S級ダンジョンの脅威
協会の重厚な扉を開けると、そこは緊張感に包まれていた。
優斗と綾乃は受付を通り越し、最上階の大会議室へと案内された。
ドアが開くと、すでに数人が席に着いていた。
一番奥に座っていたのは、小柄な初老の男性、協会長だ。
そして、その隣には圧倒的な体格の男が座っていた。2メートルはあろうかという熊のような大男。かつて「祝福の絆」が出てくるまで最大手だったクラン「鋼鉄の熊」のマスター、鬼塚剛蔵だ。
「来たか、白夜優斗君」
協会長が疲れた声で言う。
「まずはS級ダンジョンの詳細を聞いてくれ」
協会長がホログラムで地図を表示する。都心部の真ん中に赤黒い点滅するマークがあった。
「昨夜出現した。直ちにA級探索者パーティが突入したが…結果は全滅だ」
「全滅っ!?」優斗が息を呑む。
「パーティのスカウト役が1人だけ気配を消して逃げ帰った。彼の話によると、入って数分で怪物の群れに襲われたそうだ。A級パーティが相手にならないレベルだ」
「もしS級が氾濫したら…」綾乃が顔を強張らせる。
「日本が終わる」協会長が重々しく頷く。「だから君たちに攻略を頼みたいのだ」
「うちの巴を貸そう」
剛蔵がドスの効いた声で言った。その隣には、彼の娘が立っていた。父親譲りの大柄な体格に、筋肉質の体に合った軽装備。背中には身の丈ほどもある巨大なハルバードを背負っている。
「鬼塚巴だ。よろしくな」
彼女はニカッと笑い、豪快に手を差し出した。姉御肌の頼れるアタッカーだ。
「巴さんのことは知ってるわ」綾乃が言う。「A級でもトップクラスの火力ね」
「あんたが綾乃ちゃんか! 名前は聞いてるぜ!」
その時、会議室のドアが開いた。
「失礼いたします」
凛とした声とともに入ってきたのは、黒髪の長い女性だった。腰には日本刀を差している。
「御剣美月です」
彼女は美しい所作で一礼した。有名流派の剣道場の娘であり、その実力は折り紙付きだ。
「美月ちゃん!」綾乃が驚く。「久しぶり! あなたも来てくれたのね」
「綾乃さん。お久しぶりです。ご縁がありまして」美月も微かに微笑む。
さらにその後ろから、小さな女性がおずおずと入ってきた。
「氷室雪乃です…あの、よろしくお願いします…」
背が低く、可愛らしい雰囲気の女性だ。だが、彼女は氷魔法の使い手であり、A級探索者である。
「よろしく。優斗だ」
優斗は3人と握手を交わした。
「見事にアタッカーばかりですね…」
優斗は苦笑する。巴のハルバード、美月の日本刀、雪乃の攻撃魔法。全員が攻撃に特化している。
「この3人に祝福の絆への出向と言う形で協力してもらう、3人ともA級だ」
「ありがとうございます。それと、検証のためにステータスを測るマジックアイテムを借りたいのですが」
「構わんよ。部屋にあるものは自由に使ってくれ」
優斗は覚悟を決めた。S級ダンジョン攻略には、さらに強い力が必要だ。そして、《祝福の絆》の真の力を試す時が来たのだ。
3人を連れてクランハウスに戻った優斗たちは、急遽空いていた部屋を片付け、彼女たちの生活スペースを確保した。
「遠慮しないで、ここを自分の家だと思ってくれ」
優斗の言葉に、3人は感謝しながら荷物を置いた。
数時間後。優斗がリビングで休憩していると、ドアが開いた。
「おー、ここの風呂はデカくて気持ちいいな!」
現れたのは巴だった。そして、彼女は全裸だった。タオル一枚体に巻いておらず、豊満な肢体が露わになっている。
「へっ?」優斗が間の抜けた声を上げる。
「あ、マスターじゃん。どしたの?」巴は隠す素振りもせず、豪快に笑う。
「ちょっと巴さん!」
灯が慌てて優斗の目を手で覆った。
「恥ずかしくないの!?」
「は? 男なんて同じだからいいだろ? それにマスターは私の親玉みたいなもんだしな」
巴はケロリとして言うが、灯は顔を真っ赤にして優斗をその場から引きずり出した。
夜ご飯を食べた後、いよいよ3人に《祝福の絆》を体験してもらうことになった。
「それじゃあ、かけるよ」
優斗がスキルを発動すると、黄金の光が3人を包み込む。
「おおっ! これはすげえ!」巴が自分の腕を握る。「力がみなぎってくるぞ!」
「確かに…身体が軽いです」美月も驚きを見せる。
「なんだか、魔法が使いやすくなったかも…」雪乃も呟く。
「じゃあ、ステータスを測ってみよう」
優斗が借りてきた測定マジックアイテムを起動する。
数値が出た瞬間、全員が首を傾げた。
「あれ? 美月さんと雪乃さんは2倍だけど、巴さんだけ5倍になってますよ」
凛が画面を指差す。
「どういうこと?」綾乃も不思議そうだ。
全員でその差について考え込んだ。
「接触時間? いや、今日会ったばかりだし…」沙織が呟く。
そこで日向がパンと手を叩いた。
「あっ! わかった! 私たちが最初に検証した時も、すでに優斗に全裸を見られた後だったわよね?」
「えっ?」優斗が目を見開く。
「そういえば…」静香も思い出す。「巴さんも風呂上がりに全裸を優斗に見せてたわね」
「全裸か!?」巴が驚く。
「それだっ!」全員の声が重なった。
「ちょっと実験してみましょう」
綾乃がクランメンバーに向かって言った。「優斗に裸を見せてもいい人!」
すると、全員が即座に手を上げた。
「じゃあ、1人ずつお願い」
測定の結果が出た。裸を見せる前は3倍だったメンバーが、見せた後は5倍になったのだ。
「確定ね」綾乃が腕を組む。「何もしてない受付嬢が1.5倍、握手した美月ちゃんと雪乃ちゃんが2倍、一緒に暮らしていたメンバーたちが3倍、裸を見せて5倍」
「好きの強さじゃなかったんだ…」灯が遠い目をする。
「ただのエッチなスキルじゃない…」日向も呆れ顔だ。
そこで巴が鋭い目つきで尋ねた。
「で、お前たちは7倍なんだろ? その先は何なんだ?」
その問いに、クランメンバーたちは一斉に顔を赤くした。黙り込むしかない。
巴は彼女たちの反応を見てニヤリと笑った。
「察しがついたぜ。肌と肌を重ね合わせるんだな?」
美月と雪乃も顔を赤らめながら、「そ、それは…一晩考えさせてください…」と言って部屋に逃げていった。
しかし巴は違った。彼女はドカドカと優斗に詰め寄ると、彼の胸倉を掴んで言った。
「マスター! 私に抱かせろ!」
「ええええっ!?」
優斗の悲鳴がクランハウスに響き渡った。新たな戦いの幕開けは、さらにカオスなものになりそうだった。
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