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クラスのギャルと兄妹になりました  作者: たかちょ


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二十六話 王子と王子

喜ぶ人、悔しがる人、多彩な感情が混ざり合う教室。

私は右上に「97」と書かれた紙を見つめ、レ点の場所を探すと、すぐに見つかる。

なぜこんなミスを!と思うような間違いに、小さくため息が溢れる。すると窓際の方から


「なんだよ!お前91点って!いつも通りじゃねぇじゃん!」

「たまたまだな!あはは」

「絶対カンニングだろ!せんせー」

「優也やめろ!」


貴大と萩谷君の声が教室をざわつかせる。


「藤崎って頭良かったんだ」

「藤崎君が91点で意外だね」


私は窓際の方を振り向きそうになるが、左耳に髪かけて誤魔化す。別に勝負をしてたわけでもないのに、どこかホッとしている自分がいた。意味もなくぼーっと黒板を眺めていると担任が


「今日はテスト返しだけだから、授業はおいといて、ハオウィーン祭の出し物でも決めちゃいましょう!」

「先生さいこー!いえーい!」


ハロウィーン祭はあまり好きじゃない。私が仮装した写真がSNSで広がってしまって、色々とめんどくさかったからだ。


男子が盛り上がってる中、私の前に箱が置かれて、その中に手を入れる。ハロウィーン祭の責任者にはなりたくない。強い願いを込めながら、こういうのは不思議と1番深いところまで手を潜り込ませてしまう。

たくさんある中の直感で1枚を引き出して、その紙を見て、顔が引きつる。


「……」


「女子は上本さんだね!」

「はーい」


私は肩を落としながら、集まる男子の方を見ると、膝をつく貴大がいた。

その瞬間、窓から入る太陽の光に、貴大以外の生徒は見えなくなった。


私は吐いた息を胸いっぱいに吸い込むと、胸の奥に嬉しい気持ちがポンと現れた。


教卓に向かう貴大を見て、少し遅れて歩き出す。

ワクワクしているのを悟られないように、口を尖らせて、めんどくさそうな顔をしながら、軽くパンチをしてから


「たかぴー!よろしくー!」

「とりあえず頑張ろう」


少し照れくさそうにしている貴大の肩は、思っているよりしっかりしてて温かった。

チョークを持つ貴大の横で、出し物決めは順調に進み、私は手応えを感じていた。


そんな時に美華の一言で演劇のヒロインになってしまった。




それから数日経った、夕方。

私はコーラとポテトチップスをソファの前の机に並べて、リモコンのボタンを押しながらワクワクしていた。横に貴大が座ったことを確認して私は


「ウチ初めて見るから楽しみなんだけどー!」

「あ、見たことないのー?」

「何となく話は知ってるけど、ちゃんと見たことないんだよー」

「めっちゃ面白いから、ちゃんと見てー」


真っ暗な部屋で、テレビの光だけの部屋に体育座り。足の親指でモジモジしたくなる。冒頭のBGMが流れるとゾワッと、全身に鳥肌が走った。


「まだ始まっていないのに、ゾワッとするんだけどー!やばー」

「それね!俺も鳥肌立った!」


テレビの光に照らされた青白い貴大が共感してくれて胸の鼓動が高鳴る。ただ映画を見るだけなのに、真っ暗な異様な空間にソワソワしてしまう。


映画はミュージカル調で、無意識に身体が小刻みに動いてしまう。話が進むにつれて、王子が魔法のランプを持つと、サッカーをしている時の貴大みたいだな、と。貴大と王子を重ねて見えてしまう。


物語が進んでいく中、お父さんと仲直りする前の自分自身と王女としての苦悩が重なって、感情移入が強くなる。


魔法のランプで変わった王子が絨毯に乗って、宮殿から飛び出せない王女に手を差し伸べる。


「僕を信じて」


その瞬間、


「今回は俺がいるから大丈夫だよー!」


なぜか貴大のお父さんの誕生日前の一言を思い出す。

無意識に私は


「めっちゃかっこいい!」


そんなことを考えて、隣に貴大がいると思うと身体が急に熱くなってきた。気づかれるわけもないのに、テレビの画面から目を離さないように、身体に力が入ってしまう。


映画は長くて集中して見れないという理由で、全然見てなかったけど、気づけばエンディングが流れ始めて、両手を伸ばして背伸びをした。


「めっちゃ面白かったんだけどー!」

「でしょ?」


私が貴大とこれをやるんだと思うと、美華を思い浮かべて感謝する。そして演劇なんて幼稚園ぶりな私は気になって


「何となくイメージ出来たかも」

「それなら大丈夫だね!」

「ってか、キスシーンってどうするんだろうね?」

「ッゲホゲホ… やっているフリするんでしょ?」


急にむせながら顔が真っ赤になっている貴大に私は探るように


「そうだよねー!まぁたかぴーならいいけどねー」

「じゃあする?」

「…」

「……冗談だよ!」

「……ないない!」


このままいったら、冗談じゃなく家族としての関係が崩れそうな気がした。「ないない!」と言った貴大だけど、一瞬の無言が私は胸に引っかかった。


ちょっとした気まずい間を消すように私は


「じゃあこのまま、セリフでも覚えちゃおうかー!」

「そうだね!今やった方が頭に入りやすそうだよね!」

「とりあえず一通りやってみよー」


練習を恥ずかしそうにやる貴大に、緊張がバレないようにしている私。映画を観た後だと、ちょっとは意識してしまう。


ソファの上で誰もが知っている有名な曲を歌いながら、私たちは緊張や恥ずかしさを吹っ切れたように踊っていた。


「初めてあなた見せてくれた…♪」


私は調子に乗って飛び跳ねてみると、さっきよりも深く沈むソファでバランスを崩してしまい思わず叫んでしまった。


「きゃーー」


貴大の温かい体温を感じながらドックンドックンと胸に音が聞こえる。貴大に覆いかぶさった私は、逃げるように離れたら、恥ずかしがってると思われそうで動けない。


温かい身体にホッとして、熱くなる顔を感じる自分に笑えてきてしまう私。


「たかぴー!心臓バクバクじゃーん!」

「この状況は誰でもなるって!」


茶化される前に茶化す。そうすればあくまで有利に立てる気がした私は、貴大の心臓の鼓動を茶化した。

顔が赤くなっている貴大を見て、勝ったような気持ちになった。


「今日はここまでにしよっか!ご飯も作らないといけないしー!」

「もうこんな時間か!」


立ち上がった私の右耳に残る温かさと、鼓動の残音。貴大に背を向けながら、頬が緩む顔に鼻歌しながらキッチンに向かった。

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