↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ミシェル  作者: 華美
心
16/29

恐怖の夢の中

  私は今、空を飛んでいる。もっと詳しくいうと、グリートの背に乗っている。


  『ミシェル、ドコイク?ドコデモイケルヨ!』


 

 グリートは最近話せるようになり、シードに許可を貰い、来たそうだ。


  「グリートが好きな場所」


  『オヤスイゴヨウ、ダネ!イイトコアルー!』


 グリートが、翼を傾けて空高く昇っていく。ミシェルはその背にしがみつきながらも、その下に見える景色に気を取られる。緑が広がり、その空をモンスターが飛び交い、その隣には人里が転々と見える。離れていくと、全てが緑に見えるほどだ。


  「すごいね、グリート」


  『キュウウ』


 ミシェルは微笑ましく思いながら、グリートの背中を見つめる。馬よりも二回りくらい大きい。緑色の体は少し白っぽくなっている。先程見た目元は少し赤く、綺麗な色だった。


  『ボクネ、タビニデルンダ』


  「え?」


 グリートは途中でゆっくりと高度を下げながら話し始めた。


  『オオキクナッタラ、ウミワタル。シードトモ、オワカレ』


 ミシェルは、なんと言えばいいのかわからない。ただ、離れていくのだとしかわからなかった。


  『ボクハ、ヒトリデイキテクツヨサ、イルンダッテ!ドラゴンハ、ソウイウモノ』


 シードの、ドラゴンとしての生き方なのだ。グリートは首をこちらに向けて傾ける。


  『ミシェルモ、ソウナノカナッテオモッタケド、シード、イッタ。ヒトハササエアワナイト、イキテケナイ』


 ミシェルは、ゴクリと息を呑んだ。ドクドクと心臓の音が鳴る。


  『ヒトッテソウイウモノ?』


  「……うん、支えてもらわないと、生きていけないね」

 



 グリートは、地面へとふわりと着地する。


  『ツメタッ!』


 ポタポタとグリートの顔の近くに水滴が当たる。グリートは上を見上げるが、雨は降っていなかった。


  グリートが降りた場所は、島だった。海に囲まれていて、他には背の高い木々が並んでいる。そこでミシェルとグリートは話をしながら、島を歩いた。


  『モウ、マックラ!』


 夜の帳が落ち、海が静かに波打っている。本当に暗闇で、遠くには何も見えない。


  「…ここで寝ようか、飛ぶのも危ないし」


 そう言うと、グリートは丸くなりミシェルを呼んだ。グリートのお腹の部分を貸してもらい、ミシェルは少しして眠りについた。


  ドクッと心臓が跳ねる。この、感覚は。ミシェルはハッとして周囲を見渡す。村だ。私がいた村。また、夢だ。


  「あは、あはははっ!」


 あの笑い声が聞こえる。行かなきゃ。止めなきゃ。私は走る。人気のない道をひたすらに。笑い声はだんだんと響きを大きくさせている。


  「あ」


 私がいる。見た目が私だ。彼女が振り向いた。笑ってる。正気じゃない。血にまみれてその手に双剣を握っている。


  「遅いよ、もうやっちゃった」


 その言葉に、私は彼女の横を走り通った。そしてヒィッと声を引きつらせる。


  「リュ…せい…?」


 青い髪が散らばっている。その中心に、見るも無惨な切り刻まれた死体がある。その表情は、もう見れない。


  「あ、あぁ」


 自分が恐れていたことが現実に。私は歩くことすら出来ずに倒れ込む。


  「ミシェル」


 セラの、声だ。私はギィとなりそうな首を何とか動かして振り返る。


  「どうして、来てくれなかったんですか?」


 セラは無事だった。その腕に、ジェズを抱えて。


  「は、ぁ!う、そだ。私が?」


 私は耐えられなくなる。声にならぬ叫びが空間に響く。


  『キュウル?ミシェル!』


 目が覚めた。ポタポタと頭から水が滴っている。横を見ると、グリートが海の中にいて、翼を広げていた。


  『オキタ』


 起こしてくれたのか、と気づくとミシェルはふらりと立ち上がる。


  『ヤッパリ、ナカマイナイト!イコ、ミシェル』


 グリートはミシェルのそばへと飛んでくると、首を下げた。ミシェルは、いつの間にか手を取っていた双剣を肩にかけて、その背に乗る。


  『オチナイデネ!』


 念を押されながら再度、空を飛んだ。飛ぶ間に思い浮かぶのは仲間達のこと。そして、私であって、私ではないあの存在だ。


  「誰なの…?夢じゃ終わらない気がする」


 もしいたら、それはどんな存在か。ミシェルはその可能性について思考する。時間は早く経ち、私のよく知る村が見えた。


  「あまり近づいても危ないから、ここで」


  『ウン、ココデオワカレ』


 グリートは、村の外れにある人目のない開いた場所に着地する。そして、ミシェルの頬にすりすりと自分の顔を当てた。


  『ヒトリデ、カカエコムノ、ダメ!ツヨクナッタラ、マタクルヨ!』


  「うん、待ってる」


 ミシェルもグリートの頬の部分に触れて、撫でる。そして名残惜しそうなグリートは少しすると離れて飛んでいく。その姿はもう立派なドラゴンだった。


  「今度は、私が成長しなくちゃいけない」


 ミシェルは嫌な気配の漂う村へと一歩を踏み出し、仲間たちの元へと走り出した。

  暫くして、村の変化に気づく。通りすがる人々がミシェルを見た途端に表情を固くするのだ。心臓が掴まれるような緊張感が走り、途中から姿を隠せるようなマントを身に纏う。焦りを感じながら、やっとの事でセラたちの気配のある家を発見した。古い民家のような所で、扉は閉まっている。ソォ…と近づき、扉をノックする。


  「ねえさん…?」


 扉を開けたのはジェズだ。まだ数日しか経っていない筈なのに、やつれた。


  「ジェズ?」


  「ミシェル…っ!何故いなくなった!…っ!!とにかくセラに会ってくれ」


 怒鳴るような声に、心臓が縮むような気持ちになる。ごめんなさいと小さく呟き、セラがいないかを見る。玄関からも見渡せる造りの中、見えた光景にミシェルは絶句する。


  「う…ぐ…」


 血のにじむ包帯を全身に巻き、うめく声が間から漏れ出ている。ベットに横たわる彼女の気配は、ミシェルの知っているセラに違いなかった。


  「セラっ!」


 声が裏返るのにも関わらず、駆け寄り生きているのかを確認する。怪我をしているのに手を取り体温を感じ取る。


  「生きてる…なんとかな。…説明、いいか?」


  「その前に」


 自分の魔力を与える。そして、鮮明に治るようにイメージし、魔法を構築していく。すると、青白い光が染み込むように包帯の内側へと入り込んでいく。


  「…この者に、加護を」


  「もういい。体が持たん」


 止められて、頷く。触った手は先程よりも暖かい。ピクリと動いたので、もう一度握りしめてから離れた。


  「見た目は、ミシェルそのものだ。正体はわからなかったが、とにかくデタラメに強い。…手も足も出なかった。守れなかった…!」


 ジェズが拳をつくり、震えて怒りを顕にする。ミシェルは瞳を揺らして、強く自分の手を握った。


  「この村に、居着いてやがる。あれは無差別に襲いかかる。どこに出るか、何がしたいのか、なにも情報はない」


 ミシェルは思う。

  もし、私がそばにいたら。こんな事にはならなかったかもしれない。逃げる時間くらいは、作れたかもしれなかったのに。私は、何を守ろうとしてたの?


  「ごめんなさい、ジェズ。今の私に出来ることは、その人の真意を知ること。止めること。だから、その後なら…」


  「その後?んなこと求めてねぇよ。…ただ、もういなくなって欲しくないだけだ。俺は弱い。だから、ミシェル、すまないが頼む。村の奴らもセラも、俺には救えんかった」


 ジェズの体がぐらりと傾く。腹から血がボトボトと落ちる。ミシェルはサッと体を支えて、椅子へと座らせる。そして、肩に手を置くと先ほどと同じように魔力を使って回復する。


  「そんなに…魔力を使うと危ないぞ?」


 ジェズが意識を取り戻し、そう言う。ミシェルは手を離して、安心してため息をついた。


  「じっとしてて。血を止めただけだから」


 ミシェルはそう声をかけて、キョロキョロと辺りを見回す。ジェズは青白い顔をミシェルにむけて、同じように見渡す。


  「どうかしたか?」


  「いや、私の双剣を…探してて」


 見渡す限りはどこにもない。セラが手放すとは思えないのだが。


  「それは…奪われた」


 ジェズが暗い表情で答えを教えてくれた。私は小さく頷く。


  「わかった。ついでに返してもらう。あれは大切なものだから」


 ミシェルは行くために扉を開ける。するとずるりとジェズが立ち上がり、


  「気をつけてな」


 とくしゃりと笑えてない表情で、帰ってこいよと続けた。ミシェルは真っ直ぐジェズを見つめる。


  「必ず戻ります」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。