SS級ダンジョン突入
「1班、2班はタンクメインだ。タンク4人に回復6人のパーティを2つ」
楓さんが班分けを発表していく。俺は耳だけで聞きながら、頭の中で配置をイメージしていた。
「3班、4班はアタッカー10人ずつのパーティだ」
「はい!」アタッカーたちが声を揃える。
「5班、6班、7班、8班はバランス良く10人ずつ組んで行く。9班は魔法職10人。10班はスカウトとバッファーだ」
「了解しました」各班のリーダーが頷く。
「綾斗覚えておけよ。これが命の綱だ」
楓さんが俺の肩を叩く。俺は班分けを頭に叩き込んだ。107人の命が俺の指揮にかかっている。
若洲ダンジョンに向かうバスの中でも班分けの確認が続いた。俺は窓の外を見ながら深呼吸する。とうとうこの時が来た。
「到着しました」
バスが止まり、俺たちはSS級ダンジョンの入り口前に立った。漆黒の渦が空に向かって渦巻いている。禍々しい魔力が肌を刺すようだ。
俺は106人の前で立ち、声を張り上げた。
「今回は救援が目的だ! 絶対に無理はしないでくれ! 父さんたちを見つけて、俺たちも1人も欠ける事なく帰ってくる! 俺に力を貸してくれ!」
「「おおおおおお!!」」
100人から歓声が上がった。その声は地鳴りのように響き渡る。
楓が俺の隣で小さく頷いた。
「綾斗に箔をつけるためにリーダーを任せたが、優斗の息子は伊達じゃないな」
隣にいた幹部の女性が楓に耳打ちした。
「梨々香ちゃんのために綾斗君を英雄に仕立て上げるつもりだったんでしょ?」
楓がニヤリと笑う。
「綾斗にリーダーを任せて私が指揮を取るつもりだったがな。これなら私も戦闘に集中できそうだよ」
「さあ行くぞ」
俺たちは漆黒の渦に足を踏み入れた。
ダンジョンの中は暗かった。湿った空気が肺に入ってくる。俺は梨々香の横に歩いた。
「梨々香」
「はい?」
「もし俺たちに何かあれば、梨々香だけでも気配遮断で逃げて報告してほしい」
梨々香が目を見開く。
「えっ…それは…」
「誰かが情報を伝えなければいけないんだ。お前なら逃げられる。頼む」
梨々香は少し迷った後、決意を固めて頷いた。
「わかりました。必ず報告します」
「ありがとう」
俺は106人に向き直った。
「《百花繚乱》!」
全員に手をかざすと、黄金の光が106人を包み込んだ。106人全員のステータスが跳ね上がる。光が収まった後、全員の目に力が宿っていた。
「すごい…これが12.6倍か…」
「力が溢れてくるわ…」
「魔法の威力が段違いよ」
ダンジョンの中は秩父ダンジョンより広い洞窟だった。天井は高く、壁には不気味な紫の鉱石が埋め込まれている。
「敵も大きいのかも」俺が呟くと皐月が頷いた。
「SS級だもの。S級より強いのは当然よ」
「スカウト隊、横に広がって罠を解除しながら先に進んでくれ」
「了解!」10班のスカウト5人が横に広がる。梨々香もその中にいた。彼女たちが慎重に足を進め、罠を見つけては解除していく。
進むこと数分。スカウトの5人がピクッと反応した。
「大型モンスター1体! 前方!」
スカウトが叫びながら後ろに下がる。
「1班前に!」俺が叫ぶとタンクメインの1班が盾を構えて前に出た。
闇の中からズズズズと重い足音が響いてくる。現れたのは恐竜のようなモンスターだった。5メートルはある巨体。鋭い爪に厚い鱗。口からは毒液が滴り落ちている。
「来るぞ!」
モンスターが咆哮を上げて突進してくる。1班のタンク4人が盾を構えて受け止めた。ガギンという凄まじい音が洞窟に響き渡る。
「2班も前に! 顎の攻撃を止めろ!」
「了解!」2班のタンクが加勢する。恐竜の顎による噛みつき攻撃を2人がかりで止めた。
「回復は切らすな!」
「はい!」回復隊がタンクに絶え間なくヒールを飛ばす。12.6倍に強化された回復魔法は、タンクの傷を瞬時に癒していく。
「3班右に回って待機だ!」
「了解!」3班のアタッカーが右側から回り込む。
「5班6班左に注意を向けろ!」
「了解!」5班6班が左側からチクチクと攻撃をする。恐竜の注意が左に向いた。
「今だ! 3班一斉攻撃!」
左からの攻撃で怯んだ隙に4班のアタッカー10人が高火力の攻撃を叩き込む。鱗が砕け、肉が裂け、血が噴き出す。
「9班魔法準備だ!」
アタッカーたちは一撃を入れたら欲張らずに離脱している、さすが祝福の探索者たちだ
「準備完了!」魔法職10人が杖を掲げる。
「撃てえぇぇ!」
10人の魔法が同時に放たれた。ファイアボール、アイスジャベリン、ライトニング、ウィンドカッター。多彩な魔法が恐竜の全身を直撃する。爆炎と氷、雷と風が入り混じり、恐竜に命中した。
「やった!」
「勝ったわよ!」
みんなで喜ぶ。初戦勝利だ。
「久しぶりにレベルが上がったわ」1班のタンクが笑う。
それだけ経験値が高いのだろう。12.6倍で苦戦するほどの敵ではない。でも俺は思った。
「このくらいの敵なら父さんたちでも倒せるはずだ。もっと奥にはどんな敵がいるんだ」
「そうね」楓が頷く。「SS級の本当の脅威はもっと奥にあるわ」
「進もう。でも慎重に。スカウト隊、頼むぞ」
「はい!」
107人は再び歩き出した。俺は先頭近くで指揮を執りながら進む。萌香と琴音が左右に付き、瑞葉が後ろで盾を構えている。悠花と皐月が回復と魔法の準備をし、梨々香が前方の罠と敵を察知する。
「父さん待ってろ。今行くぞ」
俺は心の中でそう呟いて、闇の奥へと歩き進めた。




