新しい仲間と出撃前夜
楓さんが俺の前に一人の少女を連れてきた。俺と同じくらいの歳の女の子だ。楓さんと同じ黒髪のショートカットで、大きな瞳が特徴的な可愛い人だ。
「私の娘よ。危機察知と気配遮断のスキルを持っているわ。綾斗、あなたのクランにこの子を入れてくれない?」
楓さんが俺を見上げて言う。
「お母さん…」梨々香が恥ずかしそうに下を向く。
「武井梨々香です。レベル8のスカウトです」
自己紹介をした梨々香の声は少し震えていた。緊張しているのが伝わる。
楓さんが俺に顔を近づけて小声で囁いた。
「お願い。この子も5倍にしてあげて」
俺は驚いて楓さんと梨々香を交互に見た。5倍にするのがどういうことか分かっているのだろうか。契りを交わすということだ。梨々香も顔を真っ赤にしてお願いしますと言ってきた。その顔を見て俺は悟った。わかっているのだ。母親から聞かされているはずだ。
でも彼女の覚悟は本物だ。スカウトは俺たちに必要な人材だ。断る理由がない。
「わかりました。梨々香さんを預かります」
俺が答えると楓さんがニッコリ笑った。
「お願いね」
そう言って梨々香に何か耳打ちして行ってしまった。何を言われたのか梨々香は耳まで赤くして立ち尽くしていた。
「梨々香さん大丈夫?」
「はっ、はい大丈夫です…あの…その…今日の夜に…」
「うん。わかってる。大丈夫だから」
「お願いします…」
その夜、俺は梨々香と5倍の契りを交わした。彼女は震えていたけど、覚悟を決めた目で俺を見つめていた。小さな体を優しく抱きしめて、時間をかけてゆっくりと。
事が終わった後、梨々香は俺の胸に顔を埋めて泣いていた。
「ごめんね…怖かったの…」
「怖くて当たり前だよ。でもよく頑張ったな」
「綾斗くん、優しいね…お母さんが言ってた通りだ…」
「お母さんに何を聞いたの?」
「綾斗くんは優斗様の息子で、優斗様と同じように優しいって。安心して身を委ねればいいって」
「優しくするから安心して」
「うん…ありがとう綾斗くん…」
同じベッドで朝を迎えた。梨々香は俺の腕の中で穏やかな寝息を立てていた。
翌朝、みんなに梨々香を紹介した。
「新しいメンバーの武井梨々香さんだ。スカウトをしてくれる」
「えっ新しいメンバー!?」萌香が目を丸くする。「綾斗、緊張して眠れてるかなって心配してたのに、こんな可愛い子とお楽しみだったんだー」
「ちが…そういう意味じゃなくて…」
「私たち心配して損しちゃった」皐月が呆れる。でもすぐに笑顔になった。
「でもいつも通りの綾斗で良かったわ」
「よろしくお願いします!」梨々香が頭を下げる。「いいメンバーですね。みんな優しくて」
「当然よ! 百花繚乱は仲良しクランなんだから!」萌香が梨々香の肩を抱く。
「よろしくね梨々香ちゃん」琴音が手を差し出す。
「よろしく」悠花も微笑む。
「守るのは私の役目だから安心して」瑞葉が盾をポンと叩く。
「よろしくお願いしますみなさん…」梨々香が涙目で笑った。
広間に行くと幹部たちが勢揃いしていた。俺の横にいる梨々香を見て、ある幹部が楓さんに詰め寄る。
「お前やったな!」
「何のこと?」楓さんがしらを切る。
「梨々香ちゃんを綾斗君のクランに入れたでしょ!」
「綾斗のメンバーにスカウトが居なかったから紹介しただけだ」楓さんが笑う。
「ずるいぞ! 私の娘も入りたがってたのに!」
「順番ってものがあるでしょ」
幹部たちがざわめく中、一人の支部長が俺に近づいてきた。
「私の娘は魔法が使えるんだ。これが終わったら会ってくれないか?」
俺が戸惑っていると皐月が耳元で囁いた。
「優斗様はパーティメンバーを全員嫁にしたの。だから同じスキルを持つあなたのパーティメンバーになるのは探索者にとってエリートコースなのよ」
「えっそうなの?」
「知らなかったの? あなたのパーティに入れば強くなれる上に生活も安定する。娘を入れたい親が殺到するわよ」
「はは…父さんと同じ道を歩くことになるのか…」
「覚悟しておきなさい」
楓さんが手を叩いて皆を静めた。
「それは救援が終わってからだ。出発の前に班決めと戦闘指揮のリーダーを発表するぞ」
全員が静まる。
「戦闘指揮、リーダーは綾斗! お前だ。お前の指示で100人が動く。気合い入れろよ」
俺は戸惑った。100人を指揮する。父さんは150人を指揮した。でも俺はまだ15歳だ。そんな大役を任せていいのか。
皐月が俺の背中に手を置いた。
「やれるわよ」
萌香も俺の背中を押す。
「綾斗ならできる!」
琴音も続く。
「私たちがついてるから!」
「うん頑張って」悠花も微笑む。
「守るのは私だから安心して」瑞葉が盾を掲げる。
「私が罠を見つけるから」梨々香も俺を見上げた。
みんなの顔を見た。迷いはない。信頼している目だ。俺は覚悟を決めた。
「はい! わかりました。リーダーをやらせてもらいます」
楓さんが笑った。
「よし。百花繚乱は綾斗を守れ! 絶対に死なすなよ!」
「「はいっ!」」6人の声が響き渡った。
俺は拳を握りしめた。今日、107人でSS級ダンジョンに突入する。父さんたちを必ず連れて帰る。




