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人間には向いていない  作者: 咲紫きなこ
三人なら
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21ページ

 今日は朝から雨が降っていた。

 結居蘭が登校し、いつもその次には黒木が来るのだが、今日は来なかった。

真希は遅刻ギリギリで教室に入って来た。カバンから赤いタオルを取り出して頭や肩を拭いた。


「うえぁー濡れたわ」

「雨強かったもんね。今日くろきさんが来なかった。休みかな?」

「メールしてみるか」


 その後真希は黒木に『休みか?』とメールすると『頭痛が酷くて図書室で寝ている』と返ってきた。


「大丈夫かな」

「まあ寝かせとけば平気だろ」


 黒木が居ない事で、ミツバチ達は騒いでいる。


「黒木様がいらっしゃらないわー」

「お休みかしら」

「いえ、靴はあったから来ているはず」

「じゃあどこに?」


 そう言いながら保健室へと向かった様だ。

 程なくして授業が始まった。


 真希はねみぃと言い三時間目前に保健室に行ってしまった為、結居蘭は今一人だ。次の授業の支度をしていると、結居蘭の周りに沢山の女子生徒が集まって来た。

 何事かと焦る結居蘭だったが、一人の女子生徒が口を開いた。


「あんた、黒木様とよく一緒に居るよね」

「は、はい」

「黒木様の姿が見えないのよ。ねぇ、教えてくださる?」

「私も……知りません」

「本当かよ、隠してんじゃねぇだろうな!」


 黒木は頭痛で苦しんでいる。ミツバチ達が騒いだりするから黒木は図書室で静かに休んでいると前に聞いていた結居蘭は、居場所を絶対教えないと心に決めていた。

 口調の荒い人に机をバンと叩かれ、肩が跳ねる。

(怖い)


「ちっ、使えねーやつ」

「黒木様は私達が居ることを大変喜んでくれます。あなたも、柚木さんみたいにそれを邪魔しないでくださいね」

「邪魔はしてません。くろきさんとは、友達だから一緒にいます」

「友達⁉︎ お前みたいな奴が? 図に乗るなよ」

「あまり邪魔する様なら、こっちにも考えがあるから。気おつけてねー」


 そう言ってミツバチ達は結居蘭の前から去って行った。

 結居蘭は久しぶりに学校で泣きそうになった。だが、友達の事を守れたのならばこれで良かったのだと思う。

 結居蘭は次の授業の準備を再開した。


 昼休み、真希が保健室から帰って来た。


「ただいまフレンド」

「おかえり」

「元気ねーな。なんかあったか?」


 結居蘭は先程の事を真希に話した。


「あたしが居ない間にそんな事が……。くそミツバチ共許せねーな」

「怖かった」


 その時の怖さを思い出したのか、結居蘭は右手で左腕をギュッと掴んだ。

 そんな時だった、また先ほどの女子生徒達が結居蘭達の前に現れた。


「何だよミツバチ。くろきはここには居ねーぞ」

「ここにはって、じゃあどこにいるのよ!」

「知らねーよ! てか、いねぇならほっといてやれよな」

「ほっとけるわけないでしょ? 黒木様に会いたいのよ」

「それに体調が悪いなら心配だわ」

「てめーらがブンブンうるせーから、どっか行ったのかもな」

「邪魔なのは柚木でしょ⁉︎」

「黒木様に近寄らないでよ!」

「嫌だね。あいつとはフレンドだから」

「――わかりました。今日はもう諦めます」


 ミツバチのリーダーらしき人がそう言うと、皆はいと言った。そしてその場から去って行った。


「ゆずき、大丈夫?」

「言い合いは慣れてるからな。大丈夫」


 真希はニカっと笑って見せた。結居蘭もつられて一緒に笑った。

 その日、黒木が教室に来る事はなかった。早退したからだ。


              ***


 次の日、何事もなかったかの様に黒木は朝二年A組を訪れた。


「ゆいらちゃんおはよう」

「くろきさん! 体調は大丈夫?」

「うん、平気だよ。心配してくれてありがとう」


 話している間に真希が登校してきた。


「くろきじゃん」

「やあまきおはよう」

「おはようフレンド。――てかさお前ミツバチの事どうにかなんねーの? あいつらうるせーんだけどまじで」


 真希が真面目に黒木にそう話すと、黒木は笑って答えた。


「うるさくないさ、僕を賛美したいって気持ちのあるかわいい女の子達さ」

「いや、お前はよくてもさ、あたし達が迷惑なんだわ」

「何か言われたのかぃ?」

「昨日邪魔だとか一緒に居るなとか色々言われたぜ。な、ゆいら」

「うん……怖かった」

「それは面倒だったね。でもそれ僕のせいじゃないだろ? 直接言ったらどうだぃ?」

「ミツバチやめろって? やめるわけねぇじゃん」

「じゃあこの話はこれで終わりだ」


 不機嫌そうな真希と不機嫌そうな黒木を交互に見ては何を言ってやればいいのかと結居蘭は言葉を失い視線を落とした。


 帰り、三人で帰ろうとした時だった。


「あれ?」

「どうした」

「私の靴がない」

「探そう」


 下駄箱へと行き靴を履き替えようとした時だ、結居蘭の靴が無くなっていた。どこか違うところに入っていないかとそれぞれの靴箱を開けてみるがない。

 下駄箱の近くにあったゴミ箱を真希はふと覗くと、そこには靴が入っていた。


「おい、ゆいらのか?」

「私のだ……良かった。ありがとうゆずき」

「良かったねゆいらちゃん」

「これってミツバチ達のせいじゃね?」


 真希がそう言うと、黒木は真希を睨んだ。


「そんな事するような子達じゃないと、僕は思っているけれど」

「いや、絶対するよそういう奴らだよ」


 微妙な空気が流れる中で、結居蘭は口を開いた。


「大丈夫だよ。帰ろう」


 そして三人は何を喋る事なく帰路に着いた。


              ***


 黒木が登校して来るとクラスにはミツバチである女子生徒が沢山集まって来る。黒木はみんなに話があると言って教室に集めた。


「まきとゆいらちゃんの事だけど、僕の友達だから、彼女達を邪険にしないで欲しいんだ」

「でも、私達の時間を奪っているのはあちらです」

「そうですよ、私達だって黒木様と一緒に居たいのに酷いです」

「僕がもっと君達と居れば、文句とか言わないでくれる?」

「はい、それはもちろん」

「――わかった。じゃあそうするよ」


 その日から黒木は、結居蘭と真希の所へ来なくなった。

読んでくださりありがとうございます。

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次回もお楽しみに。

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