第4話:夢と泡②
神父のカロールや聖女のサラスに隠れて、エラーは孤児院の親友ウィスとマナのトレーニングをすることに。
それで教会を離れている間に、事件は起こる…。
僕はウィスと教会裏の丘に向かった。
ウィスは僕を見てワクワクしながら
「なあ、マナってどうやって使えば戦えるんだ?身体に纏うっていうのは分かるけど、いまいちイメージが出来なくてな。」
僕は右手にマナを纏って説明する。
「マナを纏うと言っても、表面にくっつけるだけじゃすぐ綻ぶ。なんというか、筋肉に浸透させるみたいな…。分かるか?」
ウィスは右手を見つめながら力を踏ん張っているが、
「手の周りにマナを纏えるけど、そんな感覚は無理だ。ずっと張り付いてるみたいな感覚。」
理解できてなさそうだ。僕はため息を付いて後ろの木を指す。
「この木、殴ってみてよ。差が分かる。」
ウィスは怪訝な顔をしながら木を殴る。
「すげえ!そんなに痛くないし、木にヒビ入ったぞ、これがマナ…」
僕は隣の木を殴って、抉り取った。ウィスは驚きで目を見開く。
「そんなにパワーが違うのか…。俺らはどっちも体格同じくらいなのに。」
「この世界で戦うなら、マナの使い方が何よりも大事だ。警視隊目指すなら、マナの肉体強化くらいは極めるべき。」
ウィスは感心した顔をしてまた木を殴る。
「やっぱ痛いや。お前は大丈夫なのか?」
「いいや?痛いものは痛い。戦う人なら慣れるんだろうけど、僕らみたいなガキには厳しい。」
2人でマナを使っていると、いつのまにか夕方になっていた。
「そろそろ帰るぞ。カロールさんに怪しまれる。」
僕は本を閉じて、木に向かってマナを鍛えているウィスに話しかける。ウィスは嬉しそうな顔で僕を振り向く。
「なあエラー!お前の言う纏い方は分からなかったけどよ、見ろよ俺の『スキル』!」
ウィスの右手の周りに風が渦巻いている。
「風…。便利そうじゃん。戦闘向きだな、おめでとう。」
適当に受け答えして丘を下り始める。後ろからウィスが怒った声で追いかけてくる。
「ちゃんと見ろよ!風だぞ、風!めっちゃかっこいいだろ?」
「あーはいはい。」
丘の中腹辺りまで降りると、僕は異様な気配を感じる。教会を見ると赤い光が上がっている。
(火事…!)
「ウィス、急いで戻るぞ!燃えてる!」
「は?!嘘だろ。」
2人で教会に戻ると、教会どころか王都全体が燃えていて、悲鳴が上がっている。
ウィスが急いで教会に戻る。
「おい待て!」
僕は立ち尽くす。
(追いかけるか?でもこんな時に死ぬリスクを背負うのは良くない…。でも…。)
ウィスが教会の中に入ると、子供がたくさん倒れていて、凄惨な有様だ。その死体を数人の黒いローブの男が踏み荒らしている。
「あ…」
ウィスの前に男が現れて剣を振り上げる。僕は咄嗟にウィスと男の間に入って剣を素手で受け止める。男は驚愕している。
「なにっ!」
僕は反撃で左手の手刀を脇腹に突き入れた。男の腹を貫通して血や肉が飛び散る。男は苦しみながら倒れ込む。
ウィスは呆然としゃがみこむ。僕は左手に付いた男の血肉を袖で拭いながら考える。
(状況がさっぱり把握できないけど、教会の子供はほとんど壊滅、カロールさんやサラスさんは生きてるのか?カーラは…。)
数人の男が僕たちの所に向かってくる。
「まだいたぞ。皆殺しにせねば社長に何をされるか分からん…。」
「奴隷などいればいる程良いのに、殺すのはもったいないのではないか?」
「黙って作業しろ!こんなガキに時間をかけるな!」
後ろから地位の高そうな男がドスドスと来て僕に剣を振り上げる。
僕は右腕を振り払って前の男3人の上半身を全て抉り取った。ウィスは目と口を大きく開いたまま僕を見つめる。
「エ…エラー、お前…」
僕はウィスの腕を掴んで立ち上がらせた。
「僕がカーラを探す。お前は先に安全な場所に行ってろ!」
ウィスを半ば強引に裏口扉に押し出すと、ウィスは僕を絶望の表情で見つめる。
「お前は大丈夫なのか?!」
僕は右手で制止する。ウィスは僕の意図を察してくれたのだろう。
「警視隊呼んでくる!お前もすぐに逃げろよ!」
ウィスは扉を閉めて走り出す。僕は男の持っていた剣を1本拾って奥に向かう。
(社長、奴隷。気になる言葉があったけど、今はカーラを探さないと…。)
ー平穏は続かないー




