第10話:甘味
奴隷から救い出した2人のうち、14歳の少年ヴィズを仲間に加えるエラーは『UN』の力を徐々に拡大させる。
僕はヴィズとリデーラと小屋を出ると、ウィンクルが待っていた。
ウィンクルは2人を見て驚いた顔をしているので、僕が説明する。
「彼はヴィズ。新しい『UN』の仲間だよ。」
「え?!仲…え?」
彼女は驚きで口を抑えるが、すぐに落ち着く。
「彼って、おんぶしてる女の子は?」
僕が事情を説明すると、彼女は納得したような顔で頷く。その後にヴィズを見る。
「強いんですか?正直、体格良いだけでマナとかは平凡に見えますけど。」
僕はウィンクルの苦言を聞いてため息を吐く。
「マナ総量は正直微妙だよ。でも性質、普通とは違って硬い。スキルや身体強度を合わせると怖いよ。」
ヴィズは気まずそうにリデーラを背負って立ち尽くす。僕はその様子に気づいてフォローする。
「君は強いよ、使い方さえ覚えればね。本ならいっぱい持ってるし、実技ならウィンクルがいる。」
そんな話の後、ヴィズとリデーラを連れてアジトに戻った。
ソファに座ってウィンクルの報告を聞いた。
「あの幹部、大した情報持ってなかったわ。カロカレッジの社長が遠征中の主力を差し置いて、いきなり蜂起したとか、そのレベルの情報量しか得られなかった。」
僕は当時の教会で下っ端が語っていた話を思い出す。
ーまだいたぞ。皆殺しにせねば社長に何をされるか分からん…ー
「その話だったらすでに知ってるんだよね、結局得られた成果は仲間1人か。」
ウィンクルは紅茶を入れたコップを僕に手渡した後に向かいに座った。
「じゃああの女の子の方は仲間じゃないの?何のために連れてきたの?正直邪魔じゃ…」
僕はウィンクルを軽く睨む。
「僕は瀕死の生者をその場で見限る訳じゃないよ。現に、君だってそういう理屈で助けたんだよ。分かるでしょ?」
ウィンクルはドキッとして紅茶でむせる。さっきの発言を半ギレで聞いていたヴィズに向かって
「愚問だったわ。ヴィズ君ごめんなさいねー。」
ヴィズはまだ緊張で顔がこわばっている。僕はベッドで昏睡しているリデーラに付き添うヴィズに椅子をすすめた。
「座りなよ。大丈夫、マナを見れば分かるけど、普通に生きてるよ。何歳かは知らないけど、子供が夜ふかしして寝てるようなものだよ。」
ヴィズは恐る恐る僕の右前の椅子に座る。僕は机の棚を開けて袋を取り出した。
「クッキー食べる?どう見てもお腹空いてそうだし。夜ご飯食べる時間は毎回決めてるから、あと1時間くらい待ってて。」
ヴィズは遠慮しつつ、ゆっくりとクッキーの包み1つに手を伸ばす。手に取るとウィンクルが笑う。
「私の手作りよ、料理得意だから安心して食べなさいな。毒も入れてないわ。」
ヴィズは包みを開けてクッキーを口に入れる。ゆっくりと噛んでいると、ヴィズの目に涙が浮かぶ。
ウィンクルがおどおどし始める。
「え、そんなにお口に合わなかったかしら。前に買ったパンでも焼こ…」
「美味い…甘いし、食ったことない味だ…。」
ヴィズが感動しながらボソリと呟く。ウィンクルはキョトンとした後に少し笑う。
「好きなだけ食べなさいな。私なら簡単に作れるし、女の子の分も作らないとね!」
ウィンクルは鼻歌を歌いながらキッチンに向かう。
僕もクッキーを手にとってかじる。
「そういえばヴィズ、何歳?」
「14。」
ヴィズは2枚目のクッキーを口に運びながら答える。
「僕の1つ上か。ウィンクルよりは下だと思ってたけど、僕の先輩かぁ。敬語使おうか?」
ヴィズは首を横に振る。
「なんなら俺が敬語使わせてもらいます。よろしくお願いします、エラーさん。」
ー新たな仲間を連れてー




