第8話:名無しの外道
エラーとウィンクルは内乱で崩壊した王都を脱出し、闇仕事を引き受けながら生き続け、3年経った今は、組織『UN』を作って元貴族の彼女は身元を隠すために『オーウェン』と名乗らせている。
3年後、僕とウィンクルは圧倒的な強さを得て、この『望界』の北端の町フィニスで闇仕事を請け負っていた。
仕事を終えてアジトに戻ると、ウィンクルが迎えてくれた。
「お帰りなさいエラー。的はどんな男だった?」
「あぁ、大した人間じゃなかったよ。全く欲しい情報には迫れなかった。商人のじいさんに嘘を掴まされたね。」
僕たちの闇仕事専用の組織、名前は『UN』。彼女は元貴族なので、身元がバレるとまずい。だから『オーウェン』と名乗らせている。僕はもともと貰った名前だし、エラーのままで良いと判断した。
ちなみに名前の由来は僕が前世に読んだ小説の登場人物と、楽曲の名前だ。
「まだ情報はあるわよ。」
「カロカレッジの?」
奴隷派遣東望界会社『カロカレッジ』。子供や女性を攫って奴隷に、それを売りつけるクソみたいな人身売買の会社。3年前に僕の教会を襲った勢力は恐らくここの人間だ。
「会社の幹部が奴隷収集のために、先月王国が反乱軍と戦った町に向かうそうね。それも明日。」
僕は驚く。
「じゃあその幹部を半殺しにして、内乱の情報を奪おうか。」
ウィンクルは嬉しそうに頷く。
僕は大天使のお願いで、この世界を救わないといけない。そのためにはまず、内乱の原因から潰すのが最善だと判断してこの活動をしている。
そんなこんなで、翌日僕らは前の戦場になった町に向かった。
「エラー、町の入口にマナを探知したわ。5、6人ってところね。大した強さじゃなさそうだし、私が1人で片付けようかしら?」
僕はウィンクルの実力を信用しているが、勢い余って殺してしまう可能性もある。
「僕も行くよ。念には念を入れて。逃がしたら意味ないしね。」
建物の屋根上で見ていた僕たちは、6人の集団を見つけた。
その中の先頭に立つ男が指揮を始める。
「まずは北側だ。情報では物乞いたちが集まっているらしい。そこを叩くぞ。」
6人が一斉に北に向かって歩き出す。ウィンクルは腰に差している片刃の細剣を抜いた。刃からは黒い炎が出ている。
「北に全員で集まるらしいわ、行きましょう。」
ウィンクルは気付いていないだろうけど、僕は異様なマナを町の郊外に探知していた。
「やっぱり任せて良いかな。」
彼女はキョトンとする。
「え?良いけど、どうしたの?」
僕は適当に返す。
「まあ、調べたいことできたし。お願いするよ、オーウェン。」
彼女は屋根を伝って高速で北に向かう。僕は南に向かう。
ウィンクルは奴隷集めに現れた奴らの前に現れる。
「1、2…5…。あれ、1人いないかしら?」
幹部の男が剣を抜いてウィンクルに差し向ける。
「なんだ貴様。我々の邪魔をしたいか?それは死にたいと同義だぞ!」
「死ぬのは、奴隷を嬉々として作ろうとしてるあなた達よ?」
ウィンクルは高速で5人の間をすり抜けて背後に立つ。5人全員が後ろを振り向くと同時に、肩や腹が裂けて血が吹き出した。
全員が倒れこむと、ウィンクルは幹部の前にしゃがむ。
「ねえ、あなただけは半殺しで済ませたのだけれど。聞きたいこと、答えてくれるかしら?」
男は口から血を吐きながらウィンクルを見上げる。
「何が知りたいんだ…。」
「3年前、王都内乱の黒幕。あなた達の会社も関係してるんでしょう?」
男は目の色が変わる。緊張の顔で固まる。
「あら?答えられないかしら。それともあなたみたいな下っ端じゃ知らない?」
男は落としている剣に手を伸ばすが、ウィンクルはそれに気付いて腕を切り落とす。痛みで男は地面にのたうつ。
「最後のチャンスよ、教えれば、このあと治療してもらえば助かるわ。」
男は絶望の表情で口を開く。
「あの襲撃は、ドルス社長の命令だ。突然で出払っている幹部連中が多かったから、低い階級の構成員ばかりが駆り出された。目的は社長しか知らない…。いや、社長と話していた貴族がいたな。王都で見たことがある、姿までは覚えていな…。以上だ。」
ウィンクルは立ち上がって剣を左手から右手に握り変える。
「そういえば自己紹介をしていなかったわ。私はオーウェン。あなたみたいな悪を自分勝手に殺すためだけに生まれた人間よ。死ぬ前に教えてあげるわ。」
幹部は驚く。
「死ぬ前?!おい待て、嘘じゃない、ちゃんと言った…」
ウィンクルは男の首を跳ねる。ウィンクルは刃の血を払って納刀する。
「どちらにせよ、奴隷を作る組織の人間は片っ端から潰すわ。」
ーただ残酷に悪を裁くー




