八岐大蛇、攻略作戦
階段の上で全員がへたり込んでいた。恐怖が漂っている。レベルドレイン。斬っても復活する首。絶望的な状況だ。
「作戦タイムだ」父さんが立ち上がる。「ここで対策を練らないと全滅するぞ」
父さんが俺の横に来て静かに言った。
「こういう時はな、分かっている事実を整理していくんだ。そこから最適な答えを探せばいい」
「分かりました」
俺は深呼吸して思考を整理し始めた。
「厄介なのはレベルドレインだ。人数分レベルを吸われていくと取り返しがつかなくなる」
「そうだな」
「再生は? レベルドレインしてから再生した。レベルドレインを防げば再生しないかもしれない」
「希望的観測だな」
「はい。でも事実はわからない。それから300以上のレベルアップはずっと続くのか。これもわからない」
「そうだな。整理するとこうだ。レベルドレインは人数分吸われる。再生はレベルドレインと同時に起きている可能性がある。レベルアップの上限は不明」
「全員で中に入るのは危険だ。5、6人で戦えばレベルドレインを喰らってもレベルは5しか上がらない」
「つまり最小人数で挑むべきだな」
「父さん、タンク1人と最強アタッカーで最小人数で行きましょう」
父さんが頷いた。
「俺も同じ答えだ。それで行こう」
「まずタンクは千尋母さんだな。スキル不屈の砦は頼りになる」
「ああ。ノックバック無効で全ての攻撃を受け止められる」
「アタッカーは巴母さん、綾乃母さん、美月母さん、凛母さん」
その時萌香が前に出てきた。
「私も入れてください」
「萌香、ダメだ」俺は首を振る。「ステータスが母さんたちに届いてない。計算では母さんたちは343倍だ。けど萌香は187倍にしかなっていない。レベルが300以上上がった八岐大蛇には届かないかもしれない」
萌香が下を向いた。拳を握りしめて震えている。
「私はこの刀にふさわしい女にならないといけないの。綾斗の隣に立つために」
皐月が静かに言った。
「萌香、裸になりなさい」
「えっ」萌香が顔を赤くする。
「裸になって戦えば綾斗と優斗さんのスキルの上昇率が跳ね上がるはずでしょ」
綾乃母さんが頷く。
「そうね。このステータスなら防具なんてあってないような物よ。付いてくるならそれ以外ないわね」
萌香が覚悟を決めた顔で俺を見た。
「私、やるわ」
萌香が防具を外していく。鎧を脱ぎ、下着も脱ぎ捨てて全裸になった。白い肌が露わになる。震えているけど目は真っ直ぐだ。
綾乃母さんたちも動き出した。
「私たちも脱ぎましょうか」
「母さんたちまで脱いじゃったら、またステータスが開いちゃうじゃないか」
「大丈夫よ。守るから」綾乃母さんが笑った。
「じゃあ俺たちも中に入らないとだな」と父さんが言う。
「俺もそうですね。見てないと上昇率アップが出来ないし」
「お前の嫁は出来るだけ見ないようにするからな」父さんが笑った。
「複雑な気分になるな…」
全裸の千尋母さんを筆頭に綾乃母さん巴母さん、美月母さん凛母さん、そして萌香が後ろに付く。千尋母さんは自分の盾と静香母さんに借りた盾を両手に持っている。
「行くわよっ。速攻で片付ける!」綾乃母さんが叫んで走り出した。
俺と父さんも闘技場の中に入る。
千尋母さんが八岐大蛇の前に立ち、不屈の砦のスキルを使う。両手の盾を構えて全ての首の攻撃を止める。ノックバック無効の効果で全て受け止めた。
「止めてる!」俺が叫ぶ。
5人のアタッカーが首を1本ずつ切り落とす。速い。遠くから見てやっと動きを追えるくらいだ。
巴母さんがハルバードを一閃して一本目の首を落とす。
綾乃母さんが刀で二本目の首を斬る。
美月母さんが三本目の首を斬る。
凛母さんが四本目の首を斬る。
萌香もなんとか1本斬った。
八岐大蛇がまた首を上に上げようとする。
「やらせない! 萌香、合わせなさい!」綾乃母さんが叫ぶ。
萌香が「はい、お義母さん!」と応える。
綾乃母さんと萌香が半身に立ち、腰を落とす。居合の構えだ。
「神速抜刀術、一閃!」
2人の刀が抜かれると斬撃が飛んで行く。上に上げた首が斬撃によって胴から離れた。
「萌香! よくやったよ!」巴母さんが叫ぶ。
巴母さんが残った首の1本を落とす。同時に凛母さんと美月母さんが最後の首を落とした。
「やったか!」
八岐大蛇は胴体を震わせてその場に倒れた。しばらく見ていたが、しだいに煙となって消えていく。
消えた後に1本の刀が落ちていた。
綾乃母さんが拾い上げる。
「これは…神刀、草薙の剣かも」
「草薙の剣?」俺が聞き返す。
「伝説の刀よ。神話に出てくる」
「それがここに?」
「神級ダンジョンだからな」父さんが言う。「神話の武器があってもおかしくない」
みんなが「勝ったあー」と言いながら中に入ってくる。
萌香が「やったよぉ〜」と言いながら俺に抱きついてくる。首に手を回し足は腰をホールドしてくる。
「も、萌香、そのステータスで締められると死んじゃう!」
萌香が離れてくれた。でもその顔は満面の笑みだ。
「やったね綾斗!」
「ああ。萌香のおかげだ」
「私、役に立てた?」
「立てたよ。綾乃母さんと一緒にあの首を斬っただろ」
「うん! 」
綾乃母さんが近づいてきた。
「綾斗、萌香ちゃんはいい子よ。あの刀を預けたのも分かるわ」
「母さん…」
「大事にしなさい」
「はい」
萌香が顔を赤くして俯いている。その姿を見て俺は思った。帰ったらみんなと話さないとな。これからのことを。
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