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あの日見た桜は  作者: 森好子


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3/5

第3話:ひとりでお花見

次の日、久しぶりに「自分のため」だけに花見の準備をした。

大きなおにぎりを2つ握り、焼き鮭と卵焼きを作り弁当箱につめる。

スーパーで小さな缶のお酒を一本と、おつまみの柿ピーナツを一袋買った。

誰かと約束しているわけでもない。ただ、自分だけのために、桜の下で贅沢な時間を過ごすために。


昼になって、通勤に使う自転車をこいで公園に向かった。

昨夜見上げた桜は、青空の下で、堂々と咲いていた。

それでいて、風が吹くたび、花びらがひとひらずつ、ふわりと落ちてどこか儚げな感じもする。


不思議なことに、誰もいなかった。

今日は日曜でしかもとても良い天気だ。

少しくらい人がいてもよさそうなのに、誰もいなくてやけに静かだ。

こんなにきれいなのに、もったいないな、と私は思った。


私はベンチに腰をおろして、おにぎりを食べて、お酒を少しずつ飲んだ。

仕事のことも、これからのことも、とりあえず今は考えない。ただ桜を見ていた。


そこへ、おまわりさんが来た。

「ちょっといいですか」

「何をしているんですか」と言われたので、「花見です」と答えると怪訝な顔はされたものの、

私の手元の小さな缶のお酒を見て「帰りは自転車に乗らないで。自転車は押してね」

と言って去って行った。


満開の桜は美しく、静寂の中で、私だけのために咲いているようにさえ思える。

公園の向こうを車が通り過ぎる音がしても、どこか別の場所の出来事のように感じられた。


その夜、家に戻って眠ると、とても印象的な夢を見た。

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