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クラスのギャルと兄妹になりました  作者: たかちょ


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三十九話 7個目のプレゼント

「はい、今日はここまで!」


お昼前の授業が終わり、生徒たちが鞄から弁当を出し始め仲の良い友人たちと食事が始まる。いつもの風景を見ながら、弁当を食べるか迷っている。

後ろから背中を叩かれて、あくびをしながら振り向くと


「ずっとあくびしてるじゃん!俺の席からめちゃくちゃ見えるんだよ!」

「優也と席が離れて、悲しいわー」

「俺は上本さんの横だから良いけどな!」


ハオウィーン祭が終わり、担任の気まぐれで席替えが行われ、俺は一番後ろの窓側の席になった。真逆の廊下側に珠凛と優也がいる。


「それは良かったじゃん」

「お前だって前の席、笹川さんじゃん」

「そうだけど、そんなに話さないよ」


優也は笹川さんの椅子に座り、お弁当を俺の机に置くと、俺も自然に机の横にある鞄から弁当を取り出そうと身体を傾ける。


「珠、誕生日おめでとー!」

「おめでとう!」


廊下側の席から聞こえる声に、鞄を漁りながら顔を向けた。


「私からプレゼントは〜、ピアスポーチねぇ〜!」

「乙葉!ありがとー!可愛いー!」

「私はこれにした!絶対似合うと思う!」

「えー!このピアス可愛いー!付けてみる!」

「やっぱり似合うね!めっちゃいい!」

「ありがとー!美華!2人ともありがとう!」


ぞろぞろ集まる女子に囲まれ、珠凛たちが見えなくなると、優也が


「上本さんって女子には、かなり人気あるよな!男子には近づかせない雰囲気をけっこう感じるけど」

「確かにそれはあるよね!でも前より無くない?」

「それは俺も思う!少し柔らかくなった感じはあるわ!ってか、プレゼント渡したの?この前買いに行ったやつでしょ?まさかそれもあって寝不足?」


待っている箸で俺を指して怒涛の質問する優也に、あくびをしながら


「今日の夜渡すよ!一応、準備とかしてたら寝たのが2時になっちゃって、マジで眠すぎだわ」

「おぉー!喜んでもらえるといいな!じゃあ俺も購買で上本さんにプレゼントでも買ってくるか!」


優也は弁当を食べ終わると、そそくさと立ち上がり教室から出て行ってしまった。

昼食の満腹感と窓から入る太陽の暖かさで襲いかかる睡魔に、頬を机に付けて目を瞑る。


一瞬、眠りに落ちていたことに気づいて、騒がしい教室を耳で感じながら、『昼休みまで残り何分かな』と気になり始める。時計を確認して残り2分前とかだと、心が萎えてしまうことを考えると、目を開けることが出来ない。


ガァー


前の席が引きずられて、前の席に誰が座った音がした。優也が戻ってきたと思いながらも、寝てるフリを続けていると、つむじにチクッと痛みを感じた。


トン、トン、トントントントン


骨振動から伝わる音と、尖った爪の痛みに、イラッとして薄っすら目を開ける。


「やっと起きた。」


金色の髪の毛が視界に入って、ハッと眠気が一瞬で吹っ飛ぶ。


「笹川さんか。優也だと思って寝たフリしてた。ごめん」

「バレバレだったよ。珠凛のプレゼント何あげるの?」

「何あげればいいかな?」


プレゼントを用意していることに、恥ずかしさを感じた俺は、咄嗟に準備をしていないように質問を質問で返した。


「え?準備してないの?」


笹川さんが一瞬、引いたような顔をしたことに寒気を感じつつも、実は準備しているとはもう言えない。


「珠凛ちゃんって何が好きなの?」

「珠凛は甘いもの好きでしょ?特にチョコね。あとー、アクセサリー好きでしょ。基本的に可愛い物が好きだし、ピンク好きだし、えーっと…」


いつも落ち着いている笹川さんが、いつもより口数が多いことに、俺は少し驚いた。いつも大人の雰囲気を出しているのに子供っぽく可愛く見えた。それもあってか、親しい友人に質問するように


「おっけ!おっけ!めちゃくちゃ好きなものあるみたいだね!チョコでもあげようかな…じゃあオススメのチョコある?放課後、買いに行こうかな」

「駅前の『KENTANKE』ってチョコ専門店が人気だよ。すごく並ぶけど…」

「じゃあ放課後、時間稼ぎしてくれない?珠凛ちゃんを帰らせないように」


足を組み直して珠凛の方を眺めながら、笹川さんは口を開きながら


「あー、…いいよ」

「マジ?ありがとうございます!助かります!」

「じゃあ私の分も買ってきてよ。」

「あ、はい!わかりました!」


大人の雰囲気に戻った笹川さんと、その取引により上下関係が出来てしまったような気もしなくもないが、気分は悪くなかった。




帰りのホームルーム、教卓に立つ担任の声に耳を研ぎ澄ませ、スタートダッシュ体勢になる俺


「じゃあまた明日!さようなら!」


担任の挨拶に勢いよく走り出す。誰もいない廊下、下駄箱、生活指導がいない正門を駆け抜ける。


珠凛の笑顔を思い浮かべると、自然と足が速くなる。


「はぁ、はぁ、きちぃー」


冬の体育を思い出すような、腹の痛さ。呼吸が苦しいけど、立ち止まるわけにはいかない。


ピコン ピコン


珍しく消音モードをオフにしているスマホの通知が聞こえながら走り続け、10分もかからず『KENTANKE』の看板が見えてきた。


オシャレをしている叔母さんたちが並ぶ列に、1人制服の男子が並ぶ。恥じらいを隠すように無表情でスマホを見る。


「珠凛とカラオケに行くことにしたから。ちなみに私はトリュフが良いから。よろしく」


『トリュフとは?』と、疑問を抱えながら、初めて並ぶチョコ専門店の列への緊張で、呼吸がしづらかった。


並んで15分は経っただろうか。やっと店の入り口に辿り着き横にあるメニューを見て、三度見してしまった。


一箱2000円以上するやつばかりだった。俺の知っているチョコは板のやつとか、10円のやつしか知らない。


「お待たせしました」


店員の前に立つと、声が出しづらくなる。


「えーっと…これと…」


メニューを見ながら、トリュフの写真に人差し指を置く。少し指が震えているのが、恥ずかしい。


「あと、一番人気のやつでいっか!」


元々店に入る前から決めていたのに、その場で選びました風に頼んでみた。周りにはそんなことは気にしていないのに、誰かに頼まれて買いに来た感じを出しつつ、店員からチョコを受け取る。


「いや笹川さんには頼まれてる」


ボソッと言いながら店を出ると、また駆け出した。

汗で背中にくっつくシャツに気持ち悪さを感じ、早く家に着きたい。でもチョコを持っているから大きく腕は振れない。


「どれから始めようかな」


家に着いて、珠凛にサプライズするためのことを考えていた。夜中まで膨らませて、自分の部屋いっぱいになっている風船。

さっき買ったチョコで7個になったプレゼントをどこに置くか。


酸欠で重くなる身体と、珠凛の誕生日を考えて軽くなる心。

見えてきた自宅のマンションに気が緩み走りから早歩きに変わった。


「ちゃんと、喜んでくれるかな」


それだけが、少し怖かった。

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