)という名は捨てなさい。今この時より御前(おまえ)は、御前(おまえ)繭売(まゆめ)娼也(しょうや)(わたくし)のもう一人の夜伽役です。」


 こうして、黄柳野(つげの)文也(ふみや)という男は繭売(まゆめ)娼也(しょうや)という麒乃神(きのかみ)聖花(せいか)の愛玩人形に堕ちた。




⦿⦿⦿



 時を再び西暦二〇二五年(皇紀二六八五年)八月十五日に戻す。


 今、繭売(まゆめ)は周囲を見渡す。

 父が主に売った宝石が散らばっている。

 今の彼に出来ることは、最早この空間を滅茶苦茶にすることだけだった。


 狂ったように喚き散らしながらこの女装した男は部屋で暴れまわり、そして髪を切る為の鋏を自らの喉に突き刺して死んだ。


 麒乃神(きのかみ)聖花(せいか)の弟、皇太子・獅乃神(しのかみ)叡智(えいち)は姉の思い出として宮を残すことを望んだが、この部屋だけは完全に封鎖されることとなった。

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