それとこれとは話が違うでしょ!
いざその絵画とやらに辿り着いて、出てきた感想は、
「これがその絵画……?」
だった。
廊下の終わりには隅にも花瓶が置いてあって、そこには花も生けてある。その花は枯れているとか腐っているとか言うより、劣化というほうがしっくりくるので、たぶん造花だろう。
そのとなり、壁には額縁に収まった絵画があるけど、著名な画家が描いたものでもないし、その絵も有名どころではない。どこかで見たような、何なら美術部なら描けそうな普遍的な風景画だった。
手前は湖か川か、水辺。その水面には睡蓮の葉がいくつか浮いているけど、絵の邪魔にはならないよう隅っこに。奥には木々が生い茂っていて、水面に反射している。木の上には光が散りばめられているので、きっと奥に陽の光があるのだろう。
それだけ。
べつに壮観というわけではないし、綺麗というわけでもない。木の一本一本だってそこまで精緻に描かれているわけではない。抽象画ということだろうか。
私と逢坂さんはその風景画、抽象画に見入っていたわけなのだが、
「なにを期待していたかはわかりませんけど、これはゴールとして、ちゃんと四階まで行ったことの証明に使われていただけですからね」
天知さんのなんとも無粋な発言に、顔を見合わせて目をぱちくりさせる。先に顔を引っ込めた逢坂さんは、天知さんに食って掛かった。
「じゃあ、これ自体にはべつにホラー的な言い伝えはないってわけ?」
「あるわけないじゃん。それとも、あれ? ここに人の姿が描いてあって、忍び込んだ人を襲ってるとか、人によって見た目がどれも違うように見えているとか。そんなことがあると思っていたの?」
煽っている。私でも煽っているとわかるのだから、逢坂さんにはさぞ憎たらしく映っただろう。
図星で言い返せない逢坂さんに、天知さんはトドメを刺した。
「意外とピュアなんだね」
映画にありそうな設定を期待していたのだから、そう思われても仕方ない。
「美穂ちゃんに似てるね」
「はっ!?」
自分に矛先が向いてないから私は甘んじていたけど、予期せぬ伏兵こと夏希からの奇襲に遭えば素っ頓狂な声も出る。
「どこが」
「うーん。ほら、自分を主人公に漫画を描いて、自分だけ知ってるイケメンにちやほやされてるところとか」
「それとこれとは話が違うでしょ!」
「そ、そう! それとこれとは話が違う! 天知さんの語りがまるで、その絵画が曰く付きみたいに言うから! 誘導されたの!」
それとこれもまた話が違う。
天知さんはやれやれ、と肩をすくめていた。




