第7話:再起
瓦礫に下敷きになり、瀕死だった少女を救うため、エラーは敵を討つ。
相手の大男の斧を受ける時に使った右腕がズキズキと痛む。
(布で縛ってマナで肉を固めて止血しても、痛い。こいつは早めに殺す…。)
男は叩きつけられた壁から起き上がって、落とした2つの斧を拾った。
「小僧!何をした?!」
僕はふと後ろを見た。助けた青髪の少女は静かに壁にもたれかかっている。
(大雑把にアレを使っちゃったけど、あの子までは衝撃が届いてなさそうだ。)
「スキルを使われた、とでも思ってる?かかってこいよ。」
僕が挑発すると、大男は左手の斧をぶん投げる。僕はマナを纏った左手で弾いた。
「ん?」
眼の前に火の付いた筒が投げ込まれて、火花を散らした。その後ろから斧で大男は襲いかかってくるが、背中を反って回避した。
(爆竹で視界を潰してから武器で横薙ぎ…)
大男は斧をそのまま縦に振り下ろしてくる。僕は体を横に捻って回避。
(僕が姿勢を崩したところにもう一撃、慣れてるな。)
大男は左手で掴みかかるが、僕は左でパンチ打ち返して腕を潰した。
大男が痛みに顔を歪ませる前に、追撃の蹴りで腹に穴を開けた。
「はい、おしまい。」
振り返って少女のところに戻ろうとしたが、気配を感じる。背後に目をやると大男がまだ斧を僕に振り下ろそうと構えている。
「まだ生きてたんだ。」
僕は左手をかざして大男の頭を消し飛ばした。放出したマナが後ろの木を貫いて倒れる。
「出力の調整が難しいな。裏の丘じゃ狭くて実験もできないし…。」
僕がこの大男に2回使った技は、スキルではない。マナを放出しているだけ。1回目は指向性を指定せずに使ったから、出力の調整が心配だった。
僕は少女のところに戻る。
「まだ生きてる?」
少女は僅かに頷いた。僕は少女を抱えて城壁から外に出る。
僕が衛兵から奪って身につけていたマントを草むらに敷いた。そこに少女を寝かせて頭と背中の傷を見る。
(医学には自信無いなぁ、出血が多いし、マナで止血してから…)
傷に触れて少女の体に無理やり僕のマナを流し込む。そしてみるみる傷が塞がっていく。
「聖女しか使えないとか言ってたけど、僕にも使えるや。」
聖女しか習得できないという『天使の秘術』。何種類かあるが、僕が今使ったのは『ヒーリング』。名前の通り傷を修復できる治癒能力。
恐らく原理は、僕がよくやるマナの凝固による止血を延長して、傷口を密着させて再生を促す。とかだろう。
僕は斧の切り傷の付いた右腕を掴んで治癒する。
「集中力がいるから、戦闘中は併用できないなぁ。早く克服しないと寿命が縮むね。」
独り言を吐きながら明け方まで過ごしていると、差し込んだ日の出が眩しいのか、少女が目を覚ました。
陽光に当たって分かったけれど、青髪に血や木片、土がこびりついていて荒れているが、美しい藍色をしている。
少女は起き上がって頭や背中を触る。その後僕を見て
「ケガが無い…。あなたが助けてくれたの?」
と聞いてくる。僕は眠かったのでウトウトしていたが、流石に目が覚めた。
「まあそんな感じかな。僕はエラー、10歳。君は?」
少女はぽかんとしながら口を開く。
「ウィンクル、13歳。年下…。」
僕は彼女にじっと見られて目を逸らす。彼女は立ち上がって僕の前に立つ。身長は僕より頭1つ高そうだ。前世から低身長で残念だ。
「エラー君、この恩を返すために私は君の全てに従います!」
「えぇ…。」
まあ元気そうだから良いけど、なんか良く分からないことになった。次は隣の町にでも行こうかな。王都の内乱なら他は無事だろう。行けば情報も食料も手に入る…かも。
「恩返しなんていらないよ。お互い死なないと良いね。じゃあ…」
「私もついていきます!なにかしらお役に立てます!」
僕は振り返ってウィンクルに指さした。
「僕に付いて来るんだったら、ある程度強くないと無理だよ。ちゃんと鍛えないと、貴族のお嬢様には厳しいでしょ。」
無視して行こうとすると、ウィンクルが僕の腕を掴んでくる。
「お願いします、強くなるので、役に立つので。一緒に行かせてください…!私、家族に見捨てられて、もう会いたくないんです!」
僕は家族を探せば?と提案しようとしていただけの、困ってしまった。
「はあ、良いよ。無理はしなくて良いし、もう拒絶しないよ。じゃあ君はもう仲間だ。よろしくね。」
僕は手を差し出した。彼女は涙目で笑って手を握り返してくる。
ー新しい仲間。新しい人生の新しい道を歩むー




