第5話:夢と泡③
エラーとウィスが孤児院に戻ると教会が、王都ファルタスが火の海になっていた。
教会の中で子供たちや神父たちが殺されていて、凄惨な状況に。エラーはウィスを逃して、カーラを探すために力を振るう。
僕は殺した男たちが持っていた剣を1本拾って孤児院の方向に歩き出す。
(カーラ、まだ生きてるよな…。)
僕はカーラの部屋に向かう。部屋の前で襲撃している男たちがなにか話している。1人の男がドアノブを無理に開けようとしている。
「くっそ、開かないぞ!でも中から女の声がした。どうにかして中に入るぞ。全員殺せ!」
僕はマナの気配を探知して部屋の様子を勘で探った。
(中にカーラとサラスさんがいる。火も回っているから苦しいんだろうな、マナが弱まってきてる…。)
僕は剣で壁を叩いて男たちの注意を向けさせた。
「まだいたぞ!殺せ殺せ!」
剣を投げて先頭の頭を貫いた。そして死体になったその男を盾にしながらマナを前方に放出、後ろの3人も消し飛ばした。
(廊下の幅が狭いおかげで僕のマナ放出の回避ルートを潰せたな。まあこんなザコが避けられるとも思わないけど。)
僕はドアノブに手をかけながら声をかけた。
「カーラ!サラスさん!僕だ、エラーだよ。もう追い払ったから出てきて。逃げるよ!」
ゆっくりとドアが開き、2人が顔を出す。2人とも恐怖に怯えた顔をしている。
僕は簡単に状況を説明すると、2人とも賢いから一瞬で理解して僕の後ろについてきた。サラスさんは僕の後ろで小声で言う。
「ねえエラー、カロールさんがどこにもいないの。探さないと…。」
僕は2人を教会の裏口まで導いて、
「僕が探してくる。大丈夫、すばしっこく隠れながら探して逃げるよ、後で会おう。」
僕は口と鼻を右手の袖で塞ぎながら探し回るが、どこにもいない。中には孤児院の大人11人、子供18人、僕が殺した侵入者8人の死体だけ。生者はいない。マナで探知しようにも、死体に僅かに残存した搾りかすのようなマナしか感じられない。
(カロールさんはどこに…)
僕はその瞬間、肌がチクリと刺されるような気配を感じた。
「あの方向…!」
僕が強大な魔力を察知したのは、皆が逃げているであろう王都郊外の旧兵舎。
(まさか避難先を読まれた!?もし襲撃者にバレたなら、急いで行かないと危ない!)
僕は必死に旧兵舎に向かう。嫌な気配を全身に感じながら走る。
急いで旧兵舎のドアを蹴破ると、見えた光景は絶望だった。
長身でピンク髪の男が大剣を担いで女の首を掴んで持ち上げている。
「サラスさ…!」
ゴリュッと首が潰れた音がして床に落ちた。男はサラスさんの首を右足で踏んで笑う。
「ハッハー!生きたいって思う奴ほど殺す前に死にたそうな顔をする!特にあの緑頭の女児、面白いくらい泣いてたなぁ。『えらーたすけて!たすけてぇ』って。あんな可愛らしい顔の女は見たことな…!」
僕の頭にはカーラの笑顔が浮ぶと共に、血管がブチッと破裂する音がした。突発的に男に向かっていく。
男は歪んだ笑顔で大剣を振り上げる。
「良いぜ、最高の怒りだぁ!来…」
僕は右の掌底で男の腹を打って壁に吹き飛ばした。壁が崩れて男は外に投げ出される。
(結構強めに殴ったのに、一撃で仕留められてない…。)
男は大剣を杖にして起き上がった。
(なんつうパワーだ…!?あんなガキにこんな力がある訳がない…。怪力になる類のスキルか?)
僕は手のひらから血が出るほど両拳を強く握りしめながら歩き出す。男は立ち上がって剣を僕の頭目掛けて横薙ぎに払う。それもマナで頭を集中的に強化して、刃をへし折った。
男は恐怖に顔を歪ませて地面に倒れ込む。
「なんなんだお前…!?お前みたいなガキが、俺様に…、『狂気のルデーレ』様だぞ!勝てるわけが…」
僕はそんな言葉もほとんど聞こえず、男の左足を踏み潰した。男は痛みで声を上げながら後ずさる。
「やめろ…、報酬で稼いだ金ならいくらでも出す!助けてくれ…、死にたくない!まだ殺し足りないんだ!」
僕は男の前にしゃがんで男の胸に手を当てる。
「胸に手を当てて聞いてみろよ。今までお前は、命乞いした人を逃がしたことあるか?」
男が絶望の表情で口を開いた瞬間に、マナを放出して男の心臓を肉ごと突き破った。
ーまた守れない。平穏の夢は泡のように弾け飛ぶー




