S級ダンジョン2日目
夜の襲撃はなく、穏やかな朝が来た。
鳥の囀りのような音が森に響き渡り、優斗たちは気持ちよく目を覚ました。
キャンピングカーの中には、香ばしい匂いが充満している。
「おはよう、みんな」
優斗がキッチンから声をかける。テーブルには、熱々の味噌汁に焼き魚、炊き立てのご飯が並んでいた。
「うわぁ、すごい!」
「優斗さん、また手の込んだものを」
メンバーたちが次々と起きてきて、席につく。
しかし、その中で雪乃、美月、巴の3人だけが、箸を止めて料理を見つめていた。
「どうしたの? 食べないの?」凛が首を傾げる。
巴がポツリと言った。
「なぁ…これ、本当にS級ダンジョンの探索なのか?」
「えっ? そうだけど」
「だっておかしいだろ! 探索中なんだぞ? 前人未到のS級だぞ? なのに、ベッドでぐっすり眠って、起きたら暖かいご飯食べて…」
巴は味噌汁を啜りながら、ため息をついた。「チートだろ、これ」
美月も頷く。
「確かに…私が今まで経験した探索とは次元が違います。いつもはカビの生えた乾パンと冷たい水でしたから」
雪乃も大きく頷いた。
「こんなのに慣れたら、もう戻れないですよ…他のパーティに行けなくなっちゃう」
「だったらさ」日向がニヤリと笑う。「優斗の子になっちゃえばいいじゃない」
雪乃は即座に「もうなりました!」と元気よく答えた。
巴もニカッと笑う。「それもそうだな! マスターなら悪くないぜ」
しかし美月だけは、箸を握りしめたまま俯いた。
「でも…私は…」
彼女の心は揺れていた。剣の道一筋で生きてきた自分。男に頼ることなど弱者のすることだと思っていた。だが、目の前の温かい食事と仲間たちの笑顔は、あまりにも魅力的だった。
「まあ、深く考えずにいこうぜ」巴が美月の肩を叩く。「私も親父が待ってるからな。攻略したら親父の元に帰るさ」
「巴さん…」
「その代わり、攻略するまではマスターのために全力を出させてもらうぜ!」
朝食を終え、片付けも済ませた一行は、いよいよ2日目の探索を開始した。
森の奥へと進むと、空気が変わった。
「来るよ!」翠が鋭く叫ぶ。
木々の間から、複数の巨大なトカゲのようなモンスターが飛び出してきた。体表は硬そうな鱗に覆われている。
「前衛、行くわよ!」
凛が刀を抜き放ち、突っ込む。巴と美月も左右から追随する。
静香が盾でトカゲの突進を受け止める。
ガギン! という硬質な音が響く。
「硬い!」凛の刀が弾かれる。
「あまい!」巴がハルバードを振り下ろすが、鱗に阻まれ浅い傷しか与えられない。
「くそっ、さすがS級だな!」
前衛が苦戦する中、後衛から日向と雪乃の魔法が飛ぶ。
「ファイアボール!」「アイスジャベリン!」
魔法の直撃を受けて、ようやくトカゲたちは倒れていった。
「ちょっと手強いわね」美月が息を吐く。
「でも、いけなくはないわ」凛が刀を納める。
一息つく間もなく、次の波が来た。
今度はアリだ。しかし、ただのアリではない。犬ほどの大きさのある巨大アリが、四方八方から湧き出してきたのだ。その数は数百を優に超えている。
「きゃあっ! なんて数よ!」美鈴が悲鳴を上げる。
「藍さん! お願い!」
灯が叫ぶと、藍が前に出て杖を掲げた。
「《聖なる結界》!」
ドーム状の光の壁が一行を包み込む。アリたちが次々と結界に体当たりするが、藍は必死に耐える。
しかし、数が多すぎる。結界にヒビが入っていく。
「くっ…押し切られる…!」
藍の額に汗が流れる。このままではジリ貧だ。結界が破られれば全員蟻の餌食になる。
「日向! 雪乃! 掃討を!」優斗が叫ぶ。
「無理よ! 私たちも巻き込まれちゃう!」日向が叫び返す。
その時、日向がニヤリと笑った。昨日の考察を思い出したのだ。
「ねえ優斗、見ててね」
「えっ?」
日向は藍の背後に回り込むと、彼女の腰に手を回し、防具の留め具を外した。
「きゃっ!?」
下の防具がするりと落ち、藍の白いパンツが丸見えになった。
「なっ…何するのよおおお!!」
藍が悲鳴を上げた瞬間、結界が激しく輝いた。羞恥心が魔力を爆発させたのだ。
結界がドームから球体へと膨張し、迫り来るアリたちを飲み込んでいく。
ギチギチギチ…アリたちが圧死していく音が響く。
結界はさらに大きくなり、森の木々すらなぎ倒しながら半径50メートルほどのアリをすべて圧殺した。
「はぁ…はぁ…」
結界が消えた後には、藍だけがへたり込んでいた。
周囲にはアリの死骸の山。だが一行に傷はない。
「やった!」灯が歓声を上げる。
残ったアリを掃討し、なんとか勝利を収めた。
戦闘終了後、藍は顔を真っ赤にして日向に詰め寄った。
「日向さん! 何するんですか! 恥ずかしいじゃないですか!」
「ごめんごめん! でも効果あったでしょ?」日向がウィンクする。
「これで決まりね」凛が呟く。「優斗に下着や裸を見せると一瞬だけ強くなる」
「ほんとにエッチなスキルね…」静香も呆れ顔だ。
「でも、いざという時には助かるわよ」日向も苦笑する。
優斗は頭を抱えたかったが、この不思議な力のおかげで命拾いしたことも事実だった。
「まあ…恥ずかしいけど、役に立つなら…」
「マスターなら許せるな!」巴が笑う。
「いいじゃない、美少女のあられもない姿を見れたんだから」藍が自虐ネタで場を和ませる。
優斗はため息をつきながらも、仲間たちと共に歩き出した。
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