あなたたちにも
見知らぬ住宅地を歩き、とりあえず高校を目指していると、青年の幽霊がどこからともなくやって来て、
「おっ、泣いてんのか」
とか言ってきた。
「……お礼を言おうと思ったけど、そんな気は失せた」
その反抗は彼からするとか弱く見えたのか、からかうような笑みは消えない。
「いやぁしかし、俺たちいいチームだな」
腕を組み青空を見上げる青年。チャンスだと私は目元を払う。
「幽霊の見えるお前は、幽霊の俺たちを使って、生きてる人と死んだ人の架け橋になる。生きてる人の中に目撃者がいなくても、死んだ人の中にいることはある。ネットに中村家、中村明日花って人の情報が落ちてなくても、幽霊なら知ってることがあるから住所特定は楽勝」
「べつに私にもできるだろうけど、どう考えても幽霊界隈のほうが楽だもんね」
「ああ。たとえ明日花さんの関係者にぶつかってもお前に家を教えてくれる可能性は低い。むしろ警戒される。その度に幽霊が見えるとか言ってられない。その点、俺たちなら早い。穂乃花ちゃんの存在も知ってるんだから、みんな協力しようとしてくれる」
穂乃花ちゃんは家の場所も覚えてなかったし、私もあの辺りは初めて歩いた。それでも迷わず中村家に辿り着いたのは、幽霊たちが幽霊たちに聞き込みをして、中村家を捜索してくれたからだ。
幽霊である彼らは、どうやっても幽霊の穂乃花ちゃんを生きてる明日花さんには繋げられないけど、生きてる私ならできる。役割分担だ。
「ベストコンビになるぞ」
「嬉しくない」
「一大ビジネスになるんじゃね!?」
「不謹慎だ」
穂乃花ちゃんのような幽霊は心残りがあったのだ。それを利用して金儲け、とはならない。特に、あの親子を見たあとでは、なおさら。
「いいと思うんだけどなー。ガチの霊能力者。インチキなし、本物。死んだ人の言葉を聞き、伝え、会わせることができる」
「みんながみんな、幽霊になってるわけじゃないんでしょ」
「その場合は、ほら。綺麗に成仏されてます、ってことで」
「杜撰だ」
私も空を見上げる。はぁ、とひとつため息。
「ひとつ、いい?」
「なんだ?」
「真面目な話なんだけど」
「……おう」
腕を組んだ彼も、真剣な顔つきになってくれた。
「あなたたちにも、穂乃花ちゃんみたいに、心残りがあるから幽霊になってるの?」
みんながみんな、幽霊になるわけじゃない。それはこの幽霊自身が言ったことだ。つまり、幽霊になるにはそれだけの理由があるということ。
彼らにも。
青年は小さく息を吐き、観念したような、人を小馬鹿にしたのとは違う、柔らかい表情をする。
「そうだよ」




