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第6話:リセット

 教会の仲間を先に逃がしたが、逃がした先の旧兵舎に殺し屋が現れて皆虐殺される。

 その凄惨な光景を見たエラーは、再び自暴自棄になってしまうのか。

 殺し屋を殺した僕は建物の中に戻る。


 中は悲惨な光景が広がっていて、血と肉の生臭い匂いが鼻を刺す。


「カーラ…」


 緑髪の少女を探していると、部屋の隅に横たわっているのを見つけた。生きていると思って走り寄ると異常に気付く。


 タオルケットの下半分に膨らみが無い。まさか、と思ってタオルケットを恐る恐るまくると、下半身が切断されて無くなっていた。


 僕は急いで部屋の壁際に行って、雑草が生えている場所に嘔吐した。


(10歳の子供が見る光景じゃねえよ…!結局、この世界でも大切な人間は誰も救えない。俺は何のために生まれてきたんだよ!)


 横の長椅子を見ると、ウィスが切断された左腕と左足から大量に血を流して眠っている。


「ウィス…。」


 ウィスに触れてマナを感じたが、死人と同じ、動きのないマナだ。ただ体に残存しているだけのかすれた火。助からない。


 立ち上がって目に入ったのは、鏡に映る醜い怪物のような自分だ。ボサボサの白髪、額の左に小さい角、付け根の皮膚はひび割れて、左目は黒目と白目が反転している。


 僕は鏡に頭を打ち付けた。鈍い痛みと共に鏡が割れて破片が散る。


 僕は衛兵のマントを死体から奪って引っ被った。


「落ち着けよ…、すぐ自暴自棄になるな…。」


(今すべきは、生きるために少しでもインフラが生きていそうな王都ファルタスに行くこと。もし僕が誰よりも強いとしても、所詮は子供だ。1人じゃ簡単に生きられない。)


 僕は小山を下って王都の城壁前の平原に出る。


(外に敵はいない…。予想通り内乱。事件が起こってるのはあくまで王都内と教会、兵舎などの重要拠点のみ。)


 僕は壊れている巨大な城門を通って中に入ると、多くの民や兵士が血を流して倒れていた。


「酷いな。生存者はどこに…。」


 マナを探知していると、死体の残存マナとは違う、弱っている気配を感じ取った。


(西の貴族の居住区…、弱ったマナから数人の健常なマナが離れていく。誰かが死にかけで見捨てられたか?)


 僕がその方向に向かうと、火事によって崩落してきた天井で下敷きになっている少女を見つけた。


 僕はその青髪の少女の前に座り込む。


(生きてるな…、ほぼ死にかけだけど。呼吸もまともにできてなさそうだし、助ける意味は無…)


 その瞬間、かすかに少女の左手の指が地面を引っ掻く。


 僕はマナで膂力(りょりょく)を強化した右腕で天井を持ち上げて、左腕で少女を引っ張り出す。


(このケガで生きてるのか?女の子なのにタフだな。)


 僕は彼女を両腕に抱えて王都の外に向かう。


「誰…?助けてくれたの?」


 彼女が目を薄く開いて、喋る。


「僕がケガ治すから、死なずに待っててよ。」


壊れて穴が空いている城壁が見えたところで、


「おい小僧!」


 後ろから野太い声が声をかけてくる。振り向くとスキンヘッドで全身傷だらけ、いかにもイカつい大男が立っていた。


「子供を攫(さら)えと上からの命令だ。お前ら、殺されたくなければ俺について来い。」


「嫌だよ。」


 僕は少女を端の城壁にもたれかからせる。彼女がわずかに目を開けた。


「3分だけ待ってて。大丈夫だから。」


 僕が大男に向かい合う。大男は斧を両手に握って構える。


「死にたいのか?本当に殺すぞ。」


「武器を持って人に殺すって言うなら、殺されるだけの覚悟はあるだろうね。」


 僕が挑発すると、大男が額に血管を浮かばせて斧で切りかかってくる。


(大振り、バカの戦い方だ。カウンターで首を落とす…)


 マナで強化した右腕で縦に振り下ろされた斧を受けると、急に重量が増して地面にヒビが入る。


 大男は笑っている。


「小僧!俺の斧を受け止めるのは見事、ケンカ売ってきただけはある。だが、マナだけじゃ俺のスキル『重量変化』までは受けきれんぞ!」


 重みで少しずつ腕の肉に刃が入ってくる。


(このままじゃ腕が落ちる…、真正面から受けたのが悪かった。仕方がない、使う…!)


 男はいつの間にか家屋の壁に吹き飛んで叩きつけられていた。


 男は血を吐きながら倒れ込む。


(衝撃波か…?とんでもない威力と速度…。この小僧、なんなんだ…?)


 僕は切れ目の入った右腕を布で縛りながら男に歩み寄る。


ーもう零(こぼ)さないようにー

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