第9話:奴隷の青年
ウィンクルが街でカロカレッジの連中を仕留めている間に、エラーは郊外に異様な気配を察知して向かう。
そこで奴隷の青年に出会う。
僕はウィンクルにカロカレッジの連中の始末と情報入手を任せて、郊外のマナの気配を追う。
(健全なマナが1つ、衰弱したマナが3つ、異様なマナが1つ。なんだ?)
僕は少しワクワクしながら気配のある場所に向かうと、崩れかけの小屋があった。
小屋の様子を伺うために近寄ろうとすると、丁度小屋から出てきた中年の女と目があった。女はいきなりナイフを出して襲いかかってくる。
「危ないなぁ、僕は何もしてないのに。」
適当に刺突をいなしていると、女は金切り声を上げる。
「お前もあの連中の仲間かい!消えないと殺すよ!」
突き出されたナイフをマナで強化した素手で握り潰した。女は腰が抜けて地面に座り込む。
「で、あの小屋に何隠してるの?人間だよね。あと、あの連中って?」
女が血管を顔に浮かべながら怒る。
「どうせカレッジの一味だろ!私の奴隷を横取りしに来たんだろ!」
僕は考える。
(このおばさんは僕をカロカレッジの一味だと思ってる。そして、多分奴隷の自営業?でもしてたのかな。そりゃ、どんだけクソみたいな仕事でも横取りされると食ってけないもんね…。)
「とはならないか。」
僕は正気を取り戻しておばさんに話しかけた。
「その隠してる奴隷、何人生きてる?」
「奪う気!?そうはさせな…」
僕はマナを細く飛ばしておばさんの口を横に裂いた。
「奪うんじゃないよ、助けてあげようかなって思っただけ。」
(ワンチャン仲間が増えると嬉しいし。)
口を抑えて這いずるおばさんを無視して小屋に向かう。扉を開けると、凄惨な光景が目に入った。
「うわぁ…、正に悲惨。」
1人の子供が衰弱しきって床に倒れていて、他2人はもう死んでいる。そのうちの1人の少女を庇っている青年がいる。
(この人が異様なマナの持ち主か…。うーん、どうやって声をかけよう。)
「ねえ…」
「あんた…、あんたもリデーラになんかするつもりか?」
僕は急いで否定しようとするが、彼は僕を睨んで立ち上がる。独特なマナの起こりと共に彼の金髪が逆立つ。
「リデーラは俺が守る…。消えろ!」
彼が殴りかかってくるのを腕で受け止めると、反動で小屋の外に弾き出される。
「凄いパワーだ!君、名前は?」
彼は銀色に変色した腕を構える。
「ヴィズ…。」
僕は彼の腕を見る。
(さっき受けたパンチは明らかに重かった。そしてあの腕の見た目…、腕が鋼鉄になってるのかな?現に僕は左腕の骨が逝ってる…。)
僕はヴィズの攻撃を関節で受け流し、右手で首を掴んで持ち上げる。身長が高いから持ち上げづらい。
「僕なら死にかけの怪我も治せる。僕の仲間になるならね。」
ヴィズは首を掴む僕の手を掴みながらもがく。
「早く決めないと首を潰すよ。仲間が待っててね、暇じゃないんだ。」
ヴィズは苦しみ歪んだ顔を僕に向ける。
「分がっだ…、奴隷でも何にでもなる…。」
僕はヴィズの首から手を離した。ヴィズは咳込んで地面に這いながら僕を見る。
「というか、どうやって治すんだ?あんた、どう見ても聖女じゃないし…。」
僕は折れ曲がった左腕を『天使の秘術』で治したのを見せる。
「は…?え?!どういう…」
「見様見真似で使えるよ。任せて。」
全身が傷だらけで、傷から虫が湧いた茶髪の少女が横たわっている。
「結構重症だね、ご飯もまともに食べてないでしょ。よく生きてるね…。」
ヴィズは焦りながら僕を見る。
「おい、喋ってないで真面目に…」
僕が彼女の頭に触れて、秘術を打ち込む。見る見るうちに傷が再生し、蛆虫が消えていく。
僕はあっけにとられているヴィズの首を軽く触る。僕が首を絞めた時のアザが消えていく。
「さっきは乱暴でごめんね。もうちょっと自己紹介しようか。」
ヴィズはそのリデーラという少女を抱えて、僕と外に出る。外にはウィンクルが待っていた。
「あ、見つけた。その2人は?」
「ああ、この2人は…」
ー新たな仲間の予感ー




