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第1話:再起

 現世で絶望に打ちひしがれていた青年、空井白斗。

 大天使と名乗る女に天界で、滅びの足音が迫る異世界『望界』(スラヴ)に転生しないかと説得されることに。

 僕は絶望の底にいた。天井に吊り下げた縄の前に置いた椅子に上がる。


「最悪って、一度に何個も来るもんか…?」


 僕の名前は空井白斗(そらいはくと)。17歳、どこにでもいるただの高校生だ。


 勉強を真面目にやってきて、彼女もできて、我ながら上手く行っていた人生だった。なのに、たった1日で全てが崩壊した。


 僕が野球部のエースの座を手に入れて、トレーニングに時間を費やしていた間に彼女がベンチ外の先輩外野手に寝取られた。


 元はと言えば放っておいた時間が長かったのが悪い。自殺した彼女の遺書を読んで、更なる絶望に追い込まれた。


 そしてもう1つ、自暴自棄になってフラフラと街をさまよっていたら通り魔に硫酸をかけられ、選手生命がかかっている左腕と左目を損傷した。


「どうでもいい。やりたいことも、見たいものも無い。」


 親は常に仕事でいない上、兄弟や姉妹もいないから、静かに1人で首を吊った。


 1日、たった1日で人生は一気に終わりに向かったんだ、もう終わった。暗い世界に意識が沈んで行く。


 次だ、次があったら目立ったことはせず、教室の隅で静かに、孤独に生きよう。


 人間に生まれ変われることを前提にしたおこがましい発想を抱いたまま、僕の人生は17歳で幕を閉じた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「お目覚めですか?」


 僕は目を開けると、澄んだ青空と照りつける日光が目に入る。地面からは穏やかな花と草の香りがして、不思議な気分だ。


 起き上がって状況を確認する。


「どこだ?ここ。」


「おぉ、やっと起きましたね!」

 

 後ろから女の声が聞こえる。


「誰だ?まずここはどこだ?僕は死に損なったのか?」


 女は呆然と座り込む僕の眼の前にしゃがみ込む。女は白くサラサラとした長髪に、澄んだ緑色の目をしていて、幻想的な雰囲気を感じる。


「質問の順番通りにお答えするなら、私は大天使。ここ天界で一番偉い天使です。そしてあなたは死んでいますが、とあるお願いがあって私の庭にお呼びしました。」


「お願い?」


 僕は大天使とか、天界とか意味の分からない単語は一回無視する。ここは死後の世界ってことだ、常識は通用しないんだろう。


「お願いというのは、あなたに幾つもある異世界の内の1つ、望界(スラヴ)に転生して世界を救ってもらいたいのです。」


「は?転生って…」


 大天使は僕を無視して話す。


「望界(スラヴ)には、マナとスキルという異能力があります。あなたの住んでいた世界で言うところの、テレキネシスとかエスパーとかそういうものです。」


 僕はしばらく黙って大天使の言葉を整理する。


「つまり、ゲームで言う特殊能力が当たり前に社会に浸透してるってことか、面白いな。でもなんで僕みたいな生きる気の無い人間を選ぶ?そんな人間が世界を救うようなやる気出せると思うか?」


 大天使は笑う。


「思います。あなたの魂は今、闇の中に沈んでいますが、煌々と光を放つ核のような何かを感じます。大天使の私が言うんだから間違いありません。」


 俺は少しいらついた。


「あんたに僕の何が分かるんだ!僕の人生は一瞬で絶望だ!こんな人間が、僕が!世界を救おうなんてできると思うか?!全くセンスが無い天使様だ…」


 大天使は僕を抱きしめる。


「あなたは絶対に大丈夫。私はあなたのことが個人的に気に入って、生まれたときから覗いていました。あなたは努力の天才です。きっと、新しい人生もリベンジできますよ。」


 温かい、親は冷たかったし、彼女とはお互い奥手であまり触れ合っていない。感じたことのない温もりだ。涙が流れてきたが、大天使から離れて立ち上がる。


「分かった、17年だけだ。俺が今まで生きてきた17年だけ、その異世界のために戦ってやる。」


 大天使は嬉しそうな顔をして、僕に右手をかざす。


「なら、寿命を17年に縛ってあなたの能力を底上げします。残念ながら親とか周りの環境までは操作できないのだけれど、あなたならきっと出来ると信じます。」


 僕の周りに青いオーラが立ち昇る。大天使は笑顔で手を振る。


「頑張ってください、私だけの天使。」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 目を開けると、そこは薄暗い路地裏だった。


 終わった、いきなり捨て子だ。


ー再び降りかかる絶望、世界のために生き延びろー

 書きたいなと昔から思っていたファンタジーを遂に書き始めました。

 色々な作品に影響を受けているので、既視感もあるかもしれませんが、読んでくださる方が少しでもお楽しみいただけるように努力します。

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