帰還
念のために下りの階段を探した。でも無かった。これで全部終わったんだ。
みんなが「やったぁー」と言いながらはしゃいでいる。歓声を上げて抱き合っている。神級ダンジョン攻略。探索者の歴史に残る偉業だ。でもみんなはただ嬉しそうにはしゃいでいる。
俺の所に皐月、琴音、悠花、瑞葉、梨々香、瀬里奈が集まってきた。
「やったわね綾斗。神級攻略よ」皐月が微笑む。
「ああ。やったな。けどほとんど父さんと母さんの力だけどな」
「綾斗の力がなかったら攻略できなかったはずだよ。自信を持っていいよ」琴音が俺の肩を叩く。
「そうよ。綾斗がいなかったら私たちはここにすら来れなかったわ」瑞葉が頷く。
「綾斗のおかげだよ」梨々香も小さく言う。
「当然でしょ。私のリーダーなんだから」瀬里奈が胸を張る。
悠花が萌香の方を見て言った。
「萌香、いつまで裸を見せてるの。早く服着たら」
まだ俺に抱きついていた萌香が思い出したように恥ずかしがった。
「きゃっ!忘れてた!」
萌香が俺から離れて体を隠す。
「綾斗のエッチ。早く服出してよ」萌香が顔を真っ赤にして叫ぶ。
「すまん。今出す」
俺も顔を赤くしてアイテムボックスから萌香の服を出す。萌香が慌てて服を着る。
「ずっと裸だったね萌香」琴音が笑う。
「忘れてただけだもん!」
「綾斗に抱きついてたもんね」悠花がニヤニヤする。
「違うの!」
「可愛いわね」皐月が微笑む。
父さんがはしゃいでいるみんなに声をかけた。
「お疲れー。終わったから帰るぞー」
父さんは凄いな。こんな凄いことをしてもいつも通りだ。まるでコンビニにでも行ってきたみたいな気軽さだ。
「父さん、いつも通りだな」俺が言うと父さんが笑った。
「次のことを考えないとな、こうゆうのはやった後が大変なんだ」
「次のこと?」
「帰ったら色々あるだろ。報告とか、お前たちのクランのこととか」
「そうですね」
ダンジョンから出ると入り口が消えていった。神級ダンジョンは1度攻略したら消滅するのか。
「消えたわね」皐月が呟く。
「これでこの世界に神級モンスターは出なくなるんだ」俺が言う。
「そういうことね」
「この世界が平和になるってことだわ」琴音が空を見上げる。
「空が綺麗ね」悠花が微笑む。
「ドラゴンもいなくなったわ」瑞葉が空を見る。
「平和になるのね」梨々香が呟く。
「当たり前でしょ。私たちが頑張ったんだから」瀬里奈が胸を張る。
父さんと綾乃母さんがこっちの世界の冒険者ギルドに報告してくると言うので、俺たちは先に若洲ダンジョンに向かって待つことにした。
ダンジョン入り口でバスを出して食事をしていると、遠くから何かがものすごいスピードで近づいてきた。
「何あれ?」萌香が目を細める。
「速い…」琴音が息を呑む。
近づいてきたのは綾乃母さんだった。父さんをお姫様抱っこして走ってきている。
「急いで帰るわよ!」綾乃母さんが慌てた様子で叫ぶ。
「どうしたの?」俺が聞くと綾乃母さんが眉を寄せる。
「こっちの世界の天皇陛下が来て優斗に若い女の子をたくさんあてがってこのままこの子たちとこっちで暮らさないかと言ってきたのよ。優斗が鼻の下を伸ばしてたから急いで帰ってきたわ」
「鼻の下を伸ばした?」俺が父さんを見る。
父さんが視線を逸らす。
「いや別に伸ばしてないだろ」
「伸ばしてたわよ」綾乃母さんが即座に否定する。
「いやあのな…」
「あんな可愛い子たちの前でニヤニヤしてたのは誰?」
「ニヤニヤはしてない」
「してたわよ」
「してない」
「してた!」
二人のやり取りを聞いて皐月が呆れる。
「優斗様も変わらないわね」
「父さん…」俺がため息をつく。
「すまん綾斗。でも断ったからな」父さんが弁解する。
「断る前にニヤニヤしてたんでしょ」琴音が笑う。
「いやそれは…」
「言い訳はいらないわ」
「それは大変だ。急いで帰ろう」俺がバスをアイテムボックスに入れて帰る準備をする。
カグヤ母さんに俺は聞いた。
「カグヤ母さん、こっちの世界の友達や家族に会わなくていいの?」
カグヤ母さんが微笑む。
「またゆっくり遊びに来るわ」
「その時は俺たちも観光に連れてきてよ」
「ええ。歓迎するわ」
「約束ですよ」
「もちろん」
「じゃあ帰りましょう」
「そうね。帰りましょう」
俺たちはSS級ダンジョンに戻っていく。来た道を逆に辿る。神級ダンジョンからSS級ダンジョンへ。そしてSS級ダンジョンを抜けて俺たちの世界へ。
扉を潛って俺たちの世界に出ると夜だった。東京の夜景が広がっている。高層タワーマンションやビルの明かりが輝いている。空には星は見えないけど、街の灯りが星空みたいに見える。
「綺麗ね」皐月が呟く。
「うん。俺たちの世界だ」俺が答える。
「帰ってきたんだわ」琴音が息をつく。
「戻ってきたね」悠花が微笑む。
「やっと帰れた」瑞葉が伸びをする。
「いい景色ですね」梨々香が夜景を見上げる。
「夜景が見えるなんて贅沢ね」瀬里奈が頷く。
俺は夜景を見ながら皐月に聞いた。
「皐月、俺たちのクランハウスはタワーマンションにしないか?」
皐月が振り返って笑った。
「良いわね。私たちの部屋は最上階ね」
「最上階か」
「当然でしょ。百花繚乱の本拠地なんだから」
「高いよたぶん」
「大丈夫。今回の報酬でいけるわ」
「そうか。じゃあ皐月に任せるよ」
「任せて。完璧な家を作ってあげる」
「楽しみだな」
「ふふ。楽しみにしてて」
「よし帰るぞ。焼肉だ」俺が言うと全員が歓声を上げた。
「「焼肉ー!」」
父さんが笑う。
「綾斗がした約束は守るぞ」
「ありがとうございます父さん」
「でも300人分はきついな」
「大丈夫ですよ。父さんなら」
「ははっ。そうか」
「頑張ってください」
「お前な…」
俺たちは夜の東京の明かりの中を歩き出した。神級ダンジョン攻略完了。全員無事。あとは焼肉と新しいクランハウスと、みんなとの話だ。
空を見上げると東京の空には星は見えない。でも街の灯りが星みたいに輝いている。俺たちの世界。俺たちの街。俺たちの家。
「帰ろう」
「「うん!」」
百花繚乱の花たちが夜の街に咲き誇る。
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