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ミシェル  作者: 華美
変化
27/29

魔道具

  ミシェルが魔道具に魔力を流そうと力を込めた瞬間、全員の視界を水と泡が覆い尽くした。


  「がぼっ!?」


 ソールが驚きの声を上げようとして泡をぶくぶくと吐き出し、目を白黒させる。ミシェルは即座に魔力を切り、周囲に満ちた魔力の残滓を剣を抜いて振り切り、散らせた。バシャンと水の塊が地面へと叩きつけられて、全身が濡れた三人が残った。


  「げほっ、何が起こったんです!?ミシェル??」


  「ごめんなさい、調整が出来なかったみたい。...難しいのね」


 セラは盛大に咳き込みながらミシェルをじっと見つめ、肩を落とす。


  「来るとわかっていたらどんなにか良かったか...ごほっ!鼻の中とかめっちゃくちゃ痛いですよぉ...わざとじゃありませんし、責めてるわけじゃないんですけどぉ」


 一方、ソールは瞳を輝かせてミシェルに駆け寄ってくる。


  「僕の国でもいないほどの魔力量ですね!国王でも敵いませんよ...魔道具、変化ないですかね?」


 壊れててもいいんですけど、などと言いながらミシェルから魔道具を受け取って、点検を始めた。自分がずぶ濡れなのはあまり気にしていないようだ。


  「ごめんなさい...由香?」


 奥の方でしゃがみ込んだままの由香を見て、ミシェルはサッと傍による。どこか悪くしたのではないのかと顔を見ると、赤らめていた。


  「み、ミシェルっ、その、服が...」


 しゃがみこんでいる由香は腕を自分の胸の前で交差させて、決して見せまいとしているようだ。


  「あ...ごめん由香。羽織るものを持ってくる」


 魔石で造られた由香の身体は服こそ着せられていたが、女性用ではない上に薄く、大分透けてしまっていた。


  「お二人どうしましたぁ?あっ、これ被ってて下さい!私結構厚着してますし大丈夫ですよぉ」


 セラがぴょこりと顔を出して、すぐさま自分の上着を由香に被せた。


  「ありがとうございます...セラさん」


  「いえー、当たり前の事ですしねー」


 それから着替えをして、仕切り直す。今回は厚着をして、距離を置くことにする。


  「ミシェルは暫く触っちゃダメですよー」


  「そうね。それじゃあ、次は由香ね」


 そう言って魔道具を渡された由香は、不安そうにミシェルを見て、魔道具を見た。


  「えっと...」


  「どう?使い方分からない?」


  「一応その引き金を引けば、使用者の魔力を吸い取って自動的に発動することも出来ますよ。最初に慣れるために、そして魔力の動きを知るために引いてみては?」


 ソールが言うには、魔法陣で固定していて、先程のように魔力を使いすぎて暴走することもないらしい。それを聞いた由香は緊張しながらも、引き金に指をかけた。


  「いいかな?」


  「ええ、大丈夫。暴走しても私が何とかする」


 ミシェルの言葉に安心しつつ、由香は引き金を遂に引いた。魔法陣が浮かび上がり、そのための魔力を由香から吸い取ろうとする。そして吸い取った魔力で光り出す。そのはずの魔法陣が、何故か砂のようにサラサラと崩れ始めて、空気中に溶け込むかのように消えた。


  「え?」


  「なっ!?」


 由香とソールの声が重なるように驚きの声を上げた。ソールが先程とは大きく違い、つまずきながらも急いで駆け寄った。由香の手から奪い去るような勢いで魔道具を取ると、引き金を引く。だが、何も反応はなかった。


  「何が、起きたんでしょう...」


  「どうしたの?」


 ソールは振り返り、ミシェルに魔道具を渡す。魔力を流してほしいと言われ、ミシェルは少しだけを意識しながら魔力を流そうとするが、魔力が散ってしまった。


  「これは...魔法陣がない?」


  「そうです、跡形もなく消え去ってるんですよ。魔力を流すための回路もダメになってます。本当に何が起こったのか」


 由香は壊してしまったのかと、慌てた表情で謝る。だが、由香が壊したきっかけなのかわからないソールは、首を横に振っていた。


  「さっきの、威嚇用の魔道具を見せてもらってもいい?」


  「あ、はい、角笛ですね?えっと、これですこれです!」


 最初に由香が触れた魔道具を出してもらい、同じようにミシェルが魔力を流すが、音は鳴らなかった。


  「んんー、前例がないので原因が分かりませんね...魔法すら使っていないのに、固定した魔法陣が消えてしまうなんて」


 ソールは何度も唸りながら、ああじゃない、こうじゃないと独り言を続けて、ぺたぺたと魔道具を触る。そして諦めたように一息つくと、こちらを向いた。


「今日は終わりにしましょう!また魔法陣を入れますから、次に出来た時にまた魔法をお教えしますよ」


 そういって颯爽と去っていった。残された3人は顔を見合わせ、困ったように肩を竦めた。


  「仕方ないですねぇ。ジェズが戻り次第、手合わせしてみますか?」

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