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クラスのギャルと兄妹になりました  作者: たかちょ


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四十話 初めて祝う誕生日 前編

大量の風船で足場が見えない部屋。汗だくのシャツを纏い、ベッドの下に手を突っ込み隠したプレゼントを取り出している俺。

焦りながらも、自分がイメージしたことをコツコツこなしていく。


まずはピンクのドレスを着て頭にピンクのリボンを付けた熊の人形を玄関に置いて、珠凛をお出迎え。


「えー、『お誕生日おめでとう リビングに行ってね』よし、これでリビングに行くだろ!」


スマホをチラチラと時間を確認して、人形の足元にメッセージを書いたルーズリーフを置いて、俺はリビングに向かった。


いつもと変わらないリビングのテーブルに桜色のエプロンを置いて、その横に『KENTANKE』と書かれた箱を並べた。

ルーズリーフに何か書こうとペンを持つが思い浮かばない。


「まだ大丈夫かな?」


スマホ見て焦り、ペンで机を小刻みに叩いてしまう。

俺は少し後悔をしていた。桜色のマグカップを買いに行った時に、その横にあったエプロンに目を奪われてそっちを買ってしまった。


「んー、なんかなー」


朝食や弁当、夕食を作ってくれる珠凛にエプロンをプレゼントして、『これからも料理よろしく』みたいな感じに思われたら嫌だなと思ってしまう。今さらだが、コップの方にしておけばと後悔して、頭を抱えた。


「でもしょうがない!」


ペンを動かして『いつも美味しいご飯をありがとう!珠凛ちゃんの料理が大好きです!このエプロンを使ってください』と、書きながら、


「たまにはお前も料理しろよ」


つい口に出して、自分に投げかけてしまった。


一段落したところでシャツの襟を首から離すようにパタパタしながらスマホの画面を見る。


「ダメだ!気持ち悪い、浴びてこよう」


喜んでもらえるかソワソワしながら、浴びるシャワーは不思議と安心する。水圧を顔に感じながらニヤけていると、誕生日なのにケーキ忘れてしまったこと。あと夕食は俺が作った方が良い気がする。そんなことが頭をよぎった。


俺は急いで浴室から出て、髪を湿らせたままタオルを腰に巻いてキッチンに急いで向かい、棚や冷蔵庫を見渡す。


「なんか高そうなマフィンだな。じゃなくてパスタがあるじゃん。和えれるもの、もの…あったトマトスパゲッティ!あ、ここにろうそくあるんだ」


夕食は簡単に出来そうなパスタで決まりホッとしながら、冷蔵庫のドアを開けるとレタスに目がいくと


「ただいまー」


いつもより大きな声で帰ってくる珠凛。誕生日だから気分が良いのだろう。


「なにこれー!可愛いんだけどー」


近づいてくる足音と同じように、自分の鼓動も大きくなっていく。俺は息を潜めながら、その場にしゃがみ込み身を隠した。


ガチャ


「あれー?たかぴー?KENTANKEのチョコじゃん!エプロンも可愛いー!おーい!たかぴー?部屋にいるのかな?」


身を潜めながら、顔が赤くなるのが自分でもわかった。でも嬉しそうな珠凛の声を聞くと、嬉しいよりホッとする方が強かった。


ガチャ


「たかぴー?」


廊下の方へ俺を探しに行った珠凛を見て、俺は音を立てずに移動をする。


ガチャ


「なんで裸なのー?これありがとー!」

「あ、よかった!」


赤くなっていた顔は、恥じらいの赤さに上塗りされて、それを見た珠凛は急に笑い始めた。


「ここまで準備して、もしかして裸の登場も計画通り?」

「まぁね!…うそー!珠凛ちゃんが思ったより帰ってくるの早くて!」

「早く服着てくださーい!夜ご飯準備するね」

「いいよ!今日は珠凛ちゃん誕生日だし、簡単なもの作るよ!のんびりして!」


鼻歌を歌いながら、リビングを後にする珠凛の背中を見送った後に急いで着替えに行った。



テーブルで熊の人形を見つめる珠凛を、俺は眺めながら、キッチンでレタスサラダを作り終えて、フライパンにトマトソース入れて火を通す。目が合った珠凛が


「これどこで買ったのー?」

「あ、この前の優也とかとサザンクロス駅行った時!」

「あの日ね!この熊の人形めっちゃ可愛いよー!たかぴーセンスいいねー!」

「たまたま通った時に可愛いと思って買っちゃったよ」


ピピピー


パスタの茹で時間に合わせて設定したスマホが鳴ると、パスタをフライパンにダイブさせる。


「熱っ」

「大丈夫?」

「余裕だよ!余裕!」

「何か手伝うよー」

「今日は主役だからさ」

「でも土曜日にもやるのにー」

「誕生日の日に祝いたいじゃん」


トマトソースの香りがキッチンに漂うと、俺は甘酸っぱい香りに酔ってしまったように、いつも言わないような言葉を選んでしまった。


言った後に我に返ると、フライパンの熱のせいか顔が熱くなる。

お皿にパスタを盛ってテーブルに運ぶと、ポケットに隠したプレゼントに意識がいき始める。


「じゃあ食べようか!」

「ありがとう!たかぴー!めっちゃ嬉しい!」

「良かったー!けっこう不安だったんだよー」


余裕見せた笑顔を装って、心臓はまだバクバクしている。ポケットに入っているプレゼントをいつ渡そうか考えると、思ったよりパスタが口に進まない。


「いっぱい嬉しいよー!ご飯作ってもらったし!」

「でも、ケーキはないけど…」

「いいよ!いいよ!」


机の上に置かれた熊の人形が俺と珠凛の会話を聞いているように俺たちを眺めている。

今日はいつもより珠凛はおしゃべりだ。よほど嬉しかったんだと、心の中でガッツポーズなんてしちゃっている。気づけばテーブルのお皿は空になり、匂いも消えていた。


「じゃあお皿片付けるね」

「それは私やるよ!」

「大丈夫!座っててー!」


お皿を水に浸けながら、ふと棚を見渡すとマフィンのことを思い出す。俺はこっそり棚からマフィンを取り出し、さっき見つけたろうそくを刺した。


「あ、」


ライターがないことに気づいた俺は、キッチンコンロの火を使った。火の臭いに気づいた珠凛は


「なんか焦げてる臭いするけど」


「ハッピーバースデートゥーユー♪」


心配そうにしている珠凛の顔を消し去るように、俺はバースデーソングを歌い始めた。


「えー、ケーキないって言ってたのにー」

「ハッピーバースデーディア珠凛〜!ハッピーバースデートゥーユー!おめでとうー!ごめんマフィンだけど!ろうそく1本だけど!」


笑いながらろうそくに息をかける珠凛。ろうそくの煙越しに珠凛の目が潤んでいるように見えた。

俺も煙が目に染みたのか、目をパチパチしてしまう。


「ありがとー!」

「はい!プレゼントはまだ続きます!」

「えー、まだあるのー?開けていい?」


包装された小さなプレゼントを優しく丁寧に開ける珠凛は潤んだ瞳を擦りながら笑った。


「Missyの香水じゃん!めっちゃ欲しかった!ありがとう」

「実は俺も買ったんだー!お揃い!」


もう一つのポケットから同じ香水を取り出して、恥ずかしさを隠すように笑って見せた


「ありがとう!嬉しすぎなんだけど!めっちゃ良い匂いするー」

「めっちゃ良い匂いするよね!しかもキツすぎないから学校に付けてもバレなさそうだしね」


まだ終わらない誕生日。こんなに喜んでくれると次のサプライズをやるのが楽しみになっていた。


「お皿とか洗っておくから、今日は早めにお風呂入ってきなよー!」

「うん、ありがとー」


ゆっくり立ち上がる珠凛と一緒に立ち上がり、俺は急いで皿を洗いにいく。


「いい感じ!いい感じ!珠凛ちゃんがシャワーを浴びに行っている隙に準備をしないと」


この後の準備を考えているのに、重なるようにさっきの珠凛の喜んだ顔が頭から離れない。

もう一回喜んでくれるかな。

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