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ミシェル  作者: 華美
心
13/29

出会い

 

  「はぁ、はぁ、はぁっ!」


 何故私は今走っているんだろう?辛くて辛くて、何かに追われている。


  「ガゥッ」


 衝撃が来て、私の身は地面へと投げ出され、叩きつけられた。なんで、こんな目にあっているんだろう…。


  私は女の人に助けられた。笑顔の眩しい、明るい人。その人は私に手を差し伸べてくれたが、私はその手を取らず、力もないのにモンスター達の棲む森の奥に入っていった。なんでだろう?私はなんの力もなくて、何もすることができないのに。


  「失礼?」


 声をかけられたのは、しばらく歩き続けて30分程たった時だった。警戒心をあらわに振り返ると、黒いモヤがそこにあった。黒いモヤは私よりも離れた場所でつい…とお辞儀のように曲がる。


  「そうでしたか、見えないんでしたね?あぁ、すみませんね、死にかけのようでしたので、つい」


 その言葉に、私は痛む横腹から手を離す。べっとりと血がつき、死んでいてもおかしくない出血量だった。そう気づいた時、激しい痛みが体中を走り回った。あまりの痛みに歯を食いしばりながら、


  「…死ねる?」


 私はそう質問して、ここに来る前の約束のような言葉を思い出した。そして、グッと何かが込み上がりさらに力を込める。


  「少なくとも死にたくないと、そう言っているように見えますけれどね」


 黒いモヤの返答に、私は唇を噛む。私は、死ぬために探してるんだ。そんな、はずはない。


  「まぁ、どちらでもいい。貴方は今、何を求める?」


 突然の問いに私はぼんやりと黒いモヤを見上げる。


  「何を?私は、あの人に会うことがしたい」


  「何のために?」


 何故か笑っているような気がして、私は睨むように黒いモヤを見つめる。


  「意味を知るために」


  「威勢を張るね?面白い。私の名はリア、といいます。人ではないのは見てわかりますね?どうでしょう、私と契約するのは」


 黒いモヤが、揺らぐ。私は目を離さずにふらつく体を木にもたれさせた。


  「契約、だなんて、悪いことしか、ない…」


 痛みを訴える横腹を押さえ、私は怪しい黒いモヤから離れようと歩き出す。


  「心外ですよ。まぁ、いいんです。貴方の同意はいらないんですから」


 嘘だ。そう言おうとした時、私の体は地面へと崩れ落ちた。


  「限界ですよ、もう貴方は動けない。だからこそこの道しかないんですから」


 寂しそうにいう言葉がやけに耳に残る。私は地面をつかむようにして力を込めるが、意識は落ちていった。


  温かい。そう思い、私は目を覚ます。目に入ったのは、炎。ハッとして体を起こすと、やけに軽く感じた。


  「おはようございます、よく眠ってましたよ」


 焚き火をしていた影が、体を起こしたことで目に入る。


  「…誰?」


  「そうでした、姿が見えるようになったんですね。私はリアです。そして悪魔です」


 黒い翼に黒い角、その他は人と変わらぬ姿の男がそこに座っていた。髪は少し長く、女性のような美しさを持った、何処か普通ではない空気を纏っていた。


  「おや、そんなに驚きます?とにかく、ゆっくりと座ってくださいね」


 その言葉に私は自分の体を確認して、大きく目を開く。どこも変わりがない。だが、傷一つなく力を込めていた手を見ると、地面が抉れている。


  「…なにこれ?」


  「それが貴方にあげた力ですよ」


 私は、動けなくなってしまう。体を下手に動かそうとすると、泥のように手が地面へと埋まっていってしまう。それを見ていたリアは、こちらに歩いてくると、私の手を取った。優しく触れられて、私はキョロキョロと意味もなく辺りへと目を配る。


  「ほら、動かないでくださいよ」


 私は固まったままストンと座らせられると、リアは顔を近づけてきた。バクバクと緊張する心臓の音が聞こてえないだろうかと、私は息を止める。


  「クフフ、百面相してますね。自分では気づかないんでしょうけど。仕方ないのでこれをあげましょう」


 そう言って、どこから出したのか手に何かを握らされる。私は疑問に心を落ち着かせ目を落とす。


  「これは?」


 手を開くと、拳くらいの深い青色の石があった。が、今赤色に染まっている。


  「使いきれぬ力を抜き取っているんですよ。貴方が力を使いこなしていけば、元に戻っていくようにしました」


  「そんなことできるの?」


  「私の手にかかれば。そういうのは得意でしてね」


 私は笑うリアを見て、少しの気恥ずかしさに目をそらした。優しそうな笑顔に心が痛みを訴える。


  「その力には気をつけることです。嗚呼そうだ、どんなに傷を負ってももう死ぬことはありませんから」


  「はぃ?」


 私は、カッと目を見開き固まる。死ねない?


  「不老不死なんですよ、我ら」


  「そんな…今すぐ元に戻してっ!」


 地面が割れるのも構わずに石を置き、リアに掴みかかる。リアは動揺することなく、冷ややかに笑う。


  「それが、私の望みですから。それに、完全ではない。方法によっては死にますしね。それに貴方の望みが叶えば、その時に解除しましょう」


 ふるふると震える私に、リアは手を肩に乗せた。そして、ゆっくりと離し、


  「貴方のいう、あの方に会うまで死ぬ訳にはいかないんでしょう?生きる意味さえも理解出来ていないんですから」


 と呟いた。私はへなへなと座り込み、涙をこらえる。意味が分からない。本当に。


  「なんで、助けるの?」


 なんで、どうして生きさせるの?


  「理由はありますよ。貴方が知らないだけで、理解できないだけで。強くなれ。貴方が強くなれば会えますから」


 リアはその言葉をかけると、火を消して姿をくらました。


 私はいつの間にか眠っていて、目を覚ましたらリアがいた場所には、双剣が立てかけられていた。私は、一人で洞窟の中でそれを見つめ続けた。


  「戦わなきゃ」


 私はいつの間にか立ち上がり、双剣を手に取った。バチリと電流が流れたかのように、体に力が巡る。


  「行かなきゃ。……ありがとう、リア」


 こうして私は、二度目のこの世界で生きる決意をした。

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