第2話:人生
大天使の説得を受けて異世界『望界』(スラヴ)に17年の制限で転生した彼、空井白斗。
なんと、いきなり捨てられた状況から人生がスタートしてしまい、ピンチに…。
僕は状況を整理した。
(今び僕は恐らく生まれて3歳程度の幼児。まあ足で立てるくらいだからまだマシだ。だが、大天使が言ってたな…。救う必要があるレベルの国じゃ、生きられるか…。)
路地裏を歩いていると光が差し込んできた。
(まずは大通りに出て状況を確認しないとな。とにかく情報を…。)
光の方向に歩き出すと、後ろから犬の吠える声が聞こえた。振り向くと野犬が3匹いる。
「うわー…、もう詰んだ?」
(まだだ!さっきから体に不思議な感覚がある。これを使えば…。)
力を込めて右腕を振り払った瞬間、周囲の建物や木箱ごと野犬の体がえぐり飛んだ。
(え…、大天使様。流石にパワーバランス崩しすぎじゃないか?幼児だよ?幼児。立ってるだけで割とふらふらする幼児だよ?)
大通りが騒がしくなる。後ろをぎょっと振り向くと、道を歩いている大人たちが僕を見て驚いている。
「なっ、なんなんだこの子供は!野犬を一気に吹き飛ばしたぞ!」
「なんなの!恐ろしい目の色と角…、呪われた子供よ!」
「誰か警視隊を呼んでー!」
野犬から流れた血溜まりに映る顔を見ると、左目の中心が赤く、白目の部分が黒い、真っ白な短髪の子どもが写っていた。額の左側には小さい角が生えていて、付け根の皮膚はひび割れている。
こんな姿が、僕?
(この湧き上がるパワーの代償ってことね。今はとりあえず逃げないと。)
僕は急いで路地裏の奥に走り出した。路地裏には物乞いらしき人が何人かいたが、見つからないように避けながら移動する。
流石に走りすぎて疲れ果てたところ、後ろから2人の足音が聞こえてきた。
(しまっ…!)
僕は振り返ると、聖職者のような服装の男女が立っていた。
「本当に…」
「確かに、呪われたみたいな姿ですね…。体もところどころにヒビが入ってますし…。」
僕は自分よりも遥かに身長が高い2人の大人に怯えた。
(殺人はマズい、世界を救うなら犯罪なんて犯してられない…。でもこの距離感で逃げられるか?もうスタミナも…。)
女の方が僕の頭に手を上げてくる。殴られると思って目をつむると、優しい手触りが頭に届く。
「結構かわいいね!ねえ君、私たちの孤児院に来る?あ、もしも迷子だったら探してあげるよ?」
男の方も腕を組んで笑っている。
「良いね、呪いなんて我々の教会で浄化してしまえば良いし。」
僕はそんなやり取りを聞いて、あっという間に教会に連れてこられた。
(セーフ…なのか?)
2人は僕を椅子に座らせて、自己紹介をする。
「私はこの教会の神父、カロール。こっちは聖女のサラス。君の名前も教えてくれるかな。」
僕は初めて口を開いた。
「名前、知らない。気付いたらあの路地裏にいた。」
(ああ、嘘は言ってない。マジで気づいたら捨てられてたんだ、信じてくれ。つーか気付いたら捨てられるってなんなんだ、どういう状況だよ。)
カロールさんは苦い顔をする。
「じゃあ私名前付ける!ちょっと待って考える!」
サラスは苦笑いする。
「彼の大事な名前なんだから、しっかり考えるんだよ。」
「分かってますよーだ、神父様はキッチリしてるなぁ。」
カロールは申し訳なさそうな顔で僕を見る。
「ごめんね、サラスはいつもこんな感じなんだ。でも明るくて優しい子だから安心してくれ。」
僕は呆然としながら、話を聞いていた。
しばらくすると、サラスが笑顔で僕に向き直ってくる。
「決めた!君の名前はエラー!理由は特にないよ、勘!名は体を表すって言うくらいだし、絶対似合う名前になるよ!」
僕の名前はエラーになった。なんかコンピューターみたいな名前になってしまった。まあ良いか、どうにか生きられそうだし。
(ここから10年ちょっとで世界救わないとダメなのか。結構ダラダラしてる暇は無いかな。まあ子供の時から目立つと暗殺とか狙われそうだし、隠れてトレーニングしてよう。まずは、この『マナ』とかいう力をモノにする…。)
ーなんとか救済を得たエラー、新たな人生がようやく始まる。ー




