S級ダンジョン突入
S級ダンジョンに入った12人は、想像とは全く異なる光景に驚愕した。
暗い洞窟や迷宮を予想していたが、目の前にはサバンナのような広大な平野が広がっている。風が草を波打たせ、遠くまで見通すことができた。
「翠、何か見えるか?」
優斗の問いかけに、翠が目を凝らす。
「うん…遠くから何か走ってくる! モンスターの群れよ!」
地平線の向こうから、砂煙を上げて疾走する巨大な獣の群れが迫ってきた。
「近づくまでに数を減らすわよ」
日向が前に出て、魔法の準備をする。
雪乃も黙って魔力を練り始めた。
日向が大きく息を吸い込み、高らかに詠唱を唱え始めた。
「天空の門よ開け! 星霊の裁きを今ここに! 流星は神罰となりて降り注ぐ! いけぇメテオストライク!!」
日向の杖を振り下ろすと同時に、空から無数の隕石が降り注ぎ、獣の群れを直撃した。爆炎と轟音が巻き起こる。
一方の雪乃は、短く可愛らしく叫んだ。
「えいっ! アイスジャベリン!」
そのかけ声と共に、巨大な氷の槍が無数に生成され、残った獣たちを貫いた。
10倍強化された2人の魔法は壊滅的威力を誇り、あっけなく戦闘は終わった。
「すごい…」「見事だわ」
みんなが口々に誉め称える。
雪乃が不思議そうに日向に尋ねた。
「ねえ、なんで必要ない詠唱してるの?」
灯が慌てて「あっ、それ聞いちゃダメなやつ!」と制止するが、遅かった。
日向は顔を真っ赤にして、「べ、別に! 何か言った方が魔力練りやすいのよ!」とわめいた。
「ダメなやつって何よ! 私だって魔法少女みたいなこと言いたい時だってあるんだから!」
みんなはクスクスと笑い、そんな日向を暖かい目で見守っていた。
とりあえずモンスターが向かってきていた方角へ歩き出す。
「マスター、疲れたらおんぶしてやるから言えよ!」巴が背中を叩く。
「ちょっと巴さん! おんぶは私の役目です!」静香が即座に反論する。
「何だよ、私の方が力強いぞ!」
「足腰の安定感なら私が上です!」
「あはは、二人ともありがとうね」
S級ダンジョンだというのに、いつも通りの和やかな探索に優斗はホッとしていた。
ひたすら歩きながら、優斗は小柄な雪乃が少し心配になり、妹のように気にかけていた。
「雪乃、疲れてない? 水飲む?」
「大丈夫です」雪乃が顔を上げる。「それより優斗、私の方が1つ年上なんですけど!」
「えっ?」優斗は驚いた。「ごめん、小さいからつい…」
「私の方がお姉ちゃんだ!って言いたいところですけど」雪乃は少し頬を染め、「今は優斗に守ってもらってますから、いいですけど」
その時、前方の草むらが大きく揺れた。
先ほどの群れとは違う。強力な個体だ。
巨大なライオンのようなモンスターが咆哮と共に飛び出してきた。
「来るぞ!」優斗が叫ぶ。
静香が無言で前に出て、巨大な盾で攻撃を受け止めた。10倍強化された静香の防御は岩のように揺るがない。
「今よ!」
巴、凛、美月の3人が3方向から同時に切り掛かる。
巴のハルバードが脚を断ち、凛の日本刀が胴を薙ぎ、美月の日本刀が喉を貫いた。
「はっ!」3人の息の合った攻撃に、モンスターはなす術なく倒れた。
戦闘終了後、キャンピングカーを出して休憩となった。
優斗がアイテムボックスから温かい食事を取り出す。
「いい匂い~」みんなが舌鼓を打つ。
雪乃はスープを啜りながら、遠い目をした。
「祝福の絆に来る前のツラい探索を思い出しちゃって…」
彼女は優斗の顔を見つめる。
「誰も助けてくれなくて、いつも怖くて…でも、今はみんながいて、優斗がいて、美味しいご飯も食べれて…」
雪乃の瞳に涙が光る。
「私、優斗の子になります。だから、祝福の絆にずっと残ります!」
その言葉に、みんなが微笑んだ。
「うん、ずっと一緒にいようね」優斗が雪乃の頭を撫でる。
「ずっと守るからね」
雪乃は嬉しそうに頷いた。彼女の新たな居場所が、ここに確定した。
サバンナを抜けると、今度は鬱蒼とした森が現れた。
木々の間を縫うように流れる清流沿いに進むこと数時間、広場のような開けた場所に出た。
「ここならキャンピングカーを出せるね」
優斗の指示で、2台のキャンピングカーを展開し、宿泊の準備を始めた。
「あっ、お水綺麗!」
灯が歓声を上げる。川の水は透き通り、底まで見渡せるほどだ。
「ちょっと水浴びしませんか?」美鈴が提案すると、少女たちは一斉に賛成した。
「優斗、私たち先に体清めるわね」
「ああ、俺は見張りと夕食の準備をしてるから」
少女たちは川へと向かい、下着姿になって川に飛び込んだ。
「冷たくて気持ちいい~」
「あはは、雪乃ちゃん潜りすぎ!」
和やかな笑い声が響く中、水面が不自然に揺れた。
「えっ?」
次の瞬間、巨大な影が水中から飛び出した。
全長10メートルはあろうかという巨大なワニ型モンスターだ。鋭い牙を剥き出しにし、少女たちに襲いかかる。
「きゃあああ!!」
悲鳴が上がる。
「みんな!」
悲鳴を聞きつけた優斗が駆けつけた。
しかし、その瞬間、ワニの尾が水面を叩き、水しぶきが上がった。その衝撃で日向と雪乃の下着が弾け飛び、二人の裸が露わになる。
「あっ…」
優斗と目が合う。
「きゃあああ!! 見ないでよバカ!!」
日向と雪乃が顔を真っ赤にして叫ぶ。
そして、その怒りと羞恥心が魔力となって爆発した。
「このっ! 変態! 無礼者! 氷漬けになれぇぇ!!」
雪乃が叫ぶと、ワニの上半身が瞬時に氷漬けになった。
「吹き飛べぇぇ!! ファイアボール!」
日向の渾身の一撃が氷ごとワニを爆砕した。
肉片が雨のように降り注ぐ中、二人はまだ顔を真っ赤にして優斗を睨んでいた。
「見ましたね!」
「私の裸…」
「ごめん! 見たくて見たわけじゃないんだ! でもすごい威力だったね」
優斗が謝りながら称賛すると、二人は少し得意げな顔を見せた。
キャンピングカーに戻った後、日向はふと違和感を覚えた。
「ねえ、さっきの魔法…いつもより強くなかった?」
「うん、強くなってた!」雪乃が肯定する。
「絶対そうよ。藍の時もそうだったわ。優斗に下着を見られた時、魔法が強くなっていたはず」
「羞恥心が魔力を増幅させる…みたいなことかな?」灯が呟く。
「かもしれないわね。裸を見られた怒りは強力だったもの、または優斗の興奮が祝福の絆の効果を高めるとか。」
「藍の時も、今日も、下着か裸を優斗に見られたって言う共通点があるからね」
日向の考察に、みんなが納得した。これもまた《祝福の絆》の効果の一つなのだろうか。
夜になり、交代で見張りを立てることになった。
「最初は私たちがやるわ」
巴と静香が最初の番を引き受け、他のメンバーはキャンピングカーで休息を取ることにした。
星空の下、焚き火のパチパチという音だけが響く。
S級ダンジョンの1日目は、波乱含みながらも無事に終了した。
優斗は窓から空を見上げながら、明日からの更なる困難に備え、心を落ち着けた。
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