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人間には向いていない  作者: 咲紫きなこ
三人なら
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22ページ

 昼食が終わってから、真希はギターを弾きに屋上ヘと行ってしまった。

 あれから黒木は二人の元へ食べに来なくなった。

 もちろん帰りも違う。

 結居蘭も真希もその事に納得が行かなかったが、黒木は何も言わず終いだ。

 お昼ご飯が終わりトイレに行こうと廊下を歩いていた結居蘭は、廊下で黒木を見つけた。ちょうど目があったので手を振った。黒木は小さく手を振りかえしてくれた。


「どこ行くの?」

「お手洗いだよ」

「私も。一緒に行こうか」

「そうだね」


 黒木は化粧を直しにトイレに行ったので結居蘭より早くに出て行った。

 トイレから出ると結居蘭の元に、ミツバチ達がやってきた。


「まだ仲良さげに話すんだ」

「本当邪魔」

「あんた、わからせてやるから一緒に来なよ」


 そして気の強いミツバチが結居蘭の右手を掴みどんどんと歩いていく。

 結居蘭はその手を解きたくても怖くて解けなかった。

 向かう先は西校舎だ。

 西校舎の空き教室まで連れてこられた結居蘭は、やっと手を離してもらえた。

 体が震えている、何を言われるのだろうか。

 一人のミツバチが結居蘭の頭の毛を鷲掴みにし結居蘭を机に突っ伏させた。


「痛い!」

「黒木様にもう近寄らないでよ!」

「――くろきさんと友達だもん。嫌だよ」

「言うこと聞けないのかよ、じゃあこうしてやるよ!」


 ミツバチの一人が懐から鋏を取り出すと、それを結居蘭に向けた。そしてスカートやワイシャツを切り刻んでいく。


「やめて!」

「じゃあもう近寄らないでよ!」

「やだよ。――というか、こんな事する女の子、くろきさんきっと嫌いだよ」

「うるせぇなぁこのクソ陰キャ!」


 そのまま髪を捕まれ机にまた突っ伏される。

 次に髪に触り、その髪をきり刻もうとしたその時、ドアを<ドンドン>と叩く音がした。


「おい! ゆいら! 居るんだろ⁉」

「ゆずき!」

「ちっ、なんでバレたんだよ」


 結居蘭を西校舎の空き教室に連れて行く所を、上の階からちょうど降りてきていた真希が目撃したのだ。

 ドアには鍵がかかっており開かない様子だった。だが、次に聞こえたのは黒木の声だった。


「下がれ」


 そう言うと黒木は思いっきりドアを蹴飛ばすと、ドアはものすごい音を立てて壊れた。

 教室内に真希と黒木が入ってきた。

 二人は結居蘭の方を見ると駆け寄って真希は結居蘭を抱きしめた。


「ゆいら! 怖かったな」

「ゆずき……怖かった」


 制服がボロボロになっているのを見て、黒木は自分の上着を結居蘭にかけてあげた。

 そして、その場にいるミツバチを睨め付けた。


「黒木様……これはあの」

「違うんです! こいつが私達の黒木様を奪おうとするから、それで!」

「――もういい」


 黒木は鋏を持ったミツバチに近寄るとその鋏を取り上げた。そしてその子のポニーテールになっている髪を乱暴に掴んだ。


「いったぁい」

「君、僕の大切なものを傷つけたね」

「ご、ごめんなさい」

「君、切られたら痛いんだよ」

「でも、肌は切ってないでしょう?」

「教えてあげるよ」

「えっ」


 黒木はそのミツバチに馬乗りになると、首元に鋏の刃を向けた。そして勢いよく振り上げた。


「やめろくろき!」

「やめてくろきさん!」


 二人の言葉によって黒木は静止した。そしてそのまま倒れてしまった。

 結居蘭と真希が黒木の元へ駆け寄ると、黒木はすぐに目を覚ました。


「くろきさん、大丈夫?」

「――ああ。平気だ。すまないな」

「バタフライの、くろきさん?」


 話し方が変わったと気づいた結居蘭はそう聞いた。


「ああ。そうだ。彼が人を傷つけようとしたからね、急いで入れ替わったんだ。君達、声を上げてくれてありがとう。おかげで良い時に目覚められたよ」

「バタフライ、止めてくれてサンキューな」

「さて、ではどうするかだな」


 床に這いつくばって泣いているミツバチとそれを見ていたミツバチの方を向いたバタフライは、ゆっくりと這いつくばっているミツバチの上体を起こしてあげた。そして顔を見る。


「君達も、あの子にした事がバレたら大変な事になるかもね」

「――ごめんなさい、ごめんなさい!」

「謝るのならあの子に謝りなよ。――さて話を戻そうか。どうかな、ここは一つ、お互いに他言無用と言うのは」

「はい! そうします言いません! ごめんなさい!!」


 そして足速にミツバチ達はその場を去った。

 その場に静寂が流れると黒木がまた倒れた。

 二人は心配そうに黒木の顔を見つめたが、黒木はすぐに目を覚ました。


「おい、大丈夫かくろき」

「僕は平気さ。ゆいらちゃんは?」

「ゆいらも大丈夫だ。制服がぼろぼろだけど」

「二人共、来てくれてありがとう。――二人が来なかったら、どうなってたかわからない」


 黒木は視線を落としたが、続いて笑い出した。


「くろきさん?」

「あーあ、僕のせいか。――僕は僕でいたいだけなのに。めんどくさい」

「おいくろき、どうした」

「二人とも、今日でさよならだ。――こんな僕と一緒に居たくないだろ」

「確かに怖かったけど、私はくろきさんと友達でいたいよ」

「あたしだって、くろきと友達で居たいぜ」

「こんな事になるのに?」

「くろきさんのせいじゃないよ」

「めんどくさいよ何もかも。僕は僕だから変わりはしない」

「別に変わらなくて良いよ。お前はお前で居れば良い。でも嫌な事とかダメな事は普通に物申すからな」

「私も」

「これからも仲良くしようぜ」

「うん」

「ああ」


 結居蘭と真希は黒木の手を握ってやると、黒木はごめんと言ってからでもありがとうと笑った。

 そんな様子に結居蘭と真希も笑った。

読んでくださりありがとうございます。

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次回もお楽しみに。

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